長期間、不毛になるオーストラリア-中国関係
2021年1月6日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
中国は、何年間も、オーストラリアの最重要貿易相手国だった。2019年末まで、中国はオーストラリアの全輸出のほぼ40%を占めていた。どんな正気な国であれ、本当に危険にさらすような取り引き関係ではない。それでも、それは、まさに中国への反感が増大していた現在の政治指導部下で、オーストラリア政府がしたことだ。
最近石炭で起きたようなオーストラリア商品の露骨な禁止や、ワインのような様々なオーストラリア輸出に対する、事実上中国市場で売れないようにする法外に高い税金を課して、中国が次第に報復し始めたのは、絶対に誰も驚くべきことではない。
現在、この状況に関して、評論家は、以下二つの意見の、いずれかだ。これは解決できる問題だ。あるいは、オーストラリアは中国市場を必要とせず、他に商品を売った方が良い。これら選択肢のいずれも、とりわけ現実的ではない。
まず、前者の意見を見よう。理論上、問題は確かに解決可能だ。それは、これまで9ヶ月間ほど、世界貿易にこの衝撃的影響を与えたコロナウイルス流行に対処するうえでの、スコット・モリソン首相の極めて愚かな発言のおかげで起きたのだ。
モリソンは、世界流行の発生源として、中国の役割を公然と問題にしたのだ。このような見解は、控えめに言っても、実に軽はずみだった。たとえ、ウイルスが、モリソン発言の基本になっている通り、中国で始まったのが本当だったとしても非常に不適当なコメントだった。大統領が「中国ウイルス」と呼び、発生源に対する見解を隠そうともしないアメリカの明らかな代弁者として、モリソンが行動したのは極めて不適切だった。
最近の研究では、ウイルスは中国で発生する何カ月も前に実際に始まっており、より正確には、スペインやイタリアやアメリカにまで起源をたどることができることがわかっている。
中国がモリソンの非難に激怒したのはもっともで、それでオーストラリア商品の輸入を次第に縮小し始めたのだ。問題は解決できると信じる人々は、モリソンの謝罪が損害修復に、かなり効果があるだろうと示唆している。失礼ながら私は同意しかねる。この意見の相違には多くの理由があり、そうそも、モリソンの意見に政治党派の同僚が広く同調しているのだ。だから、謝罪は、ほとんどありそうにない。
より重要な理由は、彼は最初に怒りをかき立てるようなことを発言して、アメリカの願望を実行したモリソンは、アメリカ政治支配層の過激な反中国見解の便利な使い走り以上の何者でもないことだ。
モリソンの軽率な発言による貿易結果の辛らつな皮肉の一つは、オーストラリアが出荷していた農産物を中国に売ろうと踏み込んだのがアメリカだったことだ。この件から学べる貴重な教訓があるが、オーストラリア政治指導部は、これら経験から学んだ兆しを示していない。
これは、オーストラリア外交政策の、アメリカの世界観に対するかなりの度合いの進行同化を反映しているのかもしれない。彼らは益々オーストラリアの意見を表明する能力を失いつつあるように見えるが、アメリカの戦争への絶え間ない関与でも分かるように、少なくとも、これまで70年間外見上明白だった傾向だ。名目上の党派にかかわらず、オーストラリアの政治支配層で、この態度の、いかなる大きな変化も認めることは不可能だ。
二番目の選択肢も非現実的だ。中国貿易への依存を強化するのに、オーストラリアは30年かかった。一部商品のために、多少の代替市場が、速く見つかるかもしれないが、現実は、世界のどこにも中国の規模ほどの市場などない。インドは、急速に中国の人口に近づいているが、一人当たり所得は、中国のわずか約1/7で、近い将来、際立って改善する可能性はありそうもない。
オーストラリア政府が行っている他の決定も、現実感覚の薄弱さを示しており、アメリカの世界観が、キャンベラでも忠実に複製されるのを示している可能性が高い。そのような実例の一つは、中国のファーウェイ携帯電話という選択肢を締め出す決定だ。またもや、これは最良の合理的国益というより、むしろアメリカ世界観の遵守と解釈できる。
名目上の非難は、中国製品が安全ではないということだ。これは、いくつかのヨーロッパ諸国を含め、安全保障上の懸念が、確実にオーストラリアのものに劣らない世界150以上の国にとって、あきらかに問題ではないのだ。
オーストラリアのケビン・ラッド前首相(流ちょうな中国語話者)と中国の王毅外務大臣との最近の会話で、王外務大臣は、ボールはオーストラリア側コートにあると述べた。中国政府は、中国がオーストラリアに対して持っている14の苦情のリストをオーストラリア放送局で発表していた。予想通り、オーストラリアの回答は、苦情は事実無根で、オーストラリアを非難するより、中国が自身の行動を振り返るべきだということだった。
