抗議行動とデモが勢いを増す中、燃えているレバノン
2019年11月8日
ヴィクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
サード・ハリーリは、政府を汚職と、レバノンで起きそうな経済崩壊の条件を作り出したと参加者たちが非難した二週間の大衆抗議活動の後、行き詰まり、レバノン首相の座を去ると発表した。サード・ハリーリは2016年12月以来、この職を勤めてきた。
10月17日、タバコとインターネット通話アプリケーションへの増税をレバノン政府が、発表した際、強力なデモがに国中至るところで勃発した。これらの進展に促された大衆抗議活動参加者が、道路と高速道路を封鎖し、政府の辞職と、政治改革実行を要求した。だが、国家指導者が、多くの経済改革の開始と反汚職処置をとると発表した後、何千人もの抗議行動参加者が、このような行動を不十分とみなし、政府が健全な経済政策を実行する能力がなく、見境がない汚職と職権乱用の罪で政治家を告発して、全国至るところで再度街頭に繰り出した。
興味深いことに、状況に関して、レバノン中の多くの政治家が(彼らの宗教的見解と党派関係を反映して)全く意見が異なっている。例えば、ミシェル・アウン大統領はレバノン国民がどれぐらい苦しんでいるか示すため国中いたる所の抗議に最近繰り出したデモ参加者との団結を表明した。だが、レバノンのマロン派教会総大司教ビシャラ・ブトロス・アル・ライは、全国的抗議をなだめるために採用された改革は、正しい「第一歩」だが、レバノン新内閣が、それを実施する必要があると述べた。テレビ演説で、ビシャラ・ブトロス・アル・ライはデモ参加者を支持すると言ったが、彼らに抑制するよう促した。
他方、レバノン議会のナビ・ベリ議長は(サード・ハリーリ率いる)政府全閣僚の辞任は、レバノンの根深い社会経済危機を解決せず、状況を悪化させるだけだと述べた。レバノンの経済改革に弾みをつけることを目指す即座の処置をとるべきだと彼は考えているとレバノンの日刊新聞Al Joumhouriaが報じた。
抗議行動参加者の一つの集団がメイン広場でテントを張り、他の集団が道路封鎖を続けた。その間、彼らは重要なスローガンの一つを大声で唱え続けている。「彼ら全員本気だ。」明らかに、それはレバノンの全ての政治組織と多数の政党のことを言っている。
この全てが、デモ参加者が、多くのアラブ諸国から、戦略的、財政的支援を受けていると、あらゆるアラブ放送局が報道するよう刺激したのだ。これらの国が、物流コストや、運輸、傘、レバノン国旗のついたテント、仮設トイレ、食品や水の供給を含め他の経費を負担していると、消息筋がアル・アヘド・ニュースに語った。彼らは、どの日であれ、道路交通の正常な流れを妨害する者全員、それぞれ100ドルを受け取り、オーバーナイトでテント内か周囲で夜明かしした者は誰でも150ドルを受けとったとも言った。
抗議行動参加者はサード・ハリーリ辞任を歓迎したが、何が次に起きるかは不明確だ。彼は当面、任務を続けるべく首相代行の役割に留まることができ、当面、これが危機から脱出する唯一の方法だ。サード・ハリーリ首相代行が他のいかなる政党代表者も含まないであろう専門技術者の内閣をまとめ上げることを約束した(とき・から・につれて・ように)、レバノン放送局がそれを報告した。
一方国を巻き込む経済危機は悪化している。ロイターによれば、ベイルートの企業家たちが米ドルで取り引きを行い始めており、ガソリンスタンド所有者連合が、供給中断のため、数日分の燃料しかない残されていないと消費者に警告した。
以前、レバノンが長期的危機を経験していることは良く知られている。複雑なシステムが異なったグループ間での権力分割を保証し、最高の職位には、シーア派信徒、スンニ派とキリスト教徒がついている。これまで、それは、この国が内戦に陥るのを阻止してはいるが、広範な利権ネットワークを生み出し、縁故主義をもたらし、政府が信頼できる形で重要な決定をしたり、公共サービスを提供したりするのを阻んでいる。ちなみに、抗議行動参加者は、レバノン国民を悩ませている多くの問題を解決することができる非宗教的政府を組織すべく、政治制度の全面的見直しを要求している。
この場合、テヘランの観点と対応に焦点を合わせるのは確実に意味がある。かつて2017年11月、サード・ハリーリが、かなり奇妙な状況下で首相を辞任すると発表したことは良く知られている。彼はサウジアラビア訪問中、外国でこの発表をしたのだ。当時サード・ハリーリに近い情報筋、有力層、レバノン政府高官が、リヤドが首相を軟禁し、首相辞任を強いていたと指摘した。ミシェル・アウン大統領もレバノン首相が彼の意志に反してサウジアラビアに拘束されていると述べた。これは石油に富んだ王国と、レバノンと親密な結びつきを持っており、常にレバノンの多数の政党に影響力を及ぼしているイランとの当時の緊張激化のため、リヤドがサード・ハリーリに辞任を強いたという推測に導いた。
イラン外務省のアッバス・ムサビ報道官は、レバノンの各派、党や人々全員の団結の必要を、テヘランが強調ていると述べた。レバノン首相サード・ハリーリが辞任した後、現在の慎重を要する状況を解決するため、各政党と政治家に、団結を維持し、相互理解を確保するようイラン外務省は促した。アッバス・ムサビ報道官は「レバノンの安全保障と安定性を維持し、レバノン国民の正当な要求を満たすべく、レバノンのあらゆる政治団体と関係者の団結」を要求した。
この国の政治的、経済的危機に対処するため、一体どんな手段が使われるのか、それがレバノン国民の利益になる形で解決されるかどうかは時間がたたなければわからない。それでも、シリア情勢が改善している(政治対話が始まった)のと同時に、抗議行動がほぼ同時期に始まったレバノンとイラク両国の状況が一層悪化しているのは明白だ。レバノン内外の多くの勢力が、レバノンの困難な状況に巧みにつけこんで、この重要な地域で、自身の利益になるよう動いているというかなり明確な印象を我々は受ける。これは明白で、イラン最高指導者アヤトラ・セイイェド・アリー・ホセイニー・ハーメネイーも、はっきり、そう述べている。イラクやレバノンを含め地域の多くの国々における最近の大変動は、この地域に対するワシントンや、他のいくつかの西側諸国や反動政権による干渉の結果だとも彼は警告した。
ヴィクトル・ミーヒンはロシア科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/11/08/lebanon-on-fire-as-protests-and-demonstrations-rage-on/
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孫崎享氏の今日のメルマガ題名は、
三鷹事件:1949年7月無人電車の暴走で複数の民家が全壊・半壊し、市民6名が死亡、20名が負傷。当初共産党、解雇に歓待する国鉄労組説が有力だったが、結局竹内被告の単独説の判決。単独で列車を走らせるようにするには技術的に無理。米国の影。
そして、日刊IWJガイドは、
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