中国との対決のため再構築されるアメリカ海兵隊
2021年6月16日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
アメリカ海兵隊は、ほぼ一世紀、戦闘部隊に戦車を組み込んできたが、インド・太平洋地域で「中国と対決する」ためミサイルと無人機を優先し、装甲部隊による戦争を断念した。
「海兵隊は全ての戦車大隊を無くし、歩兵部隊を削減」という題の2020年の記事で、 Marine Timesは、こう説明している。
海兵隊は、勃興する中国と対決して、太平洋対岸で戦うため、より軽量で、より迅速な部隊を作ることを計画して、部隊を大幅に削減している。
海兵隊司令官デイビッド・バーガー大将の計画の一部として、2030年までに、中国やその他の敵対勢力と対決するため構造を変更し、海兵隊は三つの戦車大隊を全て無くし、全ての法の執行大隊と、架橋中隊を廃止する」
この発表以来、海兵隊の戦車大隊は完全に活動を停止している。
Defense Newsは、別の2020年の「無人ミサイル発射装置で、中国船舶を沈めるアメリカ海兵隊計画はこれだ」という題の記事でこう報じている。
アメリカ海兵隊は船を沈没させる仕事に移りつつあり、現在進展中の新プロジェクトは、人民解放軍海軍を悩ます彼らの夢を現実にすることを目指している。
この記事は海兵隊の必要条件と説明する開発担当のエリック・スミス中将の言葉を引用している。
「彼らは機動性があり、小さく、彼らは一片の土地を取って、そこに居すわるつもりはない」とスミスは、彼の海兵隊について述べた。「私は海峡を永久に閉鎖するつもりはない。私は操りたいと思っている。ドイツ語では「Schwerpunkt(焦点)」で、最大効果を得るため、選んだ時間と場所で、適切な量の圧力と武力を使用するものだ。」
スミスは、アメリカ艦隊が中国艦船を係争地域に追い込み、そこで海兵隊が岸から攻撃する概念を語っている。
第二次世界大戦中、西ヨーロッパとソ連邦の両方に対するナチスドイツの侵略戦争の一環として利用された観念「Schwerpunkt(焦点)」を援用するのは、アメリカ対外政策と防衛戦略で機能している病状を理解する上で、信じられないほど有益だ。
優位性へのワシントンの執着
中国に対するワシントンの全体戦略は、アメリカ自身がそこにいない地域であるインド・太平洋地域における、アメリカ当局がアメリカの「優位」と呼ぶものの維持と、包囲と封じ込めだ。
アメリカの戦略家は、ナチスドイツの伝説的な優れた軍事能力に対して、長年、情熱的ながら、他に説明しようのない、気がかりなほど称賛している。究極的には、ナチスドイツは第二次世界大戦で敗北したのみならず、敗戦後、完全に存在を終えたのだから、それは説明がつかない。ナチスドイツが達成するの成功したのは、全て死と破壊に限定されていることを考えると、それは気掛かりだ。
「Schwerpunkt焦点」や「Blitzkrieg電撃戦」などの概念は、侵略国が究極的には負ける戦争で(少なくとも当初)戦って、勝利するために役立った。
これらの概念は、ベルリンが一シーズンで、ソ連軍を圧倒したいと望む中、十分に速く実行すれば、数値的、経済的、軍事的に優位な敵を圧倒することが可能だと、ナチ戦略家に想像されたものだ。
実際は、継続する侵略戦争の兵站は、敵国の領土内、深く、広大な距離を超えて、優位な相手方を「圧倒する」のを不可能にした。ソ連の戦力は、ドイツ侵略者に順応し、打ち勝つことができたが、同時に人的資源、工業生産能力、遥かに短い兵站線の利点を享受した。ソ連軍は、自身の領土を守る人間としての道徳的責務があったのに対し、ドイツ兵は、自国境から何百マイルも離れた場所で、なぜ戦っているのかと思いながら、死に瀕していた。
今アメリカは、ナチスドイツの失敗した戦略を自身模倣している。いずれも国際的に侵略国として、自身の国境から何千マイル離れた仮説の戦場で。
アメリカ戦略家は、この同じ概念が、1990年代のペルシャ湾戦争の際、彼らに役立ったと想像している。アメリカがイラク軍に対して持っていた、遥かに重要な役を演じた、数的、経済的、(そして技術的)利点を指摘し損ねて。
少なくとも対等な軍事技術の、数値的、経済的に上位の相手方に、この同じ戦術が機能すると想像するのは、大きな欠陥がある。
