キューバ不安定化:制裁、コロナ流行の苦難とソーシャル・メディア猛攻撃
Finian Cunningham
2021年7月15日
Strategic Culture Foundation
アメリカ政府は自称「裏庭」に、モスクワや北京が侵入するのを好まない。だがアメリカ政府は、本気で反対するための、あらゆる道徳的権威を失っている。
キューバを見舞った大衆抗議の頻発を「経済政策の失敗と抑圧で疲れ切った人々の自然発生的表現」だとホワイトハウスは説明した。ジョー・バイデン大統領は「彼らが基本的、普遍的権利を勇敢に主張する中、アメリカ合州国はキューバ国民を支持する」と述べた。
抗議は、週末、それが沸き起こったと同じぐらい速く静まったように思われる。キューバのミゲル・ディアス=カネル大統領は、このカリブの島の1000万人住民がこうむっている物質的困難への妥当な不満があると認めた。キューバ革命を擁護しようという大統領の呼びかけに、政府支援派が、大きい対抗デモで答えた。
キューバ当局は、ほぼ60年の経済封鎖で追い詰められた社会主義国家を、不安定化するため、ワシントンが抗議行動を画策したと、アメリカ合州国を非難している。ドナルド・トランプ大統領下で経済封鎖は強化され、バイデン新政権は、この壊滅的制限を維持している。
Covid-19流行の、この一年、キューバ経済は大変な苦境に立ち、ワシントン制裁がコロナ流行の特有な困難につけこんでいるという結論から逃れるのは不可能だ。キューバの観光産業は崩壊し、病気蔓延を制限する社会措置は雇用と暮らしに酷く影響を与えた。それは更に、食糧不足と消費者価格インフレを悪化させた。
コロナ流行で増大する入院に対処するため、当局が資源配給で医療施設に優先順位を付て、停電が起きた。
これら全てが、「管理不行き届き」と見なされがちなもののため、大きな社会的欲求不満や政府非難を生んだ。だが、はっきりさせておこう。管理不行き届きと見なされているものは内部原因が主なものではない。キューバの苦境に対する責任は、この島国に対する犯罪的な禁輸措置をワシントンが推進していることにこそある。
1961年以来、キューバに課されたアメリカ経済封鎖は、常に社会主義政府から彼らを遠ざけ、不安をかき立てるため、国民に貧困と苦難を経験させるための意図的なものだった。ワシントンによる、この攻撃は、露骨な国連憲章違反だ。毎年、アメリカ政府は、制裁を無効にするための国連総会の圧倒的多数の国々によるアピールを無視している。
通常時、このような冷淡な行為は恐ろしい。だが世界的コロナ流行で医療資源が限界にあり、国民が一層脆弱な年には、キューバに対するアメリカの禁輸措置は嫌悪をおぼえる。
このアメリカの残酷さに耐えているのはキューバだけではない。イラン、北朝鮮、シリア、ベネズエラ、ニカラグアやロシアを含め多くの他の国々も、世界規模で危険な時に、程度はことなるが、アメリカ制裁の経済戦争をしかけられている。
ワシントンの帝国立案者が、キューバの特に弱い立場に、血のにおいをかいだのは、ほとんど疑いない。多数の海外居住右翼キューバ人が暮らすフロリダの放送局の通信回線を強化するため、国務省が何百万ドルも割り当てたのは注目に値する。
先週日曜日に起きた最近の抗議行動は、ソーシャル・メディアの影響による大規模動員が前兆だった。テレスールの分析によれば、人々が街頭に出る直前、何千という新しい報道記事が日々作り出された。それは、アメリカを巻き込む、洗練された外国の国家レベル工作によって画策されたように思われる。
ワシントンの同じ脚本が、ボリビア、ベネズエラ、ベラルーシとニカラグアで、反政府抗議を煽るのに使われた。ソーシャル・メディアは、自然発生的からはほど遠い手口で、あっと言う間に、ミームや街頭デモを煽る評論家で溢れた。アルゴリズムを駆使し、実際の数と遥かに不釣り合いな抗議者の群れに拡大した。
この種の情報猛攻撃が、経済的困難で既に存在している一般大衆の不満と合わされば、扇動者は座視したまま、期待する社会爆発を待つことができるのだ。
キューバ政府は、早々に不安定を封じ込めたように思われる。キューバは内政干渉だとアメリカを非難した。他の中南米諸国も外国干渉を非難しハバナを支持した。
キューバには実に大きな課題と問題がある。だが大部分、それに対する責任は、完全にワシントンと、その犯罪的侵略にある。アメリカ・ホワイトハウスは、「我々は、キューバ国民に、どのように直接役立てるか評価して」いると言う。あなた方が数十年の踏みつけ続けている革長靴を、キューバの首から、どけたらどうか?
