反中国同盟構築はアジアでの政治生命にとってアメリカ最後の試み
2021年3月25日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
最近のクアッド(四カ国戦略対話)サミットは中国には直接言及しなかったが、この集団の真意が対中国であることは、ほとんど否定できない。軍事的手段を通して中国に対処すべきか、この集団を厳密に反中国に留めるか否かについて、内部意見の相違はあるが、バイデン政権は確信している。彼らにとって、クアッドは「アジア基軸2.0」であり、アジア・太平洋でのアメリカの存続は、「中国脅威論」を売りこみ、自身それに対する主要防波堤とすることに依存している。それ故、前例がないクアッドのサミット・レベル会談を行う慌ただしい事態になったのだ。言い換えれば、バイデン「中国戦略」の中心は、アジア・太平洋で同盟諸国、特にトランプ政策で失望した国々との結びつきを再構築し、次に壮大な反中国連合を結集する喫緊の必要性だ。
そのため、クアッド・サミットは中国をライバルとしては言及はしなかったが、いわゆる「クアッド精神」は、アメリカが率いるアジア・太平洋支配体制を断固確立する狙いなのは明白だ。この「精神」は、クアッドを「自由で、開かれた、包摂的で、健康で、民主主義の価値観に支えられ、強要に縛られない地域を目指して努力する」のが狙いだ。そういうわけで、サミットは中国には言及しないが、依然、中国に直接対処するのだ。実際、これは中国に「聞かせる」ことが狙いだった。
最近アントニー・ブリンケン国務長官がアメリカ議会下院外交委員会でそれを述べた。
「中国が、我々の非難だけでなく、世界中から一連の非難を聞けば聞くほど、多少の変更が起きる可能性が増える。大量虐殺や粗野な人権侵害行為に責任がある人々に対するものを含め、我々が過去行ない、これから行える、制裁やビザ制限等、多くの措置がある」
再び、クアッド・サミットは、あからさまに反中国ではなかったが、それに続くアジア・太平洋へのバイデン政権訪問が、反中国同盟を築き、強固にすることに精力を傾けている。例えば、3月13日土曜、ロイド・オースティン国防長官は、アメリカ同盟国との軍事協力を強化し、中国に対し「信用できる抑止力」を促進するため、アジアを歴訪したと述べ、「中国は我々に忍び寄る脅威だ」「我々の目標は、中国や、アメリカと戦おうと望む他のどの国に対しても、信用できる抑止力を実現可能にする能力と、作戦計画と概念をしっかり持つようにすることだ」と付け加えた
トランプ政権の「貿易戦争」と「取り引き」を問題にした相反する政策で政策を批判して、オースティンは、アメリカの競争上の優位は損なわれたが「我々は依然優位を維持しており、我々は更に優位を高めるつもりだ」と述べた。
優位を増す鍵は同盟だ。同盟こそ「我々に更に多くの能力をもたらすので、国務長官として私が実現したいと望んでいる重要なものの一つは、そうした同盟の強化、偉大な連合、偉大な提携だ。」とオースティンは強調した。これは中国に対して、アジア・太平洋におけるアメリカの権益を増大させる鍵だろう。
したがって、オースティンの日本と韓国訪問は、トランプ政権によって彼らの絆に与えられた傷を修復することに焦点をあてた可能性が高い。日本の当局者が、尖閣諸島を巡る中国との紛争時、米軍が日本を支援するというオースティンの保証を求めるのは確実で、ソウルで彼は、トランプが突然キャンセルしていた韓国での定期的な大規模軍事演習を再開すべきかどうかの問題に必死だろうと予想される。既に両国は、トランプが終わらせると恫喝したアメリカ軍韓国駐留に対する費用負担合意をしている。
アジア・太平洋へのオースティンの本格的訪問は、犠牲者を出した昨年の衝突後、中国との関係がここ数十年で最悪状態の、もう一つのクアッド加盟国インドも含む。オースティン訪問は、従って、インド・中国間の緊張を、特にアメリカに有利に利用することに精力を傾けるだろう。アメリカは、現状で、この機会を利用せずにはいられない。このような機会は、緊張を緩和する代わりに、何よりもまず、アメリカの権益を満たす形で、この紛争地域にアメリカが入り込むのを可能にする。もしアメリカが、中国に対する同盟者としてインドが必要なら、モディ政権に中国に対するインドの生き残りには、アメリカの協力が必要だと説得する必要がある。再び、トランプ政権が、昨年のインド-中国国境紛争で、事実上、よそよそしくしていた事実は、アメリカに頼れる程度について、インドの信頼を大きく損ねた。オースティンの任務は、何よりまず、インドの信頼を再構築し、中国に対しする彼らの生き残りに対する、アメリカ支援の必然性をインド政府に確信させることに集中するだろう。
バイデン政権外交政策の根本的に重要な焦点が、中国なのは、ほとんど否定できない。これは前例がないクアッドのサミット・レベル会議だけでなく、国防総省長官としてのロイド・オースティンの未曾有の海外訪問任務から明白だ。
それが示しているのは、大統領任期が始まって2ヶ月も経たない中、バイデン政権は、トランプ政権が設定した中国との緊張関係の路線変更を急いでいないということだ。実際、バイデン政権は、緊張を強化しているだけでなく、前政権と比較して、より「信頼できる」、より「民主的で」、より「安定した、予測可能な」みかけを利用して、マイク・ポンペオが、構築し、率いようとして、失敗していた一種の「世界連合」に、いささか疎遠になった同盟諸国を引き込もうとしているのだ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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『主権者のいない国』を読み終えた。手元には『対米従属の構造』も『密約の戦後史 日本はアメリカの核戦争基地である』も。こうした本で明らかな宗主国・属国構造の中、朝貢すると、支持率があがる理由、全く理解不能。ストックホルム症候群。クアッドでの活躍を密約してくるのが関の山。コロナで医療を崩壊させて、アメリカ医療保険会社を本格的進出させることも密約するのではとも妄想している。
昨日の記事題名をもじれば「撤退は日本人が支配する日本にしかねないと警告するアメリカ諜報機関」
大阪株と言い出したタヌキ。イソジン武富士と良い勝負。よかれ悪しかれテレビに出続けていれば支持率は高いまま。東京人も大阪人も、そして日本人も、たしかに民度は高い。日本没落を祈念する逝火は進む。
植草一秀の『知られざる真実』
日刊ゲンダイDIGITAL それを言うなら、コメンテーターの無内容な発言。大本営報道バラエティー、ニュース番組の気味悪さは更に酷い。意味ある発言をすれば番組から降ろされるのだから、見ても、電気代と時間を失うだけ。
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