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2019年12月26日 (木)

ノルド・ストリーム2:ヨーロッパを自身のために判断する自由から「解放する」ワシントン

2019年12月22日
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook

 ノルド・ストリーム2は、ロシアからドイツに至るパイプライン・プロジェクトで、完成すれば、現在一触即発状態のウクライナを迂回し、相互に有益な経済活動を通して、ロシアとヨーロッパを一層強く結び付け、ロシアの天然ガスを西ヨーロッパに輸出する安定した手段になるだろう。

 もちろん、大西洋の対岸、ワシントンやウォール街の圧力団体にとって、建設的な経済活動を通して、より親密な絆を作るロシアとヨーロッパは、敵対的なクレムリンが自由な統合されたヨーロッパを損なうという、ワシントンが主張する恫喝で、ヨーロッパを強要してきた長年の戦略を損なってしまうのだ。

 皮肉にも、ヨーロッパの「自由」を維持するため、今アメリカは、ヨーロッパの利益、特にドイツの利益を懲罰することにしたのだ。ロシアと事業をするのを自由に決めることに対して。それは、現在のワシントン外交政策の根源に横たわる最高の偽善を完全に証明するだけでなく、ロシアがしているのと全く同様、世界中の企業や国々と建設的な経済的な結びつきを作ろうとする合法的なアメリカの事業権益を傷つける恐れがあるのだ。

 制裁は承認された

 「ノルド・ストリーム2:トランプ、ロシア・ガスパイプライン制裁を承認」という記事で、BBCはこう報じている。

ドナルド・トランプ大統領はロシア国有ガス会社ガスプロムによる欧州連合の中へのパイプライン完成を支援するあらゆる企業に制裁を課す法律に署名した。

制裁は、ロシアがドイツへのガス輸出を増やすことを可能にする海底パイプライン、ノルド・ストリーム2を建設している企業を標的に定めている。

アメリカはプロジェクトはヨーロッパの安全保障を脅かすものと見なしている。

ロシア、EU両方が、アメリカの制裁を強く非難している。

 これら企業が本拠を置く国々の安全保障上の脅威であるというワシントンの主張ゆえに、アメリカが、外国企業に一方的に制裁を課しているのは、客観的な観察者たちを困惑させるかもしれないし、困惑させないかもしれない。

 一体何が、安全保障上の危険なのかを判断するのは、明らかにドイツの問題であり、ドイツだけが決めるものだ。アメリカは、一方的に、ノルドストリーム2プロジェクトが安全保障上の危険だと決定しただけでなく、想定される危険のベルリン自身による評価と矛盾する、世界平和や安定や進歩という概念の背後に不器用に隠した、異様な私利に根ざすアメリカの対外政策を暴露している。

 もしロシアが、ワシントンがそうだと主張する「脅威」だったら、明らかにドイツはノルド・ストリーム2プロジェクトを承認するために必要な、膨大な量の時間やエネルギーや資源を投資しなかったろうし、まして、それを建設し、運用するために必要な全ての時間やエネルギーや資源は言うまでもない。

 建前の動機。認められた「隠された」動機。より大きな語られない動機

 BBC記事は、ノルド・ストリーム2に関する現在のワシントン姿勢の本当の動機を一瞥している。BBCは記事で、こう指摘している。

パイプラインがヨーロッパへのエネルギー供給に関して、ロシアの支配力を強化し、アメリカにとって、儲かるヨーロッパ市場でのアメリカ液化天然ガスの取り分が減るだろうとトランプ政権は恐れている。

 実際、アメリカ・エネルギー権益は、ロシア天然ガスに対して負ける立場にあるが、遥かに現実的な手段を通して、ずっと安いエネルギーを送るロシアの能力と、アメリカのエネルギー権益が、公正に競争できないからに過ぎない。

 BBCは触れていないが、ワシントンに現在の対外政策を推進させている、もう一つの動機があるが、それは、アメリカのエネルギー利権が、どれほど巨大権益であるにせよ、それさえしのぐものだ。

 ヨーロッパを食い物にする悪意あるロシアの妖怪とされるものが、何十年間にもわたって、アメリカが率いるNATO連合や、ヨーロッパでの米軍駐留や、何十億ドルもの兵器販売や契約などを実現する、あらゆる政治影響力の基盤なのだ。

 エネルギー需要というヨーロッパの経済的安定や生存の鍵となる大規模パイプラインをヨーロッパとロシアが建設し、協力しているのは、明らかに、完全に、NATO存在の口実を傷つけ、NATOの継続的存在を可能にしている莫大なぼろい商売を脅かすのだ。これはワシントンによるヨーロッパ支配だけでなく、アメリカや西洋同盟諸国が遂行し、NATOが道具として利用される、あらゆる他の戦争を脅かすことになる。

 1990年代の、セルビアへの欧米介入、2001年から現代まで続くアフガン戦争や、より最近2011年に始まったリビアでの欧米介入は、全てNATOのおかげで可能になったアメリカの好戦性の実例だ。この好戦性は、もしNATOが弱体化されたり、完全に不必要になり、解散させられたりしたら、継続することが一層困難になる。

 ヨーロッパの利益にも、アメリカの利益にもならない

 「アメリカがドイツに制裁を課している」と言う際は、注意深くなくてはならない。アメリカがそうしているのではない。ウォール街のごくひと握りの特定権益集団に指揮されたワシントンのひと握りの特定権益集団が、ノルド・ストリーム2プロジェクトを巡って、ヨーロッパに制裁を課しているのだ。

