最近の「クァッド」フォーラムとミュンヘン安全保障会議
2021年2月28日
ウラジーミル・テレホフ
New Eastern Outlook
インド-太平洋地域の状態を評価するには、一日、間をおいて(2月18日と19日)行われた最近の二つ催しは特に注目すべきだ。それはオーストラリア、インド、アメリカと日本(いわゆる「クァッド」を構成する)の外務大臣間で行われたオンライン・フォーラムと、ミュンヘンセキュリティー会議だ。
ミュンヘン会議参加者は「特別招待された」世界の一部主要国指導者と、主にNATO加盟国だった。中国は、現在、世界政治情勢に重要な、後者の国々の中になかった。近年、中華人民共和国は、ミュンヘン会議の、ある種「経済的」対応物であるダボス・フォーラムで行われた作業には参加していたのだが。
インド-太平洋地域での政治的ゲームが、どのように展開するかという中心的問題は、アメリカ-中国関係が、アメリカ新政権下で、どのように変わるかについての展望と関係する。中国に関して、ワシントンが、どんな特定の行動もしていない時、これら催しの両方で、アメリカ代表が行った発言は特に重要だ。それは、もちろん、他の参加国が言ったことが、どんな面についても、二の次だということを意味しない。
特にインド-太平洋地域で、アメリカ外交政策が、まだ一般的に不確実な状態で、これらの催しのいずれも、特に目立つ「明快な」要素も生み出さなかったことは述べておく価値がある。
クァッド加盟国の外務大臣は、かなり最近(去年10月6日)東京で交渉の席に既についており、そこでマイク・ポンペオがアメリカ代表を務めた。当初、当時は、インド-太平洋地域の海上航路における「通行の自由」の原則(誰が、それを「脅かしている」かは明らかだ)を遵守して、クァッド参加国にとって「信頼のシンボル」を維持する儀式的な、共同行動以上の、特定の何もないように思われた。
だが、一カ月後、クァッド・メンバー四カ国全員、ベンガル湾で初めて、マラバール海軍演習に参加した。一般的に、この名前の演習は、1990年代初期から開催されてきた。だが、2007年の一回限りを例外に、それらはアメリカ・インド二国形式だった。2014年から、日本は恒久参加者になった。2020年からマラバール海軍演習は四カ国構造となった。
現在のフォーラムを、本格的な軍事的、政治的協定に転換する可能性を評価する上で、マラバール2020演習が行われた事実から、クアッドは「これは既に少なくとも、ちょっとしたもの」であると定義できる。だが、まさしくクァッド・メンバー各国と、当初、この仕組みを「造り上げる」ため使われた対象、中華人民共和国との関係という不確実な要因があるので、それ以上の何ものでもない。
この不確実を生み出す上で、主に貢献しているのは、中国について、大統領と国務長官が言っていることに目立つ矛盾があるという(前任者同様)同じ状況が、アメリカ新政権で繰り返されているように思われるのは繰り返す価値がある。
最近2月18日に開催されたクァッド加盟国外務大臣フォーラムに関する国務省報道官ネッド・プライスの声明は、二週間前、アントニー・J・ブリンケン国務長官が、中国外交部長の楊潔篪に(特に、ミャンマーの状況について)に提出した不満の羅列だった。新機軸の中には、閣僚級会談を「少なくとも年に一度」「定期的に」次官レベルで開催するつもりだというクァッド参加者の「発言」もある。
そのメッセージ(2月5日のアントニー・J・ブリンケンと楊潔篪との電話会話で伝えられたものと同様)どんな形にせよ、少なくともアメリカと中華人民共和国間の若干のやりとりで、あり得る分野の何も説明していない。だが、そうした機会は、これまでの公式声明や、習近平中国主席との電話会話、ミュンヘン会議での演説でも、ジョー・バイデン大統領が指摘していた。
このむしろ長大な演説の内容は、ジョー・バイデン選挙言説の核心にあったおなじみのスローガン「アメリカは帰ってきた」の濃い影と重なっている。加えて、不確実な上記の状態も、このスローガン固有の内容にも当てはまる。
環球時報のこの話題に関する中国新聞の記事は(いつも通り)啓発的イラストがついていた。イラストは、政治ゲーム・テーブルに「バイデン」自身が持って来た椅子で、座った後、一体何が起きるか、不確実な状態を表している。