このような回答は、役立つこともなく、正確でもない。ラッドとの会話で、王外務大臣は、苦情のリストには言及せず、むしろ融和的な手法を採用した。あなたは、オーストラリアは、中国が脅威なのか、パートナーなのか決める必要があると言われた。もしオーストラリアが、中国を、前者ではなく、後者だと認めるなら、「我々が解決を見いだす可能性が高まる」と王外務大臣は述べた。彼は関係改善の責任を、適切に、オーストラリア側コートに入れたのだ。
王外務大臣に対するオーストラリア評論家の反応は必然的に予測可能なもので、中国との本当の和解に対するどんな示唆も軽視すると決め、代わりに、南シナ海での中国の誤った決定とされるものや違法スパイ行為やウイグル人の虐待とされることのリストを示したのだ。
これら全ての主張には議論の余地があるが、一つ際立ったものがある。オーストラリア・アメリカ間貿易に何の影響も与えていない、遥かに悪いアメリカの行動への批判が全くないことだ。更に悪いのは、中東であれ、アフガニスタンであれ、他の場所であれ、オーストラリアはアメリカ侵略の積極的参加者で、オーストラリアは、そこで支援だけでなく、積極的に参加していることだ。
従って、最近Dan Huが述べたような、中国・オーストラリア関係の一層悲観的なものが、未来の光景になると、我々は結論せざるを得ない。オーストラリアの近視眼は、自らの不利益をもたらすことになるだろう。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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岩波書店月刊誌『世界』2月号「オーストラリア・アフガン派遣部隊の戦争犯罪とその衝撃」という記事を、是非お読みいただきたい。憲法を破壊したあとの日本の未来図。下記の田岡氏解説ビデオも必見。
デモクラシータイムス
アメリカ侵略戦争と、オーストラリアについては、最近下記を訳している。このうち二つの記事は、隠蔽エンジンで見事に消されている。宗主国の日本傭兵化方針にかかわるものは全て弾かれる。既に言論統制国家。小生、トランプ大統領とは違って、「国会に向かって行進しろ」と呼びかけてはいないのだが。
オーストラリア首相の日本訪問 隠蔽エンジンで表示されない。
アフガニスタンでのオーストラリア戦争犯罪暴露は政治家が直面するの嫌がる問題を提起 隠蔽エンジンで表示されない。
属国傀儡政権が宗主国に押しつけられて継続している憲法破壊洗脳政策、宗主国侵略戦争参戦が目的。日本学術会議任命拒否も、宗主国侵略戦争に役立つ研究以外させなくする企み。いつかは終わるコロナ流行対策だけでなく、宗主国軍産複合体がたくらむ宗主国戦争機構への完全組み込みから離脱するには、異神を含めた与党を潰すことが不可欠。日本兵、日本人が、宗主国侵略戦争や先制攻撃で砲弾の餌食になる前に実現可能だろうか?
大相撲、初日、二人が負ける番狂わせ。個人的には面白い。コロナがこわいといったら、おこられて、引退するはめになった力士がいる。彼が正論で、このコロナ爆発のなか、客を入れて強行する方が異常。昔、何度も桟敷で見たが、今は行く気にはなれない。コロナがこわいので。
NHK「日曜討論」何年も、ほとんど見ていない。まして彼など。普通は、看板通り討論するのだが、恫喝専門の臆病者ゆえ、一方的発言を並べるだけのものだったようだ。羊頭狗肉。NHK「日曜一方的発言」に変えるべきだ。官房長官時代の傲慢な対応以外できないのだから議員バッジを外すべき。フランス人ジャーナリスト西村さんの目から見なくとも速記者怪見しかできない。横田一氏に絶対質問させないタヌキも、その点良い勝負。日本も東京も、悪夢そのもの。
LITERA 順位には納得だが「御用ジャーナリスト」というのは誤用。正しくは、提灯持ちタレント
デモクラシータイムスの下記番組、二度拝見して、ふと思った。クリアリングハウスの三木由希子さんが「野党側は、良い仕事をしているが、単発的でなく、まとめて発信すべき」という趣旨のことをいわれている。考えて見れば、テレビ電波は完全与党支配で提灯持ちタレントしか出演させない。危険と思えばビデオ録画にしてしまう。さからうMCは首にする。元自民や異神の政治家なら、大本営広報部は頻繁に登場させるし、ネット・ニュースもコメントをしきりに掲載する。下駄の石宗教政党のタレントはお笑い番組で大活躍。元野党の政治家の場合、引退後、テレビ・コメンテーターになっている例は少ないはずだ。速記者怪見では速記者は忖度質問しかせず、官邸側のまとめ役は「さら問い」を許さない。野党は自前で新聞をだしたり、ネットで発信したりするしかないだろう。
それで、最近の共産党の番組を見てみた。小池晃参議院議員と田村智子参院議員のお二人の番組で、腐敗した忖度MCがでず、わずらわしいコマーシャルなし、十分意見が聞ける。
吉田類の酒場放浪記を毎回見ているが、昨年、偶然下記番組を見たのを思い出した。知人が住んでいる町ゆえ、コロナ流行が終わったら、行ってみたいもの。
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