問題に溺れるアメリカ
2020年5月22日
Paul Craig Roberts
ワシントンは中国に、もう一つの戦争を仕掛けている。貿易戦争に加えて、今回のコロナ・ウイルス戦争だ。中国は、コロナ・ウイルスに関する情報を保留したことで、ウイルス蔓延に対する責任があると非難されている。ワシントンの一部は、財務省長期債券の形で中国が保有している国債を破棄して、中国にウイルスの代償を支払わせたいと望んでいる。
中国は、コロナウイルスに関する、どのような情報を保留したと思われているのだろう?
中国がコロナ・ウイルス研究をしていたことだろうか? アメリカ国務省がそれを知っており、国立衛生研究所NIHが研究に資金供給していて、アメリカの科学者たちが危険を訴えていたのに、この情報を一体どのように保留することができるだろう?
コロナウイルスが武漢で猛威を振るっていたことだろうか? それが毎日マスコミで報じられていたのに、この情報は一体どのように保留されただろう?
アメリカとその属国は、欧米で流行が発生する二カ月前に、中国でのウイルス発生について知っていながら何もしなかったのだ。不作為あるいは意図的に、アメリカ、カナダとヨーロッパはウイルスを持ち込んだのだ。各国政府は中国行き・発の便を止めたり、感染している地域の乗客をクルーズ船が受け入れるのを阻止したりしなかった。政府は公衆衛生より利益優先で、邪魔をしたくなかったのだ。全く何もしなかった。努力が防護マスクや防御具の備蓄や、老人ホームの保護や、病院施設の隔離や、治療について既成概念にとらわれずに考えることをしなかった。スウェーデン政府は全く準備できていなかったため、何もせず、ウイルスを成り行きに任せ、高齢者に対する破壊的な影響をもたらした。[注: ウイルスは警察国家を押しつける課陰謀だと信じる人々による、スウェーデンは、経済を開放してまま、より高い死亡率で代償を払うことなく「集団免疫」を得るという主張のような、スウェーデンに対する多くの反情報がある。これらの主張はニュース報道で否定されている。たとえば https://www.marketwatch.com/story/the-world-health-organization-said-lessons-could-be-learned-from-sweden—now-its-daily-deaths-are-soaring-2020-05-21 そして https://www.theguardian.com/world/2020/may/21/just-7-per-cent-of-stockholm-had-covid-19-antibodies-by-end-of-april-study-sweden-coronavirus.]
医療機関を崩壊させないように感染率を減らす、多かれ少なかれ成功した試みで、他の全ての国々は、社会的距離を置く規則や、多数の人が集まる催し禁止や、職場閉鎖をした。わずかしか病気について知られておらず、中国の死亡率は非常に控え目だと信じられていたので、いわゆる「一時封鎖」以外に信頼できる代替策はなかった。収益に対する配慮が、感染の早いの二番目の波をもたらす早過ぎる再開を引き起こしたかどうかは、様子を見ないとわからない。大手製薬企業とビル・ゲイツが、試験不十分なワクチン注射を受けるほど我々をパニックにするため感染を十分蔓延させたがっていると多くの人々が考えている。
中国非難ゲームは、実際は、危機対処での欧米政府の失敗を隠蔽する企みだ。
危機対処での政府の失敗は、ありふれている。ニューオーリンズと湾岸を破壊したハリケーン・カトリーナをお考え願いたい。2005年のあのハリケーンを覚えておられなかったり、当時のテレビを見るには若すぎたりする場合、ダグラス・ブリンクリーのThe Great Deluge(大洪水)をお読み願いたい。( https://www.amazon.com/Great-Deluge-Hurricane-Katrina-Mississippi-ebook/dp/B000GCFX5Y/ref=sr_1_1?dchild=1&keywords=The+Great+Deluge&qid=1590082177&s=books&sr=1-1 ).
