アフガニスタン:アメリカ麻薬「戦争」
2020年7月5日
ビクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
アフガニスタンでのアヘン・ケシ収穫量を減少させることを狙った米国国際開発庁(USAID)プログラムが、現実には、麻薬生産増大を促進したと、米国議会に提出されたアフガニスタン復興担当特別監察官の四半期報告が述べている。加えて、文書は、主に、アヘン・ケシは、タリバン(ロシア連邦で禁じられている組織 - 編集部)支配下の地域で栽培されているというアメリカ当局者の主張に反論している。専門家によれば、麻薬取り引きを見て見ぬ振りをすることで、アメリカ軍要員は地元エリートの忠誠を買えるのだ。
そして、それは現実に対応している。そうでなければ、どうして、アメリカ行政機関であるアフガニスタン復興担当特別監察官(SIGAR)報告書が、2002年から2017年3月まで、アメリカは、アフガニスタンで麻薬の脅威を絶滅させる取り組みに85億米ドル投入したが、それでも設定された目標実現を決して成功しなかったと述べ、アフガニスタンは、ヨーロッパのみならず、アメリカの麻薬市場でより積極的に需要を満たしている世界最大のアヘン生産国のままだと説明している。ヘロインは、アメリカの強力な既得権益集団に支援される数十億ドルの事業だ。このことから、アフガニスタン占領の目的の一つは、彼らの支配下にあった麻薬取り引きを以前のレベルに戻すこと、麻薬輸送経路の完全支配を仮定することだったのが明らかになる。2001年、タリバーン下で185トンのアヘンが生産されていたのに対し、今不完全なデータによってさえ、アヘン生産は13,000トンに増加している!
ソ連軍のわずかな分遣隊がアフガニスタンに引き入れられた際、その地域で、しっかりCIAによって行われた作戦につながる黄金の三角地帯での麻薬取り引きの歴史を想起するのは有益だろう。当時、アフガニスタンとパキスタンのアヘン生産は、些細な地域市場向けで、ヘロインは、そこでは全く生産されていなかった。アフガニスタンの麻薬経済は、CIAにより、細心の注意を払って、アメリカ外交政策の要素として開発されたプロジェクトになった。イラン・コントラ疑惑の昔と同様、アフガニスタンのムジャヒディンとワシントンに友好的な他の軍隊両方を支援することはこれらの麻薬ドルに特に資金調達された。この「汚い金」は中東の銀行やCIAのペーパーカンパニーを通して「秘密資金」に換えられ、アメリカ人インストラクターに率いられて、ソ連兵士と戦い、次に成功裏にアフガニスタンを断片化した犯罪集団を支援するために使われた。「アメリカはアフガニスタンで、ムジャヒディンに、スティンガー・ミサイルや他の兵器を送りたいと望んでいたので、彼らはパキスタンの手助けを必要としていた。1980年代半ばまで、イスラマバードのCIA現地事務所は世界最大の一つで、アメリカは、パキスタン、特にアフガニスタンで、麻薬取り引きを見て見ぬ振りをした」とタイム誌が書いている。
アフガニスタン史研究者アルフレッド・マッコイはアフガニスタンにおけるCIA作戦開始直後「アフガニスタン-パキスタン境界沿いの地域が世界最大のヘロイン生産地になり、そこでアメリカ需要の60%が満たされたと断言する。パキスタン自身、麻薬中毒者数は、1979年のほぼゼロから、150万人にまで増大したが、他のどの国より速い増加だ。」
麻薬売買は、明白な事実が証明している通り、CIA職員に完全に支配されていた。ムジャヒディンがアフガニスタンで一部の土地を占領した際、彼らは小作農に「革命の税金」としてアヘン・ケシを栽培させた。国境の反対側パキスタンでは、パキスタン諜報機関とCIA両者に支援されたアフガニスタン指導部と地元シンジケートが、ヘロインを製造する何百もの薬品工場を支配していた。アフガニスタンとパキスタンでの何十年もの活発な麻薬ビジネスで、アメリカ政府麻薬取り締まり局の現地事務所は、ヘロインの大量貨物押収も、一件の逮捕もしたことがないのだ!
