「三海洋イニシアチブ」は中国の一帯一路に対する欧米の答えか?
2021年6月8日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
中国の一帯一路構想(BRI)のみならず、西ヨーロッパとロシアの増大するつながりにも対処するため、「代替」インフラの動きが提案されており、ワシントン、ロンドンとブリュッセルは、これが完成した場合に、ロシアを更に封じ込め、中国をヨーロッパ市場から切断することを望んでいる。
「三海洋イニシアチブ」と呼ばれるものは「これが、ヨーロッパが、中国とロシアを押し返す方法だ」という題のブルームバーグ論説で、こう説明している。
バルト海とアドリア海と黒海の、物理的、デジタル・リンクを更新するための欧州連合中の東欧12カ国による共同の取り組み。
この論説は、このイニシアティブは「ロシアのいじめと中国の干渉」を撃退する唯一の方法だと論じている。
だが綿密に精査すると、著者アンドレアス・クルスの言うセールスポイントさえ、貿易とロシアと中国とのつながりと貿易がもたらすだろう明白な機会を犠牲にして、ヨーロッパをいじめ、干渉する見え透いた試みのように読める。
クルスの議論には、ソ連が東ヨーロッパ諸国をないがしろにしたのが、彼らが今日、近代的インフラなに欠けている理由だと主張する非難もある。
経済的には活気に満ちてはいるが、この地域の大部分が、インフラの点で、ブロックの他の国々に後れをとっている。EUの他の国々と比較して、道路と鉄道での旅行は、平均して、二から四倍時間がかかる。
特に欠如しているのは、南北に走る良い道路、鉄道とガス・パイプラインだ。これは冷戦の遺産だ。覇者ソ連は、ロシアのガス、戦車と兵隊が容易に東西を動けるようにしていたが、彼らが占領していた国々の他の接続には、全く関心がなかった。
だが、ソ連は1991年に崩壊した。30年前だ。もし東ヨーロッパが、現在、まだ近代的インフラに欠けてるなら、改良を成し遂げることについて「関心がなかった」のはブリュッセルだと述べるほうが、より適切だろう。
提案されたインフラも不思議だ。論説は、こう主張する。
プロジェクトには、例えば、アメリカからの液化天然ガス輸送船を歓迎できるクロアチアの港や、このガスを北のパートナー諸国に送るパイプラインもある。ポーランドには既にLNGターミナルがある。
だが、これは必要なインフラではない。ヨーロッパは既存パイプラインを通して、ロシア・エネルギーのかたちで、炭化水素を入手可能で、それは、アメリカから大西洋を横切ってLNGを送るより、ずっと安い。
この「例」の包含は、クルスの意図と、この主張の本当の性質を明らかにしている。これは、想像上の「ロシアのいじめ」を止めるものではなく、これは堂々とした、まさに本物のアメリカのいじめだ。
言い換えれば、高価なインフラが、更に高価なエネルギー輸入のために整備され、それには、ロシア・エネルギーより遥かに多くの政治的ヒモがついているのだ。これらのヒモには、論説も特に言及しているが、モスクワと北京両国との関係断絶も含まれよう。
北京については、インフラ投資と建設計画のお返しに、政治的便宜を求めたと言って、クルスは中国を非難している。北京との関係によって「圧力に屈した」パートナー国の例として、ハンガリーを挙げている。クルスは、中国による「人権侵害」に対するEU非難をハンガリーが阻止したと主張する。そもそも、この非難自身が、北京の敵国によって、政治的動機で、鼓舞されている可能性を決して考慮していない。
クルスは、三海洋イニシアチブは「いじめて、干渉する」のを避ける手段だと記述した後、プロジェクトに対するアメリカとEU投資には、政治的なヒモつきであることを明らかにして、こう書いている。
EUは、その期待について明確にするべきだ。第一に、ハンガリーを含め、関係する全ての国は、地政学サブテキストを認め、北京との戯れをあきらめて、ブリュッセルに対する彼らの忠誠を明瞭に宣言しなくてはならない。第二に、このイニシアティブは、EUの他の国々に対し、自身を定義する東ブロックの胚芽になってはならない。
ロシアの「いじめ」と中国の「干渉」は、直接政治的動機に鼓舞された非難のままだが、クルスは公然と、無視されてきた東ヨーロッパに投資するワシントンとブリュッセルの意図が、断固とした服従と、国家主権の全面降伏を獲得することが狙いだと宣言している。何の意図的皮肉もなしでされた提言だ。
三海洋イニシアチブ:進歩ではなく、優位が狙い
アメリカ外交政策は、世界的優位の維持に基づいてる。何のお咎めもなしで、世界舞台で行動を起こすワシントンの能力に挑戦するどんな国であれ、地球の上のどこであれ、敵に指名され、政治的、経済的、軍事的強要の組み合わせを通して、標的に定められる。
何十年間も、この標的リストにあった二つの国が、ロシアと中国だ。
ソ連崩壊後の巨大グローバルパワーとしてのロシアの再出現と、地域的にアジア、そして世界的規模での中国勃興は、明らかに、ワシントン最悪の衝動を阻止している。
ワシントンはロシアと中国両国を世界平和と安定に対する脅威と描写するが、アメリカの手でシリアがリビアやイラクと類似の運命を経験するのを阻止したのはロシア介入だった。
最近トランプ政権が出版した「枠組み」ペーパーにも示され、いまだ公然とアメリカ外交政策の一部と見なされている観念であるアメリカのインド・太平洋「優位」の影の下から、今抜け出そうとしているアジアじゅうの国々にとって実行可能な代替案を生み出したのは、次第に増加する中国の勃興だった。
「ロシアのいじめ」と「中国の干渉」という考え方は、ロシアや中国や、その周辺諸国に対するだけでなく、東西間の絆を多様化しようと努めるドイツのような同盟国に対する、強要作戦の継続を正当化するため、欧米政策当局が作り出した地政学的投影で、ロシアとのノルドストリーム2パイプライン・プロジェクトに関与しているドイツ企業に標的を定めたアメリカ制裁は、最近の例に過ぎない。
多分、すべての中で究極の皮肉は、ワシントンとブリュッセルが、東ヨーロッパの指導者たちに、近代的インフラの約束をちらつかせる中、ブルームバーグのクルス自身が、ハンガリーには、中国が既に入り込んでおり、ロシアはソ連崩壊以前から東・西ヨーロッパに安いエネルギーを注ぎ込み、もちろん以来ずっと、そうしているのを認めていることだ。
他の国々に非難の矛先を向けながら、またしても、アメリカ合とEUパートナーは、彼ら自身が平和と繁栄に対する中心的脅威であることを明らかにしている。実際、アメリカ-EU投資とロシアからの安いエネルギーと相まって、中国のインフラ計画は、東・西両ヨーロッパの国々にとって、最も有益だが、明らかに、大陸にとっての最大利益は、ワシントンのものとは食い違い、ロシアと中国は、一度もヨーロッパとの排他的経済的な結びつきを要求したことはないが、ワシントンはそうしている。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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