中国は、中東で、いかにアメリカを出し抜いているか
2021年3月4日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
中東での優位と影響力のための中国とアメリカの競争が、中国復活と、ジョー・バイデン政権下の介入と対決の政治へのアメリカ復帰によって激化している。最近、アントニー・ブリンケン国務長官は、アメリカは「民主主義」と「人権」を、外交政策の中心に置くと発表した。「民主主義」と「人権」は、何十年もアメリカ介入とライバル国との対決政治を正当化するため使われてきた。この談話後、アメリカ当局者が、しばしば中国とロシアでの「人権侵害」に言及するのが見られる。ブリンケンは、このように発言した。
「バイデン大統領は、わが国の民主主義の価値観と、外交上のリーダーシップを結びつけ、民主主義と人権擁護を中心とする外交政策に尽力する。」
この種の政治への復帰は、戦略上の要求事項で、トランプの「アメリカ・ファースト」政策が、アメリカの下落と中国勃興の理由と見る考えに根ざしている。
中国の勃興は、単にアメリカの凋落やトランプの「アメリカ・ファースト」の結果というだけではないが、中国の勃興がアメリカ凋落の大きな要因になっているのを否定することはできない。これは歴史的に、アメリカ支配下にあった地域、中東で特に明白だ。
中国の中東政策の中心は、相違はそのままにして共通点を求めるという考えだ。中国が共通点を探求するのは、紛争の管理や解決における役割を控える交渉への戦略上の転換に基づいている。この方向転換は、中国も一部である、多国間の政治的、経済的、安全保障構造無しには中東は安定に戻れないという考え方が強まることに基づいている。
多国間体制を通した紛争管理に対する、中国の関心の増大は、アメリカが、中東との関係の長い歴史にもかかわらず、中核の問題を解決し損ねている事実に基づいている。他方、アメリカは直接これら紛争を強化している。これはアメリカとイランと、イスラエルとイラン間の対決激化からも明白だ。アメリカが中東平和に貢献するつもりなら、それはJCPOAの厳密な厳守を通してこの目標を実現していたはずなのだが。現状、アメリカはまったく逆のことをしている
欧米アナリスト連中は、共通の政治的、経済的、安全保障インフラの、あらゆる可能性を拒絶する「複雑な」中東の光景を示し続けているが、それは中国がアメリカの最も古い同盟諸国の一部と、直接の結びつきを発展させる上で、近年、いくつか重要な進展をしていることは変わらない。例えば、これはUAEにおける中国の深い関与と、港湾建設における増大する役割から明白だ。
コロナ流行中でさえ、中東における中国の活動は成長し続けているが、そこでもアメリカが割りをくっている。UAEは、中国の支援で、北京外で最大のCovid-19検査施設をアブダビに開設した。直ぐにバーレーンとモロッコが続いたが、UAEは中国国営企業シノファームが製造する中国ワクチンを最初に認可した国だった。これら全ての国が、アメリカに非常に近く、イスラエルやアメリカと共に、中東の平和を維持するための2020年8月の宣言、アブラハム合意の一員であることを指摘するのは重要だ。
アメリカは、アメリカとヨーロッパの一部で、中国の5G技術使用を阻止することが可能だったが、中国は既に、中東へのデジタルのシルク・ロードを広げる上で、いくつか非常に重要な進展をしている。中東における中国成功の一つの重要な理由は、中東に対する石油依存を活用して、情報と通信技術製品のため中東の1620億米ドルの市場参入拡大が可能だったことだ。中国は、要するに、石油依存を活用して、彼らの依存を、5Gで、相互依存に変えることに成功したのだ。
一月、中国への最大石油供給国の一つ、サウジアラビアは、公共・民間部門の成長を支援する人工知能開発で同社と合意した数カ月後、中国外で最大のファーウェイ・ストアをリャドで開店すると発表した。2020年夏、サウジアラビアの投資会社Baticが、既に紅海でのヤンブー・スマート工業都市プロジェクトで主要パートナーとなっているファーウェイと王国の「スマート都市」プロジェクトで仕事をする合意をした。これらの進展は、中国が他の場所で、アメリカに率いられる封鎖を直接埋め合わせるのを助けた。「中東で、我々のパートナーの信頼を獲得することで、我々は、アメリカが追求しているような外部の政治的圧力を和らげることが可能になった」と最近のインタビューで、ファーウェイ中東支社長のチャールズ・ヤンが語った。
共通の基盤を見つけるという中国戦略が、相互に有益な取り引きという構造を構築するのを可能にした。国連統計は、サウジアラビアとの2019年の貿易が、約364億米ドルに達したことを示し、他方UAEとの貿易は500億米ドルを超えた。「デジタル・インフラが(湾岸諸国の)国家転換戦略の主柱になった」とヤンは更に述べている。
中東で増大する中国の経済的、政治的、デジタル上の地位は、アメリカ、特に国防総省で多くの当局者を懸念させる大きな理由だ。元国防総省当局者の一部は、こう主張する。
「中東でアメリカが中国に対抗するのは必須だ。我々は極めて重要な戦略的関係を譲らないよう保証する革新的解決を変更し追求するため働かなければならない。バイデン政権が中国の脅威を無視し続ければ、アメリカの国際指導力を損なうことになるだろう。」
この点で、上記で引用したアントニー・ブリンケン声明は、バイデン政権が既に、主にアメリカの世界支配と、中東や他の場所、つまりヨーロッパとアフリカでも、中国への反撃を狙う方法を探す形の政治に戻ると決めたことを示している。アメリカが実際これができるかどうかは確実からほど遠い。実際、中国が10年程度で世界最大の経済になるのに十分速く発展していることを考えれば、それはありそうもない。それはアメリカが、ほとんど逆転できない既成事実なのだ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/03/04/how-china-is-outsmarting-the-us-in-the-middle-east/
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昨日の東京新聞朝刊特報面、拓北農兵隊が話題。古河足尾銅山鉱害と闘った田中正造の弟子、黒沢酉蔵の発案で生まれたとある。善意からではあったが、時間が限られ、無謀な計画になったという。「無計画に私たちを北海道に送ったように、この国は苦しくなると真っ先に民衆を切り捨てる。声を上げて行かなければ同じ事が繰り返される。」
本音のコラムは看護士の宮子あずささん。コロナ流行のどさくさに紛れ「厚生労働省は原則禁止している看護職の日雇い派遣を、介護・福祉領域に限って認める方向で検討を始めた」という。「日雇い派遣の無制限な解禁や、看護職の賃下げに繋がりかねないと懸念すると言われる。」ごもっとも。政府が国民のためになる政策を実施するわけがない。
日刊ゲンダイDIGITAL
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