サウジアラビアとUAE向け兵器輸出のバイデン「見直し」はペテン
2021年2月2日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
バイデン政権は、サウジアラビアとUAEへの兵器とF-35戦闘機輸出を「見直す」と決定したが、提案されている「見直し」は、湾岸の伝統的同盟国に対するアメリカ政策変更を示すものではない。湾岸諸国に対するアメリカ政策の変更は、兵器輸出中止を理由に起きることなどあり得ない。地域におけるアメリカの重要な利害関係が根本的に変化する場合にしか、それは起きないが、それには、イランとの完全な正常化や、パレスチナの人々のためになるパレスチナ問題の解決など、様々な問題が含まれる。現状では、ジョー・バイデン就任で、自動的に、これらのどれかをもたらすわけではなく、同様に、新政権が、これらの国々が高度な兵器システムを入手する不可欠な理由を消滅させて、紛争が起こりがちな中東の地政学の光景を、一夜にして変える魔法の解決法を持っているわけでもない。だから、進行中の「見直し」を、アメリカ新政権がもたらそうとしている本格的な戦略上の変化の序幕と見なすのは、政治的に間違いだ。
ジョー・バイデン政権がイラン核合意復活に興味を持っているのを否定することはできない。輸出を止めることで、バイデン政権は、湾岸の二国以上のものに標的を定めているように思われる。輸出停止はイランにメッセージを送るが、それは更に、たとえ一時的にせよ、合意再開を認める上で、彼らのイラン政策を、アメリカの政策と合致させる重要性を、UAEとサウジアラビアにも語っているのだ。バイデン政権は、単にイランに、その「本気度」を示して、トランプ時代の緊張という遺産を修復しようとしているだけだ。だから「見直し」は、UAEとサウジアラビアが狙いというより、むしろイランが狙いなのだ。
駐米大使が述べたように、UAEは既にこれを予期していた。彼らは新政権を批判しなかった、アメリカ国務省が素早く確認したように、見直しは「大半の政権移行に典型的な型通りの行政活動で、この政権の透明性と良い統治への公約の実証で、アメリカの兵器輸出が、より強力な、相互運用可能な、より有力な安全保障パートナーを構築する我々の戦略目標といっそう能力がある安全管理を満たすのを保障するため以外の何者でもない」。
「型通りの行政活動」は、実際は、間もなく行われる戦略上の変化とは、基本的に違う。アメリカと湾岸両国との安全保障関係は変わらないままだ。実際、バイデン政権は、既にサウジアラビアとの約束を再確認している。リヤドでの最近の攻撃後、「我々は、イエメン戦争に終止符を打つことを含め、道義的外交を通して地域の緊張を緩和させるよう努力し、我々はパートナーのサウジアラビアが、領土に対する攻撃から守るのを支援し、安定性を損なおうと試みる連中に責任をとらせる」とアメリカ国務省は素早く確認した。
新国務長官も「見直し」発表のわずか数時間後、アメリカはアブラハム合意の立場を変えていないと述べた。実際、そもそもF-35販売契約は、究極的に合意をもたらした一環だった。
ブリンケンの発言を引用する。「それら[アブラハム合意]を維持するため、あらゆる約束を十分理解しようと努めており、我々は今それを検討している。一般的に言って、兵器販売では、考慮されている商談が、我々の戦略目標や外交政策を推進するものなのを確認するために、政権発足時に見直すのは典型的だ。我々は、今それを行っているのだ。」
この動きは「一時的」だと国防総省も確認し、湾岸同盟諸国と長い良好な関係の実績がある新国防長官は、上院軍事委員会で、こう述べた。国防省は、イランを阻止し、地域の安定を支持するため必要とされる能力を決定するため、中東の地域パートナーとの交渉を維持する。
現状、サウジアラビアが「のけもの国家」だという宣言について、アメリカ当局者は誰も何も発言していない。バイデン政権は選挙運動公約を果たすつもりはない。政権はこの「 見直し」を専門用語で覆い隠しながら、この取り引きを、サウジアラビアとUAEを強制的にJCPOA復活に対する受動的立場に追い込むために使おうとしており、抜け目がない。
だが、これは、たやすいことではない。一つには、中東でUAEとサウジアラビアは、アメリカの重要パートナーのままだ。現状、中東における米軍の足場は、主に二つの主要湾岸アラブ諸国との継続的な攪乱されない関係に依存している。この湾岸両国は不可欠で、重要なアメリカ権益のため犠牲にしてもよいことからは、ほど遠い。
同時に、サウジアラビアは、アメリカで、特に、その多くがトルコのサウジアラビア領事館内でのジャマル・カショギ殺人後、王国との結びつきを断つよう主張していた民主党員の間で彼らのイメージを復活させる措置をとっている。主流アメリカ・メディアのいくつかの報告が示しているように、政治献金で民主党候補者を大いにひいきにするエデルマンのような強力な非常に影響力を持ったロビー企業との結びつきを、サウジアラビアは再確立した。サウジアラビアは金の力でバイデン政権に入り込んでおり、新政権が湾岸諸国との「強い結びつき」を主張し始めるのに、長くはかかるまい。
ロビー活動は効果がある。現状、ジョー・バイデン政権は既にバイデン候補とは別物のように聞こえる。イエメンでのサウジアラビア戦争を支援するのをやめると決める代わりに、バイデン政府高官は、イエメン当局が戦略上重要な地域を解放し、彼らの支配を再確立するのを支援する目的で、フーシ派に新たな制裁を課すことを確認した。
現状、アメリカと湾岸同盟諸国間に基本的変化がないのを否定することはできない。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/02/02/biden-s-review-of-us-arms-sales-to-saudia-uae-is-a-hoax/
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