韓国は、駐留アメリカ軍に対し、進んで5倍支払うつもりはない
2019年12月15日
コンスタンチン・アスモロフ
New Eastern Outlook
現在のソウルとワシントン間関係は問題で悩まされているが、最近韓国駐留米軍の経費が最も喫緊の話題になった。だが韓国でこれらの緊張高まりは、特にかなり長く続いている日本と論争に関し自主的外交路線を進めようという文在寅の試みとつながっている。
アメリカ軍は実に長年韓国に配備されており、米軍駐留は安全保障だと見なされている。だが韓国が米軍の援助を大いに必要とした時期は過ぎて久しい。現在、朝鮮民主主義人民共和国が、世界で(規模の点で)四番目に大きい軍隊で、韓国は順位では、六番目あるいは七番目の地位にあるが、ソウルは軍事支出で、平壌と比べて25倍使っている。
現在の環境で、朝鮮民主主義人民共和国による韓国侵略、あるいは朝鮮戦争再現の可能性はほとんどない。ドナルド・トランプのやり方が、この問題を更に複雑にしている。米大統領は米軍による支援で、韓国の平和と安全を保障するのは、アメリカ合州国にとって安くはなく、大韓民国のような豊かな国は更に多く支払うべきだと信じている。
アメリカは日本(と韓国)を含め、NATO諸国が軍事支出を増やすよう要求している。
2018年、アメリカ合州国と韓国はこの問題に関して交渉した。会談は部分的に成功した。ソウルは前年比で8.2%多く(正確には、9億9000万ドル、つまり前年とほぼ同じで)支払うことに同意した。だがアメリカ合州国は、本来12.5億ドル、交渉前に支払われていたものの合計(8億6000万ドルと等しい)の1.5倍の金額を支払うことを要求していた。会談の終わりに署名された合意は、5年ではなく、1年に対するもので、早くも2019年春に、アメリカ政権は、それ以降の年にはソウルが一層多く支払う交渉を始めた。
2019年7月末に始まって、アメリカ合州国が韓国に防衛に対する支出を50億ドルまで増やすよう要求するという話があった。韓国マスコミさえ、ソウルの貢献は、大幅に増大することは大いにありそうだと報道し始めた。韓国の想定は、この問題は、軍隊の韓国配備に、いくら経費がかかるかというアメリカ見積もりと関連しているということだ。アメリカ国防省は(2019年3月時点で)2020年9月30日に終わる会計年度で、軍隊や他の不可欠な人員と彼らの家族を韓国に配備するのに44.6億ドル経費がかかると推計した。2019年会計年度、経費は44.3億ドル、2018年は、43.2億ドルだった。
8月8日、ドナルド・トランプは、朝鮮民主主義人民共和国による脅威からソウルを守るため、ワシントンに、これまでよりかなり大きな額を支払うことに同意したとツイッターに書いた。韓国で、この問題に関して交渉が始まりさえしていなかったから、発表はすぐに疑問視された。結局、アメリカ大統領は、必ずしも現実ではなく、しばしば彼自身の個人的見解を反映した大げさな発言をする癖があるのだ。
8月9日、再びドナルド・トランプは、ソウルとワシントン間で安全保障経費を一層公平に負担するという問題を提起した。アメリカ大統領によれば、アメリカ合州国は経費を埋め合わせる必要があり、それが彼が韓国に言ったことなのだ。アメリカ大統領は、それが信じられないほど高価なので、韓国軍との共同軍事演習を好んだことは一度もなかったとも述べた。
8月12日、再選選挙運動政治資金調達イベントで、ドナルド・トランプは、韓国から10億ドル受け取るのは、ブルックリンの賃貸アパートで、114米ドルの家賃を得るより簡単だったと言った。アメリカ大統領は、「素晴らしいTV番組」を制作し、「繁栄する経済」の国韓国を、アメリカ合州国が、なぜその安全保障で金を使う必要があるかと尋ねた。
