ノルマンディー4サミットの結果が前もってほぼ決定されていた理由
ティム・カービー
2019年12月10日
Strategic Culture Foundation
マスコミは、どんな種類の和平策定プロセスであれ、心にしこりがある二者間の私事のよう、真実からは遥かにほど遠く、見えさせたがるものだ。こうした取り引きは感情や、愛想よくしたりする問題ではなく、政治的な目的を達成するのが狙いだ。何らかの合意によって満たされるべき完全に正反対な二つの狙いのため、両勢力が妥協できる点がないので、対立は停滞したままになることが非常に多い。ウクライナで起きた恐ろしい状況に関する交渉は、事実上、動ける余地がないため、全く進展しない「和平策定プロセス」の好例だ。するとノルマンディー4パリ・サミットは実際に何かを達成することが可能だろうか? これへの答えは関係各国の立場にある。
ヨーロッパ
もしアメリカのくびきから脱することができれば、EUは立場的には、この交渉でおそらく最も柔軟性の余地がある。ワシントンはヨーロッパ政治を非常に強力に掌握しており、EU経済にとって地獄の反ロシア制裁を支持させることが可能なほどだ。しかし、まさに今、我々はアメリカ世界覇権の重大な下落を目にし始めている。トランプは要塞アメリカを推進し、マクロンは、NATO後のヨーロッパ軍の未来をあからさまに語り、アメリカの努力にもかかわらず、非超大国ロシアが主要な外交政策で勝利している。これはヨーロッパが、大西洋の向こう側から認められないウクライナのような特定問題を解決するため、独自の措置を(最終的に)とれるかも知れないことを意味している。
ヨーロッパにとって、ドンバスでの対立は、うやむやにして忘れ去るのが最善の過去の小さな醜悪事なのだ。EUの一部はマイダン抗議行動に顔を出してはいたが、ほとんどの外国の支援と資金供給は、アメリカ/国務省からのもので、フランスもドイツも反ロシア・マイダン蜂起には、決して支援要求されておらず、その顛末に対処しなければならないことに、決してワクワクなどしていない。これは彼らがきれいにしたいと願っているわけではない混乱なのだ。
ベルリンとパリから見れば、ドンバス戦争は、ある白人先住民部族と、核武装した資源豊富な別の白人先住民との戦いで、一体どちらにつくのが一番賢い分別なのかということになる。ロンドンでトイレを掃除する、あるいはアムステルダムで売春婦として働く、より多くのスラブ人出稼ぎ労働者を失う代償を払って、ロシアをなだめるのは、コストが低く、利益が大きい立場だ。我々が見たように、必要とあらば、西欧の「価値観」は極めて柔軟で、ウクライナは、ヨーロッパには、問題以外の何もあたえないが、ロシアをなだめるのは、平和にも、商売にも大いに良いのだ。
もしヨーロッパに自身の利益のために動く自由があれば、ドンバスから手を引いて、キエフに責任をなすりつけるだろう。
アメリカ合州国
ワシントンはと言えば、実際、ワシントンの誰が糸を引いているのが問題だ。例えば、トランプは、中国を、ロシアを対抗するためのてことして利用できる、アメリカの主要な脅威と見ている。(政府の考えをやかましく語ることが多い)Foreign Policyウェブサイトには、ウクライナは、さっさと「ドンバスを去らせる」べきだという記事さえある。ロン・ポールやパット・ブキャナンのようなリバタリアン/古生保守派は、アメリカにとって何の意味もなく、ロシアにとって全てを意味する地域のために、核戦争の危険を冒す無意味さを、歯に衣を着せずに発言している。
だが、ドンバスは極めて重要な問題で、民主主義と自由の未来にとって、何らかの形で極めて重要だという、あらゆる場でロシアの影響力を見つけ、制裁を要求するPNACの忠実な冷戦戦士が大勢いるのだ。ブレジンスキーが言ったように「ウクライナがなければ、ロシアは帝国であることを停止するのはいくら強調してもし過ぎることはない」彼がこれについてだけ正しいわけでなく、タカ派も彼が正しいと知っているのだ。だから彼らは最大のロシア憎悪と、ウクライナでの混乱推進から決して後退しないだろう。
現在のウクライナの混乱状態は、ロシアが偉大になることに対する障害で、モスクワがウクライナでロシア文化を守る上で全く無能なことは屈辱的で、プーチン政権全体の安定性に悪影響を与える。ロシアは確かに、クリミアと、独立共和国という部分を得たが、アメリカがマイダンの戦いで勝った今、ウクライナの85%以上を占領している。これはロシア/プーチンの屈辱的敗北だ、ロシア人全員これを知っており、つまり、それがこれまでのところ、強硬派ロシア憎悪者にとって21世紀最大の勝利であることを意味している。
最高行政機関の破産を免れるため、選挙運動中に公約したようにロシアとの関係を重要問題にするのをトランプがあきらめたことも指摘しなくてはならない。今の妄想的雰囲気の中で、この問題に関し、ワシントンの誰もロシア「側」につこうとはするまい。だが往々にして無活動は最強の行動様式で、トランプはただ傍観して、ヨーロッパに仕事をさせるのかも知れない。つまり何であれ、この状況を終わらせるために必要なことを。
ロシア
上述の通り、ロシアは自分がそこからやって来た南の「聖地」の少なくとも一部なしでは「再び偉大になる」ことができないのだ。数年前、モスクワは、ロシアに正教をもたらしたキエフ大公ウラジーミルの巨像を極めて意図的に建設した。これはロシア文明にとって、キエフ/ウクライナは譲れない部分だ(そして揺りかごだ)という公式イデオロギーの極めて大胆な強化だ。巨像は南に対するロシアの長期任務の象徴なのだ。
