よくもまあ我々を真似したな!ベラルーシの強制着陸を巡る欧米の激怒
Finian Cunningham
2021年5月24日
Strategic Culture Foundation
ヨーロッパ諸国政府の全面的な沈黙の共謀を得て、ワシントンは世界中でハイジャックをしている。もしヨーロッパが、世界中でのアメリカによるハイジャック反対を表明すれば、彼らにもベラルーシ事件に関して発言する多少の道義的権威があるかもしれない。
ベラルーシが指名手配中の反政府活動家を逮捕するため商用航空機の強制着陸を強いた後、アメリカとヨーロッパ諸国では憤激と非難が爆発した。
欧米メディアの見出しは「ハイジャック」や「air piracy 飛行機乗っ取り」や「国家テロ行為」とレッテルを貼られたことに関する「衝撃」と激怒の表現が圧倒多数だ。
月曜日にサミットで会っていたヨーロッパ指導者たちは、ベラルーシに対する新たな制裁を要求した。アメリカのジョー・バイデン大統領は、旧ソビエト共和国のベラルーシとモスクワとの友好的な関係ゆえに、ロシアのウラジーミル・プーチンに、この飛行機問題を持ち出すよう求められている。
欧米の反応はヒステリーで偽善だ。明らかに、ベラルーシ領空で行われたことは異様で、非合法の可能性がある。だが、アメリカ合州国と、ヨーロッパ同盟諸国は「ハイジャック」や「国家テロ」について説教する立場にはないのだ。
日曜日のアテネ発ライアン便はリトアニアの首都ビリニュスに向けて飛行していた。ベラルーシ領空を横断する際、パイロットは航空管制からミンスクに迂回するよう命じられた。機内にしかけられた爆弾の可能性が口実だった。だが、それは策略だったように思われる。何の装置も見つからず、飛行機はミンスクを発ち、6時間後ビリニュスに到着した。
ベラルーシ当局が狙っていたのは、野党活動家ロマン・プロタセビッチだった。彼はミンスクで、仲間の女性とともに飛行機から降ろされ、拘留された。プロタセビッチ(26歳)は、疑惑選挙からベラルーシで2020年8月、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が再選され論争の的となった選挙以来、反政府抗議を組織する上での中心的存在だった。ベラルーシ当局は、彼らの国が、アメリカ合州国とヨーロッパ同盟国が画策する「カラー革命」にさらされていると主張している。
路上抗議が始まる前、プロタセビッチはリトアニアとポーランドで亡命生活をしていた。彼はデモを煽動した反政府メディアを立ち上げ、ベラルーシ当局に損害を与える誤った情報を広めたとして告訴されている。アメリカ政府に資金供給されたプロパガンダ機関、ラジオ・フリー・ヨーロッパは、ベラルーシ抗議に関与しており、内政に対する外国干渉の罪でミンスクが告発している人物の一部はバルト諸国とポーランドに本拠を置いている。
ベラルーシは、それらヨーロッパ諸国に、国際逮捕状を基に、亡命中の反政府派を引き渡すよう要請していた。プロタセビッチなどの亡命者は暴力行為扇動のかどで告発されており、長い実刑判決に直面しかねないのだ。
ベラルーシの逮捕状に対応するのを、ヨーロッパ諸国が拒絶したことが、ミンスクに定期航空便に着陸を強いる論争の的の処置をとるようにさせたのは疑いようがない。
だが、本当に衝撃的なのは、欧米諸国が適用している、露骨なダブルスタンダードだ。ベラルーシは「ヨーロッパ最後の独裁」だと悪しざまに非難され、この航空機事件は国際航空上「未曾有の」違反だと表現されている。
アメリカ人とヨーロッパ人の記憶力は何と短いのだろう。2013年7月、ボリビアのエボ・モラレス大統領の個人ジェット機は、ワシントンの命令で、ヨーロッパ諸国にハイジャックされた。フランス、イタリア、スペインとポルトガルが突然彼らの領空を封鎖した際、モラレスはロシアでのエネルギー会議からの帰路飛行中だった。アメリカは、NSA/CIAの内部告発者エドワード・スノーデンがモラレスの飛行機に乗っていると思ったのだ。パイロットはオーストリア警備員がジェット機を捜索するウィーンに着陸するよう強いられた。もちろん、スノーデンは乗っておらず、モラレスは最終的に数時間の遅れの後、彼の旅を続けることを許された。
南米諸国は「国家テロ」行為とボリビア主権の侵害を非難した。それはアメリカ合州国と、ヨーロッパの子分連中によって行われた目に余る山賊行為だった。当時、フランスのフランソワ・オランド大統領は、その後情けない謝罪をした。
ワシントンとヨーロッパの沈黙に出くわした、もう一つの航空規制違反は、2016年10月、ウクライナによるベラルーシ定期便の強制着陸だった。この飛行機はキエフから離陸したが、緊急発進した戦闘機の恫喝で戻るよう命じられたのだ。キエフ政権に批判的なロシア・メディアで働くアルメニア人ジャーナリストのアルメン・マルチロシャンが乗っていたのだ。ミンスクへの飛行を許可されるまで、このジャーナリストはキエフで短時間拘留された。どういうわけか、ウクライナ政権の後援者であるアメリカとヨーロッパは、この事件は「激怒」と、非難を叫ぶ見出しに値するとは思わなかったのだ。
