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2020年3月 7日 (土)

サウジアラビアとその未来

2020年3月2日
ビクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook

 二つのサウジアラビア訪問が、明らかにその外交政策の方向と展望を正確に示して、世界中のマスコミの注目を集めた。

 まず、2020年2月24日、サウジアラビア国王は、まさにその現代史で始めて、国王宮殿にイスラエル人ラビ、デイビッド・ローゼンを迎え入れた。会談はアブドラ・ビン・アブドルアジズ国王宗教間・文化間対話国際センター(KAICIID)が企画した歓迎会の際に行われた。ちなみに、デイビッド・ローゼンはKAICIID理事会メンバーだ。イスラエルのタイムズ紙は、ラビ発言を引用して、会談は「サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード国王が主催した、実際前例がない異宗教徒の会談間だった」と報じた。加えて、アメリカユダヤ人委員会(AJC)の異宗教間問題部の部長でもあるデイビッド・ローゼンは「サルマーン国王との会談に出席した9人のKAICIID理事会メンバーの一人で、唯一のユダヤ教代表者」だった。

 「サウジアラビア国王、イスラエル人ラビを宮殿に始めて招待」イスラエル・マスコミが実に嬉しげに報じた。記事の筆者は、このような身振りの後、サウジアラビアは「イスラエルと益々開かれた関係」を確立すると考えている。奇妙なことに、サウジアラビアの公式通信社が、催しを報じたが、会談出席者の名には言及せずに、歓迎会の写真のみ掲載された。イスラエル外務省の「アラビア語のイスラエル」ツイッター・アカウントが、様々な宗教間に寛容の橋を架ける肯定的な取り組みとして、この動きに触れた。先月、イスラエルのアリエ・デリ内務大臣が、イスラエル人が、ビジネスや、宗教的理由で、サウジアラビア訪問を許されるだろうと言う声明を発表したことが報じられていた。これは、なによりも、イスラエルのモサドや他の諜報機関の職員を、イスラエル建国以来、初めて公然とサウジアラビア訪問を認めるものだ。

 これは、以前から、長年のアラブ世界のリーダー、リヤドが、イスラエルに対する厳しい政策を止めるという広がっていたうわさの確認だ。それで(オマーンでも行われた)数年にわたる両国の様々な代表者間の全ての秘密会談は結局無駄にならなかった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相さえ、勇敢に、オマーンを訪問し、前国王カーブース・ビン・サイード・アール=サイードと会い、成功裏に会談した。アラビア語のマスコミは、上記の訪問や会談と協議が、サウジアラビアとイスラエルを更に接近させる上で、かなり重要な役割を果たした事実に合意している。主にパレスチナへの支援と、イスラエルの政策への反対に起因して、アラブ世界のリーダーと見なされていたリヤドは、今や完全にその外交政策方針を変更し、イランを重要な敵として選んだのだ。

 二つ目の出来事は、ドナルド・トランプの忠実なタカ派、マイク・ポンペオ米国務長官によるサウジアラビア訪問と、サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード国王と、ファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード外務大臣との、両国にとって重要な多くの問題に関する会談だ。双方は両国間の友好関係を保証する彼らの誓約を再確認し、中東で、国際テロや、過激主義や不安定化との戦いで協力を続ける意志を表明した。後に、アメリカ国務省は「サウジアラビアとアメリカ間の、強い永続的な75年の提携」に触れる声明を発表した。

 訪問に関するどの公式報告にも、イランへの言及がないが、国王宮殿からの漏えい情報によれば、両国は、イラン政権に対する共通の対決的姿勢の合意意に、かなり時間を使った。いわゆる核合意から離脱したドナルド・トランプ大統領は、彼の非人道的制裁で、イラン国民のみならず、テヘランと仕事を続ける、あらゆる国や企業を締め殺そうとしている。一方リヤドは、シリアやレバノンやイラクやイエメンやペルシャ湾岸地域でのサウジアラビア支配に対抗しているので、イランを重要な敵と見なしている。

