ベラルーシは次のバンデラスタンになるのだろうか?
2020年8月19日
The Saker
[本分析はUnzレビューのために書かれた]
ベラルーシの状況は非常に急速に、控え目に言っても、良くない方向に変化している。多くのことが起きているが、以下は私の考える最も重要な進展の要約だ。
- この前の日曜日は、ベラルーシ反政府派にとって大成功だった。大群衆が、いくつかのベラルーシ都市の街頭に繰り出したが、ほとんどの場合、デモは平和的だった。
- (反政府派を率いる唯一の「資格」が今夫が拘置所にいるというだけの)スベトラーナ・チハノフスカヤは、ベラルーシの「フアン・グアイド」だ。既に、チハノフスカヤは自分がベラルーシの「国家指導者」だと宣言した。
- ベラルーシ反政府派は、著名な長年の狂信的ロシア憎悪者で構成される調整委員会を組織した。
- 反政府派の綱領は(彼らが「ベラルーシ改革のための蘇生パッケージ」と呼ぶ)単純だ。下記の狙いを、その後実行する、新しい「公正な」選挙だ。ベラルーシは(連合国家、上海協力機構SCOなどを含め)ロシアとの全ての協約から脱退すべきこと。代わりに、国家目標は、他ならぬ、NATOとEUへの加入とすべきこと。全てのベラルーシ駐留ロシア軍は追放しなくてはならない。ウクライナと同様、ベラルーシ語を(どうやら軍も含め。せいぜい頑張って!)再びベラルーシ社会に強いなくてはならない。ベラルーシ国内では、ロシア団体を禁じ、ロシア・テレビ局の活動を禁止する。ロシアとの国境は封鎖しなければならない。次に新たな独立した「ベラルーシ正教会」を創設しなければならない。最終的に、ベラルーシ経済は「改革され」 - 売ることができるものは何であれ売られ、ベラルーシ産業は空洞化する(ウクライナやバルト諸国と同様に)ことになる。
- 現時点で、欧米の支配下にある「反政府派」が、当初合法的だった現地反政府派を、まんまと乗っ取ったのはかなり明らかだ。この仕組み(欧米に操られる工作員による本当の正当な現地野党ハイジャック)は、まさにウクライナやシリアや多くの他の場所で起きたことだ(これがまさに今、アメリカでも起きているとさえ私は言いたい)。今や何人かの駐ベラルーシ大使(スロバキア、スイス、スウェーデン)が、ベネズエラやシリアや他の国々に起きたのとまったく同様、反政府派を支持している。
正直に言って、今ベラルーシで起きていることと、ベネズエラにおける最近の出来事の間には多くの類似があり、それはベラルーシのグアイドとしてのチハノフスカヤだけではないのだ。例えば少なくとも、マドゥロ以上のものでないにせよ、ルカシェンコは、大きな失敗をしており、その代償は相当大きいはずだ。
ルカシェンコの行動を検討しよう。
- 今ルカシェンコは、欧米に再び腹を立てて、実際、最も有力なベラルーシ軍隊(ヴィテフスク第103特別機動空挺旅団)を西部国境に移動し、残りの軍隊を厳重警戒態勢に置いている。ルカシェンコは、欧米軍事介入の実際の危険(NATOはベラルーシに駐留しているロシア軍を攻撃し、生き残るのに必要なものを持っていないのだから、全くのたわごとだ)があると言って、それを説明した。
- ルカシェンコと大臣の少なくとも二人が抗議行動参加者と話をするため外に出たのは見落とすべきでない勇敢な行為だ(ルカシェンコには様々な欠点があるが、ヤヌコーヴィッチや彼の多くの大臣とは違う)。話し合いは、特にルカシェンコの否定し難い個人的カリスマ性に欠ける二人の大臣にとっては、うまく行かなかった。
