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2020年1月12日 (日)

イラク議会決定にもかかわらず、アメリカは、なぜ撤退しないのか?

2020年1月10日
ピーター・ケーニッヒのSakerブログ寄稿
The Saker

 なぜアメリカは、イラク議会の決定に敬意を払って、イラク領土から撤退しないのだろう。簡単に言えば、アメリカは、アメリカの狙いに合致しない限り、どんな国の決断にも主権にも敬意を払わないためだ。

 今、アメリカは断固地域を去るまい。既にアサド大統領は、アメリカがシリア領土を撤退するよう要請している。アメリカは撤退していない。アメリカにとってリスクは実に巨大だ。全て、領土と金融、つまり米ドルにより世界覇権を目指すアメリカの動きだ。

 イランとの紛争は終わっていない。決して。我々は、再編成し、その後に紛争を継続し、エスカレートするための中休みを経験しているに過ぎないのだ。イラクの米軍基地と現在兵士5,000人の軍事駐留は、イランに対して最も便利な戦力だ。

 中東の豊かな、戦略的に大いに重要な地域を支配は、世界覇権のための重要なステップであることに加え、この地域におけるアメリカ常駐は、軍需産業のための利益と、炭化水素の価格と支配、特にガスとも関係があるのだ。

 ガーセム・ソレイマーニー司令官の卑怯な暗殺直後、軍需産業の株価が、もちろん熱い戦争と膨大な兵器販売を期待して、急上昇するのを我々は目にした。軍需産業は非常識にも、殺戮から利益を得るのだ。戦争と紛争は益々、欧米経済を駆動源となった。既にアメリカでは、軍需産業と関連産業とサービスが、アメリカGDPの約半分を占めている。戦争抜きのアメリカ経済は考えられない。そのために、中東は永遠戦争の完ぺきな現場で、欧米にとって必須要件なのだ。戦争は中毒性だ。欧米経済は既に中毒になっている。だが大半の人々は、まだそれを理解していない。繰り返しや新たに起きる紛争や戦争は不可欠なのだ。もしアメリカが中東を去れば、平和になるかもしれないのを想像願いたい。これは許せない。読者が欧米に住んでおられるなら、間もなく、あなたの仕事は戦争に依存するようになるかも知れない。

 そしてイラン・ガスだ。戦争を含め、世界経済を駆動する全てのエネルギー消費量の20%から25%が、毎日、イランが支配するホルムズ湾を通過している。ソレイマーニー司令官の非道な暗殺直後、石油とガスの価格は4%急上昇したが、再び下落した。これは、イランがガス生産を減らすか、ホルムズ海峡を封鎖する大規模紛争を期待したものだった。どちらの場合も世界経済の破たんの可能性は排除できなかった。

 世界がこの極悪非道なエネルギー源炭化水素から自身を解放し、産業と活動を動かす他のより安く、より清浄で、より自由な動力源への転換が絶対必要だ。毎日地球が全大陸で産業や創造的活動に必要な量の10,000倍以上得ている太陽エネルギーのようなものに。

 何兆ドルもかけながら、ぶざまな水圧破砕抽出業界を抱え、ノルドストリーム2と開通したばかりのトルコストリーム経由のロシア・ガスのおかげで、ヨーロッパ市場を得損ねたアメリカは、高額債務をかかえた水圧破砕採掘業界を復活させるため、炭化水素価格支配を望んでいるのだ。カタールとガス田を共有する膨大なイラン・ガス埋蔵量を支配するより良い方法があるだろうか?

 だがイランと中国間の緊密な協力がある。中国はイラン・ガスの最大顧客だ。中国はワシントンから、最大の競争相手と見なされており、中国の経済を繁栄させるエネルギー入手を阻止するのは、アメリカの極悪非道な狙いの一つだ。アメリカは平等な条件では競争できない。不正行為、ウソ、市場操作は、アメリカと、西欧の、部分になった彼らの生活様式の一部になっている。それは欧米の歴史と文化に深く染み込んでいる。

 もちろん、中国に必要とする炭化水素を供給する他の方法はある。世界最大のガス埋蔵国ロシアは、容易にガス供給を増やすことができるはずだ。

 要するに、一部の将軍、一部の国防総省幹部さえ、光明を見ており、光明は、戦争ではなく平和で、撤退が最も賢明なことだと考えているのだが、アメリカが中東を去る可能性はありそうにない。
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 イラクから、そして最終的には、この地域から、アメリカを撤退させるため、イラクは一体何をすることができるだろう? 結局、イラク議会は、外国兵隊なしで、イラクの主権と自治を取り戻すと、過半数で決定した。イラクに軍隊配備している大半の国々はその決定を尊重している。デンマーク、オーストラリア、ポーランド、ドイツはイラクから軍隊撤退の準備をしている。800人の兵士を配備しているイギリスだけが、アメリカと共に留まると決めている。

