資本主義を機能させるべく大恐慌中に導入された全てが捨て去られ、債務免除でしか緩和できない経済危機をもたらした
2020年3月22日
Paul Craig Roberts
下記は、コロナウイルスが蔓延する前に、私がアメリカの危険な経済状態を説明するため、ハーランド・レポートでのインタビューと、現在の経済危機から脱出する方法は、債務帳消しであることを説明するマイケル・ハドソンの記事だ。債務が返済できない時には、それを帳消しにする方が、我々全員それと一緒に沈むより遥かに道理にかなっている。債務帳消しは理想主義的な平等主義の表現ではない。それは、あらゆる社会的、政治的帰結をもたらす長期不況と、更に酷い経済的分極化に代わる実際的な選択肢だ。
私のインタビューの核心は、経済の規制緩和と集中と金融化が、おそらく、マイケル・ハドソンが推奨するように、債務帳消しがない限りは避けられない、もう一つの厳しい不景気を生み出したということだ。下記を参照。https://www.nakedcapitalism.com/2020/03/michael-hudson-a-debt-jubilee-is-the-only-way-to-avoid-a-depression.html
我々が直面している問題は、アメリカ指導部が、更なる債務が、解決策ではないことを理解できるかどうかだ。これまでのところ「解決」は、それにより債務を増強し続ける、より多くの更なる融資のように思われる。現在の借金、学生ローン、自動車ローン、クレジットカード・ローンは、余りに大きいため返済できないのだから、より多く融資をするのは、火に油を注ぐも同然だ。
それが個人や企業や経済を窒息させているのだから、債務は帳消しにされなければならない。我々の経済的文化は、債務は返済しなければならないと思うのに慣れている。借金を避けて、質素に生きようとしなかった人々に恩恵を与えるのは、良くない振る舞いに助成金を支給し、奨励することだという考え方だ。だが、この場合、債務が免除されない限り、質素で責任ある人々まで、他の皆と沈没するのだ。私が20年以上強調してきたように、グローバリズムが、高い付加価値の仕事を海外移転し、家計の実質的収入増加を止めたのだ。アラン・グリーンスパン下で、連邦準備銀行は、収入増加に代えて、債務拡大を、消費総需要に拍車をかけ続けるのに使ったのだ。
債務免除には長い成功の歴史がある。古代の人々は繰り返し、それを利用してきたし、1948年、ドイツで旧通貨ライヒスマルクをドイツマルクに変えたことが「ドイツの奇跡」をもたらし、政府や個人債務の90パーセントを抹消した。
政府債務は私的債務のような問題ではない。政府はお札を印刷することで、債務返済できるが、個人と企業はそうできない。ハドソンが言うように「アメリカ政府が、銀行のために量的緩和で4.5兆ドルの資金調達できるなら、前述の学生や他の債務の経費を吸収できる。民間金融業者は、不良ローンだけ清算する必要がある。清算されるだろうものの多くは、焦げつきローンの金利、遅延損害金や課徴金だ。」
銀行や大企業に対する債務免除は、大衆が債務救済措置に多少の公正を感じる、ある種、国有化のような部分がある。本質的に、量的緩和は、大きすぎて潰せない金融機関にとっての債務免除だった。連邦準備銀行は、銀行の不良債権を購入して、連邦準備銀行の貸借対照表に載せたのだ。銀行と異なり、連邦準備銀行は破産しないのだ。アメリカの経済文化は、国有化を、社会主義、とんでもないこととして見る。私はこの件に、3月14日の記事で触れた。https://www.paulcraigroberts.org/2020/03/14/economic-effect-of-coronavirus-could-be-revolutionary/
我々の根深い考え方が、私が書いている間も増大する現在の危機に対する解決を、容易に阻止しかねない。
ここにハドソンの記事がある。
マイケル・ハドソン:債務帳消しが、不況を回避する唯一の方法
ジェリ -リン・スコフィールドにより、2020年3月22日公開。
Washington Post初出, 筆者の承認を得て、転載。https://www.nakedcapitalism.com/2020/03/michael-hudson-a-debt-jubilee-is-the-only-way-to-avoid-a-depression.html
マイケル・ハドソンはカンザスシティーのミズーリ大学経済学教授でバード・カレッジのレヴィー経済学研究所研究員。彼の新著は“and forgive them their debts”: Lending, Foreclosure and Redemption from Bronze Age Finance to the Jubilee Yearだ。
新型コロナウイルスが現れる前でさえ、多くのアメリカ家庭が、学生ローン、自動車ローン、クレジットカードや他の支払いを滞納していた。アメリカの債務負担から、労働者も企業も高すぎで、世界市場から離脱していた。累積債務危機は、最終的に避けられなかったのだが、covid-19がそれを前倒ししたのだ。
人の接触機会を減らす大規模戦略が、付随する失業、株価下落、企業の大規模救済措置で、不況の脅威を高めている。だが、そうならずとも良いはずだ。このような状況に対しては、歴史が、もう一つの代案を与えてくれる。債務帳消しだ。この過去を帳消しにして、バランスを復活させる措置は、債務者が貧困にならずに返済するには、債務が余りに大きな場合、社会をばらばらにならないよう維持し、バランスを復活させる方法は、不良債権を帳消しにすることだという基本的真実を認めているのだ。