- ルカシェンコは、彼が一部のデモに対し、ベラルーシ特殊部隊を出動させなければならないことを公的に認めた。彼はそれ以上詳細は言わなかったが、それは二つのことを示しているので、彼の自認は興味深い。a)特殊部隊を使わなければならなかったのは、警察が状況を制御できないか、制御を好んでいないためで、b)エリートのベラルーシ軍隊は、まだルカシェンコ支持していることを意味する。
- ルカシェンコは、何回かプーチンに電話し、現在の脅威がベラルーシに対する脅威であるのみならず、ロシアに対する脅威でもあると発言している。明らかに、ルカシェンコはロシアの支援を嘆願している。
- ルカシェンコは、「私を排除しない限り、他のどのような選挙もない」と公式に宣言し、反政府派はベラルーシ(再び、この男はヤヌコーヴィッチとは違う)を破壊する前に、自分を殺さなければならないと付け加えた。
今度は、ルカシェンコがしなかったことを検討しよう。
- 彼は外務大臣と、ベラルーシKGB長官を解雇しなかった(反政府派よりのテレグラム・チャンネルによれば、外務大臣は辞任したが、ルカシェンコが彼の辞任を拒絶した。これは今テレグラムに溢れているベラルーシに関する多くのうわさの一つだ)
- 彼は、いわゆる「多重ベクトル政策」(つまり欧米に言い寄る政策)が間違いだったとか、変えるとか、放棄するとか宣言していない。明らかに、それとは反対の、確かな証拠にもかかわらず、ルカシェンコは、まだ彼は何らかの形で、帝国への服従と、ロシアとの再統一という、二兎を追えると願っているのだ。
- 彼は、わずか数日前浴びせた、あらゆる濡れ衣に対し、プーチン、そして/あるいはロシアにも謝っていない。
- 逆説的に、ベラルーシ警官が初めに行った節度がない多数の暴力後、今街頭には、ほとんど、どんな警官もいない。一方で、これは良いことだが、最初に使われた暴力は政府に大きい損害を与え、人々を非常に立腹させた。更に反政府派による暴力の量も劇的に減ったが、それも良いことだ。だが問題は、今必ずしも現地人に組織されていない、暴力で権力を違法に掌握しようとしている明らかに特別な組織的集団があることだ。ベラルーシKGBが、この連中を発見し逮捕することは極めて重要だ。私の懸念は、ベラルーシKGBが、無力化するのが困難な、親欧米分子に潜入されていることだ。
今度は「集団的欧米」がしたことを検討しよう。
- 欧米は、この危機に対し、明らかに統一した共通の立場をとっている。欧米は選挙結果を認めず、欧米は今、いわゆる「反政府派」を全力で支援している。
- どうやら、欧米指導部は、ロシアにベラルーシに介入しないよう要求するため、プーチンに電話をした。どうやら、プーチンはベラルーシで起きていることは、彼らには無関係で、もう結構と、答えたようだ。
- 欧米は「ウクライナ・ナチ結果」と呼ぶもの以外の何も受け入れないだろうし、帝国が軍事行動以外の、あらゆる資源をベラルーシ掌握のために使うのは今明白だ。
次に、ベラルーシ近隣諸国がしていることを検討しよう。
