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2021年4月18日 (日)

自ら課したオーストラリアの経済的苦境は続く

2021年4月14日
ジョセフ・トーマス
New Eastern Outlook

 最近まで、オーストラリアは、中国の台頭と共に経済成長を享受していた。キャンベラが、中国の反感を買って、ワシントンの指示に従い始めた時、このすべては変化し、手痛い自ら課した経済危機が、雪だるま式にふくれあがりつつある。
 現在、オーストラリアは、オーストラリアの組織的敵意に応じて、増大する貿易障壁が中国に築かれるのに直面しているだけでなく、一時的な貿易紛争だったものが、ゆっくりとオーストラリア輸入への依存を永久に排除する北京戦略に変わるのを見ているのだ。

 いったん始まってしまった後、オーストラリアが前の水準の儲かる中国貿易に戻る能力はありそうにない。

 オーストラリアが自ら課した経済破産

 2018年、中国の巨大通信企業ファーウェイを全国的な5Gインフラ契約を禁止しろというアメリカの圧力の下、オーストラリアは依然根拠がない「国家安全保障の懸念」を口実にあきらめた。

 「ファーウェイとZTEは、オーストラリアで5Gネットワークを禁じられた」という題名の記事でBBCがこう主張している。

「オーストラリア政府は、通信会社に適用される国家安全保障規則は、装置メーカーにも典型的に適用されると述べた。

「外国政府から司法管轄外の指示を受けかねない」企業は安全保障上のリスクになりかねないと当局は言う。

 BBCとオーストラリア政府は、「なりかねない」という単語をはっきり使っているが、MITテクノロジー・レビューのような欧米メディア自身の記事で、下記のように「NSA自身のハードウェアのバックドアは、依然「地獄からの問題」かもしれない」と暴露されたアメリカ製ハードウェアの安全保障上の確実な危険があるのだ。

2011年、以前、国家安全保障局と中央情報局両方の長官をつとめたマイケル・ヘイデン大将が、隠された「バックドア」があるコンピュータ・ハードウェアが敵に仕掛けられるという考えを「地獄からの問題」だと表現した。今月、漏洩文書に基づいたニュース報道が、NSA自身が監視の取り組みに資するため、アメリカ企業と協力して、秘密のバックドアを、チップや他のハードウェアに挿入して、この戦術を使ったと述べた。

 類似の禁止令が、アメリカ製ハードウェアに標的を定めるのには使われないのだから、不正アクセス可能なハードウェアの脅威は、中国企業に禁止令が突きつけられた本当の理由ではないのは実に明白だ。そうではなく、最もありそうな動機は、経済発展を鈍らせることを含め、中国を包囲し、制圧するワシントンのより広範な戦略と、欧米の競争相手を追い越す態勢にある個別中国企業を妨害することと一致する。

 最近、オーストラリアは、世界的なCovid-19問題の責任を中国のせいにする、アメリカが率いるプロパガンダ攻勢の先例に続いた。

 「アフリカの鉱夫とワイン生産者は、オーストラリアと中国のいざこざに乾杯」という題のロイター記事は、中国のこの動きを、オーストラリアとの、この増大する論争を永久に解決するため、より頼りになる友好的な貿易相手国を見いだそうとしていると指摘するだけでなく、キャンベラが「武漢でのCovid-19流行発生源の調査の呼びかけを率いた」時、この貿易摩擦が、最近どのようにエスカレートしたか説明しようと試みている。

 もちろん、これは中国がCovid-19流行に責任があるとほのめかし、結果として生じている世界的な問題にも責任があると、ほのめかすのを意図した政治的動機の調査だった。

 論理的に、たとえ中国が流行を発見し、隔離し、封じ込めそこね、国内中のCovid-19流行に責任があったにせよ、中国が、どうして、オーストラリアや、アメリカでの流行に責任があるか理解するのは困難だ。

 オーストラリアやアメリカ政府が、自身の国境内で、検出し、隔離し、ウイルスを封じ込めるのを、一体何が阻止したのか、中国がそうしなかった事実に関し、どれほど彼らが責められるべきだろう? この調査のプロパガンダ価値は、ここにあり、まさに中国がオーストラリア輸入に対して追加関税で報復した理由だ。

 貿易戦争は、北京と素早く和解しない限り克服不可能な形でオーストラリアを傷つけている。

 オーストラリアから中国に輸出される鉄鉱石の量は他国に変えることができない。どの国に同じ規模の産業基盤や、このような鉱石の需要があるだろう? どんな国もないというのが答えだ。

