対イラン制裁を解除すべき頃合い
ブライアン・クローリー
2020年3月24日
Strategic Culture Foundation
マイク・ポンペオ国務長官は、しばしば彼は信心深い福音主義キリスト教徒だと考えていると発言し、2019年11月にはニューヨーク・タイムズ誌に、聖書が「私が行うことを全て教えてくれる」と述べた。
彼の宗教的信念が聖書に基づいているなら、彼は確実に、フィリピの信徒への手紙 2:4「めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。」という教えや、同様に、マタイによる福音書 5:42の「求める者には与えなさい。あなたから借りようとする者に、背を向けてはならない。」という思いやりある教えに精通しているはずだ。もし我々全員そうした教えに従っていれば、人間の苦難は減り、世界は確実に、もっと良くなっているはずだが、ポンペオ長官が聖書の言葉に敬けんに配慮しているにもかかわらず、彼のキリスト教的心づかいは、いささか、より好みが激しいように思える。
内紛と個人の窮乏状態にあるイランに関しては、ポンペオ長官は「求める者には与えず」、ワシントンの既存制裁を強化し、むしろ人々の尊厳を剥奪している。去年12月にBBCが報じた通り「2018年5月、ドナルド・トランプ大統領が画期的核合意を離脱した後、アメリカはイランに対する経済封鎖を復活させた。トランプ大統領は合意再交渉を強制するため、テヘラン政府に「最大の圧力」をかけたいとを望んでいると述べた。」
ホアン・コールが指摘している通り、イランに標的を定めた最も意地悪な(そしてほとんどキリスト教的でない)形のものは、2015年にテヘラン政府が「核計画を軍事化するのを不可能にする厳しい措置を受け入れた際、終わるはずだった。引き換えに、イランに対するあらゆる経済制裁が撤廃されるはずだった。アメリカが包括的共同作業計画に署名した後、上院共和党は、アメリカ制裁を決して失効させず、イランと商売した場合、重い罰金と制裁で、ヨーロッパ権益を恫喝した。だから、イランは全てを失い、ほとんど何も得られなかったのだ。それにもかかわらず、イラン政府は誠実に合意を守った。すると、2018年、イランが全て規定を遵守しているにもかかわらず、トランプは、アメリカが署名した条約を突然破棄し、平和時に、一つの国により別の国に適用された最も残忍な制裁をイランに対して課したのだ。」
ロウハニ大統領が「2017年、インフレーションを9%まで下げるのに成功し、IMFは、2018年、30.5%に急上昇し、2019年に35.7%に達すると予想した」が、普通のイラン人にとって生活はひどいものだ。世界銀行は影響は食物部門で特に厳しかったとしており「2019年4月、肉製品が前年比116%値上がりし、地方の住民は不釣り合いな影響を受けた」。
Covid-19世界的大流行は、イラン人に壊滅的影響を与えており、ウイルスの驚くほど速い蔓延に対する責任にたいして、イラン政府は明らかに能力がなく、意図的なほど怠慢な政府ことは大いに強調されるべきだ。亡命中の二人のイラン人医師が、ニューヨーク・タイムズに、「公式対応は、危機の大きさの甚だしい否定だった」と書き、他方宗教的におかしな最高指導者アヤトラアリ・ハメネイは「コロナウイルスの脅威を誇張したと言ってイランの敵を非難」さえした。
おそらく、アメリカと一部の湾岸諸国が、イランに対する影響の可能性を誇張しているが、独立した評論家たちは、これまで起きたことの壊滅的な様子や、ハメネイの悲惨な国の未来がおそらくどうなるかを描いている。
Covid-19の猛攻撃前でさえ、制裁は、既に「イランの、薬を含め人道的輸入の資金調達をする能力を制限し、一般イラン国民に重大な困難を引き起こし、彼らの医療の権利を劇的に脅かして」いたとヒューマンライツ・ウォッチは警告していた。確かに、このような客観的評価が公表されている今、Covidが攻撃したとき、対イラン制裁に責任ある人々は彼らを、制裁を緩和することを考えているだろうか?
