東南アジアへの関与強化を目指すアメリカの苦闘
2020年12月2日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook
世界中で多くの人々が、ホワイトハウスでの変化が、アメリカ外交政策の変更になるのを期待しているが、これまで四年にわたり行われてきたアメリカ外交政策の、最も論争的な、破壊的な局面の多くは、既に何年間も続いてきた政策の継続だった。だから政策は近いうちに変化することはありそうにない。
これは特に、中国を「封じ込める」益々必死の取り組みで、アジアと東南アジアで再び幅をきかせたがっているワシントンの願望にも当てはまる。
東南アジア諸国を、中国から、アメリカと、太西洋対岸ヨーロッパのパートナー寄りに向けさせるための、いかなる実際の誘因に欠けるアメリカは、その代わり、二つの中心的存在が南シナ海で「紛争」している状態で、一連の「危機」と「懸念」を発明し、メコン川に沿いの中国ダム下流の国々に対するアメリカの「懸念」を高めた。
下流の国々には、ラオス、ミャンマー、タイ、カンボジアとベトナムがある。
南シナ海でのアメリカ干渉と同様、メコン沿いの国々は、ワシントンの「懸念」共有し、ワシントンが展開する枠組みを採用し、懸念に「対処する」よう常に圧力をかけられている。
だが、ベトナムを例外として、これらの国々は、全て中国との堅実な、増大する関係を維持しており、ベトナムすら、経済的に中国に強く依存している。
メコン川沿いのダム建設が生み出す問題がなんであれ、緊張を高め、絆をほつれさせ、アジアの集合的な勃興を阻止するのを目指す、あからさまな動機の腹に一物ある調停者の干渉なしで、中国を含め関係する全ての国々が、双方で解決する十分な誘因がある。
この明白な事実のため、メコン沿いの国々が、ワシントンの取り組みを真剣に受けとめなかったのは驚くべきことではない。その代わり、時間をかせぎ、ワシントンの更なる強制的措置を避けるために、彼らは主に口先だけで同意しているように思われる。
だが既にワシントンが、南シナ海とメコン戦略で、更なる強制的措置を取り込んでいるのは明確だ。これは、この地域中で、これらの問題に関し、アメリカの枠組みや提案を採用するのに反対する政権を排除し、それを、確実に、自ら招く逆転不可能な損失をもたらすにもかかわらず、中国との結びつきを切断するのを熱心に望む傀儡政権に置き換える政権転覆を追求する反政府派への資金提供もある。
東南アジアとタイに対するアメリカ干渉を主張しているのは、特にタイのチュラロンコン大学準教授ティティナン・ポンスディラックだ。
最近彼がバンコク・ポストに書いた「メコン流域地帯での、中国-アメリカのライバル関係」と題する論説で、彼は具体的にこう書いた(強調は筆者による)。
アメリカ条約同盟者として、2014年の軍事クーデター以来、軍が後援する体制下、タイは中国への旋回で際立っているが、抗議する青年たちの運動の要求に従って、正真正銘民主的な制度になれば、この傾向も方向が変わり得る。同様にカンボジアでも、もし若い世代と反政府派支持者が立ち上がることができれば、フン・セン首相の「一括」中国手法は異なる路線を行くかもしれない。だが、予測可能な将来、メコン流域地帯は一層中国路線に引き寄せられる可能性が高い。
ここで、ティティナンは、東南アジア諸国政府が中国に軸を移しており、南シナ海やメコン川を巡る問題の緊急性とされるものをアメリカが主張しても、北京との結びつきを強化し続けるのを認めている。
彼は、これを変える唯一の方法が「抗議する青年たちの運動の要求に従って、本当に民主的な制度が実現する」かどうかであるのも認めている。
ティティナンは、タイの伝統的制度と、現政府打倒を目指す、ここ数カ月、益々過激な反中国姿勢を見せている、タイで進行中の反政府抗議のことを言っているのだ。
ティティナンが省いているのは、これらの抗議行動が、アメリカ政府が資金供給する組織、全米民主主義基金(NED)に支援されていることだ。その理事会が、イラク、シリア、リビア、ウクライナや、最近では香港を含め、世界中でのアメリカ政権転覆プロジェクトの最も著名な設計者の一部とつながっているフロント組織だ。
そしてこれは、究極的に、アメリカに残された唯一の切り札だ。中国とのつながり切断する傀儡政権を据えるための、東南アジアじゅうでの政権転覆未遂や、北アフリカと中東が、 2011年に始まった「アラブの春」という、似たような政権転覆キャンペーン後に苦しんだように、アジアの集団的勃興を、長期の、つらい段階が続く、何十年もの内部抗争に変えるのに十分な混迷を作りだすのだ。
