モスクワが即座に彼を打倒しない理由
パトリック・アームストロング
2021年5月8日
Strategic Culture Foundation
モスクワは、ワシントンが依然何を学んでいないかを知っている。一人の権力者だけではなく、国全体が問題で、甘い物を食べた時の多幸感は長続きしないのだ。
毎回、実際、我々には十分な実例があるのだが、キエフの誰かがロシアに厄介を起こすと、インターネットには、即侵攻し、彼らを打倒するようプーチンに要求する人々で溢れる。この変種の一つは、モスクワは、マイダン・クーデター後に侵略し、全てのナチを逮捕し、EUが打ち出したが、今や忘れられた合意の下で、残りの任期を勤めるようヤヌコーヴィチを復帰させるべきだったというものだ。
だが、実際はモスクワが、ウクライナや、かつて、ジョージアに侵略し、ゼレンスキーやサーカシビリを打倒せず、モスクワが、他のいらだつ出来事に、武力で対処しないのには、それなり理由があるのだ。理由は、非常に単純だ。モスクワが、そうできなかったょけではない。2008年、ロシア武力とトビリシの間に、あるいは2021年、ロシアとキエフの間には、経験以外何もなかった。モスクワの経験と、他国の経験観察の両方だ。
他国の経験から始めよう。第一次世界大戦直前、イギリス海軍は石油燃料に切り替え始め、石油資源の確保が非常に重要になり、その延長で、イギリスや他の海軍大国にとっても重要になった。イラン(ペルシャ)は主要源で、戦争後、イギリスはイギリス企業にイラン石油資源に過剰な権利を与る、一方的な協定を締結した。それ以降、イランは、イギリスからの強い影響を受け、イラン人の憤慨は増大し、ほとんど協定無視するほどにまでなった。1951年、モハンマド・モサッデクが首相になり、石油会社を国有化した。ここで小休止しなければならない。後の経験が、このような国有化が壊滅的から、全くほど遠いことを示している。石油は誰かに売られなければならないが、価格は、販売国に設定されるわけではなく、結局、実際、商売の手法で解決される商売の問題なのだ。現地による支配にもかかわら、スエズ運河も、パナマ運河も機能している。国有企業は彼らの石油を売って、世の中は続くのだ。だが、そうしたものは許容できるとは考えられなかった。共産主義や、ソ連が支配権を得たり、武器を与えたりという恐れだ。結局、彼を追放することで、問題を解決すると決定された。モサッデクは、ロンドンとワシントンが組織し、主にCIAが実行したクーデターで打倒された。それで問題は解決された。公式に何年もの間ロンドンとワシントンに否定されたが、2000年にCIAの関与が確認され、2017年に更に多くの文書が発表された。だが、イラン人は常に誰がそれをしたか知っており、クーデターはアメリカ合衆国に対する彼らの嫌悪に大いに貢献し、1979年シャー追放の強い動機だった。今日イランは、ワシントンから「日々の脅威」で、その広範なミサイル兵器は「重大な脅威」と見なされている。ネオコン/PNAC/例外主義者による「イランの脅威」に対する何十年ものばかな企みが、イランを以前より一層強力にし、一層影響力を増し、一層強く決意させた。イランは今、中近東や北アフリカを支配するアメリカの野心に対する非常に重大な障害なのだから、今にしてみれば、モサッデク打倒は、結局さほど成功ではなく、60年後、問題は「解決」からは全くほど遠い。長い目で見れば、モサッデクと取り引きする方が、より良い対応だったろうし、現在イランは、アメリカや同盟諸国に好意的か、少なくとも、ささいな存在でさえあったかもしれない。モサッデク打倒は、最初は機能したが、効果は続かなかったのだ。
おそらく最初は、1893年、ハワイのリリウオカラニ女王を打倒したクーデターで、他にも遥かに多くあったはずの、この行為に、ワシントンは十分精通していたが、イランの件は、当時新設CIA最初の「権力者打倒」事業だった。ベトナムのゴ・ディン・ジエム。しかし、それも機能せず、アメリカが敗北して撤退するまで、ベトナム戦争は益々悪化した。長年、ワシントンは、邪魔をしているのは一人の権力者に過ぎず、彼さえ排除すれば、後は簡単になるという妄想で進んできた。決してそうではないのだが、ワシントンは決して、そうするのをやめようとしない。ワシントンは、中南米でも、多くの政府を打倒したが、現在の受益者に依存を引き継ぐ以外、本当の安定性や友情をもたらしたようには見えない。ニューズウィークさえ、こう結論する記事を載せた。「だが現状では、いかなるど選挙や支配に干渉する国について持っている唯一の証拠は、ロシアではなく、アメリカだ。だが事実で、美しい物語の邪魔をさせてはならない。」ワシントン・ポストは、冷戦中、72の企みがあったと計算している。権力者打倒は、大いにアメリカ外交スタイルだ。
