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2020年5月12日 (火)

トランプのベネズエラ「ピッグス湾」

2020年5月7日
wsws.org

 今週早々の、アメリカが率いる傭兵による二件のベネズエラ海岸武装上陸失敗で、世界的コロナウイルス流行と、それがアメリカ国民に引き起こした死と破壊も、南米や世界における、アメリカ帝国主義の略奪的で犯罪的な地政学的権益の追求を阻止する上で何の役にもたたなかったことが明らかになった。

 二件の上陸の一つ目は、日曜日の朝早く、ベネズエラの首都カラカスから車で、わずか半時間のラ・グアイラ州マプートで起きた。「パンテラ」(ヒョウ)として知られるグループのリーダー、元ベネズエラ陸軍大尉を含め上陸した武装男性8人が殺され、残りが捕獲された。

 二番目の上陸は、月曜日、カラカスの西、ベネズエラのカリブ海岸、アラグア州チュアオ半島で起きた。ここで武装侵略者は地元漁師に発見され、ベネズエラ保安部隊に引き渡された。


 ベネズエラで捕らえられたアメリカ人傭兵ルーク・デンマン(一番上)とアイラン・Aベリー(一番下)。

 捕らえられた連中の中には、収賄容疑で刑務所に送られた元ベネズエラ国防大臣の息子で、一連のクーデター策謀の中心にいたホスナルス・アドルフ・バドゥエルがいた。いずれも元アメリカ特殊作戦兵と識別された二人のアメリカ国民、ルーク・デンマン、34歳、と、アイラン・ベリー、41歳が逮捕された。バドゥエルはベネズエラ当局に、二人のアメリカ人がドナルド・トランプ大統領の治安部隊で働いていたと言ったと述べた。

 ベネズエラ当局は、マスコミに、二人のアメリカ人のパスポートと軍身分証明書と、傭兵と一緒に捕獲された武器の写真を示した。彼らは、自分の任務は、ベネズエラのマドゥロ大統領引き渡しでアメリカに運び出す飛行機を受け取るため、カラカス空港支配権を掌握することだったと述べたデンマン尋問ビデオを公表した。誰が作戦を指示していたか問われて、彼は「ドナルド・トランプ大統領」と答えた。

 作戦の中心は、フロリダに本拠がある民間警備会社SilverCorp USAを経営するイラクとアフガニスタンの元グリーンベレー・ベテラン、ジョーダン・グドローだ。彼自身の説明によると、グドローは、トランプ長年のボディーガードで、大統領執務室の作戦部長を勤めたキース・シラーによって、ベネズエラ右翼と、連中のアメリカに支援されたクーデター策謀を紹介された。以来トランプ大集会で、グドローが、警備している様子を映したビデオが表面化した。

 2019年2月、エセ救援輸送隊をベネズエラに押し込むCIAトロイの木馬作戦未遂の一環としてベネズエラ-コロンビア国境で、イギリス人億万長者リチャード・ブランソンが支払うコンサートの警備を行うため、彼が雇われた時、この警備業者と、アメリカ諜報機関とのベネズエラ右翼のつながりが明らかになった。

 グドローは、それはまだ進行中で、目的は「マドゥロ政府を打倒する」ことだと主張して、最近の作戦に対して公式に責任を認めた。彼は海岸侵略の惨めな失敗にもかかわらず、他の分子がベネズエラ国内で活動しており「戦術目標攻撃を始めるために行った」、言い換えれば、テロリズムの波を開始したと言ったのだ。

 更にグドローは、彼と去年一月、自身をベネズエラ「暫定大統領」だと宣言して、直ちにワシントンとその同盟国によりベネズエラ「合法政府」に選ばれた取るに足らない右翼政治家フアン・グアイドが署名したオンライン投稿された契約の合法性を確認した。

 グアイドとグドローの英語会話録音も公表されたが、そこで、アメリカ傀儡が、アメリカ政府がベネズエラから盗む石油資源で、代金は保証されるという条件で、武力介入実行のため、アメリカの警備業者に2億1300万ドル支払うことに同意していた。

 グドローは、グアイドが約束した支払いをし損ねたと主張した。だが正確な取り決めが何であれ、誰かが、ベネズエラ海岸への派遣のために傭兵組織に支払ったのは明らかだ。それが傀儡だったのか、人形師だったのかどうかは、ほとんど相違を生じない。

 一年ほど前に、軍事クーデターをひき起こそうと試みたグアイドが服役していないのは、マドゥロの「ボリバール社会主義」ブルジョア政府が、彼のことを、ベネズエラ資本主義を救出し、下から革命爆発を防ぎ、アメリカ帝国主義と伝統的な寡頭政治との対話者となる可能性があると見ているためだ。

 ベネズエラでの海岸侵略未遂について問われて、トランプは、それについて全く何も知らず、「我々の政府とは全く関係がない」と主張した。

 水曜日の国務省記者会見で、マイク・ポンペオ国務長官は「この作戦に、アメリカ政府の直接関与はなかった。」と宣言し、いささか条件付き回答をした。彼は「行われたことに関し我々が知っている、それ以上いかなる情報も共有する用意はない」と述べた。

 捕らえられた二人のアメリカ人傭兵については、ポンペオは、ワシントンは「彼らを戻らせる試みのために、我々は利用可能な全ての手段を使う」と述べた。

 一体どのような根拠で、アメリカが、彼らの送還を要求できるのかについて、国務長官は言わなかった。ドナルド・トランプを誘拐したり、殺したりするため、アメリカを侵略しているのを捕らえられた他国籍市民が、テロ行為の罪で、終身刑か、もっと酷い宣告を受けることに、いささかでも疑念があるだろうか?

