ビビの免罪符、イランとの戦争
Finian Cunningham
2019年11月24日
Strategic Culture Foundation
ベンジャミン「ビビ」ネタニヤフ首相を法律の網ががんじがらめにするつれ、イスラエル軍がシリア駐留イラン軍に対する空爆が突然強化したのは単なる偶然ではない。
国家安全保障の実力者役を演じ、再度首相の座を獲得することが、切迫する収賄容疑起訴を食い止めるのだ。
もしネタニヤフが首相の座から追い出されれば、彼はすぐさま裁判を受けるはずだ。全ての告訴に関する有罪判決で、彼は最高13年の禁固刑にされかねない。イスラエルの老練政治家は大変な危機にある。70歳の彼は既に四回選出されており、イスラエル史上最も長くつとめている首相だ。
だから、彼がより長く首相にしがみ続ければ、首相の地位在職中は、それだけの期間、免責特権を得られるので、法廷に立つのを延期できるのだ。
現在のイスラエルの政治的難局は、ネタニヤフにとって特に危険な時期だ。今年早々行われた二回の選挙後、ネタニヤフも、最大のライバル、ベニー・ガンツも、連立政権を組織することができなかった。ネタニヤフはまだ現職首相だ。だが議員たちは、今後数週で新首相に投票をすることができ、あるいは、それがうまくいかければ、イスラエルは、来年三月、三度目の選挙をすることを強いられる。
いずれにせよ、もし彼が検察による裁判を棚上げしたいと望むなら、ネタニヤフは在職し続ける必要がある。それは特殊部隊員から政治家に転じた怒りっぽい人物が、イランとシリアと隣接するパレスチナとの安全保障上の緊張を高める誘惑が一層強いだろうことを意味する。ネタニヤフは常に自身を、偉大なイスラエルの擁護者として示すことで、票を獲得してきたのだ。
これまでの一週間、三年間の犯罪捜査が、好ましいメディアの影響力を得るための賄賂と詐欺と職権乱用の罪状がネタニヤフに突きつけられて終わったとき、彼が指揮するイスラエル軍が、シリアのイラン標的に対して致命的な空爆を開始した。大半がエリートのクッズ部隊に属するイラン軍人約23人が殺されたと報道されている。シリア・メディアが、攻撃の大部分を迎撃した主張している。イランの軍事要員が殺されたか否かにかかわらず、イスラエルの狙いは、テヘランを挑発することだ。
注目すべきは、通常イスラエル軍は、シリアや隣国に空爆を実行した際、認めたり否定したりしない。だが今週、ネタニヤフを含めイスラエル指導部は攻撃を自慢したのだ。
ネタニヤフはこう述べた。「我々を攻撃する誰であれ、我々は攻撃することを私は明らかにした。それが今夜[11月20日]、イランのクッズ部隊の軍事目標とシリアの軍事目標に我々がしたことだ。」
イスラエルはゴラン高原から発射されたロケットに反撃したと主張する。だがそれらロケットは数日前にシリアに対する以前のイスラエル攻撃に誘発されたように思われる。
暴力行為を強化する口実をイスラエルが計画していたというのは疑念に止まらない。ネタニヤフが従軍勲章の埃を払い、有権者に彼の威力を誇示するのを可能にする目的だ。
このような策略は、ここ数カ月ネタニヤフが好戦的発言を強めていた様子と一致している。今年3月、そして9月の選挙前、彼はもし彼が再選されれば、彼の政府は、西岸の広大なパレスチナ領土を併合すると宣言していた。イスラエル入植地を不法だとする国際法と国連決議にもかかわらず。
11月18日、ホワイトハウスが、今後ワシントンは、パレスチナ領土の全てのイスラエル入植地を合法的と認知すると発表した際、ドナルド・トランプ大統領は、ネタニヤフの選挙運動に恩義を施したのだ。トランプは起訴状が発行途上にあると知った上で、友人ビビの危機脱出を支援すべく、アメリカ政策を変えたのだろうか?
過去一ヶ月、イスラエル軍は、ガザに対する空襲をエスカレートさせ、家族や子供を含め多数の一般市民を殺害した。イスラエル軍による軍事包囲網のため、清浄な水や電気を奪われ、180万人の人々が貧困で暮らしている人口集約地域、ガザ地区のパレスチナ人過激派集団からのロケット攻撃に対するイスラエル国民の不安を、ネタニヤフは身勝手にも、高めたのだ。
だがシリアで、精鋭クッズ部隊に標的を定め、このような挑発的方法で、イランとの緊張を高めて、ネタニヤフは火遊びをしているのだ。
先週ロシアは、シリアに対するイスラエル空爆を不法侵略と非難した。ロシア外務省はこのような行為が、地域でより広範な対立の危険を冒していると警告した。
トランプはネタニヤフに免罪符を手渡すため、イランとの国家安全保障上の緊張を刺激するネタニヤフの狙いを、またもや、ほう助しているように思われる。ウクライナに関する買収による職権乱用とされるもので、ワシントンの議員連中が彼を弾劾調査に追いやっているので、トランプが、この感情を理解しているのは確実だ。
過去一週間、イランでの街頭暴力の劇的爆発は、燃料値上げに対する大衆抗議を工作員が乗っ取ったものだ。公共財産に対する放火事件の急速な広がりやイラン保安部隊メンバー数人が銃撃によって死亡したことが、扇動における外国の役割を示唆している。
アメリカは「イラン国民を支持する」と偽善的に主張し、トランプ大統領とマイク・ポンペオ国務長官は、更なる街頭騒動を煽る、イラン内政問題干渉のあからさまな声明を発表した。
騒動の広がりを鎮めるためイラン当局が課したインターネット制限を、反政府活動家が避けるのを支援する方法を見いだすため、過去18カ月間アメリカが働いていたことを、国務省イラン担当特別代表ブライアン・フックは公然と認めさえした。
「政権が彼らを検閲しようとした際、お互い連絡できるようにする手段をイランの人々に得させることができた」とフックは述べた。
ロシアが地域緊張の挑発だと非難した動きで、先週、トランプは、3,000人のアメリカ軍を「イランの挑発を防ぐ」ためサウジアラビアに派兵したと議会に述べた。一方、エイブラハム・リンカーン空母打撃群がペルシャ湾に入った。
トランプとネタニヤフは、イランとの緊張を高めるため協力しているように思われる。明らかに、ネタニヤフは戦争の陣太鼓の音が、収賄容疑での彼の裁判に対する検察要求をかき消すことに賭けている。イスラエル首相は、司法に直面するより、自分の身を守るために、イランとの戦争を燃え上がらせる準備を整えているように思われる。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2019/11/24/bibis-get-out-of-jail-card-war-with-iran/
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植草一秀の『知られざる真実』 安倍自公基本戦術は動員・妨害・分断である
話題の二人、どうしているのだろう?
日刊IWJガイド「河井前法相と妻の案理議員らを公選法違反で上脇神戸学院大教授らが刑事告発!!」 2019.11.27日号~No.2631号~
日刊IWJガイドには、こういう文章もある。もちろん全く驚かない。類は友を呼ぶ。
■【中継番組表】
┠■菅官房長官が反社会的勢力の「桜を見る会」出席を認める! 一方追及本部によるヒアリングには「安倍枠」名簿を取りまとめた官僚も出席!IWJのYouTubeチャンネルからご覧ください!
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