急なイエメン和平提案は崩壊するサウジアラビア石油経済が理由
Finian Cunningham
2021年3月26日
Strategic Culture Foundation
イエメン人が報復し、アンクルサムが手を引く中、サウジアラビア支配層は屈辱的敗北に直面している。
6年、イエメンを爆撃し、南の隣国を封鎖した後、今サウジアラビア支配者は、平和を見いだすことを固く決意していると言っている。この動きは、本物の平和というよりも、石油王国の経済的生き残りが狙いだ。
サウジアラビア君主国家は「全ての銃声が完全にやむ」ことを望んでいると言う。イエメンに対するサウジアラビア戦争を可能する上で最も重要だったワシントンは、最新の「和平提案」を支持している。今週、アントニー・ブリンケン国務長官は、「協力して、イエメンでの紛争を終わらせ、人道的アクセスとイエメン人のための援助を促進する」ため、彼らと話をしていると言って、サウジアラビア支配者の提案を支持した。
サウジアラビア外務省はこう述べた。「この構想は兄弟のようなイエメンの人々の苦しみを終わらせることを目指し、包括的政治解決に達するための努力への王国の支持を確認する」。
サウジアラビアとアメリカのこの胸が悪くなるような二枚舌を信じることができるだろうか?
だから、六年間、イエメンを容赦なく空爆し、国際連合によれば、世界最悪の人道的危機を起こしておいて、サウジアラビアと、連中に兵器を供給したアメリカ兵器企業は、平和に向かって、苦難を終わらせる良心を発達させたように思われる。
紛争を終わらせようとしている本当の理由は、石油に依存するサウジアラビア経済の危険な状態だ。石油とガスと石油産業の国有企業サウジ・アラムコは、最近その利益が前年と比較し、2020年、半分近くに落ち込んだと発表した。880億ドルから490億ドルまで下がったのだ。
石油経済が国家予算のほぼ90パーセントを占めることを考えれば、これはサウジアラビア財政に対する途方もない打撃だ。サウジアラビア支配者は、3400万人の国民を満足した状態に保つために、膨大な国庫補助金に頼っている。石油産業の収入が暴落する状態で、それは公共支出を維持するために、国家財政赤字が爆発するか、さもなくば、緊急削減で、社会不安の危険を冒すことになるのを意味している。
サウジアラビアは最大石油輸出国のままだが、Covid-19流行と、世界経済が景気後退しているため原油価格は急落した。ある時点では石油価格が一バレル約20ドルに下落した。サウジアラビア経済は利益を得るためには、一バレル約70ドルの石油価格が必要だ。
結局、サウジアラビアのイエメンでの戦争は、国家財政にとって、深刻な流出となり、専制君主国の見かけ上の安定性を危険にさらしかねなくなったのだ。
更に懸念されるのは、首都リヤドを含め、主要なサウジアラビアの標的に対するイエメン・フーシ派反抗者によるミサイルと無人飛行機攻撃の増加だ。
イエメン人反抗者は、東部州のダーランやダンマームの本部や、アブハー、アジール、ジーザーンやラス・タンヌーラの都市でも、アラムコ設備に対する空襲をエスカレートしている。目標には製油所と輸出ターミナルが含まれる。サウジアラビアは、アメリカ製のパトリオット防衛体制でミサイルの多くを迎撃したと主張している。にもかかわらず、イエメンが1,000キロの距離を越えてサウジアラビア石油経済の重要な部分を攻撃できる事実は、投資家の信頼に悪影響を及ぼす安全保障上の重大な懸念だ。
最初の主要攻撃は、2019年9月、フーシ派無人飛行機の、アブカイク巨大精製コンプレックスへの命中だった。それはサウジアラビアの石油生産を一時、半分にまで減少させた。投資家が政治的リスクを恐れたため、株式市場でのアラムコ株新規公開が遅れた。
世界的な状況のため、サウジアラビア石油経済がひどく縮小している時に、経済を更に衰弱させる脅威は、フーシ派の激化する空爆作戦だ。彼らはサウジアラビアの中枢地域へと戦争を拡大しているのだ。
