イギリスの臣民は支配者に相応しいのだろうか?
2019年12月23日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook
私は絶えずこのような手紙を受け取っている。年々基本的に何度も同じことの繰り返しの手紙だ。「ひどい体制を選挙でやめさせる機会が我々にあれば良いのに!」
このような手紙や電子メールやメッセージは、イギリスやアメリカ合州国から同じように来続ける。特に欧米帝国がアジアや中南米や中東で、どこかの革新政府を打倒するような特定のイベント後に。
私は率直に不思議に思う。「読者は、実際、周期的に、切望しているおなじみの機会がないのだろうか? 彼らは社会主義を据えることが可能なのだ、そうではあるまいか?ダウニング街に、早春のようになだれこませるのだ」
だが彼らは何度も繰り返し、その機会を逃し続けている。彼らは本当に機会を逃しているのだろうか? 実際、実に多くの年月、彼らは最も極端な形の資本主義や帝国主義に投票してきたのだから、イギリス人有権者は、おそらく彼らの支配者に本当に相応しいのだと思わなければならないのだろうか?
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イギリス選挙結果はそれほど徹底的で、エコノミストのように最も体制順応的なイギリス報道機関さえ耐えられそうもないように見えるほど保守的になった。
まさに主流報道機関こそが、イギリス選挙民が今回のように投票した理由の一つなので、もちろん、私は皮肉で言っているのだが。
だが真面目な話、健全な精神の人々の一体誰がボリス・ジョンソンに投票できたのだろう?
ボリス・ジョンソンとジェレミー・コービンを並ばせて、10分間彼らそれぞれに耳をかたむければ、保守党党首に投票をする人は誰であれ、精神科病院に入院する時期のように思えるはずだ。
~でない限り、そう、まさに~でない限り。シカゴ経済学大学院の壁の背後で、フリードマンやフォン・ハイエクのような市場原理主義者が考え出した野蛮で過激な理論に倣って、実際、公然と、あるいは密かに、マーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンによって「欧米」に導入された新自由主義の、極めて保守的な「価値観」を切望していない限り。そして、インドネシアやチリ(両国とも今や荒廃状態にある)のような国が丸ごとレイプされ、縛られ、次にモルモットとして使われた後。
欧米帝国主義や、身をすくめた生徒の指の上に定規を置いて「お仕置きしてやろうか?」と脅すように怒鳴る悪名高い伝説的英語教師のサディスティックな手を、イギリス有権者は本当に称賛しているのではない限り。イギリス有権者が、このような世界のあり方を本当に好きでない限りは。
私は良く疑問に思う。もし彼らがそうだったら? おそらく、そうなのだ。彼らは、少なくとも彼らの多くは、そうである可能性が高い。つまり有権者は。
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何年も何十年もの間、多くの思索家や著者や左寄りの知識人たちは、何らかの抽象的な理論で、大多数のヨーロッパ人が、だまされるか、強要されるかして、アメリカ合州国のひどい、正気でない外交政策を支持していると確信している。
彼らはそれを「本当に解放されるべきヨーロッパ」であり、第二次世界大戦の直後、試みたが阻止されたように、社会主義の道に乗り出すだろうと考えたのだ。
私は決してそういう主張を支持しない。社会主義や共産主義へのヨーロッパの陶酔は、わずか数年しか続かなかった。その後に起きたのは、一連のばか騒ぎのために、ほぼ全ての価値観と理想の放棄だった。食物ばか騒ぎ、セックスばか騒ぎ、スポーツばか騒ぎ、ポップがらくた文化ばか騒ぎ、最後は、空しい旅行ばか騒ぎ。ヨーロッパは身分不相応に暮らしており、今後何十年も、そうしようと計画している。ヨーロッパは生き延びることができず、世界の残忍な略奪なしで、つまり「保守的な新自由主義体制」なしで生活しようとは望んでいないのだ。
