果てしない戦争を終わらせず、大虐殺を拡大したトランプ
Finian Cunningham
2020年12月9日
Strategic Culture Foundation
ドナルド・トランプ大統領のファンと擁護者は、ジミー・カーター(1977-81)以来、彼は新しい外国戦争を始めなかった初めての大統領だと指摘するのを好んでいる。到底称賛しかねる主張だ。とは言え、戦争を始めないことについては、かろうじて本当だが、容赦ない戦争屋としてのトランプ政権の実績とは矛盾する。
今週新しい研究が、トランプ監督下で、アメリカ主導の空爆によるアフガニスタン民間人死亡者数の大幅増加を報じている。彼が2017年早々就任して以来、トランプと閣僚が米軍の「交戦規則」を緩めたおかげで、死亡者数は、330パーセントと飛躍的に伸びた。
最近、トランプ政権は、アフガニスタンのタリバンと薄弱な和平協定を急ごしらえし、これで、今後一年で、アメリカ兵がこの国から撤退することになるかも知れない(あるいは多分そうではないかも)状態で、この大統領が致命的なアメリカ軍事大国の拡大を監督した事実は依然として変わらない。2019年にアメリカが主導する空爆で殺された一般人の数は、ほぼ20年間の戦争で最高だった。
イラクとシリアを含め、表向き「テロとの戦い」の名のもとで、国防総省が介入している他の国々で、アメリカ主導の軍隊による民間人の死は史上最高だと言われている。2017年、アメリカ主導のイラクとクルドの軍により、イラクのモスル市攻略で、40,000人が大空襲で殺されたと推定されている。アメリカ同盟者は「動くものは何であれ殺す」よう言われていた。
シリアのラッカでは、やはり2017年のアメリカ空爆で、死亡者数は少なくとも1,600人で、被害者の大部分は瓦礫の下に埋もれた。
イエメンで、トランプは、2015年、オバマ政権がサウジアラビアに空軍力と兵站を提供して最初から支援した悲惨な戦争を拡大した。イエメンでのサウジアラビア連合による爆弾攻撃に対するワシントンの支援のおかげで、何百万という子供が飢餓と病気に陥りやすくなっている。トランプはアメリカの軍事関与終了を要求する、少なくとも5つの議会法案を拒否した。
この恐ろしい遺産が、2016年選挙で「果てしない戦争を終わらせ」アメリカ兵を国内に戻すという主張を基礎に選挙運動した大統領によって与えられたことに留意願いたい。
トランプの軍国主義と侵略の実績は、他の方法でも測ることができる。
彼の監督の下、国防総省は、いわゆる対テロ戦争任務から、ロシアと中国という「大国とのライバル関係」に回帰することに優先順位を付け、明示的にモスクワと北京を敵として指名する方向に動いた。
トランプは、冷戦と、その核「相互確証破壊」の迫りくる脅威を復活させる上で、過去の世代の他のどの大統領より貢献したのだ。
彼の政権は、ロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF)を離脱し、ヨーロッパの安全保障を傷つけ、ロシア国境近くに短距離・中距離戦術的核弾頭設置への道を開いた。
最近、トランプはオープン・スカイズ条約も破棄して、軍縮と国際安全保障防衛にたいする信頼を損ねた。彼は、最後に残った冷戦時代の軍縮施策、ロシアとの新戦略兵器削減条約も、ほとんど廃棄した。
だから世界はトランプ・ホワイトハウスのせいで、ずっと危険で不安定な場所だ。
彼の政権は、北京との未曾有の緊張をかき立て、過去の他のどの政権より多くの攻撃兵器を中国から分離した地域の台湾に売った。中国は、主権が更に悪影響を受ければ、軍事的に台湾を侵略する準備ができていると警告した。そうした緊張は、北京の領土権主張は「違法だ」と異議を唱え、南シナ海でのアメリカ軍事力増強を監督する最高司令官トランプによって高められた。
トランプによって無数の他の侵略が、なかでも、ベネズエラや、ニカラグア、ボリビアやキューバに向かっての行われた。一方的な経済封鎖、経済戦争は、ロシア、中国やイランに対するものを含め、トランプの下で急増した。イランに対して、トランプは核搭載爆撃機で取り囲んで、イランを壊滅させると脅し、今年一月、自ら、トップの軍司令官ガーセム・ソレイマーニー少将暗殺を命じた。
アメリカを本拠とする原子力科学者会報が、トランプ大統領によって残された増大する緊張と紛争の危険のため、終末時計を、終末の真夜中前の最も近い点に動かしたのは少しも不思議でない。尊敬される科学者たちによれば、70年間のうちで、世界的大惨事に最も近い。
恐ろしいのは、これだ。もしこれが「果てしない戦争を終わらせる」と約束した大統領の下劣な記録なら、アメリカ固有の、容赦ない戦争挑発の本質は一体何を物語るだろう?彼が2017年1月に就任した際に、「アメリカによる大虐殺」を悔やんでいるように見えた大統領が、更なる血まみれの大虐殺を引き起こし続けたのだ。
そして今、彼は戦争を終わらせるのではなく、その代わり、アメリカ・グローバル・パワーと介入を「強化する」と誓うジョー・バイデン次期大統領にとって変わられる。更なるアメリカの戦争や大量殺人や破壊という邪悪な見通しに、我々は震えるだけだ。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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SPINEAR という放送番組を聞いた。児童用のマンガを含め何冊か拝読しているが、新刊「新型コロナ自宅療養完全マニュアル」は知らなかった。早速購入したいと思う。
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