ブリンケンは言うべきことを言ったが、実行するだろうか?
マーティン・シーフ
2021年3月8日
Strategic Culture Foundation
これまでのところ、まさにロシア国境で継続している大胆で非常に危険な可能性がある同盟諸国との米軍演習を抑制する動きをバイデンは全くしていない。
3月3日のアントニー・ブリンケン国務長官のアメリカ国務省での演説は、世界中、特にカラカスとテヘランで暖かく歓迎されるべきだ。それは本当にアメリカ外交政策の極めて重要な変化を示しており、額面通り受け取るに値する。だが、それはバイデンが、単にドナルド・トランプだけではなく、前任者たちから継承したロシアと中国との根本的な政策不一致には触れていない。しかも、これらの遥かに大きな、取り上げられない問題こそ、世界を悪夢のような熱核戦争へと進める可能性が非常に高いのだ。
演説で、ブリンケンは、彼の前任者たち、マイク・ポンペオ、コンドリーザ・ライスやヒラリー・クリントンが決してできなかったはずで、ジョン・ケリーは、決して認めることを許されなかったことを認めたのだ。
ブリンケンは公然と、ワシントンが批判的だった、力ずくで政府打倒するアメリカの取り組みがあったことを認めたのだ。彼は更に公然と、それら取り組みの一部は失敗し、民主主義の大義とアメリカ自身への信頼を世界中でひどく損なったことを認めたのだ。
「我々は民主的行動を奨励するが、我々は高価な軍事介入や、独裁政権の力ずくでの打倒で民主主義を推進しない。過去、我々はこれらの戦術を試みた。それはうまく行かなかった。それらは民主主義推進の名をおとしめた、それはアメリカ国民から信頼を失った。我々は違う方法でするつもりだ」とブリンケンは言った。
イランとベネズエラ両国での政権転覆の取り組みを止めると誓った言葉で、ブリンケンが誠実だと信じる十分な根拠がある。
最初に、まさに重要な演説前日、ブリンケンは、トランプ、ポンペオや当時の国家安全保障補佐官ジョン・ボルトンが、茶番のようにベネズエラの合法的大統領として売り込もうとしたベネズエラ野党政治家フアン・グアイドと電話会話をした。世界中、特にヨーロッパと中南米のアメリカ同盟諸国が、ベネズエラの偉大な滝エンジェルフォールが下にではなく上へ流れるやら、世界は平らだと主張するのと同様、到底信じられないこのばかばかしい主張を支持するよう、屈辱的に鼻面を引きずり回されたのだ。
ブリンケンがグアイドと議論した内容詳細は、この記事を書いている時点では、まだ明らかではないが、国務長官のメッセージが何だったかは非常に明らかだ。想像上のアメリカ新ローマ世界帝国の威光を借りるのを熱心に望む、実に多くの過去の不正な、虚栄心に満ちたカモ連中と同様、グアイドは、犠牲にされると言われたのだ。
この動きは明らかにアメリカの実利的権益に要求されている。ウォール街と、そのアメリカ政府の使用人が、ジョン・D・ロックフェラーやJ・P・モルガンの台頭以来過去150年間従ってきた一つの教訓があるとすれば、勝ち馬に乗り、見込みがない負け犬を見捨てることだ。
グアイドは確かに見込みがない負け犬と見なされている。2014年、ジョー・バイデン大統領の昔の上司で親友のバラク・オバマによってカラカスに対して開始され、更にトランプとポンペオに熱狂的に強化された進行中のアメリカ経済戦争によってもたらされる継続する苦しみにもかかわらず、彼はベネズエラで、政治的、国民的、あるいは軍の目に見える支持を得られなかった。
それはベネズエラに対する経済戦争が終わることを意味するだろうか?とんでもない。上司のバイデン大統領同様、ブリンケンはオバマ政権時代、100パーセントそれを支持していたのだ。既に、国内経済、社会政策のため、共和党の憤怒の源となった新政権は、気弱だと攻撃されかねない新境地を気軽に切り開くまい。
残忍に取り扱われた子供のように、1950年の昔、ジョー・マッカーシー上院議員が、彼らを「中国を失い」(中国は決して彼らが失うべきものではなかったのに)共産主義に弱気だと非難した時以来、リベラル民主党は、このような非難をずっと恐れている。