 更に悪いのは、下落する経済状態を埋め合わせるため、オーストラリアが探究している「経済対策」だ。

 オーストラリア国営メディアABCの「10億ドルの防衛製造計画の一環として、自国製誘導ミサイルを製造するオーストラリア」という題の記事は、こう主張する。

スコット・モリソン首相は今日遅く、計画を発表するが、「変化する地球環境」が主権能力を作り出す必要性を強調していると警告している。

 記事はこうも言う。

国防省は、製造設備運営の契約をする「戦略提携事業者」を選ぶ予定だ。

可能性がある業者には、レイセオン・オーストラリア、ロッキード・マーティン・オーストラリア、コングスバーグとBAEシステムズ・オーストラリアがある。

 兵器は、オーストラリアの税金を使って、アメリカや西欧を本拠とする武器製造業者のオーストラリア子会社に作られるから、武器製造の領域外では、現実的に、ほとんど技術を使わないか、全く使わないので、その過程で生み出される雇用は最小で、「主権能力」は全く発展しない。

 ミサイルは完成すれば、オーストラリアが中国に向けるか、同じく中国に、それらを向けるたろう、この地域の国々に売られる可能性が最も高い。

 武器への出費を正当化するために、中国に対し増大するオーストラリアの敵意に拍車をかけ、オーストラリア大衆の恐れを引き起こすプロパガンダ攻勢は、しばしばオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)などの政策シンクタンクから生み出されている。

 そのASPIは、まさに上に述べた、直接増大する危機から利益を得る武器製造企業レイセオンやロッキードから資金供給されているのは驚くべきことではない。

 もし貿易摩擦が十分ひどくなかったら、オーストラリア外交政策を動かす既得権益集団は、北京に対し、オーストラリアは信頼できるパートナーではなかったし、そうではなく、おそらく未来もそうではないという信号を出す、摩擦を拡大するだけの「解決」(や、より広範な紛争)を強化するのだ。

 中国は、オーストラリアなしで前進するのか?

 逆に、中国は選べる多数の選択肢を持っており、経済不安に対する防衛策として、何年も、それらを醸成してきた。だが、オーストラリアの敵意が今示している類の政治不安に直面して、北京に役立ったのは戦略だった。

 オーストラリアの中国-Covid-19調査を論じる同じロイター記事は、こう書いている。

だが、鉱業部門では、これまで10年間、中国は巨大な製造産業への原材料の流れを確保するため、アフリカでのプロジェクトを増やしてきた。

それら投資は今成果をあげており、オーストラリアを犠牲に、世界で二番目に大きい経済への輸出の後押しを得て、アフリカ原産諸国はロイヤリティを懐に入れている。

 記事は、広範な鉱石や鉱物や、中国がアフリカのパートナーのために、オーストラリアに対する依存から離れて多様化しようと努めている他の商品を報じている。

 記事は、わずか数年で、オーストラリアを犠牲に、アフリカ輸出業者が恩恵を受けるよう、既に、どれほど勢いが変わり始めているか述べている。この過程が終わってしまえば、オーストラリア政府にとって、自分が作り出した政治的損害の修復や、今や政治的に当てにならないと証明されたオーストラリア貿易に復帰するため、新しいパートナーをあきらめるよう北京を説得するのも非常に困難になる。

 オーストラリアが、その指揮に従っているアメリカ同様、オーストラリアは新たに出現している世界のパワー・バランスを受け入れ、世界の他の国々を犠牲にした欧米諸国の手中への不当な権力と富の集中を修正する基本能力のなさのため、自身を不必要に見当違いにしているのだ。

 インド-太平洋地域諸国間で建設的な役職を見いだし、中国の台頭を、この地域とグローバル大国として認めるオーストラリアの能力のなさ、逆に、地域における欧米の優位を再度主張する作戦で、ワシントンと組むのは、オーストラリアの没落を"もたらそうとしている"のではなく、既にオーストラリアの没落だ。

 オーストラリアがどこまで落ちるのか、また深みに落ちた後、完全に戻ることができるのかどうかは、キャンベラ次第だ。

 ジョセフ・トーマスはタイを本拠とする地政学誌The New Atlas編集長で、オンライン誌New Eastern Outlook寄稿者。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/04/14/australias-self-inflicted-economic-woes-continue/

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 クアッド仲間の苦境、ひとごとではない。

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菅首相訪米の日米首脳共同声明で「米国は日米安保条約五条が尖閣諸島に適用と再確認」。だが①適用は直ちに軍事力を使うことまで約束していない。②中国が在日米軍基地にミサイル攻撃できる力保有→滑走路破壊→戦闘機飛べない→尖閣周辺の戦いで米は中国に負ける

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【IWJ・エリアCh1・兵庫】13:30~「第53回メディアを考えるつどい『ゆがめられた放送行政 総務省疑惑 核心はここだ!! 』―登壇:佐藤章氏(元朝日新聞記者・AERA編集部)」
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40年間で2兆4000億円もの「電気代」が原発プロパガンダに消えた!? 日本のメディアを牛耳る巨大広告代理店「電通」の実態に迫る!~岩上安身によるインタビュー 第677回 ゲスト 『原発プロパガンダ』著者・本間龍氏
視聴URL: https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867

 

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