ノマドランド:(ほとんど)経済的理由から路上に追いやられた人々
デイビッド・ウォルシュ
2021年2月19日
wsws
クロエ・ジャオ監督;ジャオ脚本、原作 ジェシカ・ブルーダー
ノマドランドのフランシス・マクドーマンド
中国系アメリカ人クロエ・ジャオ監督(ザ・ライダー、2017年)、フランシス・マクドーマンド主役の「ノマドランド」は、同題名のジェシカ・ブルーダーによるノンフィクション作品の半フィクション化された再構成だ。(より正確には、ブルーダーの書名は『Nomadland: Surviving America in the Twenty-First Century』邦訳署名「ノマド: 漂流する高齢労働者たち」)
この作品はベニス映画祭で初上映され、更にトロント映画祭で上映された。12月に一週間ストリーミングリ上映され、既に多くの賞を勝ち取り、更に多くを獲得すると期待される。マクドーマンドの典型的な渾身の演技で感動的な映画だが、我々の考えでは、全般的な称賛評は、やりすぎだ。もう少し慎重で綿密な検討がを必要な要素があるのだ。
ジェシカ・ブルーダーはHarper誌や、ワシントン・ポストや他でも書いており、コロンビア大学ジャーナリズムジャーナリズム大学院で教えるジャーナリストだ。2013年、彼女は図らずもエドワード・スノーデンのNSAの宝の山の受取人の一人だった。
ノマドランドで、ブルーダーは特に、2008年不況によって、生活が劇的に変わった高齢アメリカ人と、彼らの様々な対処法の状態を調べ始めた。
「多くの人々は街頭に出た」と彼女は書いている。「彼らの貯金が世界同時不況で壊滅した後。ガソリン・タンクとお腹を満タンにしておくため、彼らは長時間厳しい肉体作業で働いている。賃金が上がらず、住居費が上昇する中、彼らは切り抜ける対策として、家賃と住宅ローンから自身を断ち切った。彼らはアメリカで生き延びている。」
マクドーマンドは、経済的、個人的な未解決の問題がある60歳の女性(元代用高校教師)ファーンを演じる。彼女は何十年も、亡くなった夫が働いていた、US石膏社が丸ごと所有するネバダ州、エンパイアという企業都市で暮らしていた。2011年、同社は88年間操業していた石膏鉱山を閉鎖し、コミュニティー丸ごと閉鎖した。エンパイアはゴーストタウンになり、郵便番号さえ消えた。
映画は、主に2012年を舞台にし、彼女が、自分のバンやキャンピングカー(RV)で暮らし、ある程度の経済的、個人的安定を求めて、アメリカ西部中を旅する人々、他の不本意な「ノマド(遊牧民)」と一緒になったファーンを追う。最初は、アマゾンでの彼女を見るが、そこで彼女や多くの他の人々は休暇シーズン中、臨時労働者として働く。彼女は昔の生徒に、自分は「ホームレス」ではなく、むしろ「ハウスレス」なのだと語る。
ノマドランドのフランシス・マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン
リンダ・メイ、ボブ・ウェルズ、シャーリーン・スワンキーや他の人々を含め登場人物の多くが実際ノマドだ。リンダは2008年に自殺を考えたことを認めている。社会保障給付が一カ月たった550ドルだと悟った時、彼女は「それを信じることができなかった」。
ファーンは、下がる凍りつく温度で、南へ運転するよう強いられる。「私は仕事が必要だ。私は働くのが好きだ」と彼女は誰かに言う。彼女は、何千人もの他のノマドと一緒に、アリゾナ州クォーツサイト近くの公有地砂漠で行なわれる年中行事ラバー・トランプ・ランデブー(RTR)に参加する。組織者のウェルズは「ドルの暴政」を激しく非難する。更に、彼は「タイタニックは沈没しつつある。」と言う。彼や他の人々は、「どのように道路で暮らすかについて」助言する。
