アメリカ人のコロナウイルス恐怖につけこむ対中国タカ派
Dave DeCamp
2020年4月14日
Antiwar.com
コロナウイルスは、世界の大半の国々より、アメリカに激しい打撃を与えた。対中国タカが構成するアメリカ最大の新しいシンクタンクが、民意を北京に敵対させるのに、この問題につけこんでいる。この問題への不安で暮らすアメリカ国民は、とりわけ反中国宣伝の影響を受けやすい。ウイルスが中国起源であることは、インド-太平洋地域での、存在感拡大を期待するペンタゴンにとっても、有益な道具になる可能性がある。
去年、ネオコンのフランクギャフニーと、元ホワイトハウス戦略家スティーブ・バノンによって、冷戦期の集団が復活した。Present Danger: China (CPD)(現在の脅威関する委員会:中国)は僅か1年ほど前、2019年3月に立ち上げられた。新CPDは、この集団の4番煎じだ。最初のCPDは1950年代に、二番目は70年代に、ソ連と対決するのに利用された。三番目のCPDは、いわゆる対テロ戦争に対処するため2004年に設立された。
CPDメンバーは、中国をアメリカに対する最も重要な「実存的脅威」と呼んでいる。「近い将来、アメリカは、アメリカを決定的に打ち破るために、非軍事的な形の戦争だけでなく、武力行使の用意があり、それをいとわない決然とした攻撃的な超大国敵国と対決する可能性が高い」とCPD「基本理念」の一つにある。もう一つの原則は「共産党が中国を支配している限り、中国と共存する希望がない」だ。Covid-19流行は、この集団がアメリカ人の不安を利用して、中国に対する一層タカ派の政策を要求する完ぺきな機会だ。
スティーブ・バノンはトランプ大統領の選挙運動と、政権初期、影響力の大きな役割を果たし、首席戦略官として、つかのまの在職中、中国商品に対する関税を激しく要求していた。バノンの対中国野心は貿易戦争だけで終わらない。「究極の成功は[中国]政権転覆だと思うし、その点で私は急進派だ」とバノンは、2019年5月、NPRに述べた。
バノンは「Bannon’s War Room バノンの作戦指令室」というポッドキャストを運営している。発生初期の一月、バノンは題名を「War Room: Pandemic パンデミック作戦指令室」に変えた。この番組で、バノンは、ウイルスに対する中国の対応を激しく非難している。世界的流行を、バノンしばしば「生物学のチェルノブイリ」と呼び、武漢で「ニュルンベルグ風裁判」が行われるだろうと述べた。先週バノンは、フォックス経済ニュースに出演し「中国共産党の手は血にまみれている。」と述べた。
CPD副会長で創設者のフランク・ギャフニーは、反イスラム教著作「Shariah: The Threat to America シャーリア:アメリカに対する脅威」などの本で良く知られている。ギャフニーは、ムスリム同胞団は欧米社会に潜入しているという理論を広め、オバマ大統領は隠れイスラム教徒だったと示唆した多くの著名人の一人だった。1997年、ギャフニーは悪名高いネオコン・シンクタンク、アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)の書簡への署名者の一人だ。ギャフニーは、2003年のイラク侵略を正当化し、サダム・フセインが9/11事件に関与していたと示唆するだけでなく、フセインは、最初のワールド・トレードセンター攻撃やオクラホマシティー爆破にさえ関係していたと示唆する役を演じた。
CPD設立以来、ギャフニーは、中国脅威論のブリーフィングや討論会主催に奔走している。北京の人権侵害の例として、ギャフニーは、しばしば西中国のイスラム教徒ウイグル人の苦境を指摘する。中国に対する、よくある主張は、彼らが新彊の再教育キャンプに、約百万人のウイグル人イスラム教徒を収容していることだ。2009年、ワシントン・タイムズのコラムで、不当にグアンタナモ湾に投獄されている17人のウイグル人集団を「オバマが、断固として、アメリカ人に向け解き放ったように思える、もう一つの危険な外国人集団」として解放すべきだとギャフニーは言った。
ギャフニーは、イスラム恐怖を広め、イスラム教徒が大多数の国々に対する戦争への同意を作り出して生計を立てている。イラクだけでも死者数は百万人より遥かに多いと考えられている。ギャフニーと彼のお仲間にとって、ウイグル人イスラム教徒は、地政学上の道具以上の何ものでもない。
バノン同様、ギャフニーの最近の活動はコロナ・ウイルスに対する中国の対応を非難することに注力している。CPDウェブサイトは、彼らが「武漢ウイルスに関する中国政府宣伝」と呼ぶ年表にリンクしている。中国政府は、ウイルスに対する初期対応を失敗したかもしれないが、アメリカ政府は、大流行を初期にとらえる機会を逃したのだ。
1月21日、コロナウイルスの最初に確認された症例は、武漢から訪米している人が、ワシントン州で発見されたことが知られていた。シアトルのあるインフルエンザ診療所の医師は、ニュースを聞いた後、試料検査を始める準備ができていた。医師は州と連邦に、検査を行う許可を拒否された。 1カ月以上待った後、2月25日、医師は政府の許可なく試料を検査して、陽性症例を発見した。ワシントン州の大流行で、500人以上の人々が死亡したが、あの重要な時間に制限できていたはずなのだ。
シアトルのインフルエンザ診療所は、ウイルスに対する国内対応を妨げているアメリカ政府の一例だ。国内の失敗だけでなく、アメリカ対外政策が、ウイルスに対する世界の対応を妨げている。トランプ政権は、イランやベネズエラ、シリアやキューバのような国々に対する害が大きい経済封鎖を維持している。ウイルスで最も強い打撃を受けている国の一つ、4,400人以上の死者で問題のさなかのイランに、アメリカは制裁を追加さえした。