最近は、ヨーロッパ人の大部分が、大西洋の対岸の残忍な手に負えない子孫を支持している。優越感がちやほやされ、労働時間は短く(世界のあらゆる場所の「非人間」を犠牲にして)食物は安く、ポルノとスポーツは無料か、ほとんどただのままになる(少なくともテレビやコンピュータ画面上で)。
だから、基本的に我々は明確に現状の話をしているわけで、それはほとんど「保守的価値観」と同義語だ。
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エコノミスト誌は「クリスマス前のイギリスの悪夢」という主要記事で選挙についてコメントし激怒した。しかも、それは結果発表前だった。予想通り、それはコービン氏と彼の「破綻した見解」(その中には、ベネズエラやイランやロシアに敵対し、略奪し、挑発することの拒絶もある)を激しく非難したが、それかボリス・ジョンソンを追求した。
「ブレグジットはジョンソン氏のニュールック保守党の唯一の問題ではない。彼は穏健派を粛清し、経済的、社会的にリベラルな党から、経済的に干渉主義で、文化的に保守的なものへの移行を速めた。労働者階級、北部の離脱派議席を取り込もうとして、付加の国庫補助、イギリス製品愛用の政府調達や、意味をなさない不完全な税と支出の計画を提案した。彼はブレグジット・キャンペーンの致命的な教訓を自分のものにした。嘘をついたり、規則を破ったりしても、罰則がないことを。彼は議会を閉会しないと約束して、閉会した。彼はブレグジット協議を延長しないと約束して、延長した。このごまかしは、民主主義に対する信頼をむしば。本紙は、これらすべての理由から、保守党を支援することはできない。」
なんと本当に痛ましいことだろう!
保守世界における深い亀裂?
そうではない。ボリス・ジョンソンはいくつか規則を破ったに過ぎない。彼は信頼できず、教養がなく、見苦しい本性を現わしただけだ。彼は公衆の面前で全てをした。これらのものは、少なくともイギリス内では禁じられていない。人種差別、いや性犯罪すら、内密にされている限り、かまわないのだ。サッチャーであれブレアであれ、どちらの党首が口に出そうと、うまく偽装されたウソは、全く問題ないのだ。
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だが投票とイギリスという国の話にもどろう。
ごく単純化しよう。ジェレミー・コービンはまともな人物だ。 完ぺきではないが、まともだ。それは明白だ。彼は同胞国民のことを気にかける人物だ。彼は欧米帝国(イギリスが、その不可欠な一部であることは否定しようがない)に強奪され、残忍に扱われた、地球上のあらゆる場所の何十億人ものことも気にかけている。
ボリス・ジョンソンを見ると、まさに正反対だ。しかも、それは国家機密ではない。私はイギリスに多くの友人がおり、彼らの大多数が、もっとずっとひどいものではないにせよ、彼は不穏な粗野な人物であることに同意するだろう。
コービンは本物の労働党員だ。彼は我々全員が起きていると知っているものを逆転しようとしている。イギリスは実にひどい状態で、子供たちの多くが文字通り飢えている。イギリスの社会制度は右翼(過去、保守党と「新労働党」の両方で)政府下で崩壊した。イギリス国民は、もはや自身の都市に住む余裕がない。教育も医療も、インフラ同様、崩壊し、荒廃している。
彼は、世界中のあらゆる地域の何百万人もの卑劣な欧米支配による犠牲者の苦難を止めたいと願っている。
もちろん、こうした事実は、決してエコノミスト誌のページには載るまい。
ボリス・ジョンソンは上述の問題は全く気にかけない。彼は舞台で芝居をしているのだ。若い頃から、彼は常に演技し芝居してきたのだ。彼は、おそらくイギリス政治で最も厄介な人物だ。
なおかつ、なおかつ。おそらくコービンの人本主義は彼の最大の弱点だ。少なくともヨーロッパ、特にイギリスでは。
ニューヨーク・タイムズはこう報じている。
「金曜日に開票された際、BBCによれば、議席のほとんど全てが決定した時点で、イギリス下院で労働党の203に対し、保守党は364議席獲得すると予測された。それが1987年にマーガレット・サッチャーが稼いだ時以来、保守党は、全野党より75議席多い大多数という、彼らの最大の議席をえることになる。」
それは大衆が、どのように立場かを示す明確なメッセージのはずだろう?
