サウジアラビアとイランは両国関係の現状打開を準備中
2021年5月9日
ウラジーミル・プラトフ
New Eastern Outlook
バグダッドでのサウジアラビアとイランとの秘密交渉の情報が既にメディアに現われている。最近「サウジアラビアはイランの繁栄を望んでおり、互恵に基づいて協力する用意ができている。」と述べたサウジアラビア王国のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子によるセンセーショナルな声明が発表されて、状況は明確になった。
イラン-サウジアラビア関係は、1979年、イランのイスラム革命後、特に悪化した。中東地図を見れば、国家間や宗教的相違の本質は明らかだ。どの国でも、国民の大部分がスンニ派かシーア派だ。この点に関し、多くの国々が、サウジアラビアかイランを彼らの精神的、政治的基準と考えており、分極化が目立っている。
リヤドとテヘランの関係は、これまで20年、とりわけ緊張している。特に、2003年、アメリカ率いる連合が、スンニ派アラブ国家で、イランの主敵の一つ、イラクのサダム・フセイン大統領を打倒して以来、イラクに対するイランの着実に増大する影響力への対抗力はない。2011年、地域全体に広がったアラブの春抗議行動の波の中、イランとサウジアラビアは、シリア、バーレーンとイエメンで、彼らの影響力を促進するため、それを利用しようとして、更に相互不信を深めた。
近年、この地域の紛争で、多くの指標で、イランが勝利者になっているため、戦略的対立は著しく激しくなった。例えば、シリアでは、イラン(とロシア)の支援のおかげで、バッシャール・アル・アサド大統領は、サウジアラビアに支援される反政府勢力の大部分を鎮圧するのに成功した。イラクでの紛争でも、テヘラン支持者が勝っている。一部、イランの影響力とされるものを無効にしたいというサウジアラビアの願望によっても推進されている、リヤドが、隣国イエメンで反抗者に対して行なっている六年の戦争も、莫大な金を費やしながら、サウジアラビア君主国家にとっては不成功だ。イランに支援されるシーア派集団ヒズボラが政治上主役を演じ、軍を支配している国を不安定にするため、レバノンで政治的対決を拡大させる試みも、リヤドが予想した成功をもたらさなかった。
イランとサウジアラビアは、直接戦闘はしていないが、この地域での武力衝突には、彼らの支援が絡んでいる。シリアとイエメンは、この典型的な例だ。そしてフーシ派が繰り返しサウジアラビアに対して発射するミサイルは、二国間の論争を激化させた。
現状は、長い間、サウジアラビアに、この地域での緊張を緩和する措置をとるよう強いている。経済力にもかかわらず、軍事的にサウジアラビアはイランと比較して脆弱だ。
2016年、イランとの外交的な結びつきを断ち切るというサウジアラビア指導部の構想に対応して、ホワイトハウスは、イランとサウジアラビアの将来の関係について勧告した。当時、アトランティック誌は、オバマ・ドクトリンを掲載したが、それでオバマ大統領の声明が初めて公になったが、その中には、サウジアラビアに対する厳しい批判もあり、アメリカとサウジアラビア間の更なる戦略的パートナーシップの可能性も疑っていた。特に、オバマ大統領は、サウジアラビアは、イランとこの地域で共生し、影響圏を共有することを学ぶべきだと指摘した。リヤドは、ワシントンが、前と同じように、イランとの対立の場合、サウジアラビアを防衛せず、公然とサウジアラビア支持の立場をとらないことを理解されたのだ。(リヤドは、ホワイトハウスにとって支援が負担になった多くの場合、同盟者を見捨ててきた、アメリカ合州国に、これを予想しておくべきだったのだ!)。
ホワイトハウスの現政権は、本質的に、オバマ大統領時代の路線を繰り返しているのを考えると、ワシントンのテヘランに対する見解を、ジョー・バイデン大統領がリヤドに言ったのだ。これが、サウジアラビアが、イランとの関係を暖ためる兆しを示した理由で、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングが、これに注目した。特に、彼が三年前に、イラン最高指導者アリ・ハメネイをヒトラーに例えたのを忘れて「隣国」との良い関係を求めるサウジアラビア王国のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子の声明だ。同紙によれば、皇太子の「融和的な口調」は、明らかに、イランとの関係正常化を目指す新アメリカ外交方針に順応する試みで説明できる。
サウジアラビア王国のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は、アラブ・テレビ局の広範なインタビューで、バイデンの政策に対する90%の支持を強調して、ここ数カ月で変化した外交政策条件下で、イランや地域の他の国々に対するサウジアラビア政策の必要な調整について。イランとの、あり得る和解の他に、ムハンマド・ビン・サルマーンは、もちろん特定の条件で、王国がイエメン・フーシ派に経済援助を提供する用意も示した。
イエメンとの戦争開始から六年後、王国は紛争からの出口を捜し始めた。だが、イランの支援なしで、リヤドがそうするのは困難だ。現在のところ、フーシ派は戦場の外で、紛争を解決する措置をとっていない。最近、モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は、一般向けを意図しないインタビューで、サウジアラビアが近年イランの調停の申し出を拒絶したと述べ、イランで広範囲にわたる不満をもたらしている。それでも、バグダッドでのサウジアラビア-イラン協議の中心的な話題はイエメンだった。この会談は今「より建設的な調子」で行なわれており、王国は政策を次第に新しい現実に合わせている。特に、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が発表したサウジアラビア政策の調整は、イランに支援されるイエメン・フーシ派反抗者を、サヌアやイエメンの他地域から、軍事的手段で追い出す意図をリヤドが否定したことも含まれる。
アメリカが、ジョー・バイデン大統領下、イランとの核論争で、和睦を実現しようとしている事実は、サウジアラビアの政策が順応しなければならないもう一つの現実だ。
イランとしても、多くの理由で、サウジアラビアとの関係改善に関心を持っている。まず、この地域で、対イラン・ブロックを強化するサウジアラビアとイスラエル間のより緊密な協力を弱めようとしているのだ。サウジアラビアがバグダッドで進行中の交渉の性質に関して事前に知らせなかったため、4月初旬、リヤドとテヘラン間の和睦に対するイスラエルの率直な不満が、テルアビブからサウジアラビアに示された。加えて、ハッサン・ロウハニ大統領とモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は、サウジアラビアとの関係正常化がイランでの内部権力闘争における彼らの立場を強くするのを期待している。
現状が、リヤドに、この地域での緊張緩和に役立つイランとの和睦に向かって踏み出すよう強いている。結局、サウジアラビア当局が考えている経済改革の成功を保証する主な条件の一つは、安定と、この地域での平和だ。国防に莫大な資源を使うのではなく、このような資源を、石油収入に対する王国の依存を大幅に減らすような必要なプロジェクトに向けることだ。
ウラジーミル・プラトフは中東専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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今日の孫崎享氏のメルマガ題名 題名だけではわからないが、良いお話。
随想㊾ ウズベキスタンの露天炭坑
デモクラシータイムス 昼の白痴洗脳番組は見ずに、こちらをどうぞ。日本政府のコロナ無策と戦う区長の経験と提案。
洗脳痴呆番組は、緊急事態条項問題を決して報じない。ショック・ドクトリンのお先棒かつぎ。事実上犯罪洗脳組織では。
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