中国
2020年5月17日
Paul Craig Roberts
アメリカは敵無しでは生きられない。敵が、アメリカ最大産業、軍事支出に資金供給し、敵が、バベルの塔のようなわが国を、ばらばらにならないよう維持する安全保障の目的になるのだ。
オバマ体制の間に、ロシアは敵として再確立された。ロシアとの関係を正常化するというトランプの意図は、ロシアの敵としての地位を消滅させるので、軍安保複合体が、彼に地獄の責め苦を与えた。実際、CIA長官は選出されたアメリカ大統領を裏切り者と非難した。負けた民主党は、強力な軍安保複合体がトランプ反対で提携するのを見て、自分たちの政治的敗北を埋め合わせるため「ロシアゲート」を仕組んで加わった。トランプは生き残ったが、大統領の座から彼を追いだすためにでっちあげられたペテンのため、一期目の任期の三年を失った。
トランプ任期四年目に、敵は変えられた。今や敵は中国だ。いくつかの進展が中国を敵に変えるのに貢献した。一つは、ワシントンの挑発に立ち向かい、反論する中国の意志が高まっていることだ。もう一つは、アメリカの大きな貿易赤字を誰かのせいにしなければならないワシントンの必要性だ。もう一つは中国の製造と産業の実力認識と、5Gでファーウェイが先行していることで実証されるように技術分野で獲得している中国の指導力だ。動揺するアメリカの通信技術企業、ネオコンの覇権野心や、中国を封じ込めるためのより多くの軍事支出の可能性が、トランプの中国との舌戦に勢いを与えた。この対立はCovid-19を中国の責任にする流れのおかげで、益々勢いづいている。
アメリカ上院議員と右翼ラジオが、ワシントンは、中国にアメリカ国債を放棄させて、中国に、アメリカにCovid-19の費用を支払わせればよいと語っている。これ以上愚かな、あるいは、信じ難い考えを想像するのは困難だ。中国が国際市場で、国債を売ることができるから、ワシントンは中国の持ち分に対する識別番号リストを造り、利子と元金が支払われない証券として公表するが必要があるだろう。国債は市場で売買されるので、アメリカ財務省が、誰がどの債券を保有しているかを知っているかは明らかではない。
この案が成功裏に実行可能だと想定しても、問題は起きる。債務無視は第三世界諸国の慣行だ。もしアメリカがこの慣行を採用すれば、他の国々が次は自分たち持ち分ではあるまいかと疑うだろう。連邦準備銀行だけ唯一の買い手として残り、財務省債券の市場は消滅しかねない。債券発行は無意味になるだろう。赤字資金を調達するため、お金が印刷されることになる。
これは、次に、普通株のようなドル立て資産を所有する、他の国々の意志に影響しかねない。これは株式市場に悪影響を与えるだろう。米ドルが世界準備通貨としての役割を失いかねず、それは、ワシントンが、お金の印刷で、請求書を支払うことができないことを意味するだろう。
さらに中国には様々な報復策がある。アップルのような多くのアメリカ企業の生産施設は中国にある。中国はアメリカ企業の海外生産で人気の国だ。これら施設は国有化されかねないのだ。多くの場合、製造施設はアメリカ企業が所有しているわけではない。そうではなく、アメリカ企業は中国企業に生産を外注しているのだ。中国はアメリカ企業向け商品の生産を止めたり、特許やブランド名を盗んだり、生産を続け、それに中国製品として商標変更したりできるのだ。アメリカは、他の国々の法律や国際法を尊重しないのだから、中国がアメリカ法を尊重すべき理由はない。
中国がアメリカ国内で多くの資産を購入したのは失敗だった。もしこれら資産の額が中国にあるアメリカ資産に等しいか上回れば、報復政策は中国にとって引き合うまい。
法律という点では、アメリカは決して公正に振る舞わない。ワシントンは、ファーウェイをブラックリストに載せ、NATO同盟国に、5Gのような同社のハイテク製品を拒絶するよう圧力をかけ、ファーウェイを身動きできなくしようとした。アメリカは、ファーウェイに対する複雑なIC部品販売をしているので、おそらく、この政策は、中国に対してより、アメリカ半導体企業に多くの損害をもたらしている。
ファーウェイの国際事業を抑制するワシントンの取り組みは、グローバル・サプライチェーンに対する攻撃であり、グローバル企業各社を不快にさせてしまう。それはグローバル依存という考え方に対する攻撃だ。
中国とのアメリカ貿易赤字は中国のせいではない。生産を中国に海外移転したアメリカのグローバル企業のせいだ。アップル・コンピュータやiPhoneなどの海外生産された商品が、販売のためアメリカに持ち帰られると輸入として扱われる。だから、アメリカの貿易赤字の責任があるのは、アップルやナイキやリーバイスなどのアメリカ企業であり、先進国の労働者を犠牲にするグローバリズムを称賛したネオリベ経済学者も同罪だ。
グローバリズムが中国に製造能力を与えたのだ。中国はこの基盤を、自国の巨大な消費者市場を開発するために使うべきだ。グローバリズムは、もはや中国の利益に役立たない。世界最大の消費者市場があるのだから、中国は国内発展に焦点を移すべきなのだ。国内市場が非常に巨大なのだから、中国にとって輸出は重要ではないはずだ。中国は、ワシントンが否定すると恫喝している、ドル準備が有り余っており、外貨準備高の必要がない。中国の強みは経済力にある。この力こそ強化すべきだ。中国にとっての賢い道は、新自由主義のがらくた経済学を放棄して、中国経済を発展させることだ。
私の人生前半で、これがアメリカのやり方だった。アメリカ経済は非常に大きかったので、アメリカ企業は、外国での販売に依存せず、利益は有り余っていた。国内消費のために国内生産するので、高付加価値、高生産性の雇用がアメリカ国内に残り、それが実収入増大を可能にし、更に総需要の増加を保証し、経済成長と出世の梯子を維持したのだ。海外移転が始まった途端、これらのはしごは解体され、今日、結果的に、アメリカ消費者には経済を駆動するための収入増が欠如しているのだ。
中国はグローバリズムに勝利したが、アメリカは敗北した。アメリカの衰退を回避するため、中国はグローバリズムで得たもうけを放出し、自国内の経済を構築する必要がある。これは中国にとって非常に有利なだけでなく、アメリカと中国の対立点を減らすことで、平和の大義にも役立つだろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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とんちん官僚が書いたプロンプターの文章を読んでいる晋裸万障も、なんにも専門家の記者会見も、緑のコロナのワンボイスも音声を消し聞かずにいる。翻訳しながら切り換えるのは煩雑。本当の対策を語る番組は拝見する。
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LITERA記事指摘の通り。ゆ党異神の記者会見も、決して、見ない、聞かない。海堂尊の『スカラムーシュ・ムーン』、コロナ問題、厚生省、検察庁、警察の暗躍から、異神の末路まで、予言だらけ?書店で買えないのが不思議。
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