バイデン政権は、サウジアラビアに対するフーシ派ミサイル攻撃を「容認できない」と非難した。ワシントンが、どれほど、サウジアラビアに、イエメンに無差別に爆弾を投下する軍用飛行機やミサイルやロジスティクスを提供し、何万人もの死をもたらしているかを考えれば、このようなアメリカの懸念は人を愚弄するものだ。アメリカは、重要な食物や薬の供給を阻止するため、サウジアラビアが、イエメンの海と空港を封鎖できるようにするのを可能にした。イエメン国民3000万人のほぼ80パーセントが対外援助に依存している。封鎖は戦争犯罪で人類に対する犯罪だが、アメリカは完全に共謀している。
ジョー・バイデン大統領は、イエメンでサウジアラビアの戦争に対する米軍支援を終わらせると言った。それは選挙公約だった。だが何かしたとして、アメリカが、実際どんな軍事支援を止めたかは明らかではない。サウジアラビアによる食物貯蔵所爆撃は続き、イエメン封鎖は不可欠なアメリカのロジスティクスがなければ持続できなかったはずだ。
より皮肉なのは、オバマが大統領で、バイデンが副大統領だった2015年3月、サウジアラビアが戦争を始め、それが勝者なき泥沼となり、その恐ろしい人間の苦難が、アメリカの国際イメージの下劣なしみになったのを、バイデン政権は知っているのだ。
それが、バイデンと彼の外交官が、サウジアラビア支配者に和平を求めるよう促している理由だ。今サウジアラビア君主国家は「防衛大臣」ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が始めた無謀な戦争が、もし彼らがサウド家として知られる、がたがたの砂上楼閣を維持したいと望むなら、維持する余裕がない代償を伴うことを悟ったように思われる。
最近の和平提案を、イエメン反抗者は直ちに拒否した。彼らはそれには「何も新しい」ものがないと言う。フーシ派は戦争を終わらせる唯一の方法は、サウジアラビアと彼らのアメリカ・スポンサーが、イエメン侵略を終わらせることだと言う。「取り引き」などあり得ない。サウジアラビアとアメリカが撤退するだけの話だ。
サウジアラビア石油インフラに対する空爆は、王室国庫への常に増大する損害として続くだろう。だから、サウジアラビア支配者は、この犯罪戦争に無条件降伏する以外選択肢はない。イエメン人が報復し、アンクルサムが手を引く中、サウジアラビア支配層は屈辱的敗北に直面している。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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「イエメン内戦 サウジがフーシに停戦案 合意は見通せず」という記事を数日前にみかけた。不思議に思いながら見過ごしていた。
聖火を始めたのはナチスなのだが、不都合な事実は報じられない。地域が変わるたびのテレビ聖火報道にもうんざり。個人的にはSLと並走したのにがっかり。ただしSLは好きだ。先頭を走るトラックの会社の飲み物、最後に飲んだのはいつだったろう。だが、あの会社のお茶は残念ながら気がつかずに飲んでいる。
ナチス由来、日刊IWJガイドが触れている。講読している東京新聞で良い記事と思いながら読んでいたが、ナチス問題は気がつかなかった。
※聖火リレー 大音量、マスクなしでDJ…福島の住民が憤ったスポンサーの「復興五輪」(東京新聞、2021年3月26日)
https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/94041人類がコロナを克服した証として五輪を行うという「虚飾」のために、コロナ禍の中を聖火リレーが走り、世界から歓迎されるどころか、顰蹙(ひんしゅく)を買っています。
東京新聞の原田記者の記事は、その空疎な「お祭り騒ぎ」ぶりをよく伝えていますが、それでもその中に、これが「ナチス由来」の「捏造された伝統」であることを指摘する箇所はありません。
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