戦時体制に向け、「一つの中国政策」の終焉を示すワシントン
Finian Cunningham
2020年8月9日
Strategic Culture Foundation
ワシントン・ポスト論説は「アレックス・アザーの台湾訪問は、対中国融和拒否を意味している」と見出しに書いた。週末のアザー保健省長官は、40年前、ワシントンが最初に「一つの中国政策」を採用して以来、この島を訪問する最高位のアメリカ官僚だ。
トランプ政権の主要閣僚アザーは、台湾の首都台北で、蔡英文大統領に会う予定だ。この訪問は、台湾を、中国主権下の反抗的領域と見なす北京の激怒をひき起こした。
以前から台湾として知られる島は、1949年の毛沢東と共産党の人民解放軍に対する歴史的敗北後、蒋介石に率いられ国民党勢力のとりでとなった。台湾の公然の分離主義は常に中国の領有権主張を引き起こしている。北京は必要とあらば、この島を武力で支配下におく権利を保留している。
1979年、ワシントンは台湾との正式の関係を断ち切り、いわゆる「一つの中国政策」を採用した。にもかかわらず、ひき続くアメリカ政府は自称独立国家台湾との非公式関係と特に武器取り引きを維持している。暗黙の両国関係は、ワシントンの行為が、その主権に悪影響を及ぼしていると見る北京にとって、くすぶる火種だった。ワシントンとロンドンが最近、北京の権限に侵入するため香港問題をトロイの木馬として利用したのと同様だ。
今ワシントンは更に一歩進み、危険な中国挑発に向かった。北京はトランプ政権に「誤った言葉や行動を止めて」「状況をエスカレートさせかねない危険な動きを避ける」よう求めた。アザー長官による訪問は、中国主権へのあからさまな挑戦と見なせる。
中国の環球時報は、もしアメリカが北京の重大関心事を無視し続けるなら「軍事衝突の危険が増加し」「戦争が不可避になる」と警告した。
アザー訪問は、表向きは、コロナ流行と、それに関する医療政策の協力に関するものだ。だが、台北との高官の、極めて公然の政府接触という本質は、北京に対して、ワシントンが計算したひじ鉄砲のように思える。
この動きは、ワシントンによる様々な挑発に続いて起きたものだ。好戦的な貿易関税、中国通信企業に対する制裁、香港にや他の侵害とされること対する非難、コロナ流行やアメリカ経済の崩壊を北京のせいにする扇動的な反中国言説。
更に、中国の南シナ海領有権主張は違法だとワシントンが宣言する先月のマイク・ポンペオ国務長官による正式声明があった。声明は、地域における中国の演習に対して、アメリカが軍事行動を開始するための口実を企てたものと見られた。
この週末、アレックス・アザーが台湾の土地に足を踏み入れて、しているのは、ワシントンが「一つの中国政策」を投げ捨てると、北京に象徴的に言っているのと同じことだ。挑発的に、推測されるのは、地政学的に隠していたことを、アメリカが公にして、最終的に、アメリカは、北京に対する「宥和」政策ゆえに、数十年間、台湾を正統な中華民国とするアメリカの公式見解を抑制してきたと言っているのだ。今アメリカは、戦術的宥和は終わったと公式に合図を出しているのだ。手袋を外して、闘う用意が整いつつある。それは、ワシントンによるむき出しの攻勢を示唆している。
ワシントンは、北京に対し、台湾を手先として利用することから、中国の領土保全と、まさに中国政府の権威に、はっきり異議を申し立てる立場へと決定的に変わったのだ。ポンペオが先月基調演説で明らかにしたように、独立した島、台湾を公然と受け入れることで、ワシントンは、北京での政権交代を求める意図を推進しているのだ。
北京が繰り返す抗議にもかかわらず、トランプ政権は台湾へのパトリオット・ミサイルや無人飛行機を含む兵器輸出を推進している。「航行の自由」という名目の下、アメリカ軍事演習が南シナ海や台湾海峡で増加している。そして今台湾で、トランプ高官が1979年以来見られなかったワシントンの存在感を、可能な限り耳障りな方法で示している。
もしけんか腰の態度に対する、この分析が正しければ、より挑発的な台湾への公式代表団が予想できる。おそらく、マーク・エスパー国防長官かポンペオ国務長官が「共産中国の圧制的権力行使に反対の自由な国との団結」を示す為に登場するだろう。
まさに今、ワシントンから生じている挑発のなだれは不可逆的なものに思える。たとえトランプが11月の選挙で民主党のライバル、ジョー・バイデンに取って代わられたとしても。ワシントンが、グローバルパワーを中国に奪われそうだと感じることから生じる対立には、止めようのない力学があるのだ。
遅ればせながら、数人の著名評論家が、アメリカと中国間の紛争は、もはや考えられないものではないことを認めている。ベテラン・ジャーナリストのジョン・ピルジャーは、アジア太平洋での自称覇権を確保するための、国防総省による歴史的な軍事力増強に基づいて「来るべき対中国戦争」を数年前に警告した。もし戦争が勃発すれば、核の大惨事にエスカレートする可能性が極めて高い。そしてワシントンの狂人連中は、そのような大惨事を可能にするため、あらゆることをしたのだ。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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記事末尾にある、ピルジャーの警告は、ケイトリン・ジョンストンさんの記事翻訳「ジョン・ピルジャーの時宜を得たドキュメンタリー「来るべき対中国戦争」をご覧願いたい」でもご覧いただける。
LITERAに、イソジン吉村知事記者会見の驚くような話題。
吉村知事「ヨードうがい薬」会見を『ミヤネ屋』に事前漏洩! 出演者のテリー伊藤が「会見の1時間半前に知った」「インサイダー取引できた」
『ミヤネ屋』と『ゴゴスマ』が、あの話題をあおったというのをどこかでみた気がする。『ミヤネ屋』は一切見ず、『ゴゴスマ』はメンバー確認だけで音声を消している(実質みたことになるまい)ので良くわからないが、吉村を知事を擁護する異神連中の論理のお粗末さ。医師会を共産党と呼ぶ御仁、ファシスト丸出し。
西谷文和 路上のラジオ Vol.31 佐高さんに聞いてみよう、アベ政権と公明党、電通とメディアのこと。 という番組をたまたま聞いた。さすが佐高氏、公明も異神も切って捨てる。
番組中で、平凡社新書で『池田大作は宮本顕治』が刊行予定といっていた。発売日は8/10といっていたが、ネットを見ると8/17。
日刊ゲンダイDIGITAL記事 形容詞として「サイコパス」とつけたいところ。
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