 戦争状態にも等しい、ベネズエラに対する害が大きい制裁の「最大圧力」キャンペーンという環境の中、武装侵略が展開された。ベネズエラに対する効果的な通商停止が、コロナウイルス流行開始前にさえ、何万人もの死をもたらし、石油輸出を遮断し、非常に必要とされた薬と医療用品を輸入するのを阻止した。流行勃発以来、アメリカ帝国主義は、病気と死亡をベネズエラ国民に服従を強制し、政権転覆のための衝動を完成させる武器として用いようと、制裁を強化しただけだ。

 アメリカで、死亡者数が増し、経済が急落する中、トランプは、麻薬密輸と戦うという口実で、ベネズエラのカリブ海沖水域に海軍特別部隊を派遣したが、アメリカに流入する麻薬の圧倒的多数が、ワシントンの右翼同盟者に保護されて、ボゴタやテグシガルパやグアテマラやコロンビアと中米を通って太平洋に送られる。この作戦に派遣された駆逐艦や沿岸戦闘艦は、麻薬密輸人を捕らえる上では役にたたない。

 ベネズエラ海岸での卑劣な出来事は、アメリカ帝国主義の中南米での軍事侵略や半植民地的搾取や警察国家的抑圧という長年の歴史の最暗部を想起させる。1961年キューバの不運なピッグス湾侵略を含め、初期のアメリカ帝国主義介入の失敗で、ワシントン当局は当初同様に、アメリカの関与を断定的に否認した。同様に1980年代の違法作戦で、ニカラグア政府に対するコントラ・テロ戦争に補給するため、傭兵に兵器を飛行機で運んだCIA請負業者ユージン・ハセンファスが撃墜されるまで、ワシントンは否認を続けた。

 ピッグス湾と、いわゆるイラン-コントラ事件の両方が、ワシントンで大きな政治危機を招き、アメリカ・マスコミによる厳しい詮索を引き起こした。だがアメリカが計画したベネズエラ侵略未遂についての報道は、ほとんど沈黙のまま商業マスコミに見過ごされ、表向きトランプに対する敵対勢力、民主党内から一言の批判の言葉もない。バイデンからサンダースまでの全員が、ベネズエラでの政権転覆作戦を結束して支援した。

 アメリカを支配するオリガルヒの権益に役立つこの作戦は、アメリカ・エネルギー複合企業による、ベネズエラの地球上最大の石油埋蔵に対する拘束を受けない支配を確立し、アメリカ帝国主義が、長い間「自身の裏庭」と見なしている、ベネズエラや中南米全体で中国やロシアの増大する影響力を逆転することを目指している。

 何百万もの生活を脅かす世界的コロナウイルス流行のさなか、アメリカ帝国主義は何十億人もが亡くなるような、もう一つの世界大戦を燃え上がらせると脅して、軍事侵略によって略奪的権益を追求しているのだ。

 資本主義と帝国主義を終わらせる共通の戦いのために、国境を越えて結束する労働者階級だけが、人類生存に対する深刻な脅威に対する代替案を提供できるのだ。

Bill Van Auken

著者は下記もお勧めする。 (いずれも、英語原文

ベネズエラ防衛と中南米での社会主義のための戦い
[2019年5月10日]

アメリカが支援する挑発をベネズエラ国境で強行するため武装兵士が動員されたことが報道で明らかに
[2019年3月7日]

記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2020/05/07/pers-m07.html

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 ベネズエラ、大変な石油埋蔵量を持っているがゆえの悲運。石油も金もなくとも、宗主国は絞り尽くす。ひとごとではない世界最大属国の現状。

【半田滋の眼】No7韓国、防衛費削減でコロナ対応、日本は?/コロナもオスプレイも米軍は教えない20200507

 そして、コロナ無策。

致死ウイルスに向き合う~恐怖の出口にしないために【新型コロナと闘う 児玉龍彦×金子勝】20200508

 コロナにつけこむ売国傀儡政権。有名人たちまで反定年延長ツイート。昨日のTBS BS石破氏はまともな意見だった。

反定年延長ツイート「国民が許さないとの圧力」と石破氏

 それは、その通りだが。JNN調査、緊急事態条項を加えることに『賛成』というのは一大事。日本の終わり。

日刊IWJガイド・非会員版「JNNの世論調査で憲法に緊急事態条項を加えることに『賛成』が55%! 強制力を持った行動制限を望む声が多数! 民主主義にとって極めて危険な状況に!」2020.5.12日号 ~No.2798号

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