アメリカはなぜアフガニスタンでトルコを巻き込むのか?
2021年4月12日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
アフガニスタン和平プロセスへのトルコの直接的関与が未曾有の形で増加しており、トルコは今後何ヶ月も何年も激しい地政学闘争の時代に見舞われる可能性が高い。トルコが、アフガニスタンと歴史的に良い関係があることを考えれば、いずれも5月1日までの撤退に猛烈に反対している国防総省とCIAは、タリバンを含め、アフガニスタン人へのトルコの影響力を、5月1日の期限を越えて、アメリカ部隊を残すのを可能にする合意のために使おうと狙っているのだ。一方、トルコにとって、アフガニスタンでのアメリカへの協力は、トルコが欧米との絆を復活させ、重要な軍近代化プロジェクトの実現、特にNATOのF-35計画への復帰や、トルコが更に中央アジア内で「新オスマントルコ」の狙いを推進する助けになる。トルコにとって、アフガニスタンにおける直接の役割は、ナゴルノ・カラバフ紛争で、アゼルバイジャンへの関与と支援を通して既に推進している狙いを進めるのだ。
ロシア、中国両国が、アフガニスタンを一帯一路構想(BRI)とユーラシア経済連合(EEU)に統合するのを期待している中、トルコ陸軍准将がアフガニスタンでNATOを指揮し、アフガニスタンでのトルコの役割増加が、アメリカが、どれほど、アフガニスタンに対するトルコの影響力を、アメリカのライバル両国との強い提携から、アフガニスタン/タリバンを引き離すために利用しようとしているかを雄弁に物語るのは否定できない。
同時に、ジハード民兵を利用するトルコの傾向や、シリアやナゴルノ・カラバフでの武装過激派戦士集団の露骨な利用からして、アフガニスタンで、トルコは、アメリカにとって、うってつけの候補だ。現状では、アフガニスタンで、軍事的存在を際立って減少しており、アメリカは、アフガニスタンに、これら民兵を展開できるトルコの専門知識を利用して、アフガニスタンを、拡大アメリカ/NATO居留地として保持するのみならず、ロシアの「急所」や中国のBRI両方を不安定するため、コーカサスや新彊内に、こうした部隊を展開できるのだ。
現状で、新彊は、中国のBRIプロジェクトの主要な物流中心だ。それは最終的にヨーロッパ市場へつながり、中国を中央アジア、西アジアと接続する。BRIで計画されている6つの経済回廊のうち、新彊のカシガルと、パキスタンのグワダル港を結ぶ中国-パキスタン経済回廊(CPEC)を含め、少なくとも三つが新彊を経由する。
それゆえ、もしアメリカが、アフガニスタンにおける軍と諜報機関の駐留を、BRIを不安定にすべく、新彊で問題を起こすために使っていたら、アメリカがアフガニスタンから軍隊を撤退させることになれば、アメリカは同じことをし続ける必要があるだろうと中国当局は考えている。CIAと国防総省は、アフガニスタンにおけるトルコの拡張し、強化した駐留と、その「ジハード資源」が、かなり効果的にその役割を果たせると考えているように思われる。
実際、中国のウイグル・イスラム教徒に対するトルコの強力な外交的支援のおかげで、アメリカの狙いが成功する可能性は非常に大きい。中国が新彊で実行しているとされている「大量虐殺」に関して、アメリカとトルコが類似の言説をしているのを指摘するのは重要だ。従って、アフガニスタンを通して、ジハード部隊を新彊に送り込むことに対し、トルコには、容易に利用可能な言説があるのだ。アフガニスタンの限定されたアメリカ軍事的存在さえ、このプロジェクトをごまかし、推進するのに十分だろう。
実際、中国の外務大臣が最近トルコを訪問した際、トルコはイスタンブールでの1,000人強の抗議行動で、「独裁者中国」「ウイグルの大量虐殺を止めろ、キャンプを閉鎖しろ」のようなスローガンを繰り返して、彼を歓迎した。
政府寄りトルコ日刊紙デイリー・サバは最近中国をファシスト政権として描く記事を最近発表し、中国とトルコの関係の将来を「ウイグル・イスラム教徒の幸福」と結び付けた。
この言説は、自身を黒海から中央アジアの大草原から新彊まで広がるチュルク世界の中心に置くトルコの「新オスマン・トルコ」の野望と一致する。それは以前、同様にリビアに、国軍とジハード部隊を派遣させた同じ「新オスマントルコ」の野望だ。
それに加えて、アフガニスタンへのトルコの関与は、アメリカがアフガニスタンに関与している他の重要な当事者を味方に引き入れる支援になる。これは特にパキスタンに、あてはまる。パキスタンとのトルコの強い結びつきという条件のもとで、アメリカは潜在的に中国とロシアの影響力の軌道から、パキスタンを独立させるトルコの影響力を強化できる。これは、パキスタンが、どんな将来の政治的解決でも、タリバンの関与と権力分担を全面的に優先事項と続けていることから明白なように、パキスタン軍部との深い強いつながりを維持し続けているタリバンとの、どんな和解にとっても極めて重要だ。
トルコの拡大した存在は、パキスタンの立場の変化をもたらす可能性があり、このような変化が、アフガンの終盤を大きく変えかねないことは、ロシア外務大臣の過去10年で初めての最近のパキスタン訪問から明らかだ。この訪問が上記のトルコの関与を背景に行われたのは、ロシアが、これを形勢を一変させるシナリオとなる可能性を見て、アフガニスタンが反ロシア勢力に完全降伏するのを防ぐことを可能にする形で入り込もうと望んでいるのを示している。
ロシアと中国は、従って、当然アフガニスタンで増大するトルコの関与を警戒すべきものと見ている。彼らはいずれも、アメリカがトルコを通して、ロシアと中国を不安定化する長期的目的を達成し、世界的な影響力を保持するのを可能にする方法で、アフガン和平プロセスの舵取りを目指しているのを理解している。言い換えれば、アメリカは、カオスの種をまき、世界支配の高みに上昇する梯子として使用することを目指しているのだ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/04/12/why-is-the-us-involving-turkey-in-afghanistan/
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朝貢を言祝ぐ大本営広報部。大政翼賛会。主従関係の絆深まる。
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