ロシアはドンバスの独立共和国住民にパスポート(すなわち国籍)を大量発行して、彼らが2008年の戦争の際、ジョージアで使ったのと同じ「橋頭堡」を作ったのだ。サーカシビリが、二重のロシア国籍がある現地人を攻撃した際、モスクワは軍事的に自国民を保護しなければならないと感じ、最小の血と機器の損失で、失われた土地の大部分を事実上奪還した。
さらに、サミット出席者を見ると、キエフ、パリ、ベルリンとモスクワがテーブルについている。(公式には)アメリカとドンバスの代表がいないこと自体、ヨーロッパとキエフが、彼らがモスクワを、この地域において取り引きすべき大国と認めていることを意味している。キエフは共和国代表者を除外したので「テロリストとは交渉しない」と弁解できるが、既にキエフは過去に彼らと取り引きをし、彼らに正当性を与え、国際関係の見地からは許せない失敗をしている。一度相手に多少の正当性があると認めてしまえば、それを撤回するのは非常に困難だ。
要するに、ロシアの立場は全員中で一番頑固だろう。ロシアは引き下がって、キエフに虐殺されるよう、ドンバスを放棄することなどできない。もしそういうことが許されたら、プーチンはこれまで20年にわたり達成した全てを無効にしてしまうことになり、ロシア文明の全てを終わらせる致命的打撃になりかねないのだ。降伏は選択肢にない。
彼らの文明の短期的な生き残りにとって極めて重要だったので、まばたき一つせずに、第三次世界大戦の危険にもかかわらず、国民投票で、ロシアはクリミアを得た。ドンバスとウクライナの全ての親ロシア地域(そして旧ソビエト社会主義共和国連邦の一部)は長期的に極めて重要で、「ロシアは偉大であるか何者でもないかだ」と言われるように、偉大さを復活させるために、彼らが、もう一つの第三次世界大戦の機会という危険を冒さないと考えるほど、我々は世間知らずであってはならない。
キエフ
キエフには自身の政治意志はなく、属国なので、キエフによるどんな意見も言葉も他者の意見をおうむ返ししているだけだ。このプロセスでキエフは名ばかりの当事者なので、上述のEUやアメリカの立場全てがキエフにあてはまる。
ゼレンスキーはただ権力の座を維持して、首をつなげておく必要があり、それが個人的に彼にとっての勝利なのだ。
すると、これは何を意味するのだろう?
もしワシントンのタカ派の意見が、ロシアの愛国者とぶつかれば、どららも後退できないのだから、確実にこう着状態が続くだろう。これは本当に満足する当事者は一人しかいない「二者択一」状況なのだ。絶対にどんな本当の変化がないというのが、サミットの最もありそうな結果だ。紛争は無期限に続き、更に何千人もの生命が失われるだろう。
だが、もしワシントンが意図的に黙っていたり、EUが自身の意図で行動したりできれば、ロシアは西ウクライナなしで暮らすことができ、西ウクライナはロシアと暮らすことができないのだから、2014年に起きるべきだった、ウクライナをある程度の規模の固まりに割る過程が始まるかもしれない。ほぼ50/50の分割が、この偽物の国に関して(キエフを除く)全当事者が本当に合意でき、狂気を終わらせる唯一の選択肢だ。
ロシアは絶対後退できず、EUはそうすることを望んでおり、トランプのワシントンは、石油を持たない猿のことなど気にかけない。
ティム・カービーは独立ジャーナリスト、TV・ラジオ司会者。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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昨日の大本営広報部、女性二人を相手に、海外事情をわかりやすく語る呆導番組、話題、まさにこれだった。もちろん早速音声を消したので、内容はほとんどしらない。冒頭、現地特派員が、「ロシアが、武器、兵士を送って侵略占領を進めている」ようなことを言った部分は聞いてしまった。マイダン・クーデターをアメリカがあやつったことには一切ふれていなかったと思う。だから音声を消したのだ。
イギリス選挙の結果、わけがわからずにいる。イギリス人の知人は大喜び。イギリスは正気中道の国なので、狂気の左翼に鉄槌が下った、風な趣旨の意見。知人を、そのまま信じる気になれずに、新聞記事を読んでいる。
今朝の日刊IWJガイド、見出しに驚いた。一度も講読した経験がない新聞の話題。
日刊IWJガイド「高齢者を食い物にする悪質広告業者に産経新聞が月6回の全面広告を契約していたことが判明!産経は『新聞』と名乗る資格はあるのか!? 」2019.12.16日号~No.2650号~
朝日新聞DIGITAL の下記記事を読んだ。有料記事なので全文読んではいないが、そういう広告を掲載する「新聞」など本当にあるのだろうか? 詐欺の手伝いをしてはいけないだろう。
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コメント
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コービン労働党党首に対するエシュタブリィッシュ側の攻撃はすさまじかったそうです。以下の櫻井ジャーナルにそのことにふれた記事があります。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
保守党がコービンの政策を取り入れた選挙公約を示していたことも影響があったとあります。それを実現するつもりはないようですが。
自分を共産主義者と名乗る党首が、大英帝国の首相になれるはずはない? サンダースやオカシーオ・コルテスが米大統領になれないのと同じでしょうか?
投稿: 野薔薇 | 2019年12月17日 (火) 11時24分