「帳消し(ジュビリー)」は"トランペット" - yobel(牡羊の角)を意味するヘブライ語の単語に由来する。モーセの法では、「神の年」を示すため、その角が、50年ごとに吹かれ、個人債務が帳消しにされることになっていた。預言者イザヤが、代替の選択肢は、小自作農が、債権者に、土地を譲渡することだ警告した。「わざわいなるかな、彼らは家に家を建て連ね、田畑に田畑をまし加えて、余地をあまさず、自分ひとり、国のうちに住まおうとする。」ルカによる福音書は、イエスが最初の説教をした際、預言者イザヤの書を開き、主のめぐみの年を告げ知らせるために来たと言われた、と書いている。
最近まで、歴史家たちは、債務帳消しが実際可能だったのか、このような宣言が実施できたのか疑っていた。だが、アッシリア学者が、記録に残る近東史の初めから、王位につくや否や債務恩赦を宣言するのは、新支配者にとって普通だったことを発見した。トランペットを吹く代わりに、支配者は恩赦を示すため「神聖な松明を掲げた」。
債務を帳消しにする上で、これら支配者が、夢想家や理想主義者ではなかったことが分かっている。そうしない場合の代案は、債務者が奴隷の身分に落ちることだったろう。非常に多くの人々が、債権者に労働で債務を返済するから、王国は彼らの労働力を失ったはずなのだ。(最近の累積債務危機後、ギリシャ人が一団となって移住したのと同様)多くの債務者が逃走しただろうし、共同体は外部からの攻撃に陥りやすくなったろう。
現在との相似は顕著だ。2008年金融危機以来、アメリカ経済は急激に分極化した。余りに多くの人々が、債務のおかげで、ほとんど個人消費や国益のために収入を使えない。崩壊した経済で、既に、2008年以来得た富の大部分を吸収した富裕層に支払う新たな大量債務要求は、更に我々の社会を分裂させるだけだ。
これは最近の歴史でも起きている。第一次世界大戦後、戦争債務と賠償金負担は、1929-1931年の世界金融崩壊の要因となり、ドイツを破産させた。ドイツ人の大部分が破産し、政治的にナチと共産主義者に分裂した。我々全員それがどう終わったか知っている。
2008年のアメリカ金融危機は、収入がより少ない、特に少数派人種の多くの家庭に重荷を負わせ、しばしば詐欺的なジャンク住宅ローンを棒引きする絶好の機会になったはずだ。だが、そうはならず、何百万ものアメリカ人家族が立ち退かされた。現在、正常に復帰する方法は、債務の棒引きだ。最も深刻な滞納で、不履行となる可能性が最も高い債務は学生債務、医療債務、消費者債務と、純粋に投機的な債務だ。こうしたものは「実態」経済を縮小し、商品やサービスに対する支出を阻止する。棒引きは、さほど豊かではない人々に対する単なる道義的同情ではなく、実際的同情だ。
実際それは、ドイツが「経済の奇跡」と呼ぶ、1948年、ドイツ現代的な債務帳消し、連合国諸国が実施した通貨改革を作り出すことができたのだ。ライヒスマルクを置き換えるドイツマルクが導入され、政府、個人債務の90パーセントが棒引きされた。ドイツはほとんど債務がない国として再生し、低い生産コストで、現代経済を活性化させた。
批判する人々は、債権者側の崩壊や、政府にとっての破壊的経費を警告する。だが、アメリカ政府が、量的緩和で4.5兆ドルも資金調達できるなら、上記の学生や他の債務コストは吸収できるはずだ。民間の貸し手に対しては、不良ローンだけ償却する必要がある。償却されるものの多くが、焦げ付き金利、遅延損害金や課徴金だ。それは実際、そのまま放置しておくのは良くない焦げ付きローンに対する助成金支給だ。
過去、政治的に強力な金融部門が、評価損償却を阻止してきた。今まで、大半の我々の基本的倫理は、債務は返済しなければならないというものだった。だが今や大半の債務が返済不能なことを認識すべき時期なのだ。今の経済大惨事に直面した債務者たちが本当に不履行にならないようにして。
コロナウイルス発生は今まで考えることができなかった対策を考える頭の体操に役立っている。返済できない債務は解決ではあるまい。債務帳消しは最善の解決策かもしれない。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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昨日、妄想を書いたが、驚いたのは、複数の知人から、そうかも知れないと言われたこと。この状態になっても、経済優先を言い続けている狂気の傀儡政府幹部を見ていると、宗主国巨大資本から、壮大な大量自国民殺人社会実験、新ファシズム構築を命じられているのでは、と益々思えてくる。
植草一秀の『知られざる真実』
オリンピックにまつわる企業強欲ゆえの手遅れにより、ニューヨーク並の地獄が待っている。呪われたオリンピックは不要。そもそも福島原発災害対策に注力すべきだった。管理されていると真っ赤なウソをいったマリオ男は恥を知らない。というより、伊丹万作が指摘した通り、こりずに詐欺師に投票する、小生の幼馴染みたちこそ問題だろう。
4.9日のダイアモンド・オンライン記事に納得。
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