« もう一つの戦争にワシントンを押しやるイスラエル | トップページ | ポンペオ:アメリカ新政策はロシアや中国の指導者に対する無人機攻撃を認可 »

2020年1月24日 (金)

米軍支配の終わり:意図しない結果が多極世界秩序を作り出す

Federico Pieraccini
2020年1月20日
Strategic Culture Foundation

 ジョージ・W・ブッシュ大統領から始まり、トランプに至るまで、アメリカは世界戦略上重要な地域での影響力だけでなく、戦力を投射して、適切に追従するのを好まない人々に意志を押し付ける能力を減らす、いくつかの失策をしてきた。

 近年の若干の例が、一連の戦略上の過ちが、どのようにアメリカ覇権凋落を速めるだけか示すのに十分だ。

 ABM + INF = 極超音速の優位

 核武装した朝鮮民主主義人民共和国と地域の新進覇権国イランを含む、対決すべき「悪の枢軸」を宣言しながらの、2001年9月11日事件後、アフガニスタン侵略という決定は、アメリカを悩ませている最も重要な戦略問題の多くの理由だと言える。

 アメリカはしばしば、当面の短期的脅迫に焦点を合わせることで、中期的、長期的目的を隠すことを好んでいる。それで、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)からのアメリカ離脱と、NATOミサイル防衛システムの一部としての(海上と陸上用)イージス戦闘システム展開は、イラン弾道ミサイルの脅威からヨーロッパの同盟諸国防衛が目的だと説明された。イランがこのようなミサイルを発射する能力も意図も持っていなかったから、この主張は、ほとんど無理筋だった。

 大半の独立評論家たちにも、プーチン大統領にも明確だったように、そんな攻撃用システムの配備は、ロシア連邦の核抑止力能力を無効にすることだけが目的だった。オバマとトランプは、ジョージ・W・ブッシュの例に忠実に倣って、ルーマニアとポーランドを含め、ロシア国境にABMシステムを配備した。

 中距離核戦力条約(INF条約)を離脱するトランプの重大な決定に続いて、新START(戦略兵器削減条約)も放棄される可能性が高く、核拡散に関し世界を一層不安定にする。

 モスクワは戦略バランスを復活させる新兵器開発のために全力を尽くすことを強いられ、2018年、演説で、プーチンが、ワシントンの先制攻撃妄想を正すのに役立つ極超音速兵器や他の技術的大躍進導入を世界に明らかにした。

 ワシントンのプロパガンダが、これら技術上の躍進に引き起こされた世界的なチェス盤上の構造転換を認めるのを拒否しているが、冷静な軍事評価は、ゲームが根本的に変化したことを認めている。

 この「恐怖の均衡」が存在する限り、核兵器が決して使われないことを保証するのに役立つ相互確証破壊(MAD)の抑止力理論を復活させるのに役立つアバンガルド 極超音速滑空体のようなロシア・システムに対して防衛はできない。モスクワはそれで、ワシントン自慢のABMシステムに対し、衝撃的核報復攻撃が可能なことを示して、力を通して平和を保証することが可能になる。

 核報復能力を保証することに加えて、ロシアはワシントンの侵略をかわすため、世界で最も先進的なABMシステム開発を強いられた。このABMシステムは、パンツィル、トール、ブク、S-400や、まもなく、破壊的なS-500や、A-235ミサイル・システムを含む防衛ネットワークと統合されている。この結合されたシステムは、ICBMや、将来のどのアメリカ極超音速兵器も迎撃するよう設計されている。

 ジョージ・W・ブッシュや、オバマやトランプが推進した侵略戦争は、ロシアと中国に対して、アメリカを核劣勢の立場に置くことになっただけだ。モスクワは明らかに、戦略的パートナーと技術革新の若干を共有し、北京に、ロシアのS-400のようなABMシステムや、極超音速兵器保有を可能にしている。

 JCPOAはなし? 核保有イラン登場

 イランに対して科されている継続的な経済的、軍事的圧力に加えて、(イラン核合意として、より良く知られているJCPOA)共同包括行動計画からのアメリカ離脱の最も早い結果の一つは、テヘランが全ての選択肢の検討を強いられたことだった。イランの指導部や政界実力者が常に、イスラム法に禁じられていると述べて、核兵器開発を望んでいないと主張してきたが、彼らのとって最良の行動方針は、平壌の例に従って、自身をアメリカ侵略から守るため、核抑止力を獲得することだろうと私は思う。

 私の提案は、イラン・イスラム共和国指導部の意図とは一致しないかもしれないが、朝鮮民主主義人民共和国が、抑止能力を得た結果、享受している、アメリカに対する防衛能力が、イラン指導部に、それに倣うことの良い点と悪い点を慎重に検討するよう強いて、おそらく、核兵器保有を確認も否定もしない、核のあいまい性、あるいは核の不透明性というイスラエルの姿勢を採用することになるだろう。核兵器のない世界が理想的だが、朝鮮民主主義人民共和国の経験が証明する通り、核兵器の抑止力の価値は否定できない。

 イランは戦争を望んでいないが、どのような核兵器の追求も中東での大火を保証しかねない。だが、特に多極環境では、核兵器は不安定化というより、むしろ安定化効果を持っており(核兵器を手に入れた後の)核戦争の危険はないと私はずっと主張してきた。

 またしてもワシントンは、うかつにも、地政学上の敵の一つに、狙いと逆の方向で振る舞うよう奨励して墓穴を掘ることになった。アメリカは、地域での核拡散を止めるどころか、JCPOAをぶち壊し、核拡散の可能性を推進しただけだ。