 イラクは、ロシアと中国との協力を強化して、アメリカ撤退というイラクの主権要求を尊重するよう、アメリカに対する圧力を増そうと望んでいるかもしれない。撤退が実現するとして、一体いつまでかかるのかは、答えるのが困難な疑問だ。‘決して’そうならないかも知れない。欧米経済に関する米ドル覇権が破綻しない限りは。今の所、西欧世界が益々経済の非ドル化方向を探り、通貨の非ドル化が急速に進んでいる中国とロシアに率いられる東方との交流を増そうとするなか、世界経済におけるドルの役割の大きな下降傾向が現れている。

 そうなった時、世界の国々に命令していたアメリカは口がきけなくなり、誰も言うことを聞かなくなり、ワシントンは未来を再考せざるを得なくなり、アメリカの中東駐留が過去の歴史となる可能性はかなり高そうだ。

 Peter Koenigは経済学者、地政学専門家。彼は水資源と環境専門家でもある。彼は30年以上、世界銀行や世界保健機関で、世界中で、環境と水資源について広範囲に働いた。彼はアメリカ、ヨーロッパや南米の大学で講義している。彼は、Global Research、ICH、RT、Sputnik News、PressTV; The 21st Century、Defend Democracy Press、Greanville Post、TeleSur、The Vineyard of The Saker Blog、New Eastern Outlook(NEO)や他のインターネット・サイトに良く寄稿している。彼は事実と世界銀行での世界中での30年間という経験に基づいたフィクション「Implosion - An Economic Thriller about War、Environmental Destruction and Corporate Greed」の著者でもある。彼は「The World Order and Revolution! - Essays from the Resistance」の共著者でもある。ピーター・ケーニッヒはグローバリゼーション研究センターCentre for Research on Globalization研究員。

記事原文のurl:https://thesaker.is/iraq-why-doesnt-the-us-move-out-despite-the-iraqi-parliaments-decision/

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 昨日夕方、急に、友人からの呼びかけ、新年会?で飲みにでかけ、インタビューは残念ながら拝聴しそこねた。友人、まったく当ブログを読んでいない。終始、日本のマスコミのひどさを主張する。韓国問題では、意見が合わないが、派兵問題では、ほぼ一致。「マスコミがまともなら、この大問題、是非を朝から晩まで、論じているはずだ。」と友人。「哨戒機、わざわざ攻撃してくださいと、でかけるのと同じではないか。」とも。

日刊IWJガイド「昨日は岩上安身による怒涛のインタビュー第3弾として、放送大学高橋和夫名誉教授に、急変するイラン情勢についてうかがいました!」2020.1.12日号~No.2677号

 IWJガイドの、インタビュー関連部分をコピーさせて頂こう。

昨日のインタビューで高橋氏は、今回の米国とイランの危機について、「喉元は過ぎたがまだ熱さは忘れてはいけない」と強調。「イランとアメリカの対立の基本的な構造は変わっていない事実があるために、これが変わらない限り危機は残っている」と戒めました。

 高橋氏は、トランプ政権がイランを巡る核合意を破棄するといった強硬な姿勢を取ったことで、イランが核兵器開発に進むなら、イスラエルとイランの緊張が深刻に高まる恐れがあると述べました。

 高橋氏には、今回の危機に2020年の米国の大統領選、イスラエル、中国・ロシアがどのように関わっているのかという背景についてもお話をお聞きしました。米国とイランの対立が一時的に「小休止」状態となっても、「陰の主役」ともいうべきイスラエルは、黙ってこのまま時が過ぎてゆくのを座視したりはしないでしょう。イランに核武装する猶予を与えてしまうと恐れているからです。イスラエルとしては、イランに対して先制攻撃をかけ、核開発できない状態に追い込みたい。しかし、イランのミサイルの精度がきわめて高いとわかった以上、相当な覚悟をしないと手を出せない。米軍に片づけてもらおうと期待していたのに、望み薄となってしまった現状で、イスラエルはどう動くのか。目が離せません。

 核戦争まで視野におさめた上で、米国とイランの対立を考えるとき、米国市民の意識を調査した「イランの中のヒロシマ再訪」という、日本人にとっても見過ごせない検証レポートをIWJは翻訳し紹介しています。

 これから「イランの中のヒロシマ再訪」を拝読する。

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