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2020年9月 7日 (月)

ノビチョクのたわごと:「事実後」から「論理後の世界」に

Gilbert Doctorow
2020年9月3日

 「誰にでも自身の意見を主張する権利があるが、自分の事実を主張する権利はない。」というニューヨーク州選出故ダニエル・パトリック・モイニハン上院議員の賢明な言葉は、我々が「フェイク・ニュース」の世界に入り、事実が公的論議と無関係になった五年前にくつがえされた。以来、彼らの最近の論争的な位置に適していたように、二つのアメリカ政治エリート集団と、それぞれのメディアは、論争上、自分の立場にふさわしい「事実」を恥知らずに発明する。実際に証明できないことに対する特別な修飾語は「大いにありそうだ」。

 残念なことに、昨日のドイツからのナワリヌイ毒物事件に関する最新ニュースは、民事の議論の紛争解決を、武力による方向、つまり戦争による可能性への劣化を示している。我々の指導者は分別をなくしたように思われ、論理に全く合わない物語を示している。

 ドイツの軍事専門家が、アレクセイナワリヌイの中毒は、ソールズベリーでスクリパリ親子に対し、ロシア軍諜報部隊に使われたとされる同じ毒、ロシアの神経ガスノビチョクだとしたとメルケル首相は発表した。我々はその件では、大いにノビチョクについて聞かされたが、現在の事件で、唯一最も適切な情報は、それは国家組織しか入手できない厳重に管理された物質で、使用は、最高レベルで承認されなければならない。そうした背景を考えれば、ナワリヌイに関する専門家調査結果を通知され、外交チャネルによる、いかなる事前警告もなしで、メガホン外交によって、ロシアは、メルケル首相から、それに続いて、NATO事務総長から、欧州委員会委員長から、ホワイトハウス報道官から、ロシアは起きたことを説明しろと、しつこく要求されているのだが、これは、ウラジーミル・プーチンが毒殺を命令したという遠回しの非難に過ぎない。メルケル首相が非難の先頭に立ち、今、欧米の指導者全員、反ロシアで団結している。

 ドイツの毒物調査結果の証拠を自分たちにも共有させろというロシアの要求は、スクリバリ事件時と全く同様、対応されなかった。だから、彼のフライト前にトムスクでナワリヌイに何が起きたかのロシアの「説明」は、ロシアを非難する欧米の連中を満足させないのは確実だ。

 我々が次に予想できるのは、ロシアに対する欧米制裁の新たなもので、大いに論争の的になっているノルド・ストリーム2パイプライン・プロジェクト中断を伴う可能性が高い。もしそうなら、アメリカが、ドイツをいじめて、ノルドストリーム2をキャンセルさせようとして失敗していたが、クリミア併合と、ドンバスでのウクライナ内戦介入のかどで、ロシアに対するアメリカが率いる制裁で、2014年夏のMH17撃墜で、ヨーロッパを引き入れたのと全く同様、ナワリヌイ中毒は、ロシアとの関係で、ドイツの立場を変えてしまうだろう。

 このシナリオ丸ごとの唯一の問題は、始めから終わりまで、全く意味をなさないことだ。ファイナンシャル・タイムズのような評判の高い主要新聞さえ、ナワリヌイ事件についての報道で、最初から、1か2を含めて、ロシアに彼らが名指した、彼ら自身の理由から、ナワリヌイ殺人を喜んで計画するだろう、新聞が名指しした、あれやこれや多くのオリガルヒがいるのに対し、クレムリンは、欧米での反応が完全に予測可能なので、この反腐敗、反プーチン活動家が傷つけられるのを望まない、あらゆる理由があると書いていた。ファイナンシャル・タイムズ編集委員会は、彼らが一日前に発表したロシアに対する制裁の全く異なる理由をでっち上げるのに忙しかった。万一、プーチンが、ルカシェンコ大統領への反対勢力を鎮圧するよう、ロシア軍にベラルーシ介入を命じた場合だ。

 今や、毒としてノビチョクが特定されたことは、状況全体を全くばかげたレベルに導いた。メルケルが昨日行った基本的非難である、ナワリヌイを黙らせるのをクレムリンが望んでいたら、クレムリンには、そうするための膨大な手段があるはずなのだ。我々が聞いているこの軍用毒物に対する厳しい管理と、特にその起源がロシアだと特定されたことからすれは、ロシア大統領は、ナワリヌイののどを切り裂いて、このブロガーグの額に彼の署名を書いたも同じことだ。