韓国の英語メディアが「アメリカのドナルド・トランプ大統領は、韓国はそこから、いくらでも、いつでも金を引き出せる個人的ATMと思っているのだろうか?」という疑問を問うたことで、ソウルは大いに傷ついたように思われた。記事は「アメリカは同盟者と呼ぶ国からできる限り多くの金を吸い上げようとしているように見えるのも憂慮すべきだ」と補足した。コリア・タイムスに掲載された別記事では「経費負担交渉」は、自国防衛のために「アメリカ同盟国はもっと多く支払うべきだというトランプの主張のテスト」であり、「最良のシナリオの一つ」は、「両者間交渉の開始をできるだけ延ばし、可能な限り徹底的に根気よく対話のため準備する」ことだった。
その後まもなく、韓国の報道機関が、外務省や国防省官僚ではなく、企画財政部の鄭恩甫が、アメリカ軍の朝鮮半島配備配置経費負担についての交渉責任者だと報じた。結局、ドナルド・トランプは、来たる会談では、二つの同盟国間の関係よりも、実際的な経済的配慮をより考慮に入れると述べていたのだ。だから、純粋に財政的見地から、今回アメリカ合州国は、共同軍事演習経費を含め、朝鮮半島の安全保障に関する全出費をカバーするため、韓国に48億ドル要求するだろう。どうやら、アメリカがこのような用途にいくら使うかの問題だ。
9月24日、アメリカ軍の韓国配備経費負担に関するアメリカと韓国当局の二日間交渉がソウルで始まった。防衛経費負担に関する10番目の合意をもたらした会談に参加した外務省の張元三(チャン・ウォンサム)は韓国の権益を代表し、交渉相手のジェームズ・デハートは、アメリカの権益を代表した。交渉二日目までに、双方は彼らの交渉上の立場を明らかにしており、韓国マスコミによれば、(彼が言うには)妥当な数値、公正な方法での経費負担が議論の話題でなければならないので、張元三は相手側の条件を受け入れるのを拒否した。張元三はアメリカの交渉相手に、ソウルはワシントンから兵器を購入し、米軍基地建設に対して、大きな財政的貢献をしていることを想起させた。
結局、ジェームズ・デハートと張元三は、公正で最適な解決策に到達するため、会談を続けることに合意した。アメリカが求めた金額についてはメディア報道はなかった。だが、鄭恩甫が次の交渉で、韓国交渉チームのトップになった事実からして、アメリカの要求は相当大きかったに違いない。
10月22日から24日まで、ジェームズ・デハートと鄭恩甫の二度目の協議はハワイで行われたが、一回目と同様、不成功だった。韓国の康京和(カン・ギョンファ)外務大臣は、アメリカ合州国が「遥かに過大な要求ししている」と述べた。彼女は「公正を基礎に契約を更新するという政府の一般見解を繰り返すだけで、交渉の細部に関してはコメントを拒否した」。
それでも、10月28日、会談を良く知っている韓国側代表者が、韓国とアメリカ合州国が、交渉上の立場の差を狭め、双方が受け入れる可能な合意に達する狙いで交渉を続けることに同意したと記者団に語った。だが、この人物は、進展した具体的分野については、いかなる詳細説明も拒否した。
10月31日、ボイス・オブ・アメリカ(VOA、ラジオ放送局)インタビューで、アメリカ合州国上院軍事委員会のジャック・リード上院議員が、アメリカ下院議員が、ドナルド・トランプと彼の政権に、韓国との公正な経費負担の合意を求めるよう要求したと述べた。どうやら、アメリカ指導部は、韓国が朝鮮民主主義人民共和国との紛争解決で、共同の安全保障を確保する上で、大きく貢献し続けている極めて重要な同盟国であるという事実を考慮に入れる必要があったのだ。加えて、韓国は既に京畿道、平沢市のハンフリーズ基地拡張経費のかなりの割合を負担することに同意していた。
その頃には、10月の交渉に関して、より多くの詳細が韓国マスコミに現れ始めた。これら報道によれば、アメリカ合州国は、米軍基地で雇用される韓国労働者の給料や、軍事施設建設や輸送機関の経費だけでなく、韓国に配備するアメリカ軍兵士と彼らの家族を受け入れや、共同軍事演習を展開する費用や、朝鮮半島で、緊張が一時的に高まった場合に備え、アメリカの戦略上の資源を保持する経費も、韓国側が計上するよう要求した。これの総てで年間最高50億ドル増えた。それ故これは(韓国駐留アメリカ軍に関する)米韓地位協定が承認され、発効した際の会談以来、最も厳しい交渉だった。
