終わりから、ほど遠いシリアでのアメリカ戦争
2021年2月24日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
アメリカの制裁体制が、シリアの石油資源を支配下に保持し、直接シリアを略奪している事実は別として、既にアメリカは、シリアにおける軍事的立場を拡張し、強化しようとしている。ISISは既に敗北し、シリア政府が、シリアを再建し、統一し、領土保全を維持すると約束しているにもかかわらず、これが起きている。アメリカによる北東シリア占領は障害のままだ。今アメリカが北シリア支配強化を計画している事実は、バイデン政権が、トランプ政権がしていたことさえ、どれだけ越えているかを雄弁に物語っている。直接の軍事的存在を拡大することで、アメリカが率いる連合は、今既存の地域分裂を具体化し、シリア統一を防ぐことを狙っている。これは、それにより、アメリカがシリアの正常復帰を妨げるだけでなく、中東で、イランとロシアがシリアを彼らの主要な足場にするのを阻止するのを期待する妨害を意識して立案された政策のように思われる。
現状では、アメリカのシリア駐留の目的は、ISISを破るという建前で、最初に戦場に入った時とは異なっている。ISISは既に敗北し、その戦争における反ISISというアメリカの役割から、シリアそのものと、同盟諸国を破ることがアメリカの焦点になっている。シリアに関する米国議会への最近の国防総省報告が、シリアにおけるアメリカ戦争の最近の段階を反映している。報告書は、シリアにおけるアメリカ権益にとって最大の問題は、イラン、ロシアとシリア政権だと言う。報告書には、こうある。
「アメリカ政府の戦略的目標にとっての障害には、シリア国民の願望に応えて交渉するのをいやがる圧制的シリア政権、ロシアやイランや強暴な過激派組織などの悪質な関係者の干渉や、シリア政権の限られた影響力などがある。」
更にこうある「イランと提携する民兵は、依然アメリカ権益に対する大きな脅威だ」、「イランは、シリアを含めて、この地域全体のアメリカ軍陣地に対する作戦計画を展開し続ける可能性が高い」と言う。更に「イランは、シリアのアメリカと連合軍に関する諜報を集めるべく現地シリア人を採用しようと試みており、シリアのために攻撃を行うようこれらの個人を利用しかねない」と言う。
従って、アメリカによる「安定化」の取り組みの主要目的は、シリアを再建しないことで、この地域における「イラン、ロシアとシリア政権による不安定化の影響力への「対抗勢力」として、これら取り組みを利用することだ。
アメリカのシリア政策の主要目的は、従って、テロをくじくことではなく、シリア政府が「イラン軍とイランと提携する民兵との関係」を確実に断つことだ。言い換えれば、バイデン政権は、トランプ政権と同様、何よりも、イランを押し返し、シリアから去るように強いて、レバノンのヒズボラとの直接の繋がりを破ることを狙った政策を立案し、実行しているのだ。それはロシアを押し返すことも狙っている。
これらの取り組みは、既に、米軍が管轄する新軍事基地を北東シリアに設置する計画に至っている。基地の場所は、シリアにおけるアメリカ軍の長期駐留を念頭に考えられている。基地は、アメリカ率いる連合のための大半の補給・強化路線がシリアに入る、イラクのクルディスタン地域から北東シリアへの最重要な入り口近くに置かれるだろう。
先週、シリア人権監視団は、シリア領への50輌以上の車とトラックの新軍用車列の到着を確認した。報道によれば、装甲車両や物流資材や兵器を積載した軍用車列が北イラクのクルディスタン地方自治体が支配する地域から北東シリアへ入るのが見られた。
これらの進展は、一部は、アサドを辞任させるために、シリアで速い勝利を実現するオバマ政権の失敗が動機になっているアメリカ新政権の全体的な思惑に一致している。
アントニー・ブリンケン国務長官は、今度は「もっとうまくやる」責任を感じていることを示唆している。いくつかの他の政権の示度者が、過去の経験から教訓を学び、彼らが過去の失敗を避ける必要があると示唆した。ジョー・バイデン政権は、新軍事基地を建設し、古い基地を拡大して、どのようにその過ちを修正するつもりか示している。言い換えれば、今アサド退陣させられないが、クルド民兵を強化することで、シリアを分裂させ、政治的に不安定にしておくことができるのだ。
従って、軍の配置転換や軍事基地建設は孤立した出来事ではない。彼らはジョー・バイデンの干渉主義という考え方に合致する。実際、ジョー・バイデンは、アメリカ軍をシリアから撤退させるトランプの決定について大いに批判的だった。トランプと違い、バイデンは、アメリカの「無用な戦争」を終わらせると約束をしていない。
従って、新政権下、アメリカはシリアから撤退するつもりはない。北と北東シリアの既存の支配圏を整理統合しようと動いている。現状では、国防総省報告が示す通り、依然アメリカの「安定化の努力」を直接妨げたり、干渉主義の狙いをくじいたりする「北東シリアのもう一つの不安定要因」である「イラン、ロシアとシリア政府軍の存在」から判断して、このような統合が必要なのだ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/02/24/the-us-war-in-syria-is-far-from-over/
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シリア空爆の日、2月25日に訳していながら、うっかり掲載しそこねていた。
総理会見の仕切り役後任、外務省出身者に決定。強権的対応はしっかり引き継ぐだろう。
津波に備えなかった東電は、壊れた地震計も放置。参院予算委国会中継、福島瑞穂議員の質問「なぜ選択的政府別姓に反対か」という質問に決して答えない丸川男女共同参画担当大臣。蛙の面に水。批判されるべきは森だけではない。
BBCは、この異様さを四日前に報じている。
Japan gender equality minister opposes change on separate spouse surnames
日刊ゲンダイDIGITAL
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