部外者による干渉に対する怒りは決して消えない。そしてシャーの例が実証する通り、操り人形が犯すどんな行き過ぎ行為も、人形使いのせいになる。アメリカ人は「大魔王」スローガンや国旗焼却で非常に気分を害しているが、典型的に、それがなぜか理解できない。イラン人は、モサッデク打倒や、シャー亡命や、その後の絶え間ない敵対行為の全てを、ワシントンのせいにしている。そしてサダム・フセインへの兵器提供や、海戦や、1988年の民間航空機撃墜や、去年のソレイマニ暗殺まで、彼らは列挙できる。ワシントンの見地からすれば、モサッデクが権力の座に残った方が遥かに良かったのだ。
もう一つの悲惨なCIA事業は、特にアフガニスタンで、ソ連が支援したソ連後のナジーブッラー政府に対する破壊活動だった。それをする上で、ワシントンは、ソ連の駐留や同盟者を敗北で撤退させるまで、連中を倍増させて強化した。ワシントンがそれから一年後の事態より、カーブルにジーブッラーがいた方が幸せだったのは疑いようがない。
アフガニスタンの話で、我々はモスクワの直接の失敗体験に話を変えよう。1978年、現地の共産党は、確実に、モスクワの多少の関与で、カーブルでのクーデターに成功した。だがアフガニスタン共産党は深く分裂しており、共産主義化を余りに急いた。不満が増大し、共産主義政府は動揺した。これは、いわゆるブレジネフ・ドクトリンの下で許容することはできず、モスクワは彼を打倒して問題を終わらせることに決めた。ソ連は侵入し、現役指導者は殺害され、ライバル党派のバブラク・カルマルに置き換えられた。カルマルは共産化を緩めたが、遅すぎた。反乱は広がり、ソ連は動きが取れなくなり、1989年、最終的に、ゴルバチョフの言葉で「出血する傷」から去った。.
1956年、ハンガリーで、長年の共産主義者イムレ・ナジは、フルシチョフのスターリンの「個人崇拝」非難後の「新路線」改革に賛成する演説をした。これは反乱とソ連侵略を招き、ナジ裁判と処刑もたらした。1968年「人間の顔をした社会主義」というアレクサンドル・ドブチェクによるチェコスロバキアでの同様な試みも、侵略とドブチェク排除で押しつぶされた。彼は少なくともソ連終焉終を見るまで、生きながらえることができた。
だからモスクワは、前体制下での「権力者打倒」の三つの例を想起できるのだ。ナジとドブチェクとハフィーズッラー・アミーン。目先のもの以外、全く利益はなかった。ハンガリーとチェコスロバキアは、早々にワルシャワ条約とソビエト社会主義共和国連邦と共産主義から離脱し、ソ連に対する恨みからNATOに加入した。アフガニスタン戦争は、モスクワが敗北を認めるまで、ずるずる続き、読者は言われるかもしれないが、次の番として敗北できるよう、ワシントンに引き継いだ。(策士に対して悲惨な結果を持った狡猾な案と言えば、それは全てブレジンスキーから始まったと主張することが可能だ。)
ワシントンとロンドンが、モサッデクをほうっておけば、今彼らは、ずっと幸せで、おそらく石油価格は変わらず、供給も保証されていたはずだ。明らかに後知恵だが、後知恵は、先見の明をもたらすはずなのだ。中南米でのワシントンの果てしない介入は、短期的利益だけをもたらし、いつの日か沸騰する憎悪の遺産を残した。モスクワが、そうしたのと同様に、ワシントンはアフガニスタンを去った方が賢明だったろう。ナジやドブチェク打倒は短期的利益をもたらし長期的問題の基盤を作り出した。プラハが、ジャングル・ブックのタバキとなり、恐ろしい虎のシェア・カーンの前足間で安全だと考えたように。
要するに、歴史の教訓は、ほとんど全ての場合「権力者の打倒」は、地政学的に、瞬間的に甘い物を食べた時のようながら、後に支払う必要がある多幸感をもたらすのだ。自身の失敗とワシントンの失敗から学ぶのに十分賢いモスクワは、これを知っている。かつて、モスクワも例外主義勢力だったのを、いくら強調しても、強調しすぎることはないと私は思う。ソ連は70年間「世界最初の社会主義国家」、世界を率いる手本となる首都、歴史の旗手、「人類の明るい未来」の主唱者、新しい形の人間や例外主義のプロデューサーとして、友人も繁栄も、いずれも、もたらさなかった。プーチン自身、それを「袋小路への道」と呼んだ。だがワシントンは、依然例外主義段階にあり、今回再び同じことをして成功すると考えているのだ。