A・メルケルとE・マクロンの表情にご注意願いたい。彼らはこう信号を送っているかのようだ。「基本的に誰もあなたを待っていなかった。だが、もし来る(「戻る」)なら、あなたが「アメリカを再び偉大にしていた」これまでの四年で、ゲーム・テーブルで何が起きたか考えて行儀よく振る舞いなさい。」「起きた」あらゆることの中でも、ワシントンにとっては不快な驚き、まさに去年末(何年もの困難な協議後)署名された協定、EU中国包括的投資協定は注目する価値がある。
アメリカが、その最も親密なヨーロッパ同盟国イギリスが、今年既に、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加盟の公式申請を提出する意思を表明したのを喜んでいる可能性はなさそうだ。2019年1月1日に活動を始めたCPTPPは、これまでのところアジアとアメリカ大陸の11カ国が参加している。この連合は参加国のための共同体自由貿易地帯を構成する目的で作られているた。ドナルド・トランプ前アメリカ大統領が、2017年1月、就任式後の最初の政令で、TPP(現CPTPPの以前のもの)からアメリカを脱退させたことは覚えておく価値がある。
クァッド・フォーラムとミュンヘン会議は、この全く新しい文脈で行われた。これら二つの催し、二つ目の演説で、ジョー・バイデンは、特に、二年前「教授として個人的に」類似会議に出席し、最初に、出席者に「アメリカは戻ってくる」と約束したことを想起している。ヨーロッパ主要同盟国の大統領として、彼がミュンヘンに登場した事実が、約束を果たしたことの証言だ。
だが上記で表現されているのは、ヨーロッパ人が、これをどのように感じてるかについての「本当の気分」の可能性の一つだ。
欧米同盟国にとっての「様々な課題」と、世界秩序の「世界的変化」を背景に、NATOに対する「強い支持」(二度発言された)に加えて、彼は「世界防衛」のため「我々の防衛力を近代化する」必要を宣言した。それにもかかわらず、国防総省での1月10日演説で、彼は「外交の優先事項」と政権の活動が「全ての人々のために平和を保証する」方向に向けられていると強調した。
アメリカ大統領は「困難」と予想される「共同での、中国との長期競争」を同盟者に呼びかけた。2月7日、CBSテレビ・インタビューの際に言ったのと全く同様に、彼は再び中華人民共和国を様々な「規則」を侵害したと非難した。特に国際商業活動で。そして今「中国企業」が、これら「規則」を遵守するよう期待されている。
近年、中国の辺境地域や香港の状況に関して中国指導体制に向けたプロパガンダ攻撃は、アメリカ大統領のこの演説でも「制圧を独占し、常態化しようと望む人々に抵抗する」意図のメッセージで(暗黙の形で)続けられた。
だが、この激しい非難は、ロシア内政治の最近の出来事ゆえに、ロシアも標的にしているのは確実だ。これは、それに続く主張「クレムリンは我々の民主主義を攻撃し、賄賂を武器に変換している」で確認できる。
概して、クァッドの大臣レベルのフォーラムと、最近のミュンヘン安全管理会議両方の結果は、近未来のアメリカ外交政策や、重要なインド-太平洋地域の状況が、どう進展するかという問題の詳細を大幅に明らかにしていないことは繰り返す価値がある。
この点、クァッドの「アジアNATO」変身の可能性という問題は、重大な形式を引き受ける。ここで論じた二つの催しは、今後数年で、インド-太平洋地域に本格的な軍事、政治組織が生まれるかどうか、自信を持って予測する根拠にはなっていない。
ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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宗主国に不都合な政治家を潰すのが仕事の検察、彼をどう見ているのだろう。つまり、宗主国はどう見ているのだろう。衝撃的ニュースを報じる出版社、宗主国諜報機関と昵懇だという説、ただの都市伝説とも思えないのだが。属国首相は、実質的に、宗主国に決定されているのだろうと長年妄想している。
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