OPEC + 合意が、いかに、なぜ、シェール石油を完全崩壊から救ったのか
2020年4月22日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
一、ニ年前のトランプの夢が、アメリカ・シェール石油産業に世界を支配させることだったなら、最近の「石油価格競争」が、それを完璧に粉砕し、シェールと原油の「共存」という新たな夢をもたらしている。大半の評論家やアメリカ・シンクタンクが考えている通り、OPEC + 合意がなければ、アメリカ・シェール石油産業は完全崩壊していただろう。だから、アメリカの政治評論家の多くが以前見ていたように、ロシアとサウジアラビア間の石油価格競争の「核心目的」は、アメリカ・シェール石油産業の破壊だけではない。それは地政学的・経済的に、相手の権益を侵害することなしに、それぞれの市場占有率を維持することが狙いだったのだ。(アメリカ経済の他部門が失敗し続けているので)アメリカはエネルギー市場支配を望んでいた。サウジアラビアは収入を増やしたいと望んでいた。ロシアは自分のシェアを維持し、サウジアラビアとアメリカに与えないことを望んでいた。
合意が石油価格競争を解決したものの、アメリカは「シェール石油支配する世界」という長年の夢を、そう長くは追求できるまい。その理由は、こういうことだ。
OPEC + 合意前に、アメリカ・シェール石油産業は限界に急速に近づきつつあった。既に「産油州」出身のアメリカ上院議員連中は、アメリカに対する「陰謀」と見なすものへの王国の関与のかどで、サウジアラビアとアメリカ関係を積極的に「傷つけよう」と努めていた。サウジアラビアは、二つの理由で、確かに譲歩した。
そもそも、彼らはロシア同盟国ではない。サウジアラビアの権益は、ロシアとより、アメリカと合致する。サウジアラビアは、アメリカと彼らの根本的に重要な関係に悪影響を及ぼす結果になるのを決して望んではいなかった。第二に、たとえサウジアラビアが実際、アメリカ・シェール石油産業の完全破壊を望んでいたとしても、彼らは大きな代償、すなわち、少なくとも更に二年程度、極めて安い石油価格を維持する必要があるが、サウジアラビア経済と、王国の戦争が石油に依存したままで、サウジ国営の公的投資基金(Public Investment Fund)まだ「投資機会」を探している中、そうはできないのだ。
それに加えて、国内での「王族反乱」鎮圧に忙しいMbS皇太子にとって、低収入と追加国内税金は、多数の政治問題を引き起こしかねないのだ。更に、王国の予算不足で、準備金を使い込むことになり、より多くの国債発行を必要としている状況は、ノルウェーのコンサルティング企業Rystad Energyが、一バレル34ドルでは、王国は今年、2019年予算収入の半分しか得られないと予測していて、政治的に危険なことになりかねない。
ロシアにとって、石油市場価格の安定は、最大の魅力に思われる。合意によって、ロシアは、収入で、一日に7000-8000万ドルの超過分を得られよう。これが、Covid-19危機ゆえに需要が低い時に、石油井戸を封鎖する、いかなる心配もせずに得られるのだ。ロシアは、今アメリカ・シェール石油産業救済の上で重要な役割をすると考えられるので、もう一つのボーナスは、アメリカとの多少良い関係だろう。最終的には、アメリカ減産に導くはずのトランプの直接ロシア交渉に対し、アメリカ内で、いかなる「ロシア嫌い」からも、「闇の国家」からさえ、彼の合意への非難が無いのは、偶然の一致ではない。
言い換えれば、危機がアメリカ・シェール石油産業が原油生産諸国と戦うのに十分強力ではないことも示したが、合意はアメリカにとって色々な意味でうまく機能したのだ。
外交問題評議会CFRの分析によれば、価格競争の終わりと、OPEC + 合意は、アメリカ・シェール石油産業が、もはや人工呼吸器使用中ではないことを意味する。「更に破産はあるだろうが、当面、最悪の価格競争が終わったので、産業の徹底破壊がおきる恐れは、ひとまず忘れることができる」。
アメリカ石油企業が、既に何千人も人員を削減し、油井を封鎖し、生産を削減し、一世代以上の期間で最悪の崩壊に対し準備していたアメリカにとって、地平線に姿を現しつつあった最悪シナリオがあり得たのだ。
「産油州」上院議員の反応が示している通り、テキサス州やオクラホマ州、ノースダコタ州などは、既に大規模人員削減と収入減を予想していた。この産業は1000万人以上のアメリカ人を雇用し、アメリカGDPの7パーセントを占めている。業界の数値によれば、アメリカ生産高の減少で、2019年の日産300万バレル以上から、今後数カ月のほぼゼロまで輸出が減るのがわかる。
次期大統領選立候補最中にいるトランプには、このような大惨事を見過ごす余裕はなかった。大惨事で彼は大統領執務室の席を失いかねないのだ。それ故、サウジアラビアとロシアと合意するための彼の公式ロビー活動があり、完全崩壊シナリオが防げたのだ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/04/22/how-and-why-opec-deal-saved-shale-oil-from-total-destruction/
----------
開店しているパチンコ店と群がる客を非難しているが、両方の都市に作られるカジノはどうなるのだろう。シェルドン・アデルソンのカジノは。客層は全く違うのだろうか?
LITERA記事に同感。再放送がみられると思って見たが、違う回の再放送だったので驚いていた。大本営広報部の本領発揮。視聴料を返せ。
日刊ゲンダイDIGITAL
さながら戦争末期 政治家も専門家も「自分たちは悪くない」
« 例外主義者のたわごと | トップページ | 地下鉄がニューヨーク市でのコロナウイルス大流行の種を蒔いた »
「アメリカ」カテゴリの記事
- バイデン、F-16とクリミアを攻撃するアメリカ兵器のウクライナ供与を承認(2023.05.25)
- プロパガンダを管理するため存在している欧米ニュース・メディア(2023.05.23)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
- 欧米の極めて複雑な中国分析の世界を理解する(2023.05.19)
- スラヴァ(栄光)? いや栄光どころでなく、恥を知れウクライナ!(2023.05.17)
「ロシア」カテゴリの記事
- ウクライナへのF-16供与(2023.05.27)
- バイデン、F-16とクリミアを攻撃するアメリカ兵器のウクライナ供与を承認(2023.05.25)
- バフムート陥落-アルチョモフスク解放(2023.05.21)
- 広島原爆の記憶を冒涜するG7戦争挑発サミット(2023.05.21)
「シェール・ガス・石油」カテゴリの記事
- アラブ連盟とダマスカスを団結させたジェッダ会議(2023.05.24)
- ロシアが「欧米」の視界を曇らせ続けているという偽りの主張(2023.05.16)
- バイデン政策でぼっかりあいたアメリカの深淵を瞥見(2023.05.12)
- サウジアラビア王国に外交政策ドクトリンを課すと固く決意しているアメリカ(2023.05.10)
- NATO拡大 対 OPEC+オイル・ショック(2023.04.23)
「サウジアラビア・湾岸諸国」カテゴリの記事
- アラブ連盟とダマスカスを団結させたジェッダ会議(2023.05.24)
- アラブ人の再結成で孤立するイスラエル(2023.05.22)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
- サウジアラビア王国に外交政策ドクトリンを課すと固く決意しているアメリカ(2023.05.10)
- 前向きな解決に向かうシリア問題(2023.05.03)
コメント