「武漢ウイルスは殺人犯で、イラン政権は共犯だ」とマイク・ポンペオ国務長官はイスラム共和国への新たな制裁を発表した三月に述べた。制裁は、医学インフラには影響を与えないというアメリカ当局者の主張にもかかわらず、研究は、制裁が薬や医療用品の欠乏を起こすことを示している。ウイルスは中国から始まったのかもしれないが、アメリカは、大流行を武器化して利用している超大国だ。
CPDメンバーの言説の多くは、独善的な道義的な高みからのものだ。2019年6月の演説で、バノンは中国の人権侵害リストをズラズラ列挙し、これら乱用のかどで、中国政府へのアメリカの財政支援を止めるのは「最高の道徳的要請」だと述べた。だが、ワシントン自身、対処すべき多くの人権侵害をしている。上に列記した経済戦争から、イエメンでの大量殺戮戦争への支援、ガザ封鎖、頻繁に一般人を死なせているソマリアでの影の戦争や、アフガニスタン、イラクやシリア占領。これらの戦争は、中国の乱用のように、自発的な投資家による間接的資金供給ではなく、アメリカ納税者に直接資金供給されている。アメリカ人にとっての「最高の道徳的要請」は、自身の政府による人権侵害を終わらせるのに焦点をあてることのはずだ。
国防総省は、中国がワシントンの主要焦点であるべきだというCPDの理念を共有している。彼が2019年の夏、職務について以来、マーク・エスパー国防長官は、中国は国防総省の「第一優先事項」だと繰り返し呼んでいる。2018年の国家防衛戦略は「アメリカ繁栄と安全のための中心的脅威」として中国とロシアを特定している。最近アメリカのインド-太平洋軍司令部は、地域で「中国侵略を阻止する」200億ドルの要請を提出した。
中国とアメリカ間の不和の種は、軍事的に、南シナ海と台湾海峡だ。北京は台湾を自身の領土だと考え、アメリカは台湾との公式関係を持っていないが、彼らは台湾の主要支援国の一人だ。ワシントンは兵器や他の軍装備品を台北に売り続けている。パンデミックのさなか、米国海軍は台湾海峡を通るパトロールを強化した。4月10日、誘導ミサイル駆逐艦バリーが海峡を突進した。3月25日に、アメリカは類似のパトロールを実施したが、北京が非難てし「非常に危険だ」と呼んだ。
2015年以来、アメリカは係争中の群島、パーセル諸島と南沙諸島の付近の南シナ海で、航行の自由作戦(FONOP)と呼ばれるもの実施した。最新のFONOPは3月10日で、その際は、アメリカ海軍駆逐艦が、パーセル諸島付近を航行した。北京はこの行動を、国際法に違反する、南シナ海の平和と安定を脅かす覇権的行為と呼んだ。」
中国と、ベトナム、シンガポール、マレーシアやフィリピンのような南東の近隣諸国は、全てパラセルやスプラトリー島に対し、重複して権利を主張している。島々は主に小さな砂洲で、たいした広さではないが、論争の多くは、一体誰が海域で漁業をする権利を持っているかを巡るものだ。アメリカは、この論争で、どの国の側にもついていないが、その代わり、北京を挑発する以外、明確な狙いがない、海軍の現地投入を決めた。対中国タカ派が、中国の帝国主義的拡張の狙いの証明として、これら海域で、北京が構築し、武装化した人工島を指摘する。中国は、それなりの形で、確かに拡張主義だが、南シナ海のごく小さな砂洲の軍事化は、アメリカに対する脅威ではなく、おそらく彼らの沿岸でのアメリカ海軍プレゼンスに対する防衛的対応なのだ。
2016年3月の昔、スティーブ・バノンは、南シナ海での中国との戦争を予想していた。「我々は、5から10年で、南シナ海で戦争することになる」とバノンがブライトバート・ラジオショーで言った。「それは疑いようがない。連中は、砂洲を利用して、固定航空母艦を作り、そこにミサイルを配備している。面子がどれほど重要かは、誰でも理解しているが、アメリカにやって来て、連中は我々の顔を前に、古代の領海だと言うのだ。喧嘩をふっかけているのではないだろうか?」
先月、フォックス・ニュース司会者タッカー・カールソンは番組の一部で、流行後、「明らかに、そうなっている中国を、冷戦レベルの危険な敵国として扱い始める必要がある」と言った。CPDメンバー同様、カールソンは、アメリカ企業が中国での事業をやめて、製造業雇用をアメリカに戻すことを望んでいる。中国の製造にアメリカが依存していることについては、すべき対話はあるだろうが、両国経済が緊密につながっている中、彼らを「冷戦レベルの敵国」として扱うのは、無謀で、更に多くの敵意を招くだけだ。
中国にも、答えるべきことは多少あるが、アメリカ人は深呼吸して、マスコミを通して広がる反中国ヒステリーに巻き込まれない用にする必要がある。PNACネオコンが、9/11事件を、連中の戦争を中東でするために利用したと同じ方法で、CPDタカ派は、コロナウイルス流行を、連中の中国との戦争をするために利用しようとしているのだ。この世界的流行後に、世界にとって一番不要なのは、二大核大国間の戦争だ。
注: 本記事はMedia Roots Radio調査を利用しており、Covid-19勃発後の、CPDや、他の反中国プロパガンダに関する、彼らの二部シリーズをご覧願いたい。
Dave DeCampはAntiwar.com編集補佐で、アメリカ外国政策と戦争に焦点を当てているNYブルックリンを本拠とするフリージャーナリスト。@decampdaveでツイッターしている。
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