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2021年7月27日 (火)

アフガニスタンよいずこへ? 撤退は侵攻より困難

フィリップ・ジラルディ
2021年7月22日
Strategic Culture Foundation

 ホワイトハウスで起きている深い考えの欠如という条件のもとでは、アメリカは容易に更にもう一つのアフガニスタンを引き起こしかねない。

 9/11事件後、世界対テロ戦争を宣言した際、一体何に関与しようとしているかを理解する能力がアメリカに欠如していたのは、これまで20年にわたる安全保障政策の稀に見る失敗の一つと見なさなければならない。アフガニスタンとイラクでの戦争は、良くない状態を悪化させただけでなく、ワシントンの誰も「勝利」を明確にして、出口戦略を考えられない事実は、依然、戦争と不安定が続いていることを意味する。結果として、何十万人もの死と、全く何も実現せずに何兆ドルも使われた。

 結果として、イラクは不安定で、ワシントンより、アメリカの敵イランの方向に傾いている。実際、イラク議会は、米軍にイラクからの撤退を要求したが、ドナルド・トランプとジョー・バイデン両者に無視されている。トランプは実際、継続的な米国占領を受け入れるようイラクに強いるため、イラクの銀行資産を凍結すると脅した。同時に、隣接するシリアでは、不法駐留するアメリカ部隊が、ダマスカス政府から、大いに必要な資源を奪うため、シリア油田を占領し続けている。イラク、シリアのいずれも、どんな面においても、アメリカ合州国を脅かしてはいない。

 歴史を考慮すれば、とっくに期限を過ぎた、20年にわたるアフガニスタン国造りプロジェクトからの撤退が国防総省とホワイトハウスが計画を立てた通り順調に行かないのは驚くべきことではない。米軍は引き継ぐアフガニスタン人基地司令官に知らせず、真夜中、主要基地バグラム空軍基地から撤退した。残された装置を巡る略奪の狂乱が続いた。

 アメリカとNATOが訓練し、あらゆる場所を守らなければならない不利を抱えたアフガニスタン政府軍は、好機を得ての攻撃に対し脆弱で、タリバンは次々と勝利を積み上げている。今タリバンは、パキスタンとの国境検問所や、いくつかの重要な町や州を含め、地方の85%を支配していると、まことしやかに主張している。最近、彼らは、弾薬を使い果たし、降伏した22人のアフガニスタン軍特殊部隊員を処刑して、観測筋に衝撃を与えた。ワシントンが据えつけた政権に協力した何千人ものアフガニスタン人の似たような運命をアメリカ政府は密かに予想しており、大急ぎで、最も危うい人々にビザを与え、最終的に、友好的な中東諸国やアメリカに再定住させる手はずを整えている。

 ある推計によれば、約18,000人のアフガニスタン人が米軍のために働き、彼らには一緒に出国しなければならない家族がいる。ワシントン意志決定の内情に通じていたはずの通訳は最も標的にされる格別の懸念がある。バイデン・ホワイトハウスは、最終的に、命が危機にある、この問題の緊急性に対応した。彼らがアメリカの住宅や他のどこかに住むのを許されるかどうか決定する前に、最も危険な立場の人々を第三国へ移動させる特別便を認可したのだ。

 確かに、世界から、まずい種類のテロリストを排除する戦いは、2001年にそうだったより、アメリカを、より軟弱で焦点がぼけた状態にした。中国、ロシアとイランは、ジョー・バイデンの予想より早く実現しそうなタリバン権力掌握の可能性を受け入れ、既に中央アジアで差し迫る権力の空白を埋めようと立ち回っている。もし何らかのアフガニスタン連立政権が出現するとすれば、それはアメリカではなく、ロシアと中国の一員だろう。

