欧米の複占に挑戦するロシアと中国の民間航空機企業
2020年12月29日
Ulson Gunnar
New Eastern Outlook
アメリカが本拠のボーイングとヨーロッパの航空宇宙巨大企業エアバス、業界の多くが複占と呼ぶものが、世界中の民間航空業界を何十年も支配している。だが最近の他の多くの産業と同様、中国経済の技術的勃興がこの複占の未来にも疑問を投げかけている。
最近、2008年に設立された中国商用飛機(COMAC)は、国内向けに、様々な種類の商用航空機を開発しており、外国でも、その製品を販売しようと試みている。海外市場は、中・長期の話だが、中国は、国内的に、既に、かなり先まで、民間航空機への需要が増大しいる世界最大の航空市場がある。
COMACは、この需要を満たす立場になるべくつとめているが、その過程で、最終的には、世界中で、民間航空機を生産し、保守できる、ボーイングやエアバスと同等の、信頼できる航空宇宙会社の地位を確立しようとしている。
ロシアの統一航空機製造会社社(UAC)も同様事業を拡大しており、ボーイングやエアバスと比較すれば小さいにせよ、既に海外民間航空市場で一定のシェアを享受している。
中露国際商用飛機有限責任公司(CRAIC)を通して、COMACとUACは共同で、更に両社の競争力を強化する長距離ワイドボディーの双発ジェット機を開発している。
CR929と名付けられた新型航空機は、何年か後に市場に導入される前に、2025年までに初飛行をすると予想されている。
今のところ、CR929は、真っ向から、ボーイングやエアバスと競争する能力はありそうもないように思われる。それより、未来の製品が国際的に他の国々に広く受け入れられる前に、COMACとUAC両社の他の製品とともに、ロシアと中国の民間航空市場でまず、実績を作る可能性が高い。
これは、現代の地政学状況のみならず、一層多極世界に向かい、現在の欧米単極秩序、ボーイング-エアバス複占を用心深く守っている国際秩序から離脱する未来の世界秩序も考慮した長期計画なのだ。
実際、中国とロシア両国に対するアメリカ制裁の拡大しつつしるリストの中には、特に両国の民間航空産業に標的を定めたものがいくつかある。
これらには、CR929や未来の航空機設計の中に最終的に組み込まれるだろうシステムや部品を、欧米企業が、いずれかの国に提供するのを阻止する制裁も含まれる。
このような制裁は、確実にCR929開発を遅らせ、中国とロシアの民間航空産業の発展を抑制するだろうが、中国の巨大通信機企業ファーウェイを狙った制裁がそうであるのと同様、これら制裁が、いずれかの国の民間航空産業を完全に止めることはありそうもない。
さらに、このような制裁は、中国の巨大な成長しつつある民間航空市場から、ボーイングなどの企業の排除を含みかねない報復的制裁の可能性をもたらす。
これはアメリカ制裁で直面する、COMACや、その製品や、ロシアのUACと共同開発している製品の技術的抑制を埋め合わせ、中国国内市場で技術を成熟させ、国際的に最終的にボーイングやエアバスと直接競争するのに必要な時間と場所を与えることになろう。
だから、欧米による民間航空複占に対するCOMACとUACによる脅威は差し迫ったものではないが、それは存在しており、増大しているのだ。中国とロシアと、自由な市場で、公正に競争する、欧米の能力あるいは確信の欠如ゆえに、COMACとUACが報復的制裁によって保護された市場で両国の企業を維持するのに十分な大きさを遥かに超える市場で、彼らの航空機を開発するために必要な条件を作り出しているのだ。
「逆境は人を強くする」という格言が、ここでは適切に思える。もしCOMACとUACが、アメリカが欧米供給元に、両社に販売させないシステムを自国で開発して、アメリカからの現在の圧力にもかかわらず、世界に通用する民間航空機開発を続けることができれば、両国の企業が、おかげで、より強くなる結果になるだろう。
同時に、多くが既にUACのスホイ・スーパージェットを購入しているアジアじゅうの中国パートナーが、特に東南アジアで、近い将来に、COMAC航空機を採用すると想像するのは困難ではない。
建設的な競争と大国間のバランスは多極化の重要な特徴だ。数年後、COMAC、UACと彼らのジョイント・ベンチャーのCR929が具体化し、願わくは、近いうちに飛行して、欧米の民間航空複占が解体するのは、多極化の成功を計る重要な目安だ。
Ulson Gunnarはニューヨークを本拠とする地政学評論家、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/12/29/russian-chinese-civilian-aviation-challenges-western-duopoly/
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日の丸ジェットの夢、頓挫を連想した。今『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』を読んでいる。宗主国経済が、戦争に依存していることがわかる。この宗主国が支配しているのが、わが属国。福祉やコロナ対策ではなく、対中国戦争準備こそが、至上命令。逆らえば、政権は潰される。
というわけで、日刊IWJガイド インタビュー再配信情報が多々あるが今日は孫崎氏を拝聴する。
【年末年始特別配信・IWJ_Youtube Live】20:00~祝1000回記念!21世紀最大のテーマ「覇権をめぐる米中衝突」が現実に!常時臨戦国の「正体」を露わにした米国と属国日本!「朝鮮戦争の正体」が見せる真実!岩上安身によるインタビュー 元外務省情報局長・孫崎享氏 前編(1)
視聴URL:https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867
デモクラシータイムスは 元日も放送。
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