- 予想通り、ポーランドは、明らかに(一部の人々にとって)示唆に富む、ポーランド語の「ジェチュポスポリタ」、おおざっぱに「ポーランド共和国」(手っとり早く知るには、ここをご覧あれ)を意味す概念で知られているものの復活を考えている。この文脈で、現代ポーランドが悪名高いユゼフ・ピウスツキのイデオロギー(詳細は、こちら)の相続人であることを理解するのは極めて重要だ。ポーランドの最終目的は、ロシアを崩壊させて、ポーランド共和国を復活し、欧米大国、特にアメリカ(ピウスツキがヒトラーに身を売ったように、現在のポーランドのエセ愛国者が、アメリカに国を売るのも同じぐらい容易だ)の自発的売春婦になることを意味している。読者の中に「プロメセイズム」や「インテルマリウム(ミェンズィモジェ)」概念に出くわされた方がおられたら、詳細については、これら単語をクリック願いたい。ウィンストン・チャーチルが「ヨーロッパのハイエナ」と呼んだ国が、ベラルーシを激しく攻撃するのは驚くべきことではない。ポーランドは、a)自分の後ろに、どこかの大国がついていると思える時、あるいはb)相手が弱いと思えるの、いずれかの場合、常に攻撃するのだ。私は、ローマ法王が公式に「ベラルーシでの平和を祈り」、暴力に対する彼の「苦脳」を表明するのを心から期待している。実際、連中は、ほぼ1000年間(ここと、ここを参照)同じギャングだったし、連中はまだそれをしている。本当に、太陽の下に、新しきものなし。
- おろかなバルト諸国も、非常に単純な理由から、ジェチュポスポリタ(ポーランド共和国)加入を望んでいる。彼らは、欧米は最終的に彼らを捨てると恐れており、彼らだけでは何も達成できないのを知っているのだ。ポーランドは、アメリカの陰に隠れるのを好むが、バルト諸国はポーランドの陰に隠れるのを好んでいる。最終的に、これらの国々は、おそらく、ロシアはさておき、ベラルーシでさえ、単独で、軍事的に彼らに勝ちかねないので、それで、アメリカ政府と提携し、守られた人物が、ウクライナを掌握したように、ロシアを掌握し、最終的に(!)(集団的に?)歴史が、決して彼らに、そうなることを許さなかった「プロメテウス」になれると悟ったのだ。
- EUの老人指導者連中は、やり方を知っていることしかしない。どの選挙が公正で、どの選挙が不正か、どの政権がデモ参加者をたたきのめし(マクロン?)、どの政権が、入念に制御された「反政府派」の要求に即座に屈しなければならないかを決める、ある種の(道徳的?)権威のふりをしているのだ。彼女と、彼女が意味するものに、ロシアが感じている徹底的な侮辱がわからないメルケルを見ると同情を禁じ得ない。
最後に、プーチンや他のロシア人が言っていることを検討しよう:
- プーチンも習も、選挙結果を認めた。率直に言って、ルカシェンコが大差でチハノフスカヤを破った事実に疑いをさしはさむ中途半端な情報源を私全く知らない。そう、私は率直に言って、80%対10%という馬鹿らしい数字も深刻に疑っているが、私はルカシェンコが負けたと言う人々を一層疑う。プーチンも習も、この選挙を「認めない」ことなどあるまい。それは、プーチンと習、いずれも、起きたこと、あるいは今起きていることについて、決して欧米の言説を受け入れないだろうことを意味する。
- ルカシェンコの電話へのプーチンの対応は「控え目な好意」あるいは「礼儀正しい情深さ」の典型のように思われる。明らかに、ロシアの誰も、何が起きたか忘れておらず、私はロシアのトーク番組、ニュース報道や記事の非常に明確な傾向に気付いている。大半のロシア人が、心からベラルーシ人を、ロシア人同胞として見ているが、ルカシェンコに対する苛立ちと嫌悪の強さに気付かずにはいられず、しかも、それは増大するばかりだ。非常にクレムリン寄りの解説者さえ、ルカシェンコがしていることに(彼らは、ルカシェンコがしていないことに対しても、劣らず腹を立てている)について、冷静さを失っており、ベラルーシ外務大臣は「海外勢力の工作員」(私も疑わない)なので、ロシアは、彼を解雇するよう要求するべきだと発言したロシア連邦国防省審議会メンバーで、典型的なクレムリン部内者のイゴーリ・コロチェンコのことを私は考えている。私は彼と全く意見が一致する。