もちろん友人や仲間が、間もなく選挙結果の解釈を始めることを知っている。国民のほんの一部しか投票していない。人々は混乱している。マスコミが言説全体をあやつった。そして、多くのこの種の主張。
そして私は彼らは正しいだろうと確信している。
だが、イギリスは投票をし、これは、ひどく驚異的な結果だ。
人々は最も過激で破廉恥な種類の新自由主義に投票したのだ。彼らは帝国主義や新植民地主義や人種差別の略奪者連中に支持投票したのだ。
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私の個人的発言など重要ではないが、私は、それにもかかわらず補足したい。
私は少なくとも年に二回ロンドンに来る。ほとんど私の全ての訪問は仕事か「紛争関連」だ。私はそこでインタビューされたり、映画を見せたり、本を宣伝したり、大学で講義したりする。
私は訪問を楽しみにしていたものだった。しかし、もはやそうではない。
雰囲気がひどく緊張しているのだ。人々は無作法で、攻撃的にさえなっている。
ロシア人として私は常にいどまれる。私のわずかなアクセントさえ、即座に「どこの国の出身?」という疑問を引き起こす。返事するなり直接の挑発を受けることが多い。
中国人の友人たちは、もっと酷い暴言を言われているという。
ロンドンが平和的状況にないのは確実だ。
私は何度かブレグジットについて書いた、道徳的信条として、このエッセイにそれを書くことはしない。
最近、あらゆることがブレグジットによって説明され、正当化されている。
私はそんなことが出来るなどと思わない。そういうことは極端な単純化だ。
多分欧米は、本当に反社会主義、反共産主義組織なのだ。おそらく、それが、世界中のあらゆる左翼政府を打倒し続けている理由だ。おそらく、それが、想像可能な最も不快な人物を選出し続けている理由だ。
多分イギリスは、それが得ている支配者に相応しいのだ。
いつも見落とされている一つの微細な差違がある。イギリスは、本当に労働党反対ではないのだ。隠れサッチャー支持者で、コンゴ民主共和国で何百万人もの生命を奪った責任を負うルワンダ大統領殺人者ポール・カガメの顧問を勤めた男トニー・ブレアを覚えておられるだろうか? ブレアは、命を奪われた何十万人もの中東の人々にも責任がある男だ。覚えておられるだろうか? まあ彼はいわゆる「新労働者党」だった。だがイギリスの有権者に関する限り、明らかに、実に結構だったのだ。
そしてもう一つ言及に値する微細な差違がある。ほぼヨーロッパ丸ごと、人種差別的な、利己的な右翼に向かって動いている。しかも、単にブロックからの離脱を望むEUだけや、ヨーロッパ残留を望むヨーロッパだけではない。双方同じ方向に向かっているのだ。
おそらく、結局、有権者は彼らの指導者に相応しいのだ!
右翼リーダーは繁栄している。一方、合理性や品位や優しさは苦痛で死ぬ寸前だ。
Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者で調査ジャーナリスト。彼はVltchek’s World in Word and Imagesの創作者で、China and Ecological Civilizationを含め、多くの本を書いている作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/12/23/in-the-u-k-do-subjects-deserve-their-rulers/
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これは、すごい。「上級裁判で必ず逆転してやる」という破廉恥な宣言に見える。こういうとんでもない雑誌が売れているのが事実なら、臣民は支配者に相応しいのだろう。買ったことはないし、立ち読みもしたことがない。Hajida。
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翻訳をしながら、映画『赤ひげ』を見た。昔映画館で見たような気がする。現代に対する皮肉そのもの。二木てるみ演じる12歳の少女を虐待している遊女屋のおかみから、「病気の子供はおいておけない。」と赤ひげがひきとる。取り返そうとして、おかみが療養所にやってくると「お前は腹が腐っている。」と怒鳴って追い返す。加山演じる有望な青年医師めでたく取り立てられるが、出世を拒否し、残る。思わず、東大を出て真っ赤なウソをついている役人諸氏を連想。
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