同様に、ベネズエラに対する経済戦争を終わらせるには、決定的な独自行動が必要だが、ブリンケンはバイデンやジェイク・サリバン国家安全保障補佐官同様、彼の長い、遅い、たゆみない出世を、まさに1950年代の党大統領候補アドレー・スティーブンソン時代からのリベラル民主党の黄金律に従うことに負うている。よかれ悪しかれ、決して持続的に強い姿勢をとってはならない。ある政策が、たとえ自分を崖から飛び下りさせるものであっても、その速度を少しだけ遅くして、崖から転げ落ちるのが政治的運命なのだ。決して実際、あえて止めたり、どんな悲惨な行動方針も反転させたりしてはいけないのだ。
これらの単純な原則が、リンドン・ジョンソン、ジミー・カーター、バラク・オバマとある程度ビル・クリントンさえの、果てしない外国政策大失敗を決定したのだ。
クリントンは、マドレーン・オルブライト国務長官と彼女の生涯の師、ロシア恐怖症の元国家安全保障補佐官ズビグネフ・ブレジンスキーに、いやいやながら鼻面を引き回されて、セルビアに爆弾投下し、ロシアとの不必要な対決の危険を冒すようにさせられた。
従って、ブリンケンが直接的な政権転覆の取り組みをやめると誓ったのは、当初は穏健に見えるが、決して本当に建設的なことには導かない政策の一環だと思われる。
ブリンケンは、バイデンやサリバンのように、そもそも彼ら全員それを支持して、オバマのために、交渉を支援したという理由から、イランとの包括的共同作業計画(JCPOA)へのアメリカ参加を復活させたと望んでいる。
だが、新政権は既に、サウジアラビアを、中国やロシア側に追いやることはあえてしないことを明らかにしている。ブリンケン演説は、本当に、アメリカのヨーロッパ同盟諸国とイランが共に歓迎するだろうJCPOAに対するアメリカ復帰をもたらすかもしれない。だが、それはこれまでのところ、他の何にも導くことはありそうもないように見える。
同様に、これまでのところ、まさにロシア国境で継続している大胆で非常に危険な可能性がある同盟諸国との米軍演習を抑制する動きをバイデンは全くしていない。もしこうした行動を、ロシア空軍と海軍が、アメリカ沿岸やアメリカ領土に近い場所で実行すれば、完全な憤激を引き起こすはずだ。
同様に、米軍は、政権と超党派議会両方の支持を得て、太平洋の2つの列島線中に中国を封じ込めると宣言して、公然と西太平洋での軍事配備強化に突き進んでいる。
ブリンケン演説は世界の緊張を緩和するための前向きな第一歩として本当に歓迎されるべきだ。だが彼は言うべきことは言ったが、本当に実行し続けるかかどうか、祝うには早すぎる。
マーティン・シーフは海外特派員として、24年間、ワシントン・タイムズとUPI通信社で70以上の国から報道し、12の戦争を担当した。彼はアメリカと世界経済問題専門。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/03/08/blinken-talks-the-talk-but-will-he-walk-the-walk/
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岩波書店の月刊誌 世界4月号の「誰が廃炉にするのか?」に、責任逃れを意図した廃炉対策組織の構造が書かれている。政府・審議会、いずれも責任を負わない。コロナ分科会が好例。大本営広報部、特攻五輪の話題はあつかうが、廃炉対策のひどい実態には決して触れない。地上波であの映画が放送されていた。全く知らなかったが、知っていても見た可能性は皆無。
LITERA
地上波初放送 映画『Fukushima50』の事実歪曲とミスリード 門田隆将の原作よりひどい事故責任スリカエ、東電批判の甘さの理由
巧妙狡猾な答弁拒否。
デモクラシータイムス 残念な下関市長選。
【横田一の現場直撃 No.102】アベ王国山口下関、市長選直撃/桜疑惑、利益誘導土建政治の現場/4億不明会長幼稚園にも寄り道/参院広島再選挙、立民どうした!
今日の孫崎氏のメルマガ題名
菅首相四月前半訪米予定。では米国からみた「同盟国」(米国の勢力下の国)はどう位置付け。権威のアリソン教授 勢力圏とは、「自国の影響下にある地域、他国に服従を求め、支配的影響を行使」。服従しない時、経済制裁や体制変革等の代償を支払わされる。
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