結構! 中国-キルギスタン-ウズベキスタン鉄道をアメリカは望んでいない
2020年7月10日
フィル・バトラー
New Eastern Outlook
読者がアメリカにお住まいなら、キルギスタンやウズベキスタンのような国は、おそら潜在意識の「映像記憶」レベルにしか残っているまい。あるいは国名の末尾が「スタン」の国々は皆同じ、なじみのない世界で、問題にするには余りに余りに遠いとお思いだろう。もちろん、諜報業界界や、アメリカ国務省で働いていない限りだ。その場合、すべき仕事がある。下記は「国益」という言葉が本当に意味することの重要な初歩知識だ。
アメリカを支配している連中が何に「興味」があるか知りたい場合、ラジオ・フリー・ヨーロッパ-ラジオ・リバティー(RFE/RL)に注意を払えば十分だ。例えば「ウズベキスタンや更に先の地域と中国鉄道を接続する上での欠落部分キルギスタン」という話題を検討しよう。私が言ったように、これら「スタン」国には、99パーセントのアメリカ人はピンと来ないかも知れないが、「中国と、更に先」はどうだろう。そう、ワシントンのいくつかの政権は、中国支配に対する恐怖を煽ったことがある。今どき、大半のアメリカ人は、アトランタの地元の中国料理レストラン・オーナーが北京ダックを準備する中、疑わしそうに見つめている。だから、アメリカ国務省宣伝放送局の「中国-キルギスタン-ウズベキスタン(CKU)鉄道物語」は、北京が間もなく軍用列車をホーボーケンに送る準備をしているかもしれないように思えるのだ。
そうではないのだが、言わんとすることはわかる。アメリカ諜報機関と外交部門は、ワシントン以外の「誰」かと「誰」かが結び付くのを切断したがっているのだ。番組で、ブルース・パニアは、中国の蘭州発、ウズベキスタンの首都、タシケントに向けて出発する最初の貨物列車の問題について語る。接続部の一つのリンクが未完成なのだ。彼はこう結論を出す。
「中国-キルギスタン-ウズベキスタン(CKU)鉄道は、何十年も前に考え出された決して完成しないかもしれない大プロジェクトの一つに過ぎないように思われる。」
そう、鉄道を建設する最良の方法について何年もの計画と交渉があった。問題の大部分は経路や資金などだ。だが四月、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ロシアがCKU鉄道の完成に参加するかもしれないと語った。だが、現時点の問題は、RFE/RLは強調していないが、キルギスタンが、Covid-19感染者の再流行に見舞われていることだ。ロジスティクスと資金調達は別として、アメリカにとっては、中国と他のロシア近隣諸国がヨーロッパとつながることが何より問題なのだ。特にキルギスタンが、より多くの石炭や金やアルミニウムや鉄や他の資源を、中国や、他の国々に送り出せば、アジア人には役立つかもしれないが、それはアメリカの権益には役立たない。更に、トルクメニスタン-中国の天然ガスパイプライン、ラインDがあるが、それも、大半のアメリカ人が全く何の関心もない、もう一つの「スタン」物語だ。
私の狙いは、我々が余り焦点を当てない世界秩序の側面を示すことだ。中国やロシアに関する物語の全体像を研究する上で、観察の中心は地理のない地政学であってはならない。一瞬、これをお考え願いたい。キルギスタンはワシントン D.C.から10,653キロ離れている。文化的に、キルギスタンはアメリカ人が経験することから何光年も離れている。
キルギスタンはいくつかの大きな文明社会の交差点に位置しており、アメリカが出現する以前、何千年にもわたり、シルクロードや他の商業的、文化的経路の一部として存在してきた。かつてはソビエト社会主義共和国連邦の共和国で、資源豊富で、公用語は二つあり、その一つはロシア語だ。
カナダやメキシコがアメリカの近い隣人であるのと全く同様に、これらの「スタン」諸国は全てロシアの隣人だ。キルギスタンは、人口わずか650万人が、199,951平方キロメートルの領土に住んでいる。理論的に、彼らの国の地下鉱物資源で、国民は、いつか地球上で最も繁栄する社会の一つになり得るのだ。もしアメリカ国務省がその願望を実現すれば、そうはなるまい。ワシントンは地球の遥か遠くの地域における専制や汚職について文句を言うが、本当の言い分は誰が利益を得るかだ。当然、ロシアはキルギスタンと緊密な関係を維持している。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、キルギス共和国のソーロンバイ・ジェーンベコフ大統領と、最近のCovid-19伝染病再流行と話題の貿易と経済での相互協力で、ロシアがどのように支援できるか論じるため電話会談をした。私はアメリカが、コロナ流行で誰に対しても援助や助言をした記事を読んだことがない。更に、誰かが最近トランプ政権に何かを求めたのも聞いたことがない。アメリカ大統領はアメリカとメキシコ間に壁を作ろうとした、カナダのジャスティン・トルドー首相は、彼の衝動的な態度と北の隣人に対する不快な姿勢ゆえに、トランプと会いさえするまい。お返しして当然ならば、ロシアのプーチンと中国の習近平は、ベーリング海峡を越えて、カナダへの鉄道を作るだろう。