ニューオーリンズと周辺地域を守る堤防は、カトリーナの強烈な嵐に耐えられるないことを皆知っていた。この都市は、ニューオーリンズと240キロの湾岸コミュニティーの80%を全滅させる水で溢れるのを待つ器だった。避難命令は余りに遅かった。自動車や他の手段のない人々を避難させる措置はとられなかった。病人と高齢者は放置された。水浸しになった地域の不十分な資源の、バスやボートや初動要員を集める措置はごくわずかしかとられなかった。ニューオーリンズ警察は無断欠勤した。彼らの一部は略奪に参加した。米連邦緊急事態管理局FEMAは完全な失敗だった。ジョージ・W・ブッシュ大統領と国土安全保障省のマイケル・チェルトフ長官は進展する悲劇には目を向けず、20年間にわたるアメリカによる中東や北アフリカ諸国へ爆撃や侵略を正当化するのに使われるテロぺてん創造に熱心だった。ブッシュがイラクにルイジアナ州兵を配備していたため、ルイジアナ州知事は他州から州兵を借用しなければならなかった。
アメリカ沿岸警備隊、ルイジアナの野生動物保護団体や漁業関係者や他の人々が初動要員だった。ルイジアナ州や他の州の人々が、各自の都合に合わせ、自費で、自前のボートで救援を組織し始めた。英雄的な寛大な多くの人々が救援に参加した。救助者の大部分が白人南部人で、救助された人々の大半が黒人だったので、南部白人が人種差別主義だというプロパガンダ構図がウソであることが明らかになった。例えば、サラ・ロバーツと、南部連邦のP.G.T.ボーレガード大将の子孫である夫ビュイソンは、ケージャン海軍を組織した。サラは35隻のボートと、その乗組員を集めた彼女の会計事務所の顧客に協力を求めた。彼女の顧客の一人、ロニー・ロベットは、救出作業に対し、彼の建築作業員に三倍の賃金を支払い、船に、食品や、水や医療用品、電動のこぎり、救命胴衣、スポットライト、ロープ、救出を成功させるため他に必要なものを何であれ装備するのに自前で200,000ドル費やした。ニューオーリンズ州やルイジアナ州やワシントン州で、さもなければ死んだだろう何千人もの人々を救ったのは、政府ではなくて、個々の市民だった。
都市ができて以来、ニューオーリンズでは人災がいつ起きても不思議ではなかった。長年に亘る浚渫、運河、水路変更、パイプラインや様々な他の環境に損害を与える失敗が、都市と湾岸を守る湿地を破壊していた。私益に奉仕すべく、失敗が制度上、作りこまれている。Great Deluge大洪水は私的利益を優先する政治制度、経済制度の外部費用だ。
ミシガンの地域がダム崩壊によって浸水する中、我々はこの瞬間も、再び同じことを経験している。ダムの一つ、エデンビル・ダムは長く知られていた公共の危険問題だった。ダムの所有者ボイス・ハイドロ(水力発電)は規制当局の介入にもかかわらず、再三周知の危険に対処し損ねた。ボイス・ハイドロ社のみならず、周知の危険を放置したままにしていた政府当局も怠慢だった。洪水による生命や財産の損失は、利益しか頭にないボイス・ハイドロ社が第三者に押しつける外部費用なのだ。
私的強欲を国民の利益に役立たせるとされる「見えざる手」への有効性に対するリバタリアンの信仰を理解するのと同じぐらい、政府に対する自由主義や進歩的な信仰を理解するのは困難だ。人間は失敗が組み込まれた機械だ。人間の時間感覚は短期的だ。人間は、いつも、自身の思いやりがない行為と、不作為の思いがけない結果に驚くのだ。
アメリカ中、地方、州、連邦政府は失敗の典型だ。何兆ドルもが世界の他の国々とともにアメリカを破壊せずには使えない兵器システムの中に注がれる中、ダムが崩壊し、橋が崩壊し、共同体が荒廃し、ホームレスが増大している。ワシントン政府は軍安保複合体予算を正当化するための敵を作り出すのに時間と労力と金を費やし、他方、雇用やアメリカ経済は海外移転され、環境は損なわれ、医療の必要は取り組まれないままだ。貯金を持たず、医療は受けられず、生活向上の見込みがない人口の比率で、アメリカは第三世界諸国に匹敵している。
だが我々は世界を何度も世界を吹き飛ばすことが可能で、嵐や豪雨や他の自然事象の破壊力を増す自然環境への無分別な介入をしているのだ。
もう一つの選挙が近づいているのに、我が国が直面している本当の問題を認めず、それらについて何をすべきか論じることにどんな関心もない。ニューオーリンズが巨大ハリケーン・カトリーナで浸水したのと全く同様、アメリカと西洋全般は、彼らが対処しない諸問題に溺れるだろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2020/05/22/america-is-drowning-in-problems/
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昨日は、昼、夜、興味深いインタビューを拝聴。
<昨日の岩上安身によるインタビュー報告>廃案ではない! 先送りになっただけ!? 岩上安身による2連続インタビュー報告!『検察庁法改定案』海渡雄一弁護士と『種苗法改定案』山田正彦元農林水産大臣!
