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2021年5月24日 (月)

イスラエルの激しいガザ爆撃後、炎に包まれる「アメリカの世紀の取り引き」

Finian Cunningham
2021年5月23日
Strategic Culture Foundation

 中東でのアメリカ調停の見せかけはボロボロだ。アブラハム合意から一年後、世界は、アメリカ軍用機とミサイルで武装したイスラエルによる、もう一つの血まみれの民族浄化を目撃している。

 トランプの「世紀の取り引き」が、いつもそうであるサギゆえに、ばらばらに壊れるのに、一年しかかからなかった。ほぼ二週間、イスラエルがパレスチナ人に対して行った人類に対する暴力犯罪に、アラブ人とイスラム世界は激怒している。

 停戦は、今のところ、流血は止めているが、平和仲裁者というアメリカのイメージに対する打撃は永久だ。

 アメリカ前大統領ドナルド・トランプは、イスラエルを喜ばせるため一肌脱いだ。「アメリカ・ファースト」に関する彼のすべての大げさな話は、もはやこれまでだ。実体は「イスラエル・ファースト」だ。トランプはエルサレムをイスラエルの首都と認め、パレスチナの土地併合継続を認可した。

 それから再選の狙いで、トランプは、イスラエルとアラブ諸国間で、大仰に聞こえる合意、いわゆるアブラハム合意をまとめた。これはトランプが彼特有の誇大妄想で、70年来の中東紛争を解決すると称賛した「世紀の取り引き」のはずだった。それは現在アメリカで汚職に関して調査されている辣腕不動産大御所にふさわしい詐欺だった。

 パレスチナ人は相談さえされず、実際それを拒絶した。たった4つのアラブ諸国がトランプの平和茶番に署名した。アラブ首長国連邦、バーレーン、スーダンとモロッコ。外見上唯一の譲歩は、それ以上いかなるパレスチナの土地も盗まないというイスラエルによる、あいまいな約束だった。イスラエルが、パレスチナ難民の帰還に同意したり、未来のパレスチナ国家の首都として東エルサレムを認めたりするような大幅譲歩はないはずだ。

 トランプの和平調停冒険事業は、今実に二枚舌に見える。そして、それに署名したアラブ諸国も最高に、ばかげているように見える。

 これまで二週間にわたる最近の暴力で、イスラエル空爆がアパート地帯を崩壊させるにつれ、パレスチナ人家族が彼らの家で虐殺された。医療関係者や病院が攻撃された。メディア・センターも。空襲が実に無差別なので、今回、暴力は、かつての2014年と2009年の紛争より悪いとパレスチナ人は言う。

 パレスチナの武装組織ハマスは、イスラエルの都市に何千ものロケットを発射した。だが、その大部分が防空体制により途中で迎撃され、イスラエル住民は強化された地下防空壕で無事守られている。死亡者数比較は、暴力の一方的性質を示している。65人の子供を含め、230人以上のパレスチナ人が亡くなった。イスラエル側は12人死亡した。

 先月ラマダン中、東エルサレムのアル・アクサ・モスクで礼拝するパレスチナ人に対するイスラエルの治安取り締まりのため、紛争が勃発した。東エルサレムの家からのパレスチナ人計画的追い立ては、ハマスによるロケット発射をもたらした。いつものように、イスラエル軍の反撃は、全く不釣り合いだ。

 だがトランプの後継者も劣らず追従的だ。ジョー・バイデン大統領は、ワシントンがペコペコ頭を下げる胸が悪くなるような態度で、イスラエルの自衛権を弁護する。バイデン政権は停戦を要求する国連安全保障理事会による三つの試みを阻止した。これはバイデンが、イスラエルに、まさしく、ガザで高層ビルを地面に崩壊させている軍需品ミサイル、7億3500万ドルに相当する統合直接攻撃弾JDAMを売る契約書に署名しながらの話だ。

 この背景が、アブラハム合意と、これに参加し、この正常化合意が、パレスチナ領域のそれ以上の喪失を防ぐと主張したアラブ諸国をあざ笑っている。

 現実は、アメリカ合州国は、決して中東平和の正直な調停者であり得ないということだ。ホワイトハウスに、共和党議員、民主党議員、どちらがいようとも、アメリカ外交政策は、パレスチナの権利を犠牲に、イスラエルに対する常に変わらぬ支持なのだ。それは中東におけるアメリカ帝国の権益が、イスラエルによる支配に基づいているためだ。イスラエルは、ワシントンから、何をしてもお咎めなしの免許をもらっているのだ。イスラエルがアラブ人を押さえ付けるアパルトヘイト・ユダヤ人国家であろうが、彼らの土地を盗もうが、彼らの子供たちを殺そうが、究極的に重要ではないのだ。ワシントンは利己的な戦略的権益のため、完全共犯者だ。

 中東でのアメリカの調停の見せかけはボロボロだ。ビル・クリントン政権が仲介したオスロ合意から30年以上たっても、パレスチナ人の国家に対する熱望に何も実現していない。アブラハム合意から一年後、世界は、アメリカ軍用飛行機とミサイルで武装したイスラエル人による、もう一つの血まみれの民族浄化を目撃している。

 イスラエルとのアラブの関係正常化を企てるアメリカの試みにとって、サウジアラビアは意図された豪華賞品だった。アラブ人やイスラム教徒や世界中の多くの他の人々から怒りが噴出する中、サウジアラビアが意図された路線を支持する方法などない。

 実際、今週サウジアラビアはパレスチナの歴史的権利を支持する姿勢を強化した

 フーシ派反抗者がサウジアラビア経済に重大な損害を与えているイエメンで、絶望的に必要な和平協定を求め理由もあって、リヤドはイランとの結びつきを正常化しようと努めている。フーシ派は外交上テヘランに支援されており、イエメンの泥沼から脱出したければ、サウジアラビアはイランとの関係を改良する必要があるのだ。

 イランはガザに対するイスラエル猛攻撃に対して、いつものように断固批判的界だ。テヘランは、アブラハム合意を支持して、パレスチナ人の権利を売り渡したアラブ諸国を非難している。

 かつて、イスラエルとのトランプのエセ平和合意を支持する兆候を示していたサウジアラビアは、今イエメンに関し、より喫緊の懸念を持っている。これは、ガザや東エルサレムでの最近の罪に対するアラブ人の怒りに加えて、サウジアラビアが「世紀の取り引き」を終わらせるのを確実にする。ワシントンにとっては、にせエセ平和仲介者としての恥ずべき歴史での、もう一つの地獄へ道連れなのだ。

 Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。

 個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/05/23/america-deal-century-in-flames-after-israel-pounds-gaza/

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 大本営広報部、五輪開催の話題は、しつこくあつかうが、汚染水放出問題は完全無視。

 デモクラシー・タイムス 実に良くわかる解説。政府プロパガンダのウソをていねいに論破されている。

【原発耕論 No15】汚染水海洋放出は無責任の極み! 20210515

 今日の日刊IWJガイドに「記者会見」なる「速記者会見」の作られ方が具体的に説明されている。詳しくは、記事をお読み願いたい。大本営広報部は、この重大な話題の完全共犯者。

<IWJ取材報告 1>茂木大臣と外務省は、急速にきな臭くなる「自由で開かれたインド太平洋」戦略についてのIWJ記者の質問を「騙し討ち」で回避! 米中対立が発火すれば日本列島が主戦場に! ~5.21茂木敏充外務大臣 定例記者会見

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