多くの人々が、香港からタイに至るまでの抗議行動や騒動を、孤立した国内政治論争や「民主化運動」として描写し続けているが、実際は、彼らは、躍進中の中国に対して、再び幅をきかせようとするワシントンによる、身勝手で、異様な地域作戦の一環なのだ。アジアでのアメリカ外交政策を擁護する「準教授」さえ、これらの抗議が、アメリカが成功できる唯一の方法だと認めている。
東南アジアにとって、アメリカ干渉を失敗させ、2011年の「アラブの春」に似た地域規模になり得る問題を防ぐことは、今後数年、アジアの継続的勃興を保証するか、それとも、今後数年、紛争を封じ込め、その余波の中、高価な再建で過ごすかの問題だ。
Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/12/02/us-struggles-for-relevance-in-southeast-asia/
----------
インパール・ガースー、今日何を言うか知らないが、一日も早く「大阪が危ない。日本も危ない。」を書いた和歌山県知事に代わって貰いたい。見識、実行力桁違い。
岩波書店の月刊誌『世界』1月号を、ページ通りの順序で読んでみた。実に興味深かった。
- ヒジャブを纏ったアーダーン首相がめざすもの
- ペンと権力
- 非対称な国家間のメガ協定
- GIGAスクールというディストピア
- メディア批評
以下の要約、実際にお読みいただけない限り、意味が通じないだろうが、ともあれ書いておこう。
白人による、イスラム教徒に対するテロのあとマオリ族にも配慮したアーダーン首相。戦争時の言論弾圧に目を向けない身勝手な俯瞰的思考で、反対意見を封じ込め、宗主国の侵略戦争用戦地への変身に邁進する狂気の首相は対照的。TPPの問題点を鋭く指摘してこられた方による簡潔なRCEP解説。これこそ俯瞰的思考の手本。コロナに便乗して、過激な教育政策変革を狙う経産省と、比較的斬新的な文科省。そして「杉田官房副長官を会見の場に」
昨夜、BSで、原発推進か否かの論議のあと、報道番組らしきものを、ちらり見た。TPPを大絶賛するので、すぐさま切り換えた。呆導番組「非対称な国家間のメガ協定」と比較にならない無内容さ。中国憎しだけ。
TBS NEWS
IWJの岩上安身氏は12月25日に、任命拒否された6名の一人、早稲田大学教授・岡田正則氏にインタビューとのこと。公開日は未定のようだ。
« 『76 Days』:武漢でのコロナウイルスとの戦いの前線 | トップページ | アメリカ大統領選挙戦 大詰め »
「アメリカ」カテゴリの記事
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- 熟練専門家を前線に派兵して、戦争遂行努力の失敗を示しているウクライナ(2024.11.26)
- ネタニヤフに対するICC逮捕令状はアメリカの政策と共謀に対する告発でもある(2024.11.27)
「中国」カテゴリの記事
- ウクライナ紛争や国内政治崩壊の損失によりドイツは崩壊しつつある(2024.11.23)
- トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ(2024.11.20)
- ドイツはロシア燃料を使用していたがゆえにヨーロッパの原動力だった(2024.10.24)
「東南アジア」カテゴリの記事
- 全ての道(と鉄道)は中国に通じるが欧米は嬉しくない(2022.10.10)
- 国際制裁の中のロシア休暇シーズンとタイ観光産業(2022.05.28)
- 地域を「いじめている」と北京をアメリカが非難する中、ベトナム地下鉄を完成した中国(2021.11.26)
- 南シナ海でのアメリカ原子力潜水艦衝突のもみ消し 東アジアそして世界のための警鐘(2021.11.12)
- ワシントンの中国封じ込めの必死さを明らかにしたカマラ・ハリス(2021.09.11)
「Tony Cartalucci/Brian Berletic」カテゴリの記事
- トランプ政権:「戦争タカ派なし」から「全員戦争タカ派」へ(2024.11.20)
- イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?(2024.09.29)
- 最近のレバノン・ポケベル・テロ攻撃は予測可能、予防可能だった(2024.09.22)
- 超大国として君臨すべく「超兵器」を探し求めるアメリカ(2024.09.11)
- 宇宙を拠点とする戦争:問われるアメリカの優位性(2024.07.22)
コメント