こうした進展に対し、左翼学生団体のメンバー17人が、アメリカの圧力に抗議するため駐韓アメリカ大使ハリー・B・ハリス公邸に侵入し、韓国与党「共に民主党」は「議会で公正な交渉を要求する決議を呼びかけた」。李仁栄(イ・インヨン)院内代表は「韓国国民の95パーセント以上」がアメリカ合州国に、更に多く払う考えには反対だと述べた。
李仁栄議員は「「非現実的な」アメリカの要求に対し、議会の拒否権を使うと誓った」。その後まもなく、アメリカ合州国・韓国間に、より強い提携が不可欠だという事実で、国会が一致していることを伝えるべく、ホワイトハウス幹部や、アメリカ政府当局者と会うため彼はアメリカに向かった。だが李仁栄訪米は成功しなかった。北朝鮮政策特別代表スティーヴン・ビーガンは国会議員に耳をかたむけ、韓米同盟は「更新される」必要があると応えた。韓国マスコミの見解では、アメリカ当局者の発言は、韓国はアメリカの保護下にあったが、ソウルとワシントンが対等なパートナーになった今、韓国は軍事支出で応分の負担をする必要があるということなのだ。
2019年11月16日、50の市民団体の活動家500人が、「従属的関係を終わらせる」ことを狙って、アメリカ大使館近くでの集会に参加するため街頭に繰り出した。デモ参加者はこう述べた。「半島の平和には無関心なのに、韓米軍事同盟で、韓国に圧力をかけて従わせようとして、アメリカ合州国は、本当の意図を露骨に示している」。
11月19日、ソウルとワシントンが防衛経費を負担する最善の方法について合意し損ねた場合、アメリカ軍が朝鮮半島から撤退するのかどうかに関し、アメリカのマーク・エスパー国防長官は、この疑問に直接答えないことを選んだ。この声明は11月18日から19日まで、ソウルで開催された三回目交渉の時点で出された。不幸にも、双方は合意に至らず、その後別の会議が実際行われ、ジェームズ・デハートが、ワシントンはソウルが「相互信頼に基づいて協力する用意ができた」時に会談を再開したいと述べた。これに答えて、鄭恩甫は、韓国は「平等で公正なガイドラインの下でのみ、加費用を支払うという原則を守る」つもりだと指摘した。
その後、韓国与党、共に民主党の議員が、ある考え方を提案した。交渉で、韓国の間接的な財政貢献を材料として使うのだ。コリア・タイムスの電話インタビューで、国会議員の一人は、ソウルは、多くの分野で、重要な直接貢献と共に、間接的な貢献をしていると述べた。例えば、韓国は、港や鉄道や土地を、米軍が無料で使うことを認めている。2015年時点で、このような出費で、アメリカは3.5兆ウォン節約していた。米軍要員が韓国の港や空港や道路や鉄道を使用する際、ソウルは水道光熱費の支払いを免除したり、割り引いたりして、間接的貢献をしている。
11月19日、米軍を朝鮮半島に配備する来年の経費負担に関する三回目の協議が行われた。議論は二時間以下(ある報道によれば、わずか30分)で、その後、韓国外務省報道官が、交渉は計画通り進まなかったと述べた。彼は実際、アメリカ代表団が一方的に会談を終わらせ、ソウルを去り、アメリカが予定外の記者会見をして、総て韓国のせいにした事実に言及していたのだ。
鄭恩甫によれば、アメリカ側は、防衛に対し、韓国貢献の大幅増加を、それゆえ協定に新条項の付加強く要求した。支払いは、28年間実施されてきた協定の枠組み内で、双方にとって妥当な水準に保たれる必要があると韓国代表団は繰り返した。このような見解の劇的な相違のため、三回目の協議は完全に失敗した。
11月25日、韓国の世論調査会社Realmeterが調査の結果を報告した。68.8%の韓国人が、米軍の駐留を含む(全般的な)防衛に対する韓国の支出増加というアメリカ要求に反対だった。アンケート回答者のわずか22.3%が、ワシントンは朝鮮半島の軍事駐留を減らす可能性があるので、ソウルはアメリカの圧力に屈する必要があると考えている。