大本営広報部、コロナについてふれても「種苗法改定案」には決してふれない。政府も大本営も売国奴。山田氏のお話しの中で、TPPにも触れられた。TPP関連主要記事リストにまとめた記事を、この機会にお読みいただければ幸いだ。
大本営広報部では、緑のタヌキや異神礼賛しかみかけないので、抗生物質がわりに、横田一氏の報告は必須。
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コメント
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ウィルスとくればワクチン。
そのワクチン自体の中身が問題だ。
一般民衆は、ワクチンの成分を知る事ができないから、大半の人は医師を信じてしまう。
ところが、その医師自身も、製薬会社を信じてしまって、自分で成分を分析しよう、などとは思わないから、子宮頸がんワクチンの様に、とんでもない悲劇が起こりうるのである。
また、メガFTAなどの規約には、一般人が勝手に成分を分析してはいけない、といった内容が含まれていたりするから、我々民衆は防御の手立てさえ奪われているのが現状だ。
新自由主義の行きつく先は、どうみても人類家畜化としか思えない。
ニューオーリンズで、そのような大規模な水害が発生していたとは知らなかった。
チラッと見たかもしれないけれど、次々と発出される売国法などにかき消されて覚えていないのかもしれない。
洪水による生命や財産の損失は、利益しか頭にないボイス・ハイドロ社が第三者に押しつける外部費用なのだ。
という部分が、日本で起きている諸問題の根源的な部分と重なるように思える。
例えば、これを水道民営化では、利益は企業のもの。整備は利益の出る範囲だけ折版か、若しくは損失する部分は税金という形で、第三者である利用者住民に押し付けられる事になる。
今般、種苗法改悪は、グローバル種子企業や内外バイオ化学企業に、登録品種という建前の下、それを独占する権利を明け渡すものと言える。
これもまた、利益は外資へ、不利益は国民に押し付ける内容だ。
これはTPPに於ける契約内容に従っているものである事は、先述したとおりにて候。
この、日本民族存続にも関わる深刻な問題を、マスコミは伝えない。
ネットの記事でも、「種苗の海外流出を防ぐ為の法案である」と誤誘導している。
これを多くの人が信じてしまっており、当の農家の人たちでさえ、これに反対している人を逆に非難する始末。
そんなに海外流出ガー、と言うならば、その前に、海外流出を防ぐ為と言いながら、種子法廃止ではグローバルバイオ化学企業に知見をタダ同然で売り渡しているという矛盾を説明するべきだ。
序に森林組合法改悪について少し述べると、
これもまた欺瞞に満ちた宣伝がなされているようだ。
「森林組合の経営基盤の強化を図るのが目的」という触れ込み。これを何も知らない人が見れば、我が国の森林を活性化する様な印象を受ける事だろう。
ところが実際には、森林組合の理事の中に、外資を含む企業や識者を加えなさい、となっていたり、民間との合併とか、事業を分割して譲渡しろ、などの内容が盛り込まれている。
つまり、寄生虫の卵を受け入れなさい、という事。
儲かる分野の事業だけを分割民営化して外資に明け渡しなさい、という事。
そして、そこには天下り官僚も入り込める余地を残している事。
要するに、利益はグローバル企業に、手間とカネが掛かる部分は地元の住民が負担、という構造という面で、新自由主義の基本形と言える。
どれもこれも、TPP協定の内容に沿って実行されている事だから、これらを差し戻すには、TPPからの離脱が不可欠。
されど、緑の狸一座の寸劇に騙されるような民度では、夢また夢の話だ。
投稿: びいとるさいとう | 2020年5月25日 (月) 20時26分