地域の専門家さえ困惑させるトルコの新「はた迷惑」役
マーティン・ジェイ
2021年5月3日
Strategic Culture Foundation
移り気なレジェップ・エルドアンは、一体どうして国防総省とロシアとの軍事地政学論争で、窮地に立つことになったのだろう?
4月は、アンカラを本拠とする海外特派員にとって、世界におけるトルコの役割に関するニュースの果てしない流れに思えるもので多忙で大変な月だった。混乱がおさまった後、多くの評論家は、トルコは今までより孤立していると結論するかもしれない。中東の新たなならず者国家国家。問題は、エジプトとサウジアラビア両国との関係雪解けが持続可能なら、結果的に、この地域は、より良い状態になり、一層安定するかどうかだ。
評論家の見地からは、トルコの地政学は常に誰も完全に理解できない動く標的だ。エルドアン戦略の不透明な性質は、トルコ最良の記者すら困惑させ、時に彼の思いもかけない行動は、ほとんどトランプのように見えたりする。
ロシアS-400ミサイルシステムを購入しながら、アメリカがトルコにアメリカ製F-35保有を許すと想像する地政学・軍事戦略は常に頭の体操だ。
当初、トルコは100機のF-35戦闘機を購入すると約束した。2018年、パイロット訓練に関する多少の条件付きで、六機がトルコ向けだったが、アメリカとトルコ間で、S-400危機が始まった後、ジェット機の実際の配備は延期された。
だが、2020年7月までに、当初トルコ向けに意図された八機のジェット機が、そうではなく、アメリカ空軍に購入され、トルコからのジェット機部品供給のキャンセルが続いて、事態は益々当てにならなく見えていた。
トルコを容赦なく攻撃するアメリカ
4月下旬、トルコをF-35プログラムから排除するという国防総省の最終連絡は、アメリカとの軍用装備品共有協定に対するとどめの一撃となり、NATOメンバーのトルコは、のけ者になった。数日後、ジョー・バイデンがアルメニア大量虐殺におけるトルコの役割の承認を公式に発表した時が、おそらく、アンカラ-ワシントン関係へのとどめの一撃だった。
アメリカがこういう姿勢になった理由は、トルコがジェット機の機密情報をロシアと共有しないと安心して任せられるかに関するペンタゴン軍人たちの増大する懸念があったためだった。だがこの決定のタイミングは奇妙で痛烈だ。
近年ロシアとの関係は、よくても熱がこもっておらず、ぎりぎり友好的で、悪くて、実に微妙だった。プーチン大統領は、両国がイドリブで対立する側で戦うシリアのような刺激的話題に関する緊迫した協議の際、時々エルドアンを遠回しに脅迫する必要を感じていた。エルドアンはロシア指導者の明晰ながら礼儀正しい警告を尊重しているように見えた.
のけ者にされたロシア
だが最近エルドアンは、ドンバス地域での、ロシアとのどんな紛争でも、彼の政府は常にキエフにつくのを非常に明確にして、ウクライナに関して一線を越えた。4月21日、ゼレンスキー大統領は、アンカラでエルドアン大統領と会談し、後にトルコ指導者にとって高価な代償となった、もう一つの防衛契約の重要性を強調した。ウクライナへのトルコ無人飛行機販売だ。
ここで、ことは複雑になる。この取り引きと、アンカラとキエフの結託がなければ、F-35合意が大失敗した際、エルドアンはロシアに頼って、ウクライナ国境で現在新聞に大きく書きたてられているロシア戦闘機の新たな取り引きができたはずだった。
この運命の皮肉は、NATO内で、トルコは常に不良メンバーで、西側諸国将官が、欧米がロシアと紛争になった場合、トルコが有用であり得るかどうか常に疑っていた。例えば、燃料補給のため黒海基地に戻るロシア艦船を阻止し、トルコがボスポラス海峡を「閉塞する」のに頼れるかどうか。少なくとも、そういう議論だ。4月中旬のウクライナ危機で、トルコの分裂した忠誠心は、今やロシア同様、NATO大国にも無視され、この役割は益々疑問視されている。
トルコは、複雑な地政学・軍事関係や口論で、文字通り、益々深く墓穴を掘っている。ステルス爆撃機パートナーがおらず孤立している。
それにも拘わらず、最近中東状況が変化し、古い仇敵が友人となる中、既に深刻な経済不振にあるトルコには、このレベルのステルス爆撃機は必要ではないと論じても許されるかもしれない。
去年11月、サルマン国王がオリーブの枝をさし出し、この話題を、サウジアラビア皇太子「MbS」が、最近サウジアラビア王国と、その大敵で、トルコのパートナー、カタールとの国境再開決定した後、最大の敵サウジアラビアとの関係が、ここ数カ月、緩和している。これは正面からの取り組みが必要だった、トルコと地政学的に多少の不和があったエジプトとの関係の新局面と同時に起きている。
それは2012年に選出されたムスリム同胞団とつながるエジプトのムハンマド・ムルシー前大統領をトルコが支持した後始まった七年の関係凍結後に起きた、かなりの変化だ。
ムルシーはもちろん、蜂起の後、最終的に軍事クーデターで、2013年に退陣させられ、2014年に、アブドルファッターフ・アッ=シーシーが大統領になり、以降、評論家が「強力冷凍」と呼ぶものをもたらした。
だがこうした新局面が展開する中、主に、2020年12月、ジョー・バイデンがアメリカ大統領になったため、特にイラクが現在イランとサウジアラビア王国間協議を仲介し、中東政治事情にうとい人が見れば、地域で平和が始まっていると推量するかもしれない。
だが、ここ数週間、トリポリ新政治指導部に対するUAE(やはり、かつての敵)の暖かい新しい態度が、今「軍閥指導者」ハフタル将軍が、彼の宿敵アンカラが自分の手柄にできる新たな雰囲気を固執すると信頼できるかどうか、多くの問題を提起しているリビアで、トルコは依然、勝利者として使えるカードを持っている。
だがアンカラは、まだ欧州連合で不良役を演じている。欧州理事会議長と一緒にアンカラを訪問した際、ウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員会委員に、彼の横の椅子を与えるのを拒否して、エルドアンは椅子事件という見出し記事に載り、ブリュッセルとはギクシャクした新たな最悪状態の関係だ。アメリカとNATO両方と、ロシアとの新たな対立しか匹敵しないような最低の関係で、トルコ大統領は、孤立している方がより快適で、アトラクションの奇術師のように、皆に次の動きが何か言い当てさせるのを好んでいると思っても許されるかもしれない。確かに、次の大失敗がメディアの脚光を浴びるまで、我々は長く待つ必要はなさそうだ。
マーティン・ジェイは、イギリスのデイリー・メイル記者として、モロッコ本拠とする受賞したイギリス人ジャーナリストで、CNNやユーロニュースのため、アラブの春について報じた。2012年から2019年まで、彼はベイルートを本拠として、BBC、アルジャジーラ、RT、DWなど多くの国際メディアや、イギリス・デイリー・メイル、サンデー・タイムズやTRT Worldでフリーランス・ベースで働いた。彼は、多数の主要メディアのために、アフリカや中東やヨーロッパのほぼ50カ国で働いた。彼はモロッコ、ベルギー、ケニアとレバノンに暮らし、働いた。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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