- 極めて重要なのは、ルカシェンコとプーチン間の電話会話の公式要約記録書類で、プーチンがロシアとベラルーシ間の統合は継続しなくてはならないと繰り返したことだ。これがクレムリンの言い方だ。「もし必要なら、ロシアは、ベラルーシ・ロシア連合国家創設条約の原則と集団的安全保障条約に基づいて、ベラルーシが直面している難題を解決するために必要な支援を提供する用意ができていると再確認した」。言い換えれば、プーチンは、介入が、特に公式にミンスクから要求された場合、何らかの方法で、ロシアが介入可能な法的枠組みを言っているのだ。
次に、今一体何が本当に起きているのか、箇条書きリストの形で要約しよう。
- 多くのベラルーシ人が、ルカシェンコにはうんざりしているのは疑いようがない。
- 多くのベラルーシ人が、まだルカシェンコを支持している(ウクライナのような崩壊に対する保証人としてのみ)のは疑いようがない。
- 正当なベラルーシ野党が、素早く、やすやすと、欧米に取り込まれたのは疑いがようなく、彼らを「プロメテウスのような」特殊部隊と呼ぼう。
- ルカシェンコは、本気で選挙運動をしたり、わざわざ話かけたりして、国民に嘆願する必要がないと思うほど自身過信していた。彼は自分について自信過剰で、この選挙に入ったが、結局、側近太鼓持ち連中(彼に報告する際、彼らは起立している)がウソをついていたか才覚がなかったことが分かったに過ぎない。
- 次に、ルカシェンコがKGBとベラルーシ機動隊で、容易に街頭を制圧できると確信していたのも明らかだ。そして、それは24時間は有効なように思われたが、ここ二日、政権は街頭の掌握を失い、そして/あるいは、次に何をすべきか分からずにいる証明だ。更に、機動隊は、デモ参加者をけ散らすためには使えるが、この機動隊を、人々に働くのを強いるために使うことはできない。ベラルーシの主要な工場や企業でのストライキについて、多くの一貫した報道がある。ルカシェンコは、一体どうやって、人々に働くよう強いるのだろう? 彼は、そうできない。実際、彼はストライキがベラルーシを破壊すると宣言して、具体的にそう言ったのだ。今会社ベラルーシ・カリ(カリウム肥料を製造する)ベラルーシで最も収益の高い企業の一つが操業を停止したという報道さえある(今しがたわかったが「ベラルーシ・カリ労働者」が仕事を再開することに同意した)。
- 瀬戸際で、ルカシェンコはプーチンに電話をし始め、彼は市民集会の際に「我々ロシア人」と言いさえした。今、プーチンが、ルカシェンコに何らかの借りがあると考えている、まともなロシア人評論家を私は思いつけない。
- 起きたことに対する責任は、ルカシェンコの無限の横柄のせいだけではなく、ベラルーシKGBへの潜入や、ウクライナ・ナチの挑発もある。起きたことは予測するのが容易だった事実(多くの人々がこれを予測していた)にもかかわらず、この場合、対外情報庁SVRとロシア連邦軍参謀本部情報総局GRUが、へまをした可能性がある。ロシア連邦保安庁FSBの素晴らしい活躍がなければ、今ごろ何人かのロシア国民がウクライナ・ナチ刑務所に投獄これていた可能性は大いにあり得た。ロシア外務省も不意をつかれたように思われる。