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2020年12月20日 (日)

大惨事をもたらしたスウェーデンの「集団免疫」政策

ブライアン・ダイン
2020年12月14日
wsws.org

 Covid-19流行に対し、スウェーデン政府が追求した「集団免疫」政策は大惨事をもたらした。スウェーデンの病院は受け入れ能力が逼迫し、遺体安置所には遺体が山積し、隣国ノルウェーとデンマークは緊急援助を申し出ている。

集中治療室の患者(写真:Wikimedia Commons)

 スウェーデン最大の都市ストックホルム地域は集中治療室の使用率が99パーセントで、地域の医療システムは、Covid-19新重症患者に対処できないと警告した。スウェーデンは、病院は医療崩壊し、新患者を受け入れられず、死者が大量に増える危険がでて、教科書通りの大量死者事件を経験している。

 三月、世界の大部分が、学校と企業の封鎖を実行したのに、開いたままにするのを許した、スウェーデンの流行に対する対応は、アメリカとヨーロッパの政治支配体制の全て党派によって、手本として歓迎された。だが今やスウェーデンの方針は大量死の処方箋だということが暴露されている。

 人口わずか1000万人の国スウェーデンで、7,500人以上の人々がCovid-19で亡くなった。スウェーデンの人口は、隣国ノルウェーとデンマークの人口合計の三分の二なのに、死者数は四倍だ。人口で調整すると、スウェーデンの死亡率はデンマークのそれより約5倍高く、ノルウェーより約10倍高い。ストックホルムだけでの1,500人を含め、スウェーデン全体で、1日平均5,000以上の患者が報告されている。

 この大惨事は、スウェーデンで始められ、世界の多くで実行された、提案者が「集団免疫」と呼ぶ、流行が自由に広がるのを可能にする意図的政策の結果なのだ。

 スウェーデン政府は意図的に流行が広がるのを可能にしたことを否定しているが、スウェーデン最高の疫学者アンデッシュ・テグネルは、学校を開けておく彼の政策の明示的狙いが人口のより多くに確実に感染させることだったのを私的電子メールで認めている。

 三月、テグネルの前任者で共同研究者のヨハン・ギセックは、スウェーデンの保険会社に電子メールで書いていた。「私はウイルスが嵐のようにスウェーデンを襲い、基本的に、1ヶ月か2ヶ月で全員に感染すると信じている。私はスウェーデンで、もう何千人も既に感染しており、非常に多くの人が感染し、免疫ができて、ウイルスが他に行き場がなくなった時に(いわゆる集団免疫)、すべて終わると信じている。」

 百万人に対する確認済Covid-19死者数累計(出典:Our World in Data)

 この「スウェーデン・モデル」はアメリカの主要新聞三紙全てに支持された。ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストと、世界的に多くの新聞でも、経済的必要性と人命保護で、どう「均衡を維持する」べきかのモデルとして提示された。

 三月、議会がCARES(コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法)で何兆ドルものウォール街救済措置を成立させる準備をしている中、ニューヨーク・タイムズ・コラムニストのトーマス・フリードマンは、すぐさまドナルド・トランプがスローガンに取り入れた「治療」が「病気より悪く」てはならないと宣言するコラムで、封鎖を非難し、「経済再開」の支配階級による攻勢を始めた。四月下旬、彼は全員が「スウェーデンがしようと試みているように、コロナウイルスに意図的に順応する」よう要求した。ストックホルムの狙いは「暴露による集団免疫」だと彼は続けた。

 五月、ワシントン・ポストは、スウェーデンが、第一波中に封鎖をせずに、「正しい判断」をし、それは「見習う価値がある例」だとを提案する論説を掲載した。

 ドイツのデア・シュピーゲル紙は「学校閉鎖はやりすぎだ」と主張するため、スウェーデン政府の公衆衛生機関最高責任者ヨハン・カールソンに長いインタビューをした。続く週、イギリスのファイナンシャル・タイムズは「スウェーデンはコロナウイルスに対し、三番目の方法を選択」という論説を、アメリカのフォーリン・アフェアーズ誌は「スウェーデンのコロナウイルス戦略は間もなく世界のものになる」という記事を載せた。