A・マッコイによれば、アメリカのアフガニスタン麻薬政策は、常にソビエト、そして今は、ロシアの影響力に対して戦う利害関係に従属しているので、最近のワシントン政権当局者は、同盟国アフガニスタンに浴びせられた麻薬取り引き告発の調査を拒否した。アフガニスタンでの元CIA工作指導者チャールズ・コーガンが、CIAが冷戦勝利を優先して、麻薬撲滅戦争を犠牲にしたのを認めた際、極めて正直かつ皮肉っぽく、これについて世界に語った。彼は「主目的はソ連にできるだけ多くの損害を与えることだった」と言う。CIAが果たした役割は、多くの書類で明らかにされているが、内部要因を強調する国連資料では言及されていない。洗浄された麻薬ドルは、ワシントンによって、ムジャヒディンや中央アジアとバルカンでテロリストに資金供給するために使われた。
国連の評価によれば、世界の麻薬売買は、数十億ではないにせよ、数億ドルに達する。アフガニスタンからのアヘンの量は、この取り引きのかなりを占めている。国連が確認している通り、麻薬取り引きによる収益の最大の分け前をテロ集団が得ていないのは明白だ。大手企業や金融企業がそれら麻薬業者を支援している。その点で、麻薬流通経路の地政学的、軍事的支配は、油田や石油パイプラインの支配と同じぐらい重要なのだ。
合法的な商品と麻薬との違いは、麻薬取り引きは、暴力団のみならず、銀行や金融機関の更に重要な当事者になっているアメリカ諜報機関にとって大きな収入源であることだ。これは組織犯罪とつながるアメリカ諜報機関や巨大シンジケートが麻薬流通経路を巡る戦略的支配を目指して競争していることを意味する。麻薬取り引きからの数十億のドル収入は、欧米の銀行、とりわけアメリカの銀行に投資される。大半の大手多国籍銀行が海外支店を経由して相当な量の麻薬資金を不正浄化している。主な当事者が、欧米やアフガニスタンで高位の政治的「後援者」を持っている限り、この商売は繁栄する。
現在のところ、アメリカ国内のアメリカ人と、アフガニスタンにいる相当な人数の軍事要員が、麻薬撲滅運動には関心がなく、麻薬売買を支持している事実については、証人もいる、鮮やかなまでに多くの個々の事例がある。アメリカ化学兵器計画の主要部分は機密のままだが、軍人の能力を強化する「サプリメント医薬」研究のために、多大な注意が払われているのは外見上明白だ。例えば、米空軍パイロットは、長い任務の前に、疲労を減らし、能力を強化するデキストロアンフェタミンを与えられていた。2003年、イラク戦争のデザート・ストーム作戦に参加したアメリカ人パイロットのうち65%が麻薬興奮剤を使っていた。その際、カナダ兵士四人が「友軍の誤射」で亡くなり、更に8人が負傷した、アフガニスタンのタルナック・ファームズ訓練所で開催された演習の調査で、アメリカのF-16パイロットがデキセドリン使用を許されたことが分かっている。これには、ずっと多くの例がある。加えて、国防総省が製造した麻薬物質を含む薬品が、現在、主にイエメン入植地の市や村に爆弾を投下しているサウジアラビア人パイロットに積極的に摂取されている。
今年初め、アフガニスタン政府は、カブールと隣国で麻薬取り引きで共謀した5人の幹部警察官を逮捕したと発表した。内務省代表ナスラト・ラヒミは、(アフガニスタンの首都で麻薬撲滅運動の責任者だった)アフマド・アフマディは国外脱出しようとするところを逮捕された。A・アフマディは、アフガニスタンの「主要麻薬密売人で、マフィア首謀者」の一人で、数年間、いかがわしいアフガニスタン-スイス事業集団の社長で、人口600万人以上の都市で、麻薬密売人を保護し、権益を促進し、巨額の賄賂を受け取っていたとナスラト・ラヒミは、報道機関に語った。後刻、カブール報道機関が、政府の高位の活動を知ったのは本当だ。CIAから独自に活動していたアフガニスタンのこの集団が完全に麻薬取り引きを支配しており、アメリカ士官に手数料を支払うのを拒否していたことが分かょた。
