アメリカが現在の危機に対処できない理由
2020年3月17日
ロバート・ライシュ
Truthdig
国立アレルギー感染病研究所所長で、コロナウイルスについて真実を語ってくれると信頼できるほぼ唯一のトランプ政権当局者アンソニー・ファウチ博士が、先週木曜こう述べた。「体制は我々がまさに必要とするものに対応していない。それは破綻しつつある。それを認めよう。」
その一方、より基本的なことを認めよう。体制は、多少有能な大統領の下でさえ、破綻するはずだ。間もなく全員に明らかになる、みっともない秘密は、アメリカには、本当の公的医療制度がないことだ。
先週金曜、下院民主党とホワイトハウスが打ち出した緊急経済対策は、私が説明するように不十分ながら、多少は役に立つかもしれない。
アメリカでのコロナウイルス大発生は、中国武漢で最初に見せた急激な増加の道を辿るから、蔓延を遅らせるための途方もない規模の措置が実施される前に、アメリカは、ほとんどそれに対処する公的能力がない事実に目覚めつつある。
アメリカには、公的医療のかわりに、支払う余裕がある幸運な人々に対する民間営利保険と、定職についている幸運な人々に対するオンボロ社会保険がある。
両システムは、よくてせいぜい、大衆全体の必要ではなく、個人の必要に対応する。アメリカでは、「公」という単語は、公的医療や公教育や公共福祉などのように、公共の利益ではなく、個々のニーズの総計を意味している。
アメリカ金融制度と比較願いたい。連邦準備銀行は金融市場全体の健康に配慮している。先週末、取り引きが困難だという実にわずかな兆候で、連邦準備銀行は、1.5兆ドル銀行に投入した。誰もまばたき一つしなかった。
国全体の医療の話になると、このような金は使えない。大衆の医療を監督、管理する責任を負って、金融ではなく人間の破滅防ぐため、即座に大金を支払う連邦準備銀行に対応する組織は存在しない。
たとえCovid-19ウイルスの検査方法が、間に合うよう開発され、承認されたにせよ、何千万人ものアメリカ人に、無料で実施する組織はない。National Association of County and City Health Officials(全米郡市保健所協会?)によれば、2008年以来、地方や州の保健所は、労働力のほぼ4分の1を失い、既にぎりぎりに減っている。
金融機関と違って、アメリカ医療は、主に、余力を維持することを要求されない民間営利企業が提供している。結果的に、アメリカの人工呼吸器は、自分で呼吸できない重態コロナウイルス患者の推定人数に対応する十分な数がない。45,000の集中治療室ベッドは、必要とされる可能性が高い290万床には惨めなくらい不足だ。
連邦準備銀行は金融危機から隔離するため銀行閉鎖できるが、アメリカ社会保険制度がうまく行くには人々が働くのに依存しているので、アメリカは仕事場を閉鎖できない。
収入が1時間10.49ドル以下の低収入労働者の70%を含め、アメリカ労働者のほぼ30%が、有給病気休暇がない。膨大な数の自営業者は病気休暇をとる余裕がない。金曜日、下院民主党とホワイトハウスが合意した経済法案は、大手企業には適用せず、小企業を免責するから、たいした効果はないだろう。
大半の失業中のアメリカ人は安定した仕事で十分長い間働いていないという理由で失業保険資格がなく、経済対策法案ではこれは変わらない。一方3000万人以上のアメリカ人は健康保険がない。州運営の低所得者向け医療費補助制度メディケイド資格や食料配給券や他の生活保護は今仕事についているか、積極的に探していることに関連づけられている。
大半の共働き夫婦が保育費を支払う余裕がないので、公立学校閉鎖は困難だ。多くのかわいそうな子供たちが、一日の唯一のしっかりした食事を学校の昼食に頼っている。ロサンゼルスでは、学生の約80%が、無料か割引ランチの資格があり、学年のある時点で、20,000人以下がホームレスだ。
要するに、世界で最も金持ちの国は、国防を別として、国民全員を守る能力がないため、アメリカには公的医療制度がないのだ。下院民主党とホワイトハウスが金曜に作った臨時経済対策は、何もないよりましだが、この空白を満たすにはほど遠い。
記事原文のurl:https://www.truthdig.com/articles/why-america-cant-respond-to-the-current-crisis/
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クリス・ヘッジズ氏の記事を毎回楽しみにしていたが、Truthdig、当面閉鎖するようだ。ポップアップ・インドウに、下記のような趣旨のメッセージが表示される。
Truthdigは、さほど長期ではないと願っているが、中断する。受賞した15年の独立ジャーナリズムのアーカイブは無料で利用可能だ。より深い、より強力な献身で、正直な信用できる報道と分析を再開する予定だ。
元気で、大事をとり、お互いに気を配ろう。
長い茶番が終わったので、夕方4時27分から、参院予算委国会中継、音声を出している。質問はまともだが、森羅万象・魚の頭回答が酷い。聞くに堪えない貧弱さ。そういえば、最近おさななじみの自民党支持者飲み会から、お呼びがかからなくなった。親しい知人に言ったら、笑いながら「それは良かったな」。そう、時間と費用の無駄が消えた。彼らとつきあう時間分、記事翻訳かなりはかどる。
まともなジャーナリストもおられるのだと、下記記事を読んで思う。
LITERA
「TPPとTTIP“自由市場”“貿易”協定、アメリカ上院により承認: アメリカの“ニュース”メディアは、いかにしてアメリカの民主主義を殺したのか」の末尾に書いた文章を、この経済学者の文章翻訳記事の機会に、しつこく繰り返そう。出典がかなり古い本のため、容易には読めないので。
なぜアメリカほどの国で健康保険制度がしけないのかといえば、資本主義が進んだアメリカでは、資本主義が進みすぎて利益のあがる部面にはどこでも資本が進出して、医療保険もその対象になってしまったためである。だから、新しく社会保障として、国家や労働組合が健康保険制度をしくとなると、この保険会社の現存の利益に抵触する。アメリカは、資本主義をたてまえとし、世界におけるそのチャンピオンであり、擁護者である。だから、資本の利益をそこなうことはできない。そこなうような制度は、アカであり危険思想だということになっているから。
日本は逆である。資本主義がおくれていた。だから、健康保険を政府がつくろうがどうしょうが、会社の反対は生まれない。むしろ、それによって病気がなおされ、寿命が延びれば、生命保険会社にとっては得である。各会社は社員のために進んでこの制度に協力した。私の先輩がヨーロッパへの飛行機の中で歯が痛みだして、飛行場につくやいなや医者にかかった。そして歯槽膿漏の手当てを受け、日本の金にして金四千円也を払った。しかし、帰国後、この治療費は、日本の健康保険によってほとんど全額支払われた。日本の健康保険はかなりの程度大衆の利益を守っている。日本は後進国であった。そのために、医療費の面では先進国になっている。
この医療についての文章の出典は『経済学入門』伊東光晴著 1962年11月刊 カッパ・ブックス 第8章 後進国が先に進むナゾ 229-240ページ アメリカの医療制度は日本に劣る
『アベノミクス批判 四本の矢を折る』も彼の著書。
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