オマーンの老国王は崩御したが、新国王が連続性を保証するだろう
2020年2月6日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook
オマーンのカブース・ビン・サイード国王が79歳で崩御した。彼は湾岸で最も長く勤めた君主だった。24時間以内に、彼の遺言の封筒が開けられ、新国王が発表され、王族評議会の前で宣誓した。
彼の名はハイサム・ビン・タリク・アル・サイードで、彼は前国王のいとこで、オマーン国の遺産・文化大臣だ。
それが、東京でマスコミに報じられる前に、私は友人の国際連合教育科学文化機関ユネスコのアラブ地域責任者で、レバノンとシリア特使のハメド・アルハマミ博士からこのニュースを聞いた。我々は、私の「レバノン時代」から、お互い良く知っているのだが、今回彼は、日本政府とより親密な協力関係を深め、イエメンとシリアに対する支援に署名するために、わずか数日間、来日していたのだ。
オーマン人のアルハマミ博士は新国王の良い友人だ。
我々は、東京の北にある古い世界遺産、日光に向けて一緒に出発するところだったが、その時私は彼の目に涙が浮かんでいるのに気が付いたのだ。彼が説明してくれた。
「国王は何年も不治の病を患った後、オマーンで崩御しました。彼は国で最も重要な人でした。彼はオマーンの全てを変えました。私が子供だった頃、我々は一足のくつを買う余裕さえありませんでした。今オマーン国民は無料教育と医療を享受し、20歳の男女は、国から600平方メートルの土地をもらう権利を持っています。」
少なくとも理論上、サウジアラビアやバーレーンほど裕福ではないオマーン訪問中に、私は両国でのような窮状は目にしなかった。オマーンは、ひどく分裂したイエメンの両地域と同様、シーア派のシリアとイランの友人に対しても寛大な国だ。オマーンは全てのアラブ諸国に敬意を払われ、近隣諸国と紛争がない「独特な」異なった湾岸国家だ。
欧米とその湾岸同盟諸国が仕掛けたシリアでの苦い戦争中ずっと、オマーンは、ダマスカスにおいて外交代表を維持していた。オマーンは定期便をイエメンに飛ばして、負傷者や病人をマスカットに連れて来て、彼らが、もちろん無料で、最良の医療施設で治療するようにしていた。ホワイトハウスが地域で軍事衝突をあおる中、マスカットとテヘラン間の関係は今も良い。
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オマーンは、北京と東京いずれとも、非常に良い関係を維持している。
アルハマミ博士は、アラブ地域ユネスコと日本間の協力を強化するため、特にシリアとイエメン両方で教育部門を支援するために来日した。
彼の日本訪問中、たまたまオマーン国王が崩御し、新国王が権力を継承したのだ。
列車での旅の間に、ハメドは私に詳細に説明してくれた。
「前国王は、国民に焦点を当てて、国を貧困から引き上げ、教養を身につけた健康な国民と共に国を近代化して、発展させました。教育は最高レベルまで全て無料で、学生は最高300米ドルまでの毎月の奨学金さえ受けます。」
医療保険制度も無料です。一次医療に注力するセンターがあり、より複雑な病気の場合、患者は他の病院に紹介されます。」
ハメド・アルハマミ博士は、かつてオマーンの教育部門で働いていた。
「前国王は、教育には特に陣頭指揮を執られました。私が文科省教育課程局長だった頃は、教科書についての彼の意見がかかれた手書きメモを良く受けとったものです。」
まるでアラブ風社会主義のようではないか? おそらく、そうだろうが、それが実際そうであっても、中東では、そうは呼ばれないのだが。
古い美しい普通列車が山を登り、ユネスコで保護されている世界文化・環境遺産の日光に向かう中、ハメドは前国王の偉大な業績を列記するのをやめられるなかった。
「貧しい学生にとって、状況は劇的に改善しました。彼らは政府資金で私立大学に入学でき、政府奨学金の受給資格もあります。」
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そして今? カブース国王には子供がいなかった。それで、高齢の君主が亡くなる前に、ハイサム・ビン・タリク・アル・サイードが精選されていたのだ。
オマーンとその支配者は、特に最近、文化に取りつかれていた。現地のもの、アラブのもの、外国のもの。マスカットの新しい豪華なオペラ劇場と新しい優雅な博物館は、その明白な証拠だ。ハイサム・ビン・タリクという選択は、それゆえ論理的だった。
地域の不穏な海の中での文化と調和。中東は燃えているが、オマーンは少なくとも今のところ穏やかなように思われる。
私は、今、近い将来、何が起きると予想しているかハメドに尋ねた。
さほどのためらいもなしに彼は答えた。
「対外的には、前国王は、非干渉対外政策を行いました。オマーンはこの地域の他のあらゆる国々との良い関係を維持しています。彼は、パレスチナ、イエメンとシリアに細心の注意を払い、物質的支援と政策的助言の両方を国や民族に提供しました。私はオマーンは、しっかり前国王が設定した道筋を進むと期待しています。」
そして、何かユネスコの精神に近いものを。
「新国王は元遺産・文化大臣で、文化修復の仕事のためシリアとの協力に署名するのに尽力しました。」
湾岸でおそらく最も安定した国オマーンは半世紀間支配した尊敬された国王を失った。だがオマーンは、もう一人の賢明な君主を得た。称賛に値する連続性が静かに保証されたように思われる。
Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者、調査ジャーナリスト。彼はVltchek’s World in Word and Imagesの創作者で、China and Ecological Civilizationを含め、多くの本を書いている作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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一般教書演説に、とんでもない目玉ゲスト。本当に大本営広報部の洗脳痴呆番組顔負け。正気の世界と思えない。
植草一秀の『知られざる真実』
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コメント
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トランプ大統領は一般教書演説で、「米国は戦争を終え、兵士を帰還させる。」と宣言したそうですが・・・・・
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投稿: 和久希世 | 2020年2月10日 (月) 13時58分