 最近、サルマーン国王と、ムハンマド・ビン・サルマーン・アール=サウード皇太子との間に亀裂があるように思われるのは指摘する価値がある。国王は、年齢と病気にもかかわらず、益々再び国政に関与し、自身で困難な決定をするのを選んでいる。今回、サウジアラビア外交政策の主な方向を確認する、マイク・ポンペオとの鍵となる交渉を行ったのは国王だった。それでも、アメリカ国務長官と皇太子の写真のみがサウジアラビアの新聞に掲載され、交渉の言及は一切なかった。

 ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と父親間の外見上明白な一時的な断絶について説明できなかったり、理解できなかったりすることは何もない。皇太子は大して成功しておらず、非常に多くの失敗をしている。シリアの正当に選ばれたバッシャール・アル・アサド大統領の排除を試みるサウジアラビア政策を追求し続けることで、現在、イドリブ周辺に集まっている山賊とテロリストの支援に、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は、30-50億ドル使ったが、ほとんど成功していない。皇太子は、個人的に、隣接するイエメンに対する無意味な戦争を始め、そこで、イスラム教徒の兄弟に、深い悲しみと破壊をもたらした。アラブ首長国連邦さえイエメンから軍隊を撤退させた。しかも最近イエメンは、サウジアラビアに対し、益々破壊的なミサイル攻撃を行うことで、若干の軍事的成功を享受している。武装の貧弱なフーシ派反政府派が、アラムコ石油処理施設に大損害を与えることができるのなら、一体何が彼らが国王宮殿をミサイル攻撃するのを阻止しているのだろう? 皇太子の要請で、アラブの友人諸国は、小さいカタールとの外交的結びつきを断ち、制裁を課した。だが、これらの行動も彼に栄誉をもたらさなかった。現在ドーハは、トルコとイランとの良い関係を確立し、カタール国民の利益のために、独自の国内、外交政策を進めている。

 ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子の経済政策も成功していない。アラムコ株の一部が売られたが、皇太子が期待した形ではなかった。加えて、現在の安い石油価格が、サウジアラビア国家予算に悪影響を与え、余りに速く準備金を使うよう強いている。サウジアラビア国民は、原油価格が、まだバレル当たり90ドルであるかのようにライフスタイルを楽しみ続けている。サウジ・アラムコの株を売る国際新規公開(IPO)の決定は、王国が財政難に直面していることから生じたものだ。結局、サルマーン国王は、サウジアラビアが、石油生産を、(石油輸出国機構+で合意した削減に加えて)更に167,000バレル削減し、日産1014.4万バレルに減らす命令を出すことを強いられた。だが、このような法令は、サウジアラビアは、しばしば計画された日産量を超えるので、国の実際の石油生産レベルには、ごくわずかしか影響を与えない。結局、国々の予算の多くが原油販売収益に強く依存している多くの石油輸出国機構メンバーの見地からは、これは合理的な決定だった。例えば、サウジアラビアは、予算を均衡させるためには、ブレント原油のコストを1バレル90ドルに留めておく必要があり、この価格のからの、いかなる低下も、比較的わずかな輸出量の減少より、国家経済への遥かに大きな損害をもたらす。これら全ての進展に対して、カイロを本拠とする新聞アル・アハラムは、不運な皇太子を権力の座に戻さないことが、全てのサウジアラビア人にとって、ためになるだろうと書いた。

 ビクトル・ミーヒンはロシア科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2020/03/02/saudi-arabia-and-its-future/

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 「殿、ご乱心」で、是正措置が発動しているのだろうか。益々乱心暴走している狂気集団もいる。

 LITERA

安倍政権がコロナ対応よりも言論弾圧に必死!『モーニングショー』や岡田晴恵教授を標的、デマと詐術を駆使して批判を封じ込め

安倍政権と内調の闇を暴いた映画『新聞記者』が日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞する快挙! 主演女優賞、主演男優賞も

 まさか、受賞することはないだろうと思っていた。まっとうな判断。

 岩波書店の月刊誌『世界』4月号 実に、読みでがある。まず拝読したのは下記二編。

 メディア批評 第148回 
 (1)コロナウイルスだけでない感染列島
 (2)官邸番記者たちの望月批判──得をするのは誰か

 金子勝「もし君が首相になりたいと言うならば」

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