水戦争とアメリカの運命
マーティン・シーフ
2020年8月5日
Strategic Culture Foundation
インド対中国、エジプト対エチオピア、イスラエル対パレスチナ - 水戦争は、既に、ここアメリカでも起きているが、それでも、アメリカやヨーロッパの政治家たちは、どうしようもないほど、それに気付かずにいる。これは必ず、欧米の、裕福で、横柄で、とてつもなくひとりよがりのエリートに、壊滅的な結果をもたらすだろう。
問題は、特に、アメリカで深刻だ。実際に、それは半世紀間、増大していたが、21世紀、ネオコン帝国主義の共和党も、ネオリベ帝国主義の民主党も、環境保護政治家も、それに気付かないような壮大な規模に至っている。
一体どうしてこうなったのだろう? それは、上記三種のイデオロギー信奉者と世論形成者連中が、圧倒的に、アメリカ東岸と西岸に住んでいるからだ。両地域は、水は常に豊富で、気候も温和だ。
これらの地域の偏見は、ずっと昔にさかのぼる。テオドア・ルーズベルトは、彼の宿命的な大統領任期中に、中米や北東アジアの不運な人々のみならず、自国の中部地域住民にも、横柄なエリート帝国主義を実践していたのだ。なぜなら、今日に至るまで、全てのリベラル派と環境保護論者に、やみくもに崇拝されている、全国的に膨大な面積の最良の土地を人間による利用から切断し国立公園だと宣言する奇怪な実践を始めたのはルーズベルトだったのだ。
テオドア・ルーズベルトの政策は後続大統領、特にロナルド・レーガンが遵守した。
それで今日、アメリカ国民の、驚くべき95パーセントが、わずか7パーセントの地域、ひと握りの大都市周囲のごく少数の集中した郊外区域に集中している。ところが、その面積の二倍以上が、国立公園と指定され、アメリカ国民によるどんな生産的な使用から切り離されているのだ。
だが、これらの空き地は極めて危険だ。こうした場所には、捕食動物、つまり人間や動物がうようよいるのだ。何千人もの人々、特に若いキャンパーが毎年そこで姿を消す。これに関して、自身の犯罪的無能さと、自国民を保護する上での失敗を隠すことに既得権がある連邦政府から信頼できる統計値を得るのは事実上不可能だ。
少なくとも、自然の慈愛に満ちた喜びを夢見る、通常武器を持たないロマンチックな都市住民は、主要道路からわずか数百メートル離れて道に迷って、あてもなくさまよう際、野生で、どう生き残るべきか、全く途方に暮れる。
それでもアメリカ中部地域での共和党覇権は、このロマンチックで横柄な帝国主義政策によって重要な資源から切り離された何百万人もの人々の憎悪に基づいていた。
実際、この対立が2016年アメリカ大統領選を決めたのだ。それは何世代も「青」い伝統的に民主党の多くの州を含め、全ての中部地域がなぜ不意にドナルド・トランプ側の「赤」になったのかを説明する。筆舌に尽くしがたい、確実に愚かな民主党候補者ヒラリー・クリントンは、燃料としての石炭に対する「戦争」で、対立を更に悪化させた。(アメリカ政治家は、猛烈でないあらゆる対立を「戦争」と呼ぶ、子供っぽい、不快きわまる習慣があり、現実への対処で、彼らは極めて不適になっている)。
アメリカ国民が極めて都会に集中しているので、主要な都市部外の中部地域は、200年前、土地に飢えた移住者が、人間バッタのように全土に広がったときより、信じられないほど、人口密度が低いのだ。
これはロサンゼルス、ニューヨーク市、シカゴ、サンフランシスコやマイアミに集中している膨大な住民が、彼らのロマンチックな環境保護政策の夢の背後にある、環境の本当の現実を全く分かっていないことを意味する。世界的気候変動が劇的に地下水面を低下させ始める前でさえ、どれだけ清浄な水を消費しているか、水の供給が常にどれほど限定されているかの観念がないのだ。
彼らの国の歴史上、思いも寄らない土地と資源の広大な領域を解放しているので、この進展は、ロシアとカナダにとって、長期的には、非常に良いニュースだ。だが、アメリカの新帝国主義夢想家連中は、本当は、アパラチア山脈の、ニューヨーク市の水源、あるいは、ロサンゼルスの水源を、水不足の西部諸州から保護するために、軍隊を派遣すべき時に、アフガニスタンからウクライナまで、狂った災難に軍事資源を浪費している。
それは、世界中の水紛争は、ワシントンのシンクタンクやマスコミメディアの自称天才連中が本気で注意を払うほどの問題ではないことを意味している。彼らは、むしろ(実にうまく水資源対策をしている)ロシアや(変化する気候で大きな課題に直面し、指導部が十分問題を認識している)中国に説教し、それから自身の足元の問題に直面するのだ。
だから、ヒマラヤ分水線で急速に縮小する氷河や清浄な水資源を巡るインドと中国の対立、あるいは(ナイル川の遥か南にさかのぼって、軍事力投射する上で、これまで200年間、成功したことがない)エジプトと、(過小評価すべきではない)エチオピア間の無慈悲にエスカレートする対立を調停する話となると、ワシントンの政治家は全く見当がつかないのだ。
既にアメリカには水戦争がある。そして、それは最初にアメリカで、実に意外な激しさで勃発する可能性が高い。
11月の大統領選挙での、民主党ジョー・バイデンの、ありそうな勝利で、ワシントンの政治家連中の、危機を未然に防いだり、対処したりする上での無能な失敗が、いつものように、ロシアや中国のせいにされるだろうが、水戦争や関連問題で、国民の結束を、ばらばらに引き裂くだろう。
清浄な水は、人類として知られている水生哺乳類にとって、究極的に不可欠な資源だ。水の喪失は何億もの人々に致命的だ。アメリカ人にとって、この不都合な事実が、影響を与えようとしている - 強烈に。
マーティン・シーフは海外特派員として、24年間、ワシントン・タイムズとUPI通信社で70以上の国から報道し、12の戦争を担当した。彼はアメリカと世界経済問題専門。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2020/08/05/water-wars-and-america-fate/
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アメリカ企業が海外の水道を私営化する様子について、以前記事を翻訳している。日本は周回遅れで、これから私営化、悲惨な事態になるだろう。副総理が公言しているのだから確実。売国奴連中、相当なキックバックを得るはず。
必要な人に対するPCR検査強化を無視する分科会が提唱する曖昧模糊四段階。複雑な指標の組み合わせは、ウソの極致。経済優先自由裁量を可能にする屁理屈に過ぎない。批判せず垂れ流す速記者。大本営広報部。
アメリカ、裏ルートでアフガニスタン・タリバンと交渉の翻訳記事の後書きで引用した加藤周一の言葉。
政府の言ったことも覚えておいて頂きたい。記憶がなければ駄目ですよ、ね。だから、一つ一つの事件を、技術的な細かい所に入って行くことは、それは専門家でないと非常に困難だし、第一、そこに引き込むことは罠ですよ、一種の、ね。批判を封じる罠ですよ。そうじゃなくて、その、事件と事件とのつながりを見なければね。で、つながりは方向性を持ってるんだから。だからその、方向性に対して反応しなければいけないと思うんですね。
台湾も、日本でのコロナ蔓延で、日本人入国対策を強化している。日刊ゲンダイDIGITAL
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