だが現在、アメリカ対外政策の多くが、多くの誤った仮定に基づいており、基本的に欠陥がある。最も中心的な誤った仮定は、アメリカがインド・太平洋地域で優位を維持することが可能、あるいはそうすべきであり、中国は、アメリカに支配された「国際秩序」の中で従属すべきだということだ。
今日中国には、アメリカより何倍も多い人口がいる。毎年、中国は技術的、産業能力を強める分野で、アメリカが輩出するより何百万人も多くの卒業生を生み出す。中国の経済は間違いなく、アメリカを上回るだろうし、インド・太平洋地域全体でのその影響力と関係は、この地域に暮らす人々にとって、アメリカの「我々側か敵側か」政策より、ずっと持続可能で、一層望ましい。
中国が、なぜ経済的にも、軍事的にも地球上最強力な国としてアメリカを上回ってはならないかについて論理的理由はない。中国はそうすべきではないと示唆することは、アメリカに対して、あらゆる可能な優位を保有しているにもかかわらず、中国の人々は、まだ何らかの形で「劣っていて」、アジアでのアメリカの継続的優位が可能だということを意味する。それは多くの他のものとともに、常に増加して、持続不可能な極端に向かってアメリカの対外政策と防衛戦略を推進する、基本的に欠陥がある仮定だ。
中国の軍事的優位
軍事的に、既に中国は、アメリカが保有しているより大きな海軍を保有している。この差は、今後数年間で広がるだけだ。アメリカの方が、より能力がある艦船を保有しており、同盟諸国の艦船でその艦隊を強化できると主張するむきもあるが、これはアメリカが、海軍を、中国周囲の海だけでなく、地球全体で、他の国々を支配するために使っている事実を無視している。
現在中国は、おそらく将来もかなりの間、その海軍を実際の自国領と「近隣」を防衛することに集中させ続けるだろう。
中国戦艦を、アメリカ自身が支配していると想像する海峡で構成される入念に準備したキル・ゾーンに「追い込む」というアメリカ海軍と海兵隊の夢は、中国は、実際に入らずに、どの海峡であれ、両側に大規模海軍を維持・管理できる事実を説明し損ねている。
ミサイルや無人機技術の進歩は、双方向的関係にあり、中国が座視することはあるまい。インド・太平洋地域のどこであれ、仮定の戦場で活動する、中国とアメリカのミサイルや無人機の数は、少なくとも数値的に同等だろうが、中国は究極的に、ずっと短い兵站線とその場にある、ずっと近い距離に動員可能な遥かに大きな予備部隊を享受している。
これがアメリカ海兵隊と、アメリカの実際の防衛に対して本当に意味すること
戦車なしの海兵隊が本当に意味するのものは、益々非合理的な対外政策によって去勢された、非合理的な国家防衛戦略を推進している、よく知られたアメリカ軍の支部だ。
海兵隊は今まで、航空、装甲部隊と歩兵隊を備えた極めて融通が利く、機動部隊で、あらゆる種類の武器オプションで、市街接近戦から、遠距離の開けた戦場の戦争まで考えられるどんな戦場の課題にも対応できるものとして存在してきた。これらは他のどのようなアメリカ軍も提供できなかったアメリカ海兵隊特有の能力だった。
今アメリカ海兵隊は、アメリカ海岸から何千マイルも先での侵略戦争で、非常に具体的な敵に対し、特定の場所で戦うように適応させられていた。それはアメリカが戦う前に、既に負けている戦争であり、その過程で、海兵隊に、アメリカ国内で、実際の防衛で、他の潜在的脅威に対処する能力を犠牲にさせた。
アメリカ海兵隊の変形による唯一の受益者は、海兵隊が、中国に対して使用すると想像しているミサイルシステムを製造するレイセオンやロッキード・マーティンなどの兵器製造企業と、これら仮説的な、遠く離れた戦闘に彼らを運ぶ車両を製造するオシュコシュのような軍需業者だ。同様に恩恵を受けるのは、もちろん、アメリカ国民につけを払わせながら、アメリカの大きすぎて制御できない軍需産業から賄賂を得る将官と政治家連中だ。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/06/16/us-marine-corps-rebuilt-to-confront-china/
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