イラン科学者暗殺で利益を得るのは誰か?
2020年12月3日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
どんなゼロサム競争でも、一方の損失は、もう一方の利益だ。これは特に、根深い強硬なイデオロギー的立場が特徴である強烈な地政学的ライバル関係にもあてはまる。イランのトップ核科学者モフセン・ファフリザデが先週暗殺された際、イランにとって大きな敗北で、イランの核能力を食い止め、破壊する方法を探していた、この地域や、地域外のイランのライバル諸国にとって重要な利益を意味していた。だが殺害は、イランの核開発計画に打撃を与えることを狙ってはいなかった。なぜなら、確かに暗殺された科学者はイランの核施設を運営する唯一の人物ではないためだ。暗殺は、大まかに言って、アメリカ次期大統領ジョー・バイデンがJCPOAを復活させるのに大いに苦労するような高さまで、この地域の緊張レベルを上げる条件を作りだすことを狙っていたのだ。
イスラエルの特徴である暗殺が複雑な地政学問題と統合されているのだ。極めて興味深いことに、2018年4月、記者会見で、ベンヤミン・ネタニヤフは直接ファフリザデに言及し、この科学者にモサドの十字照準線が定められていることを暗示し、「この名前を覚えておくように」とネタニヤフは主張した。
JCPOA復活を先延ばしにする
JCPOA復活は、トランプ政権のイランに対する「最大圧力」を終わらせるはずだ。それは現在課されている通商停止も緩和し、イランの石油輸出を増やし、ヨーロッパとの経済関係再開を可能にするだろう。手短に言えば、JCPOA復活は、イランの潜在国力を強化し、ライバル、すなわち、イスラエル、サウジアラビアやUAEに対する能力を増すはずだ。この文脈で、暗殺は、彼の副大統領時代に署名された核合意に再度参加して、イランとの関係を正常化することを意図しているバイデンの努力への妨害工作なのだ。
少なくとも、イスラエルの現首相ベンヤミン・ネタニヤフと非常に親密な関係を持っている退任するトランプ政権は「最大の圧力」の急速な逆転を防ぐため、事態を十分複雑にするべく、出来る限りのことをしているのだ。
最近イスラエルを訪問したアメリカのマイク・ポンペオ国務長官が、金曜日に、新しいイランのミサイル計画を支援したと言って非難した、いくつかの中国とロシア企業に対する経済制裁を発表した際、その意図は非常に明白だった。
「この政権は1月20日まで存在し、「政策を続けるつもりだ」とポンペオに同行するアメリカ当局幹部が、日曜、アブダビに立ち寄った際に述べた。「私はこの政権が苦労して得たこの影響力を、良い目的で、イランに、再び普通の国家のように振る舞うようにさせるために使われるよう願っている。」
イランは既にこの暗殺への復讐を誓っている。イランの反応は、ワシントンのイスラエル擁護圧力団体が、イランとの正常化計画を再考するよう、バイデン政権に圧力を加えるために使う、この地域での「不安定化活動」の証拠として意図的に描かれている。
対イラン首謀者としてのイスラエル
今年早々書名されたアブラハム協定は、常にイスラエルを中東にとって不可欠にするよう意図されていた。それは中東で、アメリカの軍事的存在が減少し、10年前には可能だった規模での戦力投射が益々できなくなる中、イスラエルの重要性は大幅に増加している。アメリカはアフガニスタンから撤退しつつあり、シリアの結果を支配できずにいる。それに応じて、湾岸アラブ諸国は、イスラエルを、イランに対するライバル関係を共有するだけでなく、イランのトップ核科学者暗殺とされることのような決定的な行動をとる能力と意志を持っている信用できる同盟者と見ている。
暗殺はイスラエルの能力と意志を立証するが、湾岸アラブ世界とのあからさまな和解の増大は、至る所で、イスラエルの利益を雄弁に物語っている。
11月22日、ネタニヤフはサウジアラビアに行き、MbSに会い、湾岸諸国とイスラエル関係の新しい進路を示した。彼らは、アメリカ後、トランプ後の時代に想定される、中東での変化する現実を話し合い、大いなる合致の可能性を見出した。
サウジアラビアにとって、人権やイエメン戦争などの問題を含め、サウジアラビアに対する圧力を強化すると誓っているバイデン政権を前に、イスラエルと親しくなるのは自然なことだ。
サウジアラビアが、イスラエル同様、バイデン政権下でのJCPOAと復活の可能性に関して重大な懸念を持っているのは否定できない。
イランに関し、イスラエルとサウディア(そしてUAE)が集まるのは、アブラハム協定の潜在的な動機で、これら協定の「戦略上の狙い」実現の可能性がある。
現状では、9月15日にホワイトハウスでUAEとイスラエルが署名した協定には「中東の戦略アジェンダ」への言及があった。戦略アジェンダはイスラエルとUAEに限定されず「他の適切な国々」が「地域安全保障と安定性を推進する」ため参加できるとしている。
サウジアラビアは、「公式には」このアジェンダに、まだ参加していないが、常に、このアジェンダ設定に関与していたことは否定できない。
概して、イスラエルは、この暗殺の最大受益者だ。イスラエルは、JCOPA復活の可能性を極めて困難にする力を発揮した。同時に、イスラエルは、湾岸諸国に対し、その必要不可欠性を非常に効果的に示すことができたのだ。ジャマル・カショギ殺人への関与を隠せなかったサウジアラビアは、イスラエルから暗殺術を学べるかも知れない。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/12/03/who-benefits-from-the-iranian-scientist-s-assassination/
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