ファーンは、彼が彼女にタバコを求めて知人になったデレクのように、ずっと若い人々にも出会う。後の二度目の出会いは、映画でも最も感動的な場面の一つだ。静かな控えめな若者デレクは、「北の国」にガールフレンドがいると説明するが、彼女への彼の手紙はそれほど、もったいぶっていない。ファーンは、彼女に詩を送るよう提案し、彼のために(我々のためにも)英語で最も絶妙な詩の一つ、シェイクスピアのソネット集第18番を暗唱する(「君を夏の日に喩えようか」)。
一連の先のない、時に骨が折れる仕事が(サウスダコタ州バッドランドの観光名所)ウォール・ドラッグの採石業者で、再びアマゾンで続く。誰かがネブラスカでのビート収穫を示唆する。これは、生き延びるためなら何でもして、全国あてもなく、しばしばぼうぜんと男女が彷徨った大恐慌時代を想起させる場面だ。
シャーリーン・スワンキーは、自分はガンで、余命はおそらく7、8カ月だと発表する。彼女は荒れ地で一人で死ぬため、運転して去る。ファーンの車はエンジンが故障し、2,300ドルの仕事が必要になる。彼女は遥かに一般的な生活をしている妹から借りる。ファーンはデイブ(デヴィッド・ストラザーン)と会い、多少交流する。彼は彼女に「私はあなたのそばにいるのが好きだ」と言って、彼女に息子の家に滞在するよう求める。彼女は決断しなければならない。
書いた通り、ノマドランドには魅力的な局面がある。マクドーマンドは、いつも通り、本物で、正直で、地味だ(彼女は役を研究した結果、ネブラスカ州の「ターゲット」店舗で「働かないか」と言われて喜んだようだ)。本物のノマドは正当で威厳があるのだ。
ジャオは西洋風景を見る目があり、ザ・ライダーでしたように、人々を敏感に監督している。
だが全体的には、ノマドランドは、それが触れるひどい状態への暗黙の批判と、ノマドの反発力や「辛抱強さ」や「開拓者」風ライフスタイルへの不適切な慶賀を交互に繰り返すが、不幸なことに、後者の手法が勝利を収めている。
映画の全体的な感じと感受性は、「やむをえずしたことを自発的にした振りをする」という表現の辞書定義の一つ、つまり「意図的に、その価値ゆえ選択した、他に選択肢のなかった行動や状況を作り直したり、描いたりする」こと、しっかり対応する。
ある評者のコメントは典型的なものだが、意図せずに、映画の最も重大な弱点を捕えている。「ノマドランドと同じぐらい多くが、本当に、死(ある人物は自殺に近いものについて心-悲痛な記事を話す)までに取りつかれる、生きることについて、それは、前に進むことについて生活についてだ。経済の絶望の圧倒的な現実にさえ直面して、2008年に経験豊かなそれほど多くの人たちとして、常にあなたがと選べるもう1つの道がある。」
もう一つの審査がジャオの仕事が真髄でアメリカ製の何かについて「年代記であることを示唆する:道路での生活。土地、道路、それに沿って旅行する人々の美しさについての映画、共同体がそこ、砂漠と丘と山でアメリカの西が無くなったくことを見いだす遊牧民。必要によって、しかし同じく自由意志によって。」タイプが、見出しで、映画を「アメリカの独立への優しい頌賦」だと記述した。
これは、描写された貧困と苦難に直面して、かなり惨めだ。なぜ今まで標準的なアプローチを修正して、ジョン・スタインベックの、不景気の間、新しいライトのかわいそうな借家人農民-の苦痛Joads-a家族に熱心な憤(1939)怒のブドウ、を、「一般道路での生活」についての「年代記」、「土地の、道路の、それに沿って旅行している人々の美しさについての」小説として提示するなどしないか?