私は対外情報庁SVR/参謀本部情報総局GRUで、必ずしも「首にされる人々が出るべき」とは思わないが、少なくとも、この危機で、なぜクレムリンが不意をつかれたのかについて徹底的な内部調査があるべきで、何らかの「組織的結論」が引き出されるべきだ。ちなみに、SVR/GRUと外務省が、時宜を得た、実質的(実行可能な)警告を* していた*可能性がある。その場合、問題はこれらの機関の長、ロシア政府と大統領にある。諜報活動の過程には、「三つのA」で示される三段階があると言われている。acquisition 捕捉(データ収集)、analysis 分析(データ管理と解釈)と、acceptance 受け入れ(政治決定者の説得)。この失敗がどのレベルで起きたか、もちろん知らないが、私はそれは重大な問題の明らかな兆候だと思う。
ここで「ベラルーシにおけるロシア問題」の核心を見よう。それは実際単純だ。ベラルーシ人は、ウクライナ人よりも、遥かにロシア人だ。それだけでなく、(あらゆる変化と、あらゆる情報源からの)ベラルーシの映像から判断して、いわゆる「反政府派」の「指導者たち」(とされている)全員、狂気じみたロシア嫌いだが、ルカシェンコに抗議している人々の圧倒的多数はそうではない。
ここでの問題は、本当に信頼できる数値を得るのは不可能なことだ。公式ベラルーシ世論調査はお笑い草だが、「野党」世論調査や欧米が行う世論調査は、おそらく、もっと当てにならない。ベラルーシの都市の中で、ミンスクは、いささか特別だという事実がある。更に、ベラルーシでは、都市と田舎の間に相違がある。そして最終的に、野党自体、全く一枚岩ではなく、人がルカシェンコを支援するかどうか尋ねられた際、人は「いいえ」と答える理由には多くの可能性がある(ふん、多くのロシア人も、ルカシェンコを支持していない)。それで我々は、何らかの正常がベラルーシに戻り、本当に自由選挙が行われるまでは、どれだけの比率のベラルーシ人が、この危機や、ルカシェンコについて考えているのかは、誰も確実に分からないことを認めなければならない。
そして、シリアやウクライナでと同様、当初の抗議行動は、抗議する多くの正当な理由があり、外国から支配されるのでなく、本当に現地のものであることで、正当だったという事実がある。だがそこで、シリアやウクライナでと同様、これら抗議は海外工作員に潜入され、取り込まれた。理想的には、ロシアはできる限り妥当な範囲で、元々の/本当のデモ参加者を支援し、潜入した不穏分子を無力化したいと望んでいるだろう。だが彼ら自身がそうしなかったら、ロシア人は一体どのように彼らを引き離せるだろう?
あちこちに広められている一つの考えは、ロシアは、ロシア・ベラルーシ連合国家という文脈で、更には、集団安全保障条約の下、はっきり公然と介入するべきだというものだ。プーチンが既に、この組織に言及したから、これは確かにロシアの選択肢だ。だが、それは良い選択肢なのだろうか?
率直に言って、私はロシアにとっては、いかなる良い選択肢もあると思っていない。私は何度か、個人的結論として、ベラルーシ人々が自由なままでいるための唯一可能な方法はロシアに加入することだと述べてきた。私はまだそう考えている。だが今、私は、ベラルーシ国内の唯一のモスクワと対話する人物が自身の政府を制御できなくなりつつあるように思われ、ベラルーシが完全崩壊のまさに本当の危機にあり、この問題で進展を実現する容易な方法がないので、これが本当に可能だとは全く確信できない。
この全ての根本原因?