 連中は明らかにロシアに損害を与えるためそうしている。だが明らかにパイプラインの完成や運用や稼働した際に恩恵を受けるドイツとヨーロッパの企業にも損害を与えている。

 連中はヨーロッパに制裁を課して、アメリカ人やアメリカのビジネス全般や、現在、国際的に存在していて、将来も国際的に存在するはずだから、アメリカという国自身にも損害を与えているのだ。

 アメリカの兵器産業とエネルギー産業は、確かにヨーロッパとロシアの間に人為的に、くさび打ち込んで、不和を永続させていることを含め、ヨーロッパの現状から利益を得る立場にあるが、他の誰にとっても利益にならない。

 この二つの産業は、確かに多くのアメリカ人を雇用しているが、彼らは明らかに公平には競争できず、今や効果的に騙すことさえできない持続不可能な事業だ。現在の姿のこの二大産業に雇用されたり、何らかの形で依存したりしている人々にとって、未来は暗い。ワシントンの政策は、ほとんど他の全員を犠牲にして、巨大エネルギー企業と兵器製造企業の利益のために推進されている。

 まだ世界経済に貢献できる人材が多く住んでいる国、アメリカ合州国と事業することを熱心に望む世界にとって、ドイツや、ノルド・ストリーム2に関与している他の国を狙った制裁のような政策は、将来アメリカのビジネス・パートナーになる可能性がある人々をちゅうちょさせ、未来のジョイント・ベンチャーを再評価するよう強いるだろう。

 だから、ノルド・ストリーム2に関するアメリカ制裁の、自国利益のみ追求する短期的な性質にもかかわらず、制裁はアメリカの全体的凋落を加速するのに役立つだけだ。ロシアと「競争し」、ヨーロッパに対する影響力を維持するためのそうした手法にワシントンが固執しているので、世界的規模で、影響力を生み出し維持する唯一、本当の持続可能な手段である競争力、アメリカの本物の競争力を向上させるために必要な戦略に注力したり、投資したりすることができないのだ。

 アメリカ人とアメリカ人企業経営者は、ワシントンの現在の政策を放棄し、世界の他の国々がアメリカ制裁を回避する方法を見いだしているのと同様に、政策を回避する方法を見いだし、願わくは、懸け橋を築くか、少なくとも、そうするための素地を準備するのを支援することだ。そうなって、これ以上の凋落にアメリカを誤導する現在の既得権益団体が姿を消し、より良い何かが彼らにとって代わることができよう。

 ノルド・ストリーム2は、こらから起きるものごとの一つの兆しに過ぎない。アメリカはロシア-ヨーロッパ協力という形のみならず、国際舞台で上昇する中国と、中国を中心とするアジアで、将来より多くの「ノルド・ストリーム2」に直面するだろう。失敗戦略を強化するワシントンは、アメリカの現在の苦難を修復するのではなく、促進するだけだ。ワシントンがこれを理解するか、アメリカ人がワシントンの狙いに対処する方法を見いだすまで、これらの苦難は増大し、全員が損害を受けるだろう。

 Tony Cartalucciは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/12/22/nord-stream-2-washington-to-free-europe-from-freedom-to-decide-for-itself/

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 遥々中近東から、タンカーでエネルギー源を運び、そのため、宗主国に命令され、中東に海軍を派兵させられる。すぐそばのサハリンからパイプラインを建設すれば、運搬の手間もいらず、宗主国侵略戦争の手伝いもせずにすむだろう。と素人は思う。しかし、誰か有力政治家が、そういう発想をすれば、見せしめ逮捕されるだろうと、今回のカジノ疑惑をみて妄想する。

 見下げた男もいるもの。便乗して名前を売るのが狙いだろう。こうして転記するのもけがらわしい下司。議員というのが信じられない。投票する有権者、正気だろうか?

 豊島区議が提案した「性交承諾書」の法的効力は?

 孫崎享氏の今日のメルマガ題名は

琉球新報社説:そもそもギャンブルで負けた人の不幸を踏み台にして利益を上げるのがカジノ。益よりも害の方が大。利権を生むカジノの危うさが露呈。毎日社説:カジノ取り巻く不透明な資金の流れと利権の存在。朝日:17年首相訪米中朝食会にカジノ企業代表が同席

 街頭で、どう思うかというインタビューに対して、「カジノの是非は別として、裏切られた」というようなことを言っている人がいた。本気だろうか。少なくとも、呆導側の姿勢は、そう見える。「カジノの是非は別として、金をもらって相手に便宜を計ったのは悪い。」カジノの恩恵は宣伝しても、危険性を追求する大本営広報部は存在するまい。

 時に誰か逮捕しないと存在意義が薄れると思ったのだろうか?宗主国下部機関、宗主国指示で、競争相手を追いだし、競争相手に尻尾をふる政治家を潰す一石二鳥を狙っているのだろうか。カジノを運営するのが、中国であれ、アメリカであれ、客から金を巻き上げ、人を不幸にして繁栄する本質は全く同じ。巻き上げた金の行方が違うだけ。どちらも不要。

日刊IWJガイド「自民党の秋元司衆議院議員が収賄で逮捕! 他方桜を見る会の疑惑も深まるばかり! 本日午後5時より岩上安身による郷原弁護士へのインタビューを生配信します!」2019.12.26日号~No.2660号

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