そうではない。イランが関係すると、全ての良い人々は「求める者には与えなさい。あなたから借りようとする者に、背を向けてはならない。」というキリスト教聖書の助言は、どういうわけか適用されないのだ。3月17日、ロイターは「テヘランがコロナウイルス世界的大流行に対処するのを助けようと申し出て、イスラム共和国に拘留されたアメリカ人の解放を求めながら、アメリカは、経済圧力キャンペーンを継続し、イランに新制裁を課したと報じた。ポンペオは、この措置は、制裁対象の組織に投資したかどで、イラン軍の社会保障投資企業と、その社長を、ブラックリストに載せることが含むと述べた。」
Covid-19による18,407件の感染と1,284人の死者を、ロイターが報じているにもかかわらず、ポンペオは「武漢ウイルスは殺人者で、イラン政権は共犯者だ」と発言して追い打ちをかけた。宗教的におかしなテヘラン政権が、どれほど無能であるにせよ、自国内で死を広める「共犯者」である可能性は高くない。ワシントン・ポストが報じているように「ウイルスは政治エリート集団を襲い、多数の当局者や議員が感染し、死者の中には、イラン最高指導者の顧問までいる」。
「イラン向けの医薬品は制裁しておらず、イラン向けの人道支援は制裁していない。イランは深刻な状態になっており、我々はイラン国民に、人道的、医療的支援を届けたいと願っている」というポンペオ発言は、十分もっともなことだが、テヘランに拒絶された。既存の制裁が「食物や医薬品購入のために、イランが使える、あらゆる金融経路」を閉塞してることは余りにも明白だから。ヒューマンライツ・ウォッチによる詳細な報告が「アメリカ当局の攻撃的言説と連動する金融取引上の広範囲な制約が、肝要な医薬品や医療機器を含め、イラン機関による人道的輸入資金調達能力を、どのように劇的に制限しているか」文書で証明している。
昨年2月、制裁の効果は「イラン国民にとって、事態がずっと酷くなり、イラン国民が立ち上がり、政権の行動を変えるよう仕向けると確信している」ことだとポンペオはCBSニュースで述べたが、それこそ、まさにワシントン制裁キャンペーンの狙いなのだ。
ヒューマンライツ・ウォッチは、制裁が「様々な病気や医療問題に悩まされるイラン国民に不必要な苦しみをもたらしていることが判明した。最も酷く影響を受けた人々は、以前は入手可能だった医薬品や物資を入手できない専門的治療を必要とするまれな病気や、病状のイラン人だ。これには、白血病、表皮水疱症、てんかんや、イラン-イラク戦争時の化学兵器曝露による慢性眼病の患者が含まれる。」
ポンペオは世界に向かって、アメリカは「医療支援をイラン国民に届けたい」と望んでいると語るが、実際は、アメリカ国内中でさえ、ほとんどCovid-19と戦うことができず、防護服が大量に不足しているワシントン政権が何も送っていないのを我々は目にしている。イラン政府に「反抗する」に至るまで、彼らを苦しませるよう意図して、アメリカが課した邪悪な制裁によって、イラン国民は虐待されている。
無辜のイラン国民を破滅させるため、大統領を支援するのに懸命な、容赦なく厳格な人物のキリスト教徒ポンペオは、聖書が「私が行うことを全て教えてくれる」ことを誇りにしているのに、エフェソの信徒への手紙4:32の教え、つまり信徒は「互いに親切にし、憐れみの心で接し、神がキリストによってあなたがたを赦してくださったように、赦し合う」べきだという教えに従うのをいやがっている。去年、彼は実際「イラン国民にとって、事態がずっと悪化する」ことを喜んでいた。言い換えれば、彼は陰険な偽善者だ。
トランプとポンペオは、イランに対するアメリカ制裁を解除し、少なくとも何人かの命を救う時が来たのだ。世界はもっと良い場所になれるはずなのだ。
Brian Cloughleyは、イギリス軍とオーストラリア軍の退役軍人、元カシミール国連軍事使節副団長、元在パキスタンのオーストラリア国防担当大使館員
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2020/03/24/now-is-the-time-to-cancel-sanctions-on-iran/
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今確認したところ、この記事、隠蔽エンジンでは、すぐには出てこない。それが、アクセスが思っていたほど多くない理由だろう。隠蔽エンジン、おそるべし。 コロナウイルスとゲイツ財団
森羅万象割れ鍋に綴じ蓋。亭主の言い分にあきれる。今年こそ、個人的花見でなく、大々的に「サクラ連中」を見せる会を開いて頂きたい。自費で。売国政治家や茶坊主芸人・評論家が大本営広報部画面からしばらく消えたら、どれほどすっきりするだろう。
あるコンサートの中止・払い戻し連絡が来た。コロナはいやだが、期待していたので残念。
週刊金曜日 3/27 1274号、冒頭は宇都宮健児氏の「改正特措法緊急事態宣言の危険性」 次に拝読したのは、決して、大本営広報部が登場させないお二人の、五輪についての正論。白井聡氏の「新型コロナが可視化する「真の社会構造」と東京五輪パラリンピック」と山口泉氏の「肯わぬ者からの手紙」。後者の題名「1945年の亡霊政権と殺人五輪ウイルス戦玉砕」。大本営広報部のバラエティー番組と、実に対照的な、もっともなご意見。
植草一秀の『知られざる真実』
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