「キルギスタン、アメリカと世界的麻薬中毒問題。闇の勢力とクーデター、麻薬、テロ症候群」という論文は自国から遥か遠くでの「アメリカ権益」の最も暗い側面を示している。これはラオスからキルギスタン(2005年のチューリップ革命を忘れぬよう)や、他の国々に及ぶCIA秘密工作に関するものだ。これは著者連中が、ロシアや中国に関連する、あらゆるものが失敗すると予測したり、祈ったりして、RFE/RLがさらけ出しているものだ。ワシントンの戦略家が何年も、モスクワのために、もう一つのアフガニスタンを作ろうとしていたのは周知の事実だ。アフガニスタンで、麻薬売買と中毒に資金供給し、作り上げるアメリカ戦略ゆえに、モスクワでは、これら「スタン」諸国でのアメリカ政策に対する用語は、「麻薬侵略」だ。これをお考え願いたい。国営のスプートニクやRTは、アメリカや西半球の他地域での何らかの大失敗に脚光を当てるかもしれないが、このメディアは、カナダで暴動がおきたり、鉄道がなだれでふさがれることを期待しているわけではない。ロシアや中国が、アメリカ人を中毒させるための新しい麻薬や密輸ネットワーク開発し証拠はない。
美辞麗句、言説や、現在の市場分析さえ、アメリカとイギリスが植民地問題に依然躍起になっているのを示している。中南米の鉱物資源や投資可能性に関するこの市場査定をお読み願いたい。著者は、スペイン人征服者フランシスコ・ピサロを英雄であるかのように持ち出し、次に我々に、中国やロシアの投資家ではなく、アメリカ/イギリス投資家について語るのだ。これが要点だ。
「もちろん、採掘された金属から利益を得るのは危険な事業だ。インカ帝国を征服したピサロは十字架を彼の血まみれにして最期の時を過ごし、斬殺された。だが間断ない収入の流れを産み出すロンドン上場の様々な堅実な大手企業から、次の大発見を探している野心的な探検家たちまで、中南米はMoneyWeek読者に提供する多くを持っている。」
ある宣伝機関と、ある秘密スパイ機関が、西半球でアメリカのあらゆる取り組みを混乱させるのを目指しているのを想像願いたい。外国外交官の口から出る、あらゆる言葉や願望が、欧米の国家協力に向けられた恫喝だったらどうだろう? 中国やロシアの全ての組織が、これら問題の対処で、断固、非難的で、不正だったらどうだろう? 今それがニューヨーク・タイムズの記事なのだ! 「匿名諜報源」がロシアがどのように干渉しているか明らかにする必要などない。未完成の鉄道やメキシコでの蜂起が証明になるはずだ。
ご存じでない方のために申し上げると、「スタン」という接尾辞はペルシャ語だ。それは、アフガニスタンやイランや中央アジアや南アジアやコーカサスやロシアの多くの地域名で使われている。それは「国」や、時には、砂や庭や砂漠や花などが多い場所を意味する。意味は用途次第だ。重要なのは、豊かな伝統と文化を持った人々がこれらの国々に住んでおり、彼らを理解したり、取り引きしたりする点では、遥か彼方の政治家や実業家や戦略家より、隣人たちの方が、多くの共通の関心を持っている。
フィル・バトラーは政治評論家、政治学者、東ヨーロッパ専門家で、「Putin’s Praetorians(プーチンの近衛兵)」という最近のベストセラーや他の本の著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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スターン stanـستان は、ペルシャ語で、右から左に、sīn スィーン、tē テー、alef アレフ、nūn ヌーン。 (市販参考書で読んだだけの知識ゆえ、正確な知識をご存じの方に、誤りをご教示願いたい。「アー」を示すアレフがあるのだから、スタンではなく、スターンと発音するのだろうと素人は思う。)
鉄道といえば、ポン・ジュノ監督の映画『SNOWPIERCER』を見た。凍った世界を驀進する列車内での反乱。
地球温暖化をくい止めるため散布された冷却物質が地球に氷河期をもたらした。永久機関を持つ列車「スノーピアサー」に乗り込んだ人々だけが生き残りに成功する。17年後の2031年、先頭車両の上流階級が、後方車両の最下層を支配していた。
ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』コロナ流行で見そびれているが、見たくなった。
日刊ゲンダイDIGITAL
孫崎享氏の『朝鮮戦争の正体』を読み始めた。今も続く、日本における猛烈な共産党パージは、あの戦争に由来しているという。
植草一秀の『知られざる真実』
【news23】
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