 一方、米軍自身は、バイデン政権下、これまでのどの時期より弱く、一層分裂している。最近の23ページの報告が、2月のロイド・オースティン国防長官の「撤退」命令以来、米軍全体で、「過激主義」に対処する兵士の士気が低下し、多くの優秀な兵士が引退したり、嫌気が差して辞めたりしたことを示唆している。彼の指名承認公聴会で、オースティンは「わが国の軍人から人種差別主義者と過激論者を排除する」と述べたが、現実は全く異なっており、兵士間の魔女狩りと、果てしない多様性の推進おおかげで、通常の即応性訓練が損なわれている。

 来月までにアフガニスタンにおける米軍駐留は、カーブルの大使館とCIA支局警備のため配置する歩兵隊大隊に減らされるが、それは、何らかの機能するアフガニスタン連立政権が実現できなければ持続可能ではない。最近のタリバンの勝利という条件下で、そういう結果は益々ありそうもないように思われる。大使館を維持するためには都市の空港への維持可能な生命線が必要で、アンカラが空路を維持するため大隊を進んで残留させるかどうか決定するトルコとの協議は進行中だ。タリバンは既に空港でのトルコ駐留は不適切だと発表し、アメリカ撤退後、残るNATO部隊に対して報復攻撃があるとトルコに警告した。彼らの報道官は「トルコ占領の継続は我が国において、トルコ当局に対する憎悪と敵意感情を引き起こし、両国関係を傷つける」と宣言する声明を発表した

 アメリカは、軍がアフガニスタンを公式に去った際の、視界外攻撃能力を求めている。その狙いは、ありそうにないことだが、新政府がアメリカを脅かしかねないテロ集団と同盟した場合、アフガニスタン内の標的攻撃を可能にすることだろう。ペルシャ湾の軍艦からの長距離攻撃が技術的に可能だが、現在アメリカは巡航ミサイルを発射したり、南や東や西でアフガニスタンを囲む隣国からの空爆したりするのは可能ではないので、ほとんど選択肢がない。

 だが北には、アメリカの装置、航空機や、暫定部隊を受け入れるのに適切かもしれない旧ソ連邦の中央アジア諸国、いわゆる「スタン」がある。タジキスタン、カザフスタン、あるいはウズベキスタンは、このような進展に従順かもしれないが、タジキスタンとカザフスタンはロシアが率いる集団的安全保障条約組織(CSTO)のメンバーだ。月曜日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、CSTO加盟国における、どんなアメリカ軍駐留も同盟の承認が必要だが、クレムリンは拒否すると述べた。アフガニスタンがならず者国家になるかもしれないという広範囲な懸念があるが、戦略的パートナーとしてジョー・バイデンとその一味の信頼性には不信感があるというむきもある。ともあれ、イラクやシリアやイランに対するワシントンのいじめで、米国空軍が良い隣人になるとは誰も思えない。

 だから、アフガニスタンからの撤退には侵攻より遥かに慎重さが必要だ。アメリカは、もしタリバンが権力を掌握し、行儀悪い振る舞いをしたら、航空資源を使って介入する多少の能力を持ちたいと明らかに望んでいるが、選択肢の扉は閉じつつあり、中国がアフガニスタンに、彼らの新シルクロードへの扉を開けようとしているので、それは単なる空想かもしれない。アフガニスタンでの危険な冒険は、とてつもない命と資源の浪費だったという事実から逃れることはできない。次は、おそらくワシントンは、突進をためらうかも知れないが、ホワイトハウスで起きている深い考えの欠如という条件のもとでは、アメリカは容易に更にもう一つのアフガニスタンを引き起こしかねないと私は思う。

フィリップ・ジラルディは博士で、Council for the National Interest事務局長。

 個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/07/22/whither-afghanistan-getting-out-is-harder-than-getting-in/

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視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

 2019年9月に収録した、城北法律事務所主催の憲法企画を再配信します。これまでIWJが報じてきた憲法改正関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e6%86%b2%e6%b3%95%e6%94%b9%e6%ad%a3

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