汚職 いつもの通り。
1991年以来、ウクライナ指導部は酷いと良く言われるが、それは事実だ。彼らの全員、何らかのおかしな見せ物で演じているように思われた。そして、そう、ベラルーシでは、人々は、ウクライナでより、ずっと警官とKGBを恐れている。だが、それは必ずしも、ベラルーシがそれほど腐敗していないことを意味しない。この全てが意味するのは、ベラルーシで、政府は、当局者と彼らの「共同経営者」だけが、うまい金もうけをするのを保証する保護体制の半封建制度を運営する素晴らしい仕事をしたということだ。
そしてこれはベラルーシやウクライナだけの問題ではない。まさに同じことが90年代にロシアで行われた。それは人格問題でさえなく、マルクス主義の言葉の意味で階級問題だ。
我々は、ソ連共産党とそのエリート層・支配階級(ノーメンクラトゥーラ)が、必ずしも個々のメンバーレベルでなく、全体的に、驚くほど不正な組織だったことを想起する必要がある。私は、これらの人々の「一貫性」を以下のように要約する。
- 最初に彼らはスターリンとマルクス・レーニン主義の理想を裏切った(フルシチョフ時代)
- それから彼らは自身のソビエト社会主義共和国連邦とソ連共産党を裏切った(ブレジネフ&ゴルバチョフ時代)
- それから彼らは、愛国者を装った(筋金入りの共産主義イデオローグ、クラフチュクのような民族主義者さえそうした!)。
- 次に、彼らは保護を求め、彼らの実数の収入を隠して、抑制するべき権利を得るために深く欧米を浸透させた。
- 次に、彼らは個人財産を急に肥やしながら、国の全ての富を、干からびるまで吸った。
- 最終的に、彼ら全員、自身と国民を金のために売ると欧米に申し出た。
これらの連中にはアメーバ以上の道徳心はなく、彼らはどんな精神病者と比べても、同じぐらい冷酷だ。彼らは、かつて党実力者に身を売っていたが、今やアングロ・シオニスト人に身を売っているのだ。
そこで、こういう疑問がおきる。ロシアは、いかにして、a)大規模流血無しで、b)ロシアが本当にしているのはルカシェンコ救助である様に見せて、この支配階級を排除できるのだろう?
今ロシアに本当に必要なのは、アメリカがエルドアンを打倒しようとした時と同じぐらい救い難い愚かなことを、欧米にさせることだ。だがそれは、ルカシェンコを服従させ、彼の取りまき連の最も危険な分子の一部を排除するだけだ。より大きな問題は、ロシアが、いかにしてベラルーシ国民を支援できるかだ。
ベラルーシ政権に、より多くの金を投入するのは無意味で効果もない。もう十分だ。
軍事力の行使は可能だ(私はベラルーシ軍の誰も、少なくとも重要な指揮官や部隊がこれに反対するとは思わない)。だがそれは非常に慎重を要する、政治的に実に危険だ。ベラルーシ人にも、多くのロシア人にも正しく理解されないかもしれない。
私の個人的な最初の結論は、「ルカシェンコを救う」と解釈されかねないことを、ロシアは決してしてはならないということだ。ルカシェンコを「救済する」必要はない。救済する必要があるのはベラルーシだ。
第二に、軍事的な意味では、ベラルーシを確保するのはロシア軍にとって問題ではないが、政治的な意味で、欧米が確実に、それに飛びつくから、より多くの制裁(それも本当に問題ではない)を課すだけでなく、精神的に正気で、愛国的なヨーロッパ人が「ロシアがやってくる!ロシアがやってくる!」という感情的呪文で「どなりつけて、黙らせられる」新冷戦を作り出すだろう。
最近のベラルーシの軍事行動も私は懸念している。ポーランド国境付近に即応集団を配備するのは非常にまずい考えだ。ロシアが*決して*当然と思うはずがない、ポーランド指導者が、驚くほど悲劇的な結果で終わる、驚くほど愚かなことをしてきた歴史的実績を考えれば。私は一瞬たりとも、NATOがベラルーシを侵略する計画を持っていると思ったことはない。どちらかと言えば、ルカシェンコとロシアは、彼らの戦略上の防御を準備しながら、欧米に「仕掛け線的な機能をする部隊」と呼ばれるものを残すべきなのだ。ポーランドや、バルト諸国や、NATOの誰かを挑発する必要はないのだ。