しかも時には、甘い物を食べた時の多幸感さえない。アフガニスタンでは、二日酔いは数週間内に始まった。もしモスクワがトビリシに突入し、サーカシビリを打倒すれば、虎のシェア・カーンは、ウクライナに、タバキ防衛に来なかっただろう。モスクワは、自分の好みに従って、グルジアを作るべく、何かしなければならない。モスクワにとって、ロシア介入は、ヤヌコーヴィチを、EUに仲介された合意の下で生き残らせることができたかも知れないしれないが、次の選挙は、マイダンの人々に権力をもたらした可能性がきわめて高い。先月のキエフに対する素早い動きは、モスクワがそうする軍事力を持っていたのは疑いようがないが、それが何だろう?ビスマルクが言ったように、人は銃剣で何でもできるが、その上に座ることはできないのだ。
モスクワは、ソビエト社会主義共和国連邦時代に、銃剣のむしろの上に座ろうとした日々の十分な経験があり、ワシントンの失敗を見守ることができるのだ。
要するに、モスクワはワシントンが依然何を学んでいないかを知っている。一人の権力者だけではなく、国全体が問題で、甘い物を食べた時の多幸感は長続きしないのだ。
パトリック・アームストロングは、1984年以来、カナダ国防省で、ソビエト社会主義共和国連邦/ロシアを専門に扱う分析官で、1993年-1996年、モスクワのカナダ大使館で参事官。彼は2008年に引退し、以来ネット上でロシアに関連する話題について書いている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/05/08/why-moscow-doesnt-just-knock-him-over/
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前川氏のお話、伺うと官僚にも、まっとうな方もおられるとわかる。残念ながら、権力者の側ではない。多数派ではない。
西谷文和 路上のラジオ
政府=感染症ムラ、厚生破壊省医系技官のデタラメ政策を見ていると、前にも書いたが陸軍軍医森鴎外のデタラメによる悲劇を思い出す。一方、海軍軍医高木兼寛は正確にはビタミンC欠乏が原因とは当時理解していなかったが、白米主体の食事で航海した軍艦「龍驤」と、ギリス海軍を参考に洋食を取り入れた食事を導入した軍艦「筑波」で比較実験を行い、「筑波」における脚気患者が激減していることがわかり、予防策を発見できた。
厚生破壊省も政府も、脚気に対する森鴎外の過ちを一年以上押し通している。世界のガラパゴス。ジャバン・イズ・ワースト・ワン。彼の間違った「言うことを聞かない官僚はやめてもらう。」が「彼と違う正しいことをいう民間人の話はきかない」。まともな医学者、医師は皆PCR検査強化を主張しておられる。
ワクチン先進国イスラエルの様子をテレビで見た。今は舞踊団も練習を再開しているが、皆練習場で、スマホのワクチン・パスポートをかざし入場する。身体的や別の理由でワクチンを拒否する人もいるが、二日か三日ごとにPCR検査をし、陰性結果証明を見せて練習に参加していた。イスラエルとて、ワクチン一本やりで戦っているわけではない。PCR検査強化必要性を言わない大本営広報部は共犯。宝島広告もその一環。今なら、全症例のゲノム解析だろう。
ワクチン実施状態が、クーデター後のミヤンマーより低いのは、日本が既にファシスト・クーデター下にあって久しいためだろう。
夏目房之介の「で?」
2020年5月29日 森鴎外の脚気細菌説による罪森鴎外が陸軍軍医として「脚気細菌説」をとり、麦飯を取り入れて脚気をゼロにした海軍に対し、台湾、日露戦争において白米主義を押し通し、結果3万人の脚気による兵士の死者を出した。
BBCでも、IOC問題
昨日の5/15といえば、パレスチナではナクバの日。日本では五・一五事件事件。青年将校軍部の凶弾に倒れた犬飼首相は「話せばわかる」といっていた。現首相、話をしようとしない。国民との会話を断って、オリンピック、対中国戦争準備推進まっしぐら。
今日の孫崎享氏のメルマガ題名
内閣支持率の低下。五月、高めの支持率を出すNHKですら、支持35%、支持しないは43%。菅首相の政治姿勢には一つの特徴。支持率高い時には極めて高圧。低下になると一気に低姿勢。今後者の段階。コロナ対応で専門家の発言力向上。緊急事態解除は今月内実施は困難か。
そして、日刊ゲンダイDIGITAL
コロナを利用して緊急事態条項をいいつのる悪辣さ。
■菅義偉総理が5月7日の記者会見で「ワクチン国内治験を進めるために緊急事態条項が必要」と回答した件がツイッターで炎上! 著名人が続々、緊急事態条項を含む自民党改憲案に反対表明! 感情的反応を脱し正しい知識で反対を!
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