破滅的打撃を受けたベイルート:新パラダイムは一触即発かもしれない
アラステア・クルック
2020年8月9日
Strategic Culture Foundation
ニュースの周期と地政学の周期は、時々異なることがある。今回のベイルート港破壊は、そうした例の一つだ。そこで起きたことは、その後遺症が、どんな形で展開するにせよ、重要な地政学的事件で、未来を形成する定めだ。この岐路には、当然の歴史的理由がある。一つは(この地域が沈黙している理由)我々はまだ法科学鑑定を持っていないことだ。多数の衛星写真であっても、現地の基本的事実ではない。法科学鑑定ではない。
主流マスコミは(8月18日予定の)ラフィーク・ハリーリー暗殺で、ヒズボラのメンバーを起訴すると予想されている特別法廷判決に先立ち、爆発の記事を「まとめよう」と急いでいる。それでも、まだ多くの未回答の疑問がある。これら法科学鑑定が現場から入手可能になるまでには更に数日かかるだろう。それらはもちろん争われ、ほんのわずかしか解決しないかもしれない。
この沈黙に対し、主要当事者たちの言葉を待ち受けながら、欧米やイスラエル・マスコミは、ベイルートから「知る必要がある全てのこと」やら「要約」を大量に作り出している。だが、それらは要約からは、ほど遠い。日がたつにつれ、益々多くの疑問が生じている。そして、この地域はこのような地政学的転換点について共同記憶を持っている。
MI6/CIAによるクーデターなのが明らかになっている1953年のモサデグ首相反対「大衆」蜂起は、その後、形勢を一変させるイラン革命の先駆となるはずだった。レバノンからのシリア撤退をもたらした、2005年のラフィク・ハリリ暗殺で、「家族」の携帯電話の通話(内容不明)のお粗末なコンピュータ・パターンは、ヒズボラに責任をおしつけ、同時に、この組織の活動を広範囲にテロリスト指名するよう画策されていた。(ヒズボラは、最初から、ハリリ暗殺に関する欧米/国際的言説に異議を唱えている)。
それでも、ラフィク・ハリリに起きたことは、党派的な戦いの霧の中で覆い隠されたままなのが真実はだ(今週のベイルート破壊の運命も同じかも知れない)。アメリカ・トマホークミサイルの爆音のさなか、シリアのドゥーマでの化学兵器物語は、(アサドが化学兵器で、のけものにされる中)もう一つの「転機」となった。それでも、最近の化学兵器禁止機関書類が化学兵器主張はでっちあげだったことを示している。
そう、この地域には休止する正当な理由がある。一方で、我々は港の爆発の法科学鑑定をまだ持っておらず、もう一方で、後に彼が繰り返したトランプの主張がある。彼は将軍連中にベイルートで起きたのは「攻撃」(爆弾)だったと言われたのだ。大統領はそれが攻撃だと「推測してはいない」。彼は将官連中が彼にそう言ったとはっきり述べた。
この声明は、世界から、エアブラシで完全に消し去ることはできない。同様に、数カ月前、シリアでの類似の「説明できない爆発」と奇妙に良く似た「形」やベイルート大爆発のマッシュルーム効果の類似は軽視できない。最後に疑問がある。爆発は、三度あったのだろうか?
だから、結果として、二つに一つの可能性が極めて高い。破壊は港湾警備当局による責められるべき過失に起因しか、言説を作り直し、根本的に地政学を作り直すため、現在の地域の力学を「打破する」大胆な試みだったかのいずれかだ。いずれも、あり得る。
それなら何だろう? イスラエルの言説は、ベイルートでの破壊が、レバノンの住民をヒズボラ対して立ち上がらせ、弾薬を人口密集地から移動するよう要求するだろうというものだ。(イスラエルは、もちろん、その結果、ヒズボラの武器弾薬の露出度が高まるのを歓迎するだろう)。月曜日の緊急国連安保理事会会合予定と、レバノンを国際監督の下に置くという主張が、欧米諸国が、この危機を、更にヒズボラを弱め、拘束するために利用しようと努めていることを示唆している。
親欧米の「3月14日運動」は、ヒズボラに対してレバノン人を動員するために、たまたま起きたことを利用しようと努めるだろうが、他の人々が予期するよう国内の反響を得ることはありそうにない。ベイルート港は歴史的に、スンニ派の世襲財産だ。そこには単一の警備機構はなく、スンニ派の人々はヒズボラの友人ではない。港町は、国連レバノン暫定軍による点検も受け入れている。港湾施設管理当局の特徴をあげるとすれば、腐敗と見境がない金銭ずくと言えよう。事故をもたらした重度の怠慢が、起きたことに対し、全面的、あるいは部分的に責任があり得る。
もしそうであれば、大衆の怒りは、必ずしも、ヒズボラではなく、腐敗したザーイム(何十年間も自身の豊かさのために経済構造を破壊していた体制の「親玉連中」)に向けられるだろう。実際、現在の政府は生き残りに苦労するかもしれない - 何らかの怠慢が起きた際、在職してはいなかったかもしれないが。責任は守旧派にある。
トランプがおおむね正しく、起きたことがある種の攻撃だったことが明らかになれば、cui bono誰の利益になるのかという疑問に答えるのは困難ではないはずだ。イスラエルのジャーナリスト連中が「出来事の縁起よいタイミングに得意になっている。「レバノンは[今や]崩壊するのは疑いがなく」、爆発の「衝撃波」は、とりわけ特別法廷判決に先立ち、今後長期間、ヒズボラを苦しめるだろう。
あるイスラエル人ジャーナリストが、この「レバノン主要港での爆発は、わずか一カ月前、レバノンに、船舶と石油タンカーを送ると言ったイランへの警告メッセージでもあると補足した。ベイルートに電気を供給する発電装置を搭載した船についての協議さえあったが、とりわけ、イスラエルとアメリカは、これらの船がレバノンに到着すれば、石油や小麦粉や薬だけでなく、武器、弾薬やミサイル部品の補給線を始めると恐れていた」。
多くが、法科学鑑定にかかっている。これは、2,700キログラムの硝酸アンモニウムの貯蔵という、ベイルート港における公的な脆弱性につけこんで、地域におけるヒズボラの戦略上重要な場所を破壊し、政治を(イスラエルに好都合な)予想外の新方向に移行させるべく戦略的現状をひっくり返すため、背後に隠れた大胆な(イスラエルがかつて自慢していた類の)「偽旗」戦略だったのだろうか?
あるいは、自分たちのことだけ考え、国民の健康にはかまわないレバノン・エリートの無気力さと金銭ずくの更なる例なのだろうか?
もし前者で、この出来事が、ヒズボラを押しつぶす新たな試みの前兆なら、この地域の新パラダイムは本当に一触即発かもしれない。
アラステア・クルックは元イギリス外交官、ベイルートに本拠を置くConflicts Forumの創設者で理事長。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501
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