もし本気でハイジャックを非難する気があるのなら、ヨーロッパ諸国の政府は、アメリカCIAと、法的手続きをとらない容疑者の他国移送で、彼らの領空の組織的侵害を遥かに懸念すべきなのだ。世界中で違法に活動するアメリカ軍に違法に拉致された無数の「テロ容疑者」が、拷問のため、グアンタナモ湾や、いくつかの秘密軍事施設に向かう途中、ヨーロッパ空港を経由して秘密裏に移送されているのだ。
ヨーロッパ諸国政府の全面的な沈黙の共謀を得て、ワシントンは世界中でハイジャックをしている。今もしヨーロッパが、世界中でのアメリカによる海賊行為への反対を表明したなら、彼らも、ベラルーシ事件について発言する多少の道義的権威があるかもしれない。だがヨーロッパは、アメリカの航空ハイジャックや違反を臆病に支持している。だから連中の恣意的な抗議など無効だ。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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テレビで、デンマークのコロナ対策を報じていた。三日?に一度無料PCR検査を受けるよう推奨しているという。ネットで検索すると、たとえばコペンハーゲンでは、仕事や学校に行く人々は週に一度検査をうけるよう勧めている。ガラパゴス列島以外ではワクチン一本槍ではなく、PCR検査を徹底的に行うのが標準。この列島にはPCR排斥を得々と語る井の中の蛙氏が多々おられる不思議。その中で児童を授業の一環として五輪強制観戦させても感染をまねくだけ。狂気の政府・御用分科会、文部科学省、スポンサー・マスコミ。
植草一秀の『知られざる真実』 今回の記事も、大賛成。
ロシアや中国や北朝鮮の行動を批判する大本営広報部、自分の行動には沈黙の共謀。立派なダブルスタンダード。
日刊IWJガイドに、クアッドについての外務大臣への質問と回答(怪答)が載っている。
■<IWJ取材報告 1>日米豪印のクアッドに英独仏蘭が加わるクアッド+アルファは中国に石油が入らないようにマラッカ海峡封鎖が狙いか!? との質問を茂木大臣はなぜかはぐらかし、自己PRの回答! はぐらかしたのは図星からか!? ~5.25茂木敏充外務大臣 定例記者会見
5月25日、外務省で茂木敏充外務大臣定例記者会見が行われ、IWJ記者は中国包囲網「クアッド」に、英仏独蘭のEU諸国が参加していることについて、質問しました。
IWJ記者「日本政府は、安倍晋三前総理が提唱した『自由で開かれたインド太平洋戦略』を踏襲し、米、豪、印と組んで、中国包囲クアッドを形成しています。ここに英独仏蘭の欧州4カ国も加わるとのことですが、クアッド+アルファによる中国包囲網とは、具体的に何をされるのでしょうか?
海上自衛隊幹部学校の戦略研究論文を見ると、マラッカ海峡を封鎖し中国への中東からの石油の輸入ルートを遮断する戦略がしばしば出てきます。米海軍大学のトーマスハメス博士の提唱するオフショアコントロール戦略にもとづくものです。クアッドの戦略は、このオフショアコントロール戦略をベースに、マラッカ海峡封鎖し、中国に石油が入らないようにして、兵糧攻めにするのが、狙いと考えてよろしいでしょうか?
一方で、中国と日本は、他の東アジア諸国とともに、RCEPという包括的経済連携協定を結んでいます。中国は日本にとって最大の貿易相手国でもあります。RCEPという経済の枠組みと中国包囲網であるクアッドとは、相反し矛盾すると思われますが、今後、クアッドが深まれば、RCEPは放棄し、中国という巨大マーケットも捨てる決断をするのでしょうか? その時の日本経済のダメージはどうお考えですか?
大臣のお考えをお聞かせください」
茂木外務大臣「『自由で開かれたインド・太平洋』、これは今から5年前、2016年のですね、TICAD VI(アフリカ開発会議)の際、まあ、当時は安倍総理でありましたが、日本として提唱したビジョン、考え方でありまして、基本的にはこの『自由で開かれたインド太平洋』、これはインド太平洋、まさに世界の成長センターという地域でありますが、一方でパワーバランスの変化も激しい。この地域においてですね、法の支配をはじめとする共通の価値や原則、これにもとづく自由で開かれた秩序を実現することによって、地域全体、ひいては世界全体の平和と安定を確保していくと、こう言った考え方にもとづく構想であります。
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