もし選択が許されるなら、プーチンは、おそらくルカシェンコといわゆる「野党」両方が去ることを望むだろう(これは私にアルゼンチンの「que se vayan todos」や、レバノンの كلهم يعني كلهم を思い出させるが、いずれもチハノフスカヤとルカシェンコ両者を含め「全員出て行け」「全員と言ったら全員だ」と大雑把に翻訳できる。
これを書いている時点で(8月19日)、今ルカシェンコは「文明的な欧米」か「プーチンの血まみれのモルドール」から選択しなければならないように思われる。実際は、彼は本当にモスクワを選択する以外選択肢はないが、それは、ルカシェンコ政権から何か救済可能なものがあるとモスクワが考えていることを意味しない。彼が「ロシアの兄弟」であることに戻る最新の「動き」は余りに遅く、余りにわずかだ。もし彼の外務大臣とKGB長官が次の政府に居残れば、この全ての話は、どうでもよい無意味なものになろう。
簡単に言えば、こうだ。もしルカシェンコが権力の座に留まりたいと望むなら、彼には選択肢は一つしかない。もちろん、公式にではなく、出来る限り熱心に、心からのふりをして、プーチンの慈悲を乞うことだ。それから彼はプーチン(あるいはロシア諜報機関)が彼に手渡すリストの名前を全て残らず、彼の政府から粛清する必要がある。そう、それは、彼が本当に、権力をすっかり放棄しなければならないことを意味する。プーチンは、彼が到達したあらゆる決定を説明するため、ロシア人とベラルーシ人々両方に演説する必要がある。これは、またしても、(ロシアでだけでなく、皆の話によると、ベラルーシでも)非常に高い大衆の支持という、プーチンの最大の武器になる状況かもしれない。
今欧米は、ロシア介入を深刻に恐れているように思われる。彼らは、おそらく(正確に)それがロシアにとって、どれだけ容易か、NATOを含め、絶対に誰も、ましてEUが、それに何もできないのを理解しているのだ。トランプには個人的に、やるべきずっと大きな仕事があり、彼は殆ど気にかけまいと私は思う。だが彼の自己陶酔的な国務長官は、おそらく彼がベラルーシを、アメリカが運営するもう一つのバンデラスタンに変えることができると感じているのだ。
すると、何が次に起こり得るのだろう?
ロシアが、ベラルーシ国内のアメリカに支配されていない野党と公式に連絡を取って、何らかの対話を確立することは重要だと私は思う。ロシアは、ベラルーシ国民に公式に、もし彼らが現在アメリカに操られている「反政府派指導者」が権力の座に着くのを許せば、ウクライナがそうなったのと全く同様、ベラルーシも崩壊すると警告しなければならない。
これはロシアが何度も繰り返すことができる最強力な主張かもしれない。ルカシェンコも酷いが、もし彼が何らかのマイダンのようなクーデターで打倒されたら、ベラルーシは次のバンデラスタンになるだろう。これはロシアにとって大きな頭痛だろうが、ロシアは容易にこれを切り抜け、生き残れる。ベラルーシはそうすることはできない。
だが、単に、ルカシェンコを権力の座に留めることも、解決ではない。彼が最近の選挙に勝った、あるいは勝たなかったかったかどうかは、もはや本当に重要な問題でさえない。本当に重要な問題は、彼は関係している大方の人々で、彼への信頼を失ったことだ。この理由だけで、ルカシェンコは退陣せねばならない。次に、欧米に支配された連中を除く、ベラルーシの主要政治勢力をとりこんだ何らかの挙国一致政府が組織されるべきだ。最終的に、誰であれ、ミンスクで権力を掌握する人は、ベラルーシのロシアへの完全再統合に進路を設定する必要がある。それがベラルーシ国民にとって、唯一実行可能な長期的解決策だ。
The Saker
記事原文のurl:https://thesaker.is/will-belarus-become-the-next-banderastan/
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大阪なおみ、準決勝棄権!