11月26日、外交問題評議会(CFR)の朝鮮半島問題専門家スコット・シュナイダーが、防衛経費負担をより公平にすることにまつわる、韓国とアメリカ間の論争は、極めて異例な出来事だと強調した。更なる緊張を引き起こすことで、この意見の相違は、朝鮮民主主義人民共和国との交渉、対中国政策、アメリカの同盟国に対する信頼に影響を与えかねない。会談はドナルド・トランプ政権による不当な要求のために失敗したというのが彼の意見だ。
まさに同じ11月26日、ドナルド・トランプ大統領は、アメリカが金持ちの国々を守るため膨大な金を使っていた、以前の大統領連中は無意味な国際プロジェクトに資金供給するための貯金箱として、中産階級アメリカ人を利用したと再び述べた。
四回目の交渉は、12月4日にアメリカで行われた。会談前、鄭恩甫はアメリカに対する具体的提案の準備について記者団に語り、アメリカ軍を朝鮮半島に配備する経費は公平に負担すべきことを指摘した。ドナルド・トランプも同様に対応し、ソウルとワシントンは、防衛に対して公正な貢献をする必要があると指摘した。
一方、元在韓米軍司令官ウォルター・シャープ大将は大統領の姿勢を批判した。(非営利組織)Korea Economic Institute of Americaが主催したワシントンでのセミナーで、彼は「アメリカは、数ドルのために同盟を破棄すべきではない」と述べた。ウォルター・シャープによれば、ワシントンの全部同盟国の中で、韓国は国内総生産(GDP)と比較して、防衛に対し最大の貢献をしている。アメリカが「韓国との同盟の価値を適切に評価したいなら、評価には、イラクとアフガニスタンでの国連平和維持任務に対するソウルの貢献を含むべきだ」と彼は言った。実際、韓国はイラクでの連合軍に対して、アメリカに次いで二番目に大きな貢献国だったが、韓国軍は軍事行動の一部ではなかった。(後になって、韓国のテレビ・シリーズで彼らの名声を手に入れた。)
懐疑論者が予想する通り、第四回目の交渉も不調だった。次回は12月にソウルで行われる予定だ。
最終「エピソード」を待ち受ける中、筆者はこの悲観的記述で記事を終わらせることにした。それでも現時点では、熱烈な演説にもかかわらず、これ以降の出来事はGSOMIAの道に続くことが想定できる。その後、文在寅大統領は国民に、実際これは指導部の抜け目ない計画のおかげで可能になった大韓民国にとっての外交上の勝利だと説明するだろう。
コンスタンチン・アスモロフは歴史学博士、ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センター主任研究員。オンライン誌“New Eastern Outlook”独占記事。
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某属国の場合、喜んで、みかじめ料であれ、駐留費用であれ、何倍増でも受け入れるだけで、ニュースにもならないだろう。
昨日は日刊IWJガイドに書かれていた「伊藤詩織氏(フリージャーナリスト)民事裁判 判決前インタビュー」を拝見。それから、大本営広報部が、どう扱うか、どう隠蔽するか確認するため、昼の呆導バラエティーを見た。夕方外出するまで。新幹線車内殺傷事件裁判と、ブレーキ・アクセル踏み間違え事故の話題だけ。元TBS記者記者敗訴に一切ふれなかった(と思う。音を消し、翻訳のかたわら、時折ながめていたので、あるいは見落とし、聞き落としているかもしれない。扱ったとしても、ごく短時間だろう。)大本営広報部呆導機関、任務をしっかり果たしているのは確認できた。
LITERAに記事がある。
「詩織さん全面勝訴」で証明された警察・検察のおかしさ! やはり御用記者・山口敬之と安倍政権の関係が逮捕、立件を潰していた
呆導バラエティーが「詩織さん全面勝訴」をスルーするのも納得できそうな御用ランナーの顔ぶれ。
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