それは社会的に決然とした(変更できる)(人たち・もの)を「自然の」、避けられない(人たち・もの)に変えるために重過失、ひどい無責任、だ。意図的にあるいは、1人は既存の情勢のために弁証者になる。いくらどんなにジャオの映画の種々の遊牧民が-抱きしめるか、あるいはembrace-theirに新しいライフスタイルを試みて、それに楽しい、さらに「心を解き放つ」特質を授けたとしても、彼らは、何よりもまず第一に、アメリカの社交的なカタストロフィーの犠牲者のままなのだ。
ブルーダーは彼女の本を、こういう風に始めている。「ノースダコタ州、ドレートンで、67歳の元サンフランシスコのタクシー運転手がサトウダイコン収穫で苦闘する。彼は畑からのトラックが、何トンものビートを吐き出すのを手伝って、氷点以下の温度の中、日の出から日没後まで働く。夜には、彼はウーバーがタクシー産業から彼を押し出し、家賃を稼ぐのが不可能になった時以来ずっと彼の家であるバンで眠る。
「ケンタッキー州、キャンベルズビルで、アマゾン倉庫の夜勤シフトで、66歳の元ゼネコン社員が、コンクリートの床に沿って、車輪付きカートを何マイルも押しながら商品を積み込む。それは実に退屈でつまらない仕事で、首にされるのは避けたいと、彼女は正確にそれぞれの品物スキャンしようと苦闘する。朝、彼女は、彼女のような放浪労働者を泊めるためアマゾンと契約している、いくつかの移動住宅公園の一つに停めてある彼女のごく小さなトレーラーに戻る。」
極めて弱者である高齢者の残忍な扱いを詳述するブルーダーの仕事は貴重だが、そうした状態からも励みになる「希望の兆し」を見いだす努力からは免れない。彼女は、このように続けている。「だが道路には希望がある。それは前進する勢いの副産物だ。国と同じぐらい広いな可能性の感覚。より良いものが起こるという徹底的な信念。それは、すぐ先、次の町、次の仕事、知らない人との次の偶然の遭遇だ。
「誰かのバンが故障すると、彼らは寄付を募る。人から人へ広がる感じがする。大きな何かが起きている。国は急速に変化しており、旧構造は崩壊しつつあり、彼らは何か新しいものの震央にいるのだ。真夜中、キャンプファイアーの周囲は、ユートピアの一瞥のように思われる。」
ノマドの状況の粛然たる様相を見るには、(ブルーダーも参加した)Brett StoryとField of Visionによる16分の映画CamperForceも見る価値があるが、それは同社の季節労働部隊のために何千人ものキャンピングカー・キャンピングトレーラー暮らしの人々を採用し、搾取するアマゾンの10年にわたる計画を詳述している。この映画は美しかったり、「鼓舞したりする」ものではない。それは容赦なく、啓発的だ。題名自身が説明する通り、「現在、65歳以上の高齢アメリカ人のうち5人に1人が、1986年の比率のほぼほ二倍働いている」「55歳かそれ以上の人が当主の家庭のほぼ3分の1が、年金も退職後のための貯金がない」。この短編映画は、アマゾンのジェフ・ベゾスが「2017年に世界で最も金持ちの男になった」ことも指摘している。
(Field of Vision)
数十億ドルのウォルト・ディズニー社の一部門、サーチライト・ピクチャーズの代表、ナンシー・アトリーとスティーブン・ギラは、ノマドランドを「本当の映画的発見」として推奨した。ジャオは「我々を思い出させる」と、この映画会社経営者が続けた。「我々が、どれほど遠く離れているように思われるにせよ、この映画には我々をつなぐ力がある。我々はこの特別な映画が世界中の聴衆を感動させ、更に世界の映画を支援できるよう希望する。」
ディズニーが映画や芸能界の実に多くを支配していたり、その幹部が予想通り陳腐なことを言ったりするのは、確かに監督の過失ではない。だが、北京生まれで、マウント・ホリヨーク大学で教育を受けた「独立」映画製作者(2020年のトロント映画祭によれば「アメリカ映画で最も重要な新しい声の一人」)が今2021年11月公開予定の惨めなマーベル・シネマティック・ユニバース(同じくディズニーの所有)で26番目の作品スーパーヒーロー映画、Eternalsを監督したのはジャオ自身の「自由意志」の問題だ。
記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2021/02/20/noma-f20.html
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この映画、見ようと思いながら、まだみていない。
政府も厚生労働省も文部省も、本物の反社会集団。
LITERA
正気か? 東京都が東京五輪の観戦に小中学生ら81万人を動員計画! 感染拡大最中に各学校に通達、観戦拒否すると「欠席扱い」
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