都医師会長は正論。
日刊ゲンダイDIGITAL
日刊ゲンダイには、横田一氏の記事もある。
大阪万博のロゴがすごい。たとえ開催されても、行かない。最初の大阪万博、隣家の方が、大阪に引っ越ししておられて、再三ご招待いただいたが、丁寧にお断りした。隣人一家には、とてもお会いしたがったのだが。
鳥飼玖美子著『10代と語る英語教育 民間英語試験導入延期までの道のり』を読み終えた。三人の若者の活躍もあって、民間試験導入に至った経緯が、インタビューに基づいて詳しく語られている。彼女自身、英語教育政策に関して良い本を沢山かかれており、色々拝読しているが今回もとても勉強になった。一環して悪辣なのは政府。先に2020年導入結論ありき。とりあえず延期にはなったが、油断はできない。特に、ジャパン e-ポートフォリオなるもの、実に陰険だ。
三人の若者の発言、実に論理的、並の大人では、かなうまい。鳥飼立教大学名誉教授は、258、259ページで書いておられる。『グローバル人材育成のために「主体的に思考して判断し、それを表現」する人間』というのは、学習指導要領にある文言のようだ。
グローバル人材育成のために「主体的に思考して判断し、それを表現」する人間が育ったとして、日本はそのような人間を受け入れるのでしょうか。そのような人間が、自分なりに考えた結果、集団としての日本社会が良しとすることを、これはおかしいと判断し、それを正面切って表現した場合、社会はどう反応するでしょう。その異端を排除しないでしょうか。そもそも、これまでの日本の価値観を覆すような人間が育つ可能性を理解しているのでしょうか。
中略
「英語民間試験」導入に反対した三人の若者は、見事なほど、この目標を体現していました。自ら考え、判断し、声を上げる、このような若者たちが排除されることのない社会であることを願います。そして、これまでの日本社会のありかたに一石を投じる若い世代に社会が耳を傾け、日本社会が多様な価値観を許容す方向に変貌してゆくことを心から期待します。
失敗を反省する「大学入試のあり方に関する検討会議」が開催されており、かなり率直な意見がだされている。しかし、それはまさに、コロナ専門家会議も分科会と、全く違うがゆえに、鳥飼立教大学名誉教授のおかげで、我々が詳しく読めるのだ。決定した要点だけを公表する「議事要旨」ではなく、「議事録」が公表されているためだ。鳥飼立教大学名誉教授は、そこで、こう書かれている。293、294ページ。
第一に、発言者が誰であるかを明記した議事録の重要性でした。
折しも、コロナ感染症対策で設置された政府の「専門家会議」の議事録がないことが問題になりました。将来の感染症対策にも参考になるはずの重要な会議の意思決定プロセスが記録されていないというのは将来に禍根を残します。
最後の部分で驚いた。295ページの一部を引用させていただこう。
次に痛感したのは、反対論や慎重論を排し無理だと分かっていながら大学入試改革に突っ走った無謀さです。以前から関係者の間では、「まるで第二次大戦中の「インパール作戦」だ」」と密かに囁かれていました。司令部がずさんな作戦を強行して多くの日本兵が命を落した無謀な作戦のことです。
最近では、新型コロナ感染症対策として政府が全所帯に二枚の布マスクを配布した「」アベノマスクを、関係者が「インパール作戦」にたとえているようです。
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大変秀逸な論文訳ありがとうございます。一から十まで同意することばかりでした。
特にソ連後半期の指導層の腐敗と後継国上層部の愛国を名乗る詐欺師達の犯してきた業は罪深きものですね。これがウクライナの悲劇、ベラルーシの混乱の根本原因です。解決は「欧米に支配された連中を除く、ベラルーシの主要政治勢力をとりこんだ何らかの挙国一致政府」の登場でしょうが、ルカシェンコの下でマトモな野党がなく望み薄です。ウクライナでは、プーチンの友人であるメドベチュークの党が支持を伸ばしているみたいで、小生はこれに期待しています。ベラルーシはナチの蹂躙だけでなくチェルノブイリの影響もウクライナ以上に大きいはずで本当に気の毒な国なのですが、この状態から脱するにはロシアとの再統合との意見に賛成です。
投稿: 石井 | 2020年8月27日 (木) 16時22分