ロシアと中国は勇敢な人々がアメリカ合州国による何十年もの経済戦争から必要な休息をとれるよう、キューバに対し、進んで更なる経済的、物質的支援を申し出るべきだ。
アメリカ政府は自称「裏庭」に、モスクワや北京が侵入するのを好まない。だがアメリカ政府は、本気で反対するための、あらゆる道徳的権威を失っている。ロシアと中国はアメリカ侵略者に対して形勢を逆転すべきだ。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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日々五輪関係者感染が明らかになる。観戦者なし感染者。流行語「安全安心」で決まりだろう。
サウジ、メッカ巡礼 ワクチン二回接種者6万人に限定。カーバ神殿床はロボットで掃除。巡礼者は携帯アプリの指示に従って巡礼するという。不幸五輪より合理的。
IWJ岩上氏による上昌広医師インタビューを拝聴した。大本営広報部は報じない内容。自民党支持率が最低で、首相を変えても、コロナ対策は改まらない。厚生労働破壊省の医系技官、感染症ムラの総入れ換えなしには。お得意の「言うことを聞かないものには移動してもらう」で、戦犯全員排除すれば首相支持率は70%に跳ね上がるだろう。
<インタビュー報告>岩上安身による上昌広医師のインタビュー「デルタ株拡大、『第5波』のなかで迎える東京五輪の開催決行 懸念される日本の脆弱な検査体制とワクチン接種の遅れ」を中継しました
<本日のタイムリー映像公開>本日午後5時から、7月6日に収録した「米中戦争対立激化時代の東アジア安全保障・第1回『台湾有事』急浮上で各国の軍拡競争激化 日本列島はミサイル要塞化! 新INF条約を樹立することは可能か?~岩上安身によるインタビュー第1045回 東アジア共同体研究所・須川清司上級研究員」を公開します! 明日は午後3時から岩上安身による須川清司氏インタビューの続編を生配信!
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コメント
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Cunningham さんのキューバの記事を翻訳していただきありがとうございます。
やはりアメリカの干渉や挑発があって、あの一連の抗議行動があったのですね。私がキューバを旅行したときは、ネット環境がまだ整備されてなくて、海外からの旅行者を除いて、一般の人たちが海外とネットで繋がることはなかったと思いますが、その後一年も経たないうちに、日本のテレビのニュースが、キューバでも携帯電話でインターネットを使えるようになったと伝えたので、びっくりしたことを昨日のように思い出します。
アメリカは、まだキューバ政府を転覆したいという企みを捨てていないのですね。コロナ以前は、全世界から何百万人という旅行者がキューバに殺到していたであろうに、コロナのせいで訪れる外国人はほとんどいないという状況になっていると思います。外貨が稼げなくて国も苦しいし、外国人旅行者をあてにした民宿の経営者や音楽の演奏家やいろんな個人営業者などは、困っている状況でしょう。ただでさえ、アメリカによる経済封鎖に苦しめられているのに。
私は、モデルナやファイザーよりも、キューバのワクチンをうちたいと思うのです。どうすればいいのか、キューバ大使館に電話したいくらいです。
広瀬隆著の「ロマノフ家の黄金」(絶版)を読んで、ロシア革命が労働者と農民の権利を守るためだったなんて嘘っぱち、社会主義の理想なんていうのも嘘っぱち、ロマノフ貴族と国際資本と繋がるユダヤ人がつるんで国の利権を海外の資本家に売り渡す政府だった、ソビエトの階級闘争の相手は労働者と農民であり、彼らを2千万人から4千万人殺した・・・戦慄しながらも、私は読み終わって深く納得するものがありました。同じ作者が「カストロとゲバラ」を書いていますが、キューバこそ労働者と農民を守る国とあり、世界のどこにもない理想の国だと言っています。藤永茂先生と同じです。
キューバを注視していきます。アメリカの攻撃を許してはなりません。
下手くそな文章を長々と書きまして、お許しください。
投稿: nobara | 2021年7月21日 (水) 16時00分