それが、まさに、中央アジアとロシアへのアフガニスタン麻薬の流れを止めることができないと言って、モスクワがアメリカとNATOを非難している理由だ。ワシントンは、反政府派に対する、いかなる作戦も始動せずに、この地域で麻薬撲滅運動を行う措置を強化する政策を実施しようとしている。これまで10年間、アフガニスタンは他のいかなる国より多くのヘロインを生産し、輸出している。国連評価によれば、アフガニスタンの総生産高の約10%が、アヘン・ケシ栽培に由来する。約13,000トンのアヘンがアフガニスタンで生産され、価値20億ドルと推定されている。これは悪循環を引き起こす。非合法麻薬取り引きは、タリバン(ロシア連邦で活動を禁止されている組織 編集部注)に資金を供給し、CIAがそれを支配し、アヘン栽培を踏みつぶし、代替収入を得る方法を生み出そうとするアフガニスタン当局の試みを損ない、阻止するための行動をとっている。
ワシントンは責任を回避しようとして、いつもの慣習通り、麻薬に対する「活発な戦争」についてバラ色の報告を発表し、同時に、偽って、タリバン(ロシア連邦で活動を禁止されている組織 編集部注)に協力したと言ってロシアを非難している。ロシア大統領特使のザミール・カブロフは、タリバーンとの「共謀」に関するCIAによる濡れ衣に鋭く反論し、アメリカが、アフガニスタンからの盛況の麻薬取り引きで役割を演じるため、タリバーンと手を結んだ国であることを強調し、「アメリカはアフガニスタンで、いくつかの麻薬関係のプロジェクトを実行するため多額の賄賂を払った」と付け加えた。彼はカンダハルとバグラムから、アメリカ航空機が、検査を受けずに、ドイツやルーマニアを含め、どこにでも飛ぶことができることを強調した。これは、アメリカが、いかなる管理も無しに、アフガニスタンの人々から流れた血の上に、犯罪的資金を得て、ヨーロッパに、次にアメリカに、莫大な麻薬を送り出すことを意味している。
ビクトル・ミーヒンはロシア科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/07/15/afghanistan-the-us-war-on-drugs/
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大本営広報部、政府や女帝の失政追求を放棄し、突撃コロナ感染源男の話題を延々報じている。大本営広報部の中でも、酷い洗脳番組?一度も見たことはないが、あきれる内容。嫌悪感を感じて、一度も、この人物がでる番組見たことがない。そもそも新聞も。女帝をかばう都議会もひどいもの。国民と都民の民度がしっかり示されている?
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コメント
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この記事から、ペシャワール会を長年率いていた故中村哲医師の悲劇を思い起こしました。米国、米軍にとってあの貧しく土地がそのままであることがどれほど麻薬ビジネスによって有益だったのか、と。
そして満洲と中国全土を阿片大陸と化し、現地の富を根こそぎ吸い上げていった大日本帝国の官僚組織と軍隊の所業の二番煎じが現代の米国・米軍、米帝なのではないか、と想起しました。当時の日帝はナチスと同様に周囲の富を自分たちの繁栄のためだけに収奪していたのでした。
愚かな人間は繰り返すのでしょうね。人を変え時代を超えて。これが人間の背負った業、とでも言って開き直るつもりなのでしょうね。
投稿: 海坊主 | 2020年7月21日 (火) 20時16分
記事の威容とは関係ない投稿で失礼します。
いよいよ国民包囲網が完成に近づいてきた様です。
マスコミの偏向報道は元より、私自身も妨害を受け始めました。
定期自動ツィートは昨年からアクセス不能にされ、今回は、こうした正統派政治系ブログへのアクセスもできなくされています。
通常使用するパソコンでは、このブログと植草氏のブログへのアクセスが不可能となりました。
本日は別のパソコンにてアクセスしていますが、恐らくはこれも間もなくダメになるでしょう。
従って、実質、このブログへのアクセスも本日限りとなります事をお知らせしておきます。
永い間、良き記事を読ませていただきました事に感謝いたします。
それでは、これからもお疲れの出ませんように祈念いたします。
投稿: びいとるさいとう | 2020年7月21日 (火) 19時20分