 アメリカと国際報道機関による「スウェーデン・モデル」の膨大な、ほぼ一様に肯定的な報道を考えれば、この方針はアメリカや他の国々が共同して練られたのは確実だ。

 言い換えれば、スウェーデンは、まもなく世界中で導入されるはずの政策実施の実験台になったのだ。結果的に、世界中で何十万人もの人々が無駄に命を失った。

 3月に、イギリスのボリス・ジョンソン首相は、彼の政府は、コロナウイルス流行に対する解決として、「愛する肉親が、普通より早く亡くなる」だろうと明らかにした。全国の民主党、共和党知事が実行した部分封鎖を終わらせて、学校と企業を開かせた施策を推進したドナルド・トランプ大統領が彼に続いた。

 今や、この手法は国際標準だ。ブラジル(感染者680万人、死者181,000人)では、ファシストのヤイル・ボルソナーロ大統領がコロナウイルスは「ささいなインフルエンザ」だと切り捨てた。インド(感染者980万人、死者143,000人)では、ナレンドラ・モディ首相政権は、13億の人口の半分が、来年2月までに感染すると思っている。メキシコ(120万の感染者、死者113,00人)では、(AMLOとして知られる)アンドレス・マニュエル・ロペス・オブラドール大統領は人前でめったにマスクをつけず、流行の危険を常に最小化している。

 アメリカ合州国(感染者1660万人、死者306,000人)では、ジョー・バイデン次期大統領は、彼の政権は流行がどれほど酷くなろうと、学校や企業を活動させると明らかにした。

 最終結果は大量死の一年だった。現在世界で、7250万以上のコロナウイルス感染者と最少161万人の死者が報告されている。更に、一部の地域では「過剰死亡」数が死亡者数を公式報告より50パーセント多く示しており、この数が過小評価なことがわかっている。

 先週、World Socialist Web Siteは、こう書いた。

死の正常化は、「経済の健全性」と「人命」を同等の現象として扱い、前者を後者より優先するという階級権益に根ざす決定から生じている。この比較と優先順の正当化が、現状のように、政治支配層やオリガルヒやメディアが受け入れた途端、大量死は不可避と見なされる。

 このとんでもない計算から「治療は病気より酷くてはならない」というスローガンが出現する。

 支配層エリートの計算など、そんなものだ。だがコロナウイルス流行の恐怖に直面しなければならなかった世界の何十億もの人々は「集団免疫」の考えを全く疑っている。

 支配階級が他の措置を不適切とみなしたため、アメリカの支配体制メディアは、スウェーデン・モデルを、流行封じ込めを意図する代替「選択肢」だと主張したのだ。

 Socialist Equality Partyは下記を推進している。

  • 不可欠ではない全ての仕事場での生産や学校の即時閉鎖。公衆衛生専門家は、流行中の旅行は極めて危険だと正しく警告しているが、工場や学校も、空港同様に危険だというのが事実だ。それにも拘わらず、企業や学校での感染は組織的に隠蔽され、無視される。
  • 全家族に対する、職場復帰までの適切な生活水準を保証する月収支給。営業を再開できるまで、経済的生存に十分な企業や従業員賃金や給料の中小企業への救済策支援。
  • ワクチン生産と無料分配を加速し、検査を含め公共医療を拡大し、追跡し、連絡するための数兆ドル配分。

 このような取り組みができる唯一の社会勢力は、国際労働者階級だ。スウェーデン労働者は、インドやブラジル、メキシコ、アメリカや、あらゆる国の彼らの階級同盟者と、何百万人もの命の無駄で予防可能な犠牲を止め、反動的、殺人的な資本主義体制を社会主義で置き換えるために一致団結しなくてはならない。

記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2020/12/14/pers-d14.html

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 この記事は、国王が政策の過ちにふれる発言をする前に書かれている。

 2020年5月8日に、下記記事を翻訳している。

スウェーデンは手本ではない

 日本も、実際は、見習っているのではないだろうか。

 下記のようなことは見習って欲しい。

 日刊ゲンダイDIGITAL

菅首相“8人ステーキ会食”のモヤモヤ 欧州では閣僚続々辞任

 「連合」は庶民の敵、支配層の手先と思ってきた。植草氏のご意見に同意する。

 植草一秀の『知られざる真実』

連合の正体見たり枯れ神津

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