 だが、この没論理さえ、我々のメディアでは通るのだ。欧米の臆病さに対し、プーチンは、なんであれ、好きなことができると我々は言われているのだ。早い話、ウラジーミル・プーチンは狂人だと、我々は言われているのだ。このメッセージはほかでもないブリュッセルの政治力を決定している、ヨーロッパ最強の経済の代表、最も人口ちゅう密な国のアンゲラ・メルケルからのものだ。その場合、ノルドストリーム2の中止は手ぬるい懲罰に過ぎない。論理的には、彼女の話から何か得られるとすれば、彼女が昨日主張したように「我々の全ての基本的価値観に反しているかどで」カダフィのように、サダム・フセインのように、プーチンも物理的に排除されるべきだということだ。

 昨晩のナワリヌイ事件に関するBBCワールド報道で、一番興味深かったのは、ロシアが、毒物ノビチョクを公式の所持が化学兵器禁止条約に違反しているので、ロシアの国内犯罪が世間の注目を集める事件だと説明したことだ。同時に、彼らはドイツとイギリス両国が管理の目的で、彼らの軍研究室で、ノビチョクを「ごく少量」持っていると指摘した。我々の「論理後の世界」に関する限り、ドイツとイギリス諜報機関両者が、クレムリンの軍隊と同様に、ナワリヌイ氏を毒殺する手段を持っている同じぐらい可能性が高く、クレムリンとは違って、彼らにはそうする遥かに多くの理由あるはずだと私は指摘したい。クレムリンがそれをしたとはほとんど信じられない。そうすれば、直接プーチンを非難することになり、生き残れないはずだから、ロシア・オリガルヒがそれをしたとも、ほとんど信じられない。

 一つの最後の論点は、ナワリヌイに対する毒物攻撃は、二年前のスクリパリ親子に対する毒物攻撃の時とは、非常に異なる国際関係の時に行われたことだ。当時、世界には、一人だけ大悪人がいた。ロシアだ。今日、ドナルド・トランプ下のアメリカは、11月の選挙への準備段階で、世界的悪党のレッテルを中華人民共和国に貼り替え、彼は、中国と経済を切り離すことや、台湾との結びつきを強化するなど、多様な分野で、中華人民共和国に対する外交的、軍事的、商業的圧力を着実に強化している。トランプは中国に対して、アメリカに追随するよう、ヨーロッパを説き伏せようとしているのだが、この問題に関する抵抗は、対ロシア制裁に関する抵抗より確かに遥かに大きい。二日前、中国外務大臣のドイツ訪問の際に学んだように、中華人民共和国は年間売り上げが2000億ユーロを越え、ドイツの最大輸出市場だ。これらの事実からすれば、メルケル首相には、ヨーロッパやアメリカの制裁に対する欲望を、すぐ東の隣人ロシア連邦に向け直すあらゆる理由がある。すなわち、もし国家の行動の上で、論理が果たす役があるとすれば、彼女には「あらゆる理由」があるのだ。

Gilbert Doctorow、2020

[もしこの記事を価値があると思われたなら、2019年11月発売で、amazon、barnes& noble、bol.com、fnac、Waterstonesや他のオンライン小売店から電子書籍、ペーパーバックやとハードカバーで入手可能なA Belgian Perspective on International Affairsという私の最新刊にもご関心があるはずだ。本のWebページでブラウズするには“View Inside”タブをお使いになるよう。]

記事原文のurl:https://gilbertdoctorow.com/2020/09/03/novichok-and-nonsense-from-a-post-factual-to-a-post-logic-world/

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 孫崎享氏のメルマガ題名

リベラル系国民強く望むのは原発全廃。これに対し電力総連(21万人)が反対し、連合は原発ゼロに賛同せず、逆に原発再稼働側に回り野党分裂の主因。今回立憲民主を中心とする新党綱領に原発ゼロ。UAゼンセン、自動車労連、電気労連、JAM、基幹労連支持せず。

 旧総評系は昔の社会党、旧同盟系は昔の民社党。個人的に民社党に投票したことは一度もなlい。野党と思ったことも一度もない。ゆ党。隠れ与党と思っていた。

 最近、全くテレビをみていない。特に忖度の塊、大本営広報部呆導番組。コロナや地震や原発のように傀儡政権に忖度しない物事には一切触れないのだろう。さすがにイヌ・ネコを飼い始めた家族のドキュメンタリーは安心して見た。イヌ・ネコとて飼い主には忖度するだろうが。

 植草一秀の『知られざる真実』

 福井震度5で原発情報伝えないNHK

 大本営広報部では決して聞けない人々の話しをネットで拝見している。

【ニッポンの崖っぷち】五輪は中止だ!巨額負担と負のレガシー(本間龍×山岡淳一郎)20200831

古賀茂明と佐高信の『官僚と国家』第1回 菅は真綿でクビを締める 20200903

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