 JCPOA離脱というトランプの先見の明のなさは、ジョージ・W・ブッシュのABM条約離脱を思い出させる。ワシントンの動きは、モスクワとテヘランの当然の対応を引き起こし、特定の重要な分野で、競争相手に対して、不利になるだけで終わった。

 アメリカの無敵神話に穴を開けたソレイマーニーの死

 ソレイマーニー司令官死後、私は事件を検討し、出来事の地域に対する深遠な波及効果を考える二つの記事を書いた。

 明白に思えるのは、ワシントンがその無謀な動きの結果を正当に評価する能力がないように見えることだ。ソレイマーニー殺害がイランの反撃を招くのは確実だった。たとえ我々がトランプが戦争を求めていなかったと想定しても(数カ月前に私はその理由を説明した)、アメリカのテロ行為に、イランが反撃するのは、どんな観察者にも明白だった。

 反撃は、数日後に行われ、第二世界大戦後初めて、米軍基地が(弾頭火薬700キログラムの22発の)ミサイルの雨を浴びせられた。テヘランは、そう望めば、アメリカがそれを止めることができない、アメリカと同盟諸国の人員を何千人も、数分以内に壊滅させるのに必要な専門的な、作戦上、戦略上の手段を持っていることを示したのだ。

 アメリカ・パトリオット防空システムは、数カ月前、フーシ派によるミサイル攻撃に対し、サウジアラビアの石油・ガス施設を防衛しそこねた失敗をまたもや繰り返し、仕事をし損ねた。

 我々は、わずか数カ月で、フーシ派や、ヒズボラやイラン・ミサイルなどから自軍や同盟国を防衛する能力がアメリカにないのを確認した。トランプや将官は、どんなイランの反撃も、制御できない地域の大火を引き起こし、米軍基地や、石油インフラや、テルアビブ、ハイファやドバイのようなアメリカ同盟国の都市にも壊滅的打撃を与えるのを知っていて、イラン・ミサイル攻撃への反撃には気が進まなかったのだろう。

 地域のアメリカ同盟諸国が、フーシ派のような連中のミサイル攻撃にさえ無防備なのを世界に証明した後、イランは、二つの米軍基地に多層ミサイル攻撃のピンポイント攻撃で、米軍は無敵だという認識と現実とのずれを強調して核心を突いたのだ。

結論

 近年のワシントンの外交的、軍事的決定は、アメリカの命令を受け入れる気を益々なくし、ワシントンのいじめに対処するため、軍事的手段を獲得するよう追い込んで、ワシントンに一層敵対的な世界をもたらしただけだ。アメリカは最大の軍事大国であり続けてはいるが、アメリカの愚かさから、一部の重要な分野で、ロシアと中国が、アメリカを上回る結果になり、核報復攻撃に対し、自身を防衛する可能性さえなく、イランさえ、アメリカに成功裏に報復する手段を持つ状態になっている。

 私が主張し続けているように、ワシントンの権力は、主にハリウッドの空想の世界が助けてくれる認識管理のおかげなのだ。最近のフーシ派によるサウジアラビア石油施設へのミサイル攻撃や、数日前のイランによるイラク内の米軍基地へのミサイル攻撃(一発も迎撃されなかった)は、ワシントンの軍事的脆弱性を明らかにするためにカーテンを開けたオズの魔法使いに登場する犬のトトのようなものだ。カーテンの背後の男に注意を払わないワシントンが、いくら懇願しても、役には立つまい。

 アメリカが攻撃的になればなるほど、益々その戦術的、作戦的、戦略的限界が明らかになり、覇権喪失を加速するのに役立つに過ぎない。

 もしアメリカがそのABMシステムのおかげで、報復核攻撃を心配する必要なしで核先制攻撃ができれば、絶え間ない一極覇権追求は現実的であり得るかも知れない。だがワシントンの競争相手は、阻止できない報復核攻撃が可能で、核先制攻撃に対し、自身を防衛する手段を持っていることを示して、相互確証破壊(MAD)の原理が有効であると伝えたのだ。だから、争う相手がいない世界的覇権国という立場を維持しようとするワシントンの努力は徒労なのだ。

 アメリカ権益にとって極めて重要な地域で、ワシントンはシリア解放を阻止する作戦能力を持っていない。ワシントンが、軍事的に直接その意志を押しつけようと試みた際、ワシントンのハリウッド・プロパガンダと厳しい軍事的現実の相違を再度強調して、巡航ミサイルの約80%が、迎撃されたり、かわされたりした

 ジョージ・W・ブッシュや、オバマや、トランプの行動は、一極世界から離れ、多極世界へと向かう世界の移行を促進するのに、うかつにも役立っただけだ。トランプが、前任者を見習って、イランに対して攻撃的になるにつれ、アメリカの世界的な立場を弱め、敵を強くするのに役立つだけだ。

 Federico Pieracciniは独立フリーランス・ライターで、国際問題、紛争、政治と戦略が専門。

 個々の寄稿者の意見は、必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2020/01/20/the-end-of-us-military-dominance-unintended-consequences-forge-multipolar-world-order/

----------

 どういう精神構造なのだろう?そういう人物を擁護する政党の支持者が一番多い国民とは、どういう精神構造なのだろう?

野党「自民・杉田水脈氏がヤジ」 夫婦別姓巡り 事実確認要求

 国会中継、今日は、興味深い質問があるだろうか?

« もう一つの戦争にワシントンを押しやるイスラエル | トップページ | ポンペオ:アメリカ新政策はロシアや中国の指導者に対する無人機攻撃を認可 »

イラン」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

サウジアラビア・湾岸諸国」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« もう一つの戦争にワシントンを押しやるイスラエル | トップページ | ポンペオ:アメリカ新政策